第506話「消えたロッキー」(通算第716回目)

放映日:1982/5/7

 

 

ストーリー

午前10時15分、藤堂は山村と野崎と岩城に、非公開の重要指名手配依頼書を見せた。

事件は昭和42年(1967年)4月29日に長崎県長崎市稲川町2丁目で発生した、木村有三が殺害された事件のものだった。

容疑者は木村の夫の木村里枝(川口敦子さん)で、息子の木村良次(1959年9月10日生まれ)(22歳、事件当時7歳)を引き連れて逃走していた。

事件は明日で時効が成立するものだった。

長崎県警の富沢刑事が本庁に来ており、七曲署管内で中学校時代の友人が良次を目撃したという証言があったことから、七曲署にも捜査協力の要請が来ていた。

手掛かりは15年前の犯行当時の手配書だけだった。

矢追町2丁目の路上で男が面識のない男に、肩が触れたという理由で言い合いになった直後、拳銃で発砲される事件が発生し、石塚と西條と原が現場に急行していた。

被害者の男は生命に別状がなかった。

石塚は犯人の足元がふらついていて、異常に見えているという目撃証言を入手し、薬物の常用者ではないかと判断した。

藤堂は石塚に傷害事件を任せ、野崎には里枝の事件の調査を担当させた。

犯人は茶色のジャンパーにグレーのズボンを着用していた。

岩城はアパート「セイワ荘」で、住人の岸本妙子(川口敦子さん)に聞き込みをした時、岸本が警察手帳を見て怯えた表情をしたのを目撃し、岸本宅に踏み込んだ。

室内には犯人がいなかった。

岸本は独身であり、怯え切った表情で、男について知らないと述べた。

岩城は警戒を呼び掛け、岸本宅を立ち去った。

西條と原は4丁目の路上を走行中、拳銃乱射犯(荻原紀さん)を発見し、追跡した。

乱射犯は高架橋下で西條と原に追い詰められ、殺意をむき出しにして拳銃を発砲したが、格闘の末に西條と原に、傷害及び殺人未遂の現行犯で逮捕した。

石塚と竹本は藤堂から、乱射犯が逮捕されたことを連絡され、現場を走り去った。

岩城も同様の連絡を受け、七曲署に帰ろうとしたが、セイワ荘の前の道を通った際、岸本のことを思い出し、不審に思った。

セイワ荘の隣の家屋の植木を切っていた植木職人が、岩城を目撃していた。

岩城は再び岸本宅を訪れようとした際、自分の姿を見て逃走する良次(貞永敏さん)を発見し、追跡した。

岩城は資材置き場で良次を見失い、資材置き場の調査を開始した直後、良次に木材で後頭部を執拗に殴られた。

岩城は倒れ込んだ際、良次のジャンバーのボタンを引きちぎっていた。

野崎は良次の中学校時代の同級生の村上浩児(吉田太門さん)から話を聞いていた。

村上は良次が中学校を卒業後に失踪したことから、7年間会っていないこと、10日前に良次を目撃したことを話した。

村上は大学を受験中だった。

野崎は良次の同級生と別れた直後、富沢(金井大さん)と初対面した。

富沢は野崎に、自分が買って出た仕事ではなく、上司からの命令で、情報があった場所に飛んで行ったこと、そのうちにその情報が間違いであったくれたらと思うようになっていたという心中を吐露した。

殺害された木村は愚連隊のような男で、博打や喧嘩をしたり、泥酔して里枝を半殺しにしたりするなど、札付きだった。

富沢は野崎に、事件後、里枝に同情する声はあっても、木村を悼む声が全くなかったことを打ち明けた。

岩城は意識を取り戻したが、良次に腕を手錠で拘束され、拳銃を取り上げられていた。

良次は岩城に、里枝を苦しめた岩城が悪いと激しく罵り、なぜ里枝のことが分かったのかと尋ねた。

里枝は激しく狼狽し、あと2日だというのに、良次に、自宅に刑事が遂に来たと電話していた。

岩城は良次のあと2日という発言から、自分を襲った男が良次であること、岸本が里枝であることを確信した。

西條と岩城は七曲署の廊下で、早番の令子(長谷直美さん)と遭遇した。

午後3時、西條と竹本は山村と野崎と石塚から、岩城が署に戻るという午後0時10分前後の連絡を最後に、定時連絡もせずに消息を絶っていることを告げられた。

原はセイワ荘付近に停められていた、岩城の覆面車を発見し、山村に連絡した。

岩城はかえで荘にある、良次の自宅に監禁されていた。

良次はラジオで、午前10時15分に発砲事件が発生したこと、午前11時15分に矢追町5丁目の路上で乱射犯が逮捕されたこと、岩城が捜索していたのが自分達親子でなかったことを知った。

良次は岩城に拳銃を突き付け、自宅に毎朝新聞の配達員が来ると、岩城に黙っているように脅迫した。

良次は井上という偽名を使っていた。

良次は岩城に、時効を目前にした人間が激しく緊張し、食事も喉を通らないこと、里枝が勘違いしたのは、今までセイワ荘の近辺に来たことがなかったからであることを語った。

岩城は良次を自首させるために、2日も刑事を監禁できるはずがないと説得した。

良次はなんとしても里枝を自由の身にさせることに執念を燃やしていた。

原は岸本宅の隣人の主婦から、岸本が外出していることを聞いた。

岩城は床にクリップが落ちているのを発見し、同じく床に落ちていた新聞をクリップが落ちているほうに蹴り、クリップを隠した。

野崎と石塚と原はそれぞれ目撃者から、昼頃に岩城が良次を追跡し、資材置き場に入って行ったという証言を掴んだ。

原は資材置き場を調査中、血痕が付着している木材と、良次のジャンパーの布切れを発見した。

石塚は山村に、資材置き場で岩城が殴られ、拉致されたことを電話ボックスから報告した。

午後6時30分、竹本は岩城の身を案じていた。

岩城はクリップを回収しようとしたが、良次に発見され、新聞とクリップを蹴り飛ばされてしまい、里枝が木村を殺害した理由を質問した。

良次は岩城に、自分には3歳上の姉がいたが、泥酔した木村に折檻されて死亡したこと、里枝が良次を殺害されると思い、木村を殺害したことを告白した。

木村は証拠がないことから、良次の姉が階段から転落したと言い張っていた。

里枝と良次は怖くて何も言うことができなかった。

良次は岩城に、里枝が生きるために良次を親戚に預け、疲れるまで働いたことを訴え、あと1日で里枝が完全に自由になることを心底願っていた。

凶器から検出された指紋は犯罪者リストに該当する人物がいなかったが、現場付近に落ちていた布切れから、板金などの溶接に使うシリコン液が少量だけ検出されていた。

資材置き場付近には板金工場が密集していた。

原は岩城が午後0時10分頃に矢追公園を出て、七曲署に向かっているのに、覆面車を停め、セイワ荘に直行していること、一度聞き込みを終えたセイワ荘に向かったことが引っかかり、岩城がセイワ荘で何かを感じたのではないかと推測した。

午後8時25分、山村は竹本に石塚の応援を、西條と原にはセイワ荘の調査を指示した。

令子は帰宅しない岩城を心配していた。

西條と原はセイワ荘に赴き、里枝に岩城のことを聞き込んだ。

里枝は岩城が一度だけ訪問したことを伝えた。

西條と原は里枝が激しく怯えていることを疑い、里枝の勤務先を調査することを決めた。

良次は最後の日が来ると信じ、眠らないまま、岩城を監視していた。

午前9時、良次はあと残り15時間が過ぎることを心底願っていた。

良次は岩城に、15年という時間の長さ、自由を失って15年間生きるということが、刑務所に入っているよりも酷いことであることを言い聞かせた。

良次は里枝が十分過ぎる罰を受けたと思っており、岩城に、あと15時間で里枝と一緒に笑うこともできないかと尋ね、それができないのであれば岩城を殺害すると宣言した。

板金工場の工場長(大山豊さん)は石塚に、昨日から休んでいるのが井上だけであることを話した。

原は清掃員から、岸本が体調不良を理由に休んでいることを聞き出した。

午前10時30分、原は岸本宅に突入したが、岸本が不在した。

西條は勤務中の令子に、岩城が連絡を絶って丸1日経過していることを告げた。

午前11時、岩城は打開策を練り、頭が痛いと言って嘘を吐き、良次に濡れたタオルを持ってくるように要求した。

岩城は良次がタオルを持ってきた隙に良次に飛び掛かったが、制圧に失敗し、射殺されそうになった。

里枝が良次の自宅に飛び込み、岩城を庇った。

里枝は良次に、岩城を殺害しないように訴え、もしも殺害したら自分と同じ思いをすることになると説得した。

良次は里枝の説得を聞き、岩城の殺害を取りやめた。

里枝は岩城に謝罪した。

石塚が良次の自宅を訪問し、扉をノックした。

岩城は石塚の声を聞きつつも、助けを求める声を出さなかった。

岩城は自分が合図をすれば石塚が飛び込めたのに、行動できなかった理由が分からず、苦悩していた。

良次は岩城に、あと十数時間で里枝が自由の身になれるため、その間だけ黙っているように懇願し、岩城が黙っていてくれたら、自首すると約束した。

岩城は里枝が十分裁かれていると思うようになり、葛藤していた。

石塚は工員の中で2日続けて仕事を休んでいるのが良次だけであるため、良次を疑っていたが、証拠なしで踏み込むことができないため、踏み込んでいなかった。

午後3時、西條は藤堂と山村と石塚に、若い男が岸本の今の職場と前の職場に1度ずつ現れ、人目を避けるようにして現れていたことを報告した。

井上は5年前(1977年頃)に上京し、4回も転職しており、友人もなく、ほとんど人と口を利かなかった。

岸本も3回転職していた。

西條は岸本が以前に勤務していた店で、栄養士の資格をとるように勧められているにもかかわらず、頑なに断ったこと、2ヶ月後に転職をしていることに疑惑を抱いた。

野崎は井上が職場に提出した履歴書の本籍地が架空だったことを突き止めていた。

原の捜査で、岸本と井上が5年前、ほとんど同時期に都内に暮らしていること、過去に2人が3度転居し、2人の転居先が常に3km圏内の場所になっていることが判明した。

原は岸本が45歳、井上が22歳であることから、岸本が里枝で、井上が良次ではないかと推理した。

岸本が資格を取得しなかったのは、身元を明確にする必要があったからだった。

時効まであと9時間に迫ったが、状況証拠だけで断定できない状況だったため、井上宅に踏み込めない状態だった。

野崎は村上の隣人から、村上がうるさくて勉強できないことを理由に、帰郷したことを告げられた。

野崎は藤堂から承諾を受け、警視庁矢追会館に急行し、富沢に、3ヶ月前に撮影された岸本の写真を見せた。

岸本は写真の撮影を酷く嫌がり、ネガを返すように迫ったが、1枚だけ写真が残されていた。

富沢は自分の知っている里枝が30代の女盛りだったが、岸本の顔に刻まれた皺を見て哀れみ、あと8時間で里枝が自由になれると述べた。

富沢は里枝と良次であれば他人に危害を加えないと思っていた。

岩城はクリップで手錠を外そうとしていたが、里枝と良次の姿を見て、自分が刑事の仕事を放棄しようとしていることについて苦悩していた。

富沢の証言で、岸本の正体が里枝であることが確定した。

石塚と原、西條と竹本は藤堂の無線連絡を受け、良次の自宅に急行した。

岩城に里枝と良次に、時効が過ぎれば自由の身になれるのかと説得した。

里枝は15年間ずっと時効さえ過ぎればと辛抱してきたが、それがあと何時間かで終わるという今になって、時効が過ぎても、良次を殺人者の息子と世間に知られたくない、このままでは良次と一緒に暮らすことができないことを考えるようになり、逃げていては何も終わらない、一生逃げ続けるしかないことに気付いていた。

良次は里枝の考えを変えた岩城に怒りを向けた。

岩城は既に手錠を外しており、良次に、罪を清算してやり直すことで、里枝と良次の苦悩が終わると懸命に説得した。

良次は岩城に拳銃を返し、号泣した。

午後5時10分、石塚と西條と原と竹本が良次の自宅に突入しようとした直後、岩城が里枝と良次を連れて現れ、2人が自首したことを説明した。

 

 

メモ

*「15年目の疑惑」と同じく、非常に辛い境遇の、時効寸前の犯人が登場する話。木村親子の心情が非常に細かく描かれていると思う。

*自分を刑事失格と思いつつも、木村親子に全面的に同情する富沢が非常にいい味を出している。

*早々に事件が解決し、令子も早番だったことから、令子に自宅に招待してもらうことになったドックとラガー。

*ロッキーは葱が嫌いらしい。

*令子が自宅ですき焼きを振る舞うことが決定し、大喜びするドックとラガーだったが、ロッキーが良次に拘束されたために実現せず。ラガーは「ラッサ熱」に続き、またしてもすき焼きを食べ損ねる。

*拉致されているロッキーの身より、すき焼きが心配なドック。「すき焼きが飛んでいく~」byドック

*クリップで手錠を外すロッキー。

*ラスト、ロッキーは調書に、良次が自分に拳銃を向けたことを書かず、自分を殴ったのも偶然であると書いていたが、ボスに注意されてしまった。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

岩城令子:長谷直美

松原直子:友直子

岸本妙子(木村里枝):川口敦子

井上良次(木村良次):貞永敏、富沢刑事:金井大、村上浩児:吉田太門、拳銃乱射犯:荻原紀

森みどり、目撃者:阿部渡、板金工場長:大山豊、溝口順子

速水勝也、岡田和子、本庄和子、古川隆、野島秀実

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:奥村俊雄、小川英

監督:竹林進