コロムビア社の卓上蓄音機「No.114-B型」の続きです。機械は2丁ゼンマイ、サウンドボックスはNo.9が使われ、本体内部には金属製のリエントラントホーンが内蔵されています。また、同じ仕様で色違いのNo.115型も一緒に販売されていました。
 
→朝日新聞 昭和5年2月26日の広告より
―蓄音器をお買ひになる前に―
  音質と音量 體裁と品質で
  世界に比なきコロムビアを御試聴下さい
 
  百十四號 赤色マホガニー
  百十五號 褐色マホガニー
   正價 金八拾圓也
 
 全國著名の蓄音器店はコロムビア特約店です
 御試聴、御比較の上御用命を
 日本コロムビア蓄音器株式會社
 
正面から見ると左右に分かれたホーンが見えます。
 
内部
 
塗装の下は薄い青灰色をしているので材質は亜鉛のようなものだと思われます。
 
ホーン単体の重量は約2kg、音道の長さは約1mほどです。
 
機械
 
ラベル
 
機械・上面
 
機械・側面
 
サウンドボックスやアームなど
 
「COLUMBIA No.9 PAT. Nos. 212137-264263.」
 
 
別のNo.9サウンドボックスを分解した時の写真です。ベアリングの清掃と硬化したゴムチューブの交換で不足していた低音域が改善されました。
当時の雑誌にコロムビア社のサウンドボックスについて書かれたものがあったので引用しておきます。
 
→「音樂世界 第二巻第七號」(昭和5年7月1日発行)「蓄音器の今昔」より
サウンドボツクスの改良
(前略)・・・一枚の圓板で中央部は高音、外周は低音の振動を再生する樣に特別の『ヒダ』が付けてある。コロムビア會社のサウンドボツクスは其の振動板に二枚繼ぎの特許品で外周を支持するのに特殊有孔ゴム管が使用してあるから學理的に低音の再生に適して居る。外板は厚さ千分ノ二吋で一秒間七十五回以上、内板は厚さ千分の四吋で一秒間七千回以上の振動をなし其の音量共に優秀で斷然他社の製品を凌駕して居るのである。會社に於て現在製作する三種類のサウンドボツクスは大衆の嗜好により自由に撰擇出來る樣發音基調が三種に分たれて居る。
更に音色に就いて如何に注意が拂はれてゐるかと云へば、音波中の更に細かい變化を完全に振動板に傳へなければならないから、針先から振動板に振動を傳へる針桿(トンボと呼ぶ)にはボールベアリングを用ひ、針先の十萬分の一吋の微動だも振動板に傳へる樣製作されて居る。音色の良否は此の外板の内面に有る空氣室の反作用から生ずる自己振動と、振動板自身の有する粘性による自己振動とを良く一致して作られるか否かによつて大に影響される。之等の點に於てコロムビア會社のサウンドボツクスは最新式科學の粹を蒐めて極めて理論的に製作されて居る。
 
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2016/1/17 追記
No.9サウンドボックスの裏蓋を外した写真です。
裏蓋の外周に溝があり、その部分に表側が嵌ってずれないようになっています。