手元に残る虫除けスプレー

 

 

 

 

これはいいと興奮して、

大容量のを買ってしまったから新品同然

 

 

 

ま、家で使えばいいか。

 

 

一緒に帰国 & 帰宅。

 

 

母親に事の顛末を話してみる。

 

 

笑ってくれるかな。

それとも、怒られるかな。

 

 

どんな反応が来るのか楽しみにしていたが、

返ってきた答えは哀れんだような目

 

なんて残念な子

とでも言わんばかりのなんともいえない表情

そして

まさかの無言

 

 

 

 

 

トロフィーを貰ったかのように掲げたスプレー。

 

 

意味もなく、少し誇らしげな顔の私。

 

 

なるほど。

なるほど、そうか。

 

 

 

人は許容範囲を超えた感情を抱くと、

全ての思考が停止して、

なにも言葉を紡がなくなるのね。

 

 

 

オッケー。

オッケー。

 

 

あの母親がフリーズするなんて珍しいもんだ。

 

いいもの見たな。

 

 

そっと静かに

掲げていたスプレーをおろし、

自分の部屋に置いておく。

 

 

 

そのスプレーはその年の夏、

見事に大役を果たし

他の大役を果たした仲間たちと共に遠くへ旅立っていった。