新しいと言うだけで、背筋がしゃんとする気がします。
そんな中、私の中で心配なことがあります。
新選組が屯所を前川邸と八木邸から西本願寺へ移転させるというのです。
池田屋事件以来注目を浴びた新選組は隊員を増やし続け、なかなかの大所帯となりました。
此処では狭いと言うのが表向きの理由。
本当の理由は、西本願寺と長州志士達と繋がりを絶つことなんだそうです。
西本願寺への移転に関しては、土方さんと山南さんの中では意見が合わずにいました。
それは今も変わりはないのですが、今や羅刹となった山南さんは表立って意見を押し通すことは出来ず。
そんな政治や隊内の事情に私がどうこう言えるわけもないのですが…その時私はどうしたら良いのだろう。
大晦日から始まった宴のざわめきが続く中、私は廊下から庭の南天を眺めていました。
「ふぅ…」
「でっけぇため息だな」
頭上からの声に気がつき振り向くと、そこには不機嫌そうな土方さんが立っていました。
「はっ、しっ…失礼しました」
「気にするな。酒の呑めねぇ奴には酒宴は息が詰まるだけだ。茶を頼む」
「はい!」
私は慌てて勝手場へと向かいました。
「お待たせしました。熱いので気をつけて下さいね」
「あぁ…」
書類に目を通している土方さんの邪魔にならないように、そっと立ち去ろうとしたその時。
「雪村…お前は何を憂いている?」
「えっ?」
「何か心配な事があるんだろうが」
「えっと…」
「雪村綱道の件か?」
父様の事ももちろんある。
幕府の勅命を受けたにも関わらず、姿を消した理由がわからずにいる。
でも今一番気になっているのは。
「自分の今後の身の振り方が…」
「…はぁ?」
土方さんの不機嫌な返しに、身が縮こまりました。
「そんな仰々しい内容ではなくてですね。西本願寺に移る時に…」
「あぁ、荷物はまとめておけよ」
「えっ?」
「聞こえなかったのか?自分の荷物は自分でまとめろ。わかったか?」
もしかしたら自分の都合の良い夢を見ているのかもしれない。
頬をつねってみると
「痛い。私、此処を出ていかなくても良いんですか?」
「一人で江戸に戻る気か?すぐに風間の嫁にされるぞ。そっちが良ければ止ねぇがな」
「嫌です!」
土方さんは空にお茶を飲み干し、お湯呑みを差し出しながら言いました。
「自分の中で答えが決まってるなら貫け。ついでにかわりを頼む」
「はい!」
私の中の憂いはもうどこにもありませんでした。