善徳2次
【音の春・光の春】
― 女王さま、視察はもう十分かと
そろそろ、お車にお戻りになられては・・・
アルチョンは、トンマン女王の体調を心配し、乗り物へ戻るよう勧めた
情勢が不安定なさ中なので、アルチョン、ユシン、ピダムといった、気の知れた僅かな伴だけで視察にきている
この日は日差しが戻ったとはいえ、まだまだ寒い
2月も終わりに近づき油断をしていたら、寒の戻りか、ここ数日、大雪に見舞われた
城下の民の暮らしにどれほどの影響が出ているか、市井から見回っていたら、市に並ぶ野菜や果物の少なさに、農家も見回ることになった。
農家の者は歩くのも難儀な中、雪をかぶった野菜や果物を心配し、大人から子供まで必死に雪を取り除いている
トンマンは、キラキラと日差しを受けて輝きながら解け始めた雪と、その中で働く民たちを眩しそうに眺めていて、当分、帰る気配すらない
昨日までは凍っていただろうあぜ道の横の沢は、氷を浮かべながら、さらさら流れている
ドサッ
― 女王様!!木のお側から離れて下さい
木の上の雪が解け始め、塊のままトンマンの横をかすめた
― 騒ぐな!!大丈夫です
雪解けの音です。音の春ですね~
― はっ
素っ頓狂なピダムの声が聞き返してくる
― 雪解けの音、鶯の声、氷が解けた沢の流れ
サクサクと雪を踏み田畑を耕す音
音が春を告げてます
それから、日差しが風を柔らかくし雪を溶かし
芽吹きを促す。光の春です
音と光の春の兆しがこの国をキラキラ包んでいます
― はい
ユシンとアルチョンが答える
― 皆、私たちの国にも春の兆しが見えますか?
吉報はこの国に届きますか?
― 女王様の下、私たちがこの国を・・・
― ま~た、ユシン1人だけカッコつけて
同じ気持ちだってのに
― ピダム!!やめないか
ユシンは本心から言ってるのだぞ
― そうやって、アルチョンも眉間にしわを寄せる
― ハハハ、こうしていると
出会ったころの楽しく必死だった頃を思い出します
・・・私は、女王として相応しいでしょうか?
― おやめください、誰が聞いているか
アルチョンがさえぎる
― 後ろに控えていて下さるから
前線に出て行けるのです
ユシンの言葉に皆がうなずく
― そうだぜ、難しいことは言えないが
どんな冬の時代も振り払ってやるから
― また、そんな口の利き方を
元に戻っているピダムをアルチョンがたしなめるが、仕方ないやつだと諦める
― 私の方こそ、この3人がいてくれるから
前を向いて立っていられるのです
これからも、共にたのみます
前を向くトンマンのその姿が、3人には春の兆しに見えた
まるでキラキラと輝く春の光
この姿とこの国をいつまでも守ると胸に誓う3人であった
春まだ浅い神国にこれから満開の春の陽気と吉報が届くことを願って