第510話「ラガーの大追跡」(通算第720回目)

放映日:1982/6/4

 

 

ストーリー

竹本は非番の日、恩師の見舞いのため、矢追第一病院を訪れていた。

竹本が見舞いに行く気になった本当の理由は、若者に人気のアイドル歌手の立花茜(岩田法子さん)が同じ病院に入院していたためであり、廊下と偶然すれ違うことを期待していた。

立花は「横須賀アフタヌーン」という歌で今、ヒットチャートを驀進中だった。

立花は声帯ポリープの手術に成功していた。

立花は撮影の事故で右手を負傷していた。

立花は茜色のネッカチーフをトレードマークとしており、歌い終わった後にステージの上からネッカチーフを投げていた。

竹本はエレベーターを待っている途中、立花が志賀忠信(72歳)(西村晃さん)という老人に付き添われ、エレベーターを下りるのを目撃したが、立花本人とは気付かなかった。

立花は竹本に口パクで「助けて」と伝えた。

竹本はエレベーターに乗った直後、ネッカチーフと、右手に巻かれた包帯で、すれ違ったのが立花であることに気付いた。

竹本は看護婦から、立花が手術したばかりで、当分退院する予定がないことを聞き出した。

竹本は病院の窓から、忠信が立花を乗用車に強引に乗せているのを目撃し、立花の口パクが「助けて」という意味であることに気付いた。

立花は声が出せず、手術後1週間までは無理に声を出すと二度と歌えなくなる可能性があった。

竹本は看護婦に、立花が拉致されたことを告げ、見舞い用の果物を看護婦に手渡し、窓から外に飛び降りた。

竹本は付近に停車していた、弘和製薬の社用車を強引に拝借し、忠信の乗用車を追跡した。

一係室に立花の拉致の件と、竹本が忠信を追跡した件が通報された。

藤堂は野崎と原には立花の所属事務所「ヴィーナスプロダクション」に、山村と石塚と西條と岩城には矢追第一病院に急行するように命令した。

忠信は高速道路を走行中、竹本の尾行に気付いた。

看護婦は忠信の顔を見ていなかったが、西條に、忠信が運転していた乗用車がツードアハードトップであることを証言した。

医師(大山豊さん)は山村と西條に、立花が沈黙療法を受けていたこと、無理に話すとひどい炎症を起こすことを説明した。

山村は看護婦から、立花が身の回りのことをあまりきちんとしない性格であることを聞き、犯人が立花を着替えさせ、寝間着を綺麗に畳んでいることから、冷静な性格であり、若者の犯行ではないと推理した。

立花の病室に、ヴィーナスプロダクション社長の袋崎(頭師孝雄さん)が立花の拉致を聞き、駆け込んできた。

袋崎は犯人に心当たりがあった。

忠信は大月インターの料金所で高速道路を下りる際、釣り銭を渡さずに通過した。

竹本は料金所の係員に、七曲署に連絡するように要請した。

西條と岩城と原は藤堂から、竹本を追跡するようにという命令を受け、直行した。

野崎はヴィーナスプロダクションに残っていた。

竹本は社用車のガソリンが枯渇しかけていることを知り、ガソリンスタンドに行ったが、忠信を見失ってしまった。

袋崎は、靴の製造会社「志賀シューズ」社長の志賀(勝部演之さん)の自宅に急行し、志賀夫人に志賀の行き先を尋ねた。

しかし、志賀は自宅にいた。

袋崎は志賀が犯人であると思い込んでいたが、石塚から、立花を拉致した犯人が70代の老人であることを伝えられると、犯人が志賀の父親である忠信ではないかと疑った。

志賀は石塚と袋崎に、忠信が朝から金策に走り回っていること、白のツードアハードトップに心当たりがないことを伝えた。

竹本は山道を走行中、忠信のツードアハードトップを探し当てられず、やむを得ずに電話を捜索する方針に切り替えようとしたが、その直後にクラクションを聞き、鳴った方向に向かった。

竹本は別荘「みやま寮」に忠信のツードアハードトップが駐車されているのを発見し、拳銃を所持していなかったため、付近に落ちていた木の棒を拾い、みやま寮の中に突入した。

竹本はみやま寮の一室で立花を発見し、連れて脱出しようとしたが、そこに忠信が現れた。

忠信は竹本が社用車を降りた時の行動で、竹本が刑事であること、拳銃を所持していないことを見抜いていた。

忠信は戦時中、気配を隠してじっと潜む訓練を頻繁に受けており、付近に潜伏して、竹本の行動を観察していた。

忠信は竹本に、クラクションの音につられてみやま寮に来たのを、訓練不足であると評価した。

忠信は最初、竹本を振り切るつもりだったが、坂を下りると人家があって都合が悪かったため、わざとクラクションを鳴らしていた。

忠信はわざと一つ先の料金所で高速道路を下りていた。

忠信は竹本と立花を椅子に座らせ、自分の正体を明かした。

志賀は石塚に、5月13日の午後11時に志賀シューズの副社長の岩崎慎二が殺害される事件が発生したこと、その事件の犯人として、2億円の生命保険の保険金を理由に自分が疑われていることを説明した。

事件が発生した場所は、宮入町にある岩崎の自宅のマンションで、城北署の管内だった。

志賀と岩崎は有事に備え、会社を受取人にして保険金を掛け合っており、ちょうど倒産寸前の時に岩崎が殺害されていた。

志賀には事件のアリバイが無かった。

志賀シューズは3日以内に手形を落とさないと不渡りを出してしまう状態だった。

志賀は岩崎を不憫に思いつつ、2億円の保険金があれば志賀シューズが倒産しなくて済むとも思っていた。

しかし、保険会社は警察が志賀を完全に犯人でないと認めない限り、保険金を出さないつもりだった。

志賀は無実を主張し、立花が犯人を目撃していることから、立花であれば自分の無実を主張できると訴えた。

袋崎は立花が岩崎と同じマンションに住んでいて、同じ時刻に帰宅したことを認めつつも、立花が犯人を目撃したことについて、冗談であることを否定した。

志賀は刑事から、立花が同僚に犯人を目撃したと漏らしたことを聞いていた。

志賀は、立花が証言すると、警察に何度も呼び出され、スケジュールに支障をきたすため、袋崎が立花を口止めしたのではないかと推測していた。

藤堂は石塚に、レンタカー会社から、忠信が今朝、白のカローラツードアハードトップを借りたという連絡が入ったということを告げた。

忠信は志賀シューズの設立者で、今でも会長を務めていた。

石塚は立花を拉致したのが忠信であると断定した。

忠信は竹本に、事件の事情を説明していた。

忠信は城北署と保険会社に掛け合ったが、取り合ってもらえなかった。

志賀のアリバイがないのは、ちょうど犯行時刻に、新しい靴の履き具合を試すため、街をぶらぶらしていたためだった。

岩崎は扉を開錠し、犯人を室内に招き入れ、背後から頭部を鈍器で殴られ殺害されており、顔見知りの犯行ではないかと推測されていた。

忠信は志賀シューズを何としても救うため、立花に真犯人の人相を喋らせようとしていた。

忠信は立花の証言さえとれれば、すぐに自首することを約束したが、立花については喋ろうと思えば喋れるが、喋りたくないだけであると思っていた。

竹本は忠信に、自分が証人になるため、無理に喋らせることをやめるように懇願した。

忠信は竹本の厚意に感謝しつつも、保険会社が、志賀が殺し屋を雇った可能性も考えていることを教え、警察が真犯人を逮捕し、志賀の息子が潔白されない限り、志賀シューズが倒産することを言い聞かせた。

忠信は、敵を知り、己を知ることが己の極意という信念から、立花のことをよく調べていた。

忠信は立花を連れて帰ろうとする竹本に、自分に武道の心得があることを述べ、竹本を投げ飛ばした。

忠信は立花が自分の利益を守ることを理解していたが、自分にも会社を守る権利があると主張し、法や正義の問題ではなく、勝つか負けるだけであると説いた。

竹本は自分も刑事として戦うだけであると宣言し、格闘の末に忠信を投げ飛ばした。

竹本は立花を送迎がてら、医師を呼ぶことを約束したが、忠信に拳銃を突き付けられた。

忠信の拳銃は、忠信が戦時中に使用していた南部大型式拳銃で、銃弾も残っていた。

忠信は立花に、アタッシェケースに入っている縄で竹本を拘束するように指示した。

料金所の係員も山梨県警から電送された写真を見て、忠信のことを証言していた。

忠信は靴業界では偏屈な頑固者として有名な人物であり、戦後に街頭の靴直しから創業したワンマン会長だった。

忠信は会社と息子可愛さのあまり、非情手段を敢行していた。

石塚は志賀夫妻に忠信の知人をリストアップしてもらい、捜査を開始した。

西條は立花の喉を心配し、忠信も志賀も不運であると呟いた。

忠信は竹本を縄で拘束し、立花に証言さえすれば病院に送ることを約束した。

忠信は立花が自分から喋りたくなるようにすることを図っていた。

忠信は竹本が抵抗し続けるため、竹本の口を布で塞いだ後、ヴィーナスプロダクションに電話をかけ、受話器を立花に突き付けた。

立花は無言を貫いた。

逆探知は電話が短過ぎたため、失敗に終わった。

袋崎は立花が犯人を目撃していないことを強調し、野崎にヴィーナスプロダクションが立花のみの所属であり、立花の声が潰れたら倒産するため、立花の捜索を要請した。

西條と岩城と原は山梨県警の警察官と合流した。

原は岩城から、山梨県警が料金所の先一帯を捜索していることを聞くと、料金所を下りて戻ったのではないかという推理を打ち明けた。

大月インターの1個前の相模湖インターは神奈川県警の管轄だった。

忠信は管轄の盲点を着実についていた。

午後3時30分頃、忠信は立花に、証言をするように懇願した。

立花は帰宅途中、非常階段から逃走する犯人を目撃していたが、証言しようとしなかった。

竹本は打開策を練っていた。

忠信は立花に質問し、立花が頷いた通りに似顔絵を描くことを発案し、竹本を証人にすることにした。

立花は忠信の、犯人に対する質問に答えなかった。

竹本は忠信に布を取ってもらい、証言するほうが無理であること、証言すれば今まで立花が嘘を吐いていたことになるため、人気商売の立花には無理であることを訴え、激しく抗議した。

忠信は竹本に、偽証罪の立花の味方をするのかと詰め寄った。

竹本は立花が暴力を使っていないが、忠信が暴力で立花を誘拐したため、立花の味方をすると返した。

忠信は会社が自分一人のものではなく、家族と社員全員の暮らしがかかっていることを懸命に訴えた。

忠信は捜査員が来た場合、自分と竹本と立花を道連れに心中することを決心していた。

忠信の知人全員に、忠信の居場所に心当たりがある人物がいなかった。

知人のリストは、最近5年間分の忠信宛の年賀状から作成されたものだったが、故人が含まれていなかった。

竹本は縄で椅子に腕を拘束されながらも、忠信を突き飛ばし、立花に逃走を促した。

忠信は拳銃の台尻で竹本の後頭部を殴り、昏倒させた。

立花は山中を逃走中、滝の下で絵を描いている画家を発見し、合図に石を投げようとしたが、忠信に発見された。

立花は忠信に連れ去られる途中、崖下に向かってネッカチーフを落とした。

竹本は口でペンを掴み、110番通報しようとしたが、忠信と立花が帰ってきたために失敗に終わった。

忠信は立花のネッカチーフが無いことに気付いた。

原は画家からネッカチーフのことを聞き込んでいた。

忠信は昨夜の午後8時頃、戦死した戦友の娘の自宅を訪れ、会社の寮のみやま寮を借りに来ていた。

忠信は戦友の娘に、戦後も何かと面倒を見ていた。

西條と岩城はみやま寮の場所の連絡を聞き、休校した。

山村が保険会社に問い合わせた結果、忠信が2億円の生命保険に加入していることが判明した。

忠信は万一に志賀の無実が証明できなくても、最悪の場合に自分が死んで会社を助けることを覚悟し、犯行に踏み切っていた。

西條と岩城は、みやま寮に到着し、忠信が逃走に利用したツードアハードトップを発見し、既に室内を調査していた原と合流した。

忠信は弘和製薬の社用車に竹本と立花を乗せ、自動車ごと入れるホテルを捜索していた。

竹本が忠信の運転を妨害した結果、ツードアハードトップが坂に乗り上げ、走行不能となった。

忠信は頭を強打して流血したが、立花の盾となった竹本に銃口を向けた。

立花は忠信が竹本を射殺しようとしているのを見て、証言を約束するため、竹本を撃たないように懇願した。

忠信は竹本が立花のために命を懸け、立花がそれに立派に答えたことをたたえ、素直に負けを認め、竹本に立花を連れて病院に向かうように促した。

竹本は、忠信が残って警察を待つと発言しているにもかかわらず、拳銃を頑なに渡そうとしないことから、忠信が自殺する気であることを察知した。

忠信は自分の保険金で会社を救うため、自殺しようとしたが、誰も死なせたくない竹本に抵抗された。

拳銃は40年近く使用されていなかったため、銃口が錆びついていた。

忠信と竹本は互いに笑いあった。

早朝に城北署から、岩崎殺害の犯人が逮捕されたという連絡が入っていた。

犯人は岩崎の旧友で、貸金を巡ってのトラブルが犯行動機となった。

志賀の無実は証明され、保険金で志賀シューズも倒産を免れた。

立花は忠信の減刑嘆願書を出すつもりだった。

 

 

メモ

*恩師の見舞いに、病院に行ったラガー。しかし、本心は立花茜とすれ違うことだった。

*(忠信が70代であるという連絡を受け)「ギネスブックに連絡だ」byドック

*常に冷静かつ巧妙な作戦を立てる忠信。西村氏の存在感が素晴らしい。しかし、立花の歌を歌じゃないと批判し、歌えなくなったほうがいいというのはさすがに冷酷。

*立花と袋崎と忠信の、「利益の争い合い」が面白い作品。

*勝部氏と頭師氏という豪華な組み合わせ。

*社用車が走行不能となり、ラガーに「自分のことはいいから逃げろ」と言われても、ラガーと一緒に逃げようとする優しい立花。

*ラスト、恩師の見舞いの件を忘れていたラガーに、半日分の休暇を言い渡すボス。そして、立花のサインを貰おうと、ナーコに色紙があるかを尋ねるボス。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

松原直子:友直子

志賀忠信:西村晃

志賀社長:勝部演之、袋崎社長:頭師孝雄、立花茜:岩田法子

吉宮君子、山本千代美、矢追第一病院医師:大山豊、有田麻里

酒井郷博、たうみあきこ、山本武、近松敏夫

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、古内一成

監督:山本迪夫