第503話「山さんとラガー」(通算第713回目)

放映日:1982/4/9

 

 

ストーリー

矢追ストアーにて強盗殺人事件が発生し、七曲署捜査一係が現場に急行した。

被害者は店長の後藤浩一で、店内に一人残って明日の給料の用意をしていたところを襲撃され、ナイフで腹部を刺され、殺害されていた。

被害金額は給料の約2000万円だった。

犯人は警備員が定時巡回した時には、既に逃走した後だった。

目撃者、遺留品は共に皆無だった。

山村と竹本は巡回中、黒田正己(38歳)(辻萬長さん)という男が挙動不審な行動をとっているのを目撃し、付近の公園を捜索した。

黒田は公園の柵にうずくまって激しく怯えており、山村に警察手帳を見せられると、逃走したが、竹本に取り押さえられた。

黒田は竹本に詰問されたが、事件については知らない素振りを見せた。

山村は黒田に、名前と住所を尋ね、協力しない場合には七曲署に同行してもらうことになると警告した。

黒田は身長170cm前後で、グレーの作業服を着用していた。

山村と竹本は黒田を取り調べていた。

黒田は竹本の質問に答えず、早く釈放するように訴えた。

山村は、黒田が何の容疑かを自分に一言も聞いていないことを指摘した。

黒田は事件について、何も知らないと言い張った。

寿司屋の出前持ち(二家本辰巳さん)は犯行推定時刻の午後9時30分、付近のマンションに器を下げに行った際、逃走する黒田らしき男を目撃していたが、前屈みで暗かったため、黒田とは断定できなかった。

山村は黒田の身元を調査することにした。

山村と竹本はアパート「静風荘」の213号室の黒田宅を訪れ、室内にいた、小学3年生の黒田清(9歳)(川辺太一朗さん)と対面した。

山村は清に、事件と黒田の関係性を調査しなければならないことを告げ、黒田が悪事を働いたのかを不安に思う清に、それが分からないから来たことを伝え、正直に答えるように求めた。

清は山村に、黒田が午後9時頃に、清に用事を思い出したために、先に寝るようにと言い残し、自宅を出たことを答えた。

黒田は夫人の黒田友子(1946年8月18日生まれ)を病気で亡くしていた。

静風荘の住人は黒田親子について、恋人のように仲のいい親子であると証言していた。

原は黒田が強盗殺人をやるような人物に思えなかった。

西條は竹本に代わって黒田の取り調べを担当していたが、黒田が明け方から黙秘を貫いているため、黒田が犯人ではないと直感していた。

竹本は、黒田が警察から離れて怯えていたことを激しく疑い、犯人であると断言していた。

山村は黒田と強盗殺人事件が絶対に無関係ではないと確信していた。

石塚は公衆電話から藤堂に、昨夜に犬を散歩させていた主婦が、西矢追の河原で刃物らしき物を投げ捨てている男を目撃していることを連絡した。

西矢追の河原は黒田が隠れていた公園とは逆の方向だった。

竹本は黒田が西矢追の河原に凶器を処分し、逆方向に逃走したのではないかと考えていた。

主婦は刃物を投げ捨てている男の顔を見ていなかったが、男の身長が黒田より大きかったこと、黄色いジャンバーを着用していたことを記憶していた。

主婦は毎日の午後10時10分に自宅を出発しており、午後10時15分に西矢追の河原を通りかかった。

黒田は午後10時15分には山村と竹本の前にいたため、その男が犯人であれば、黒田が犯人ではなかった。

野崎は河原で凶器のナイフを発見した。

清は七曲署の正門の前で黒田を待っていた。

黒田は山村と岩城により釈放され、正門で清との再会に喜んだ。

竹本が黒田の前に現れ、黒田に、現在に勤務している東都運送の前に日精冷凍で運転手をしており、その時に矢追ストアーに魚を運んでいたこと、そのために店の内部事情に詳しかったことを詰問した。

山村は黒田に掴みかかる竹本に、手を放すように命令した。

凶器のナイフには後藤の血液が付着していたが、指紋が採取されなかった。

竹本はナイフに指紋が付着していないことを理由に、黒田が何物かにナイフを処分させたのではないかと推測し、黒田を疑っていた。

山村は竹本に、黒田が犯人とは一言も言っておらず、事件とは関係があると言っただけであるが、その考えが少しも変わっていないことを主張した。

藤堂は山村に、黒田が犯人ではないと断定できる理由を尋ねた。

山村は、子供が家族の写し鏡で、家族の心情や生活状態を映し出すことを説き、父親としての勘から、清に殺人者の親が考えにくいと思っていた。

竹本は山村が、家庭環境の似ている黒田に同情し、意見が変わったのではないかと考えていた。

原は七曲署に戻らず、清と会話するために静風荘に立ち寄った。

原と竹本は黒田宅の扉の前でガスの匂いを嗅ぎ、扉の窓を割って黒田宅に突入し、黒田と清を救出した。

黒田親子は発見が早かったため、一命を取り留める可能性があった。

黒田宅からは遺書が発見されなかった。

原は自宅の中から現金が発見されないため、心中の動機について、強盗犯に間違えられたからではないかと推測した。

竹本は心中の動機を、犯人だからではないかと考えていたが、原に、証拠がないため、断定が危険であると言い聞かせられた。

竹本は厨房に2人分のグレープフルーツが置かれているのを発見した。

原は黒田親子のアルバムを見て、いい親子であるという感想を抱いていた。

原と竹本は黒田が共犯に、心中に見せかけて殺害されかけたのではないかということを思い付いた。

黒田親子は井上外科に、それぞれ別の病室で入院していた。

山村は不安がる清を優しく励ました。

清は山村に、黒田が午後7時頃に一人で帰宅してきたこと、土産にグレープフルーツを買い、カツ丼の出前を取ったことを話した。

黒田は清に警察のことを聞かれると、何も心配しないようにと返した。

清はグレープフルーツが好きではなく、残しており、食べた後に就寝していた。

食べ残しのグレープフルーツから、睡眠薬が検出された。

竹本は黒田が強盗の共犯であると断定したが、西條に、無理心中を企んだ父親が子供を騙して眠らせた上に細工をしたのではないかと反論した。

山村は西條に、子供を騙すのに嫌いな食べ物を買う父親がいないと意見した。

山村と西條と竹本は、意識を回復した黒田に、グレープフルーツを渡した者を質問した。

黒田は竹本の、共犯に口封じに命を狙われたという推理を否定し、何もかも嫌になり、清と一緒に無理心中をしようとしたことを強調して答えた。

黒田はグレープフルーツを購入した場所を答えなかった。

山村は黒田に、清がこの世で一番信じていた父親が自分を殺そうとしたことを聞いたら、その傷が一生治らないだろうと忠告した。

黒田は山村に、清に何も言わないように涙ながらに懇願した。

山村は清に何も言わないことを約束した。

黒田親子は明日には退院できる状態まで回復した。

山村はグレープフルーツの睡眠薬が名前の入っていない一般的なものだが、黒田の指紋しか付着していないことから、犯人が指紋を綺麗に拭ったと推理し、心中が偽装殺人であると確信した。

黒田は命を狙われても犯人の名前を明かさないことから、秘密に命にも代えがたい何かがかかっている可能性が濃厚だった。

竹本は黒田の秘密が、強盗の共犯ということではないかと考え、秘密を突き止めることに執念を燃やしていた。

西條は竹本に、黒田が犯行とは無関係で、脅迫されて口封じされそうになったのではないかと諭したが、竹本に聞き入れてもらえなかった。

山村は黒田親子の過去を調査することにした。

黒田は化粧室に行こうとした際、野崎を突き飛ばして逃走しようとしたが、野崎に制止された。

黒田は激しく怯えていた。

山村は運送会社の社員から、黒田がいい性格で、友子もよくできた性格であり、仲のいい夫婦だったこと、主婦から、友子が2度も流産し、清が3度目の出産の時の子供だったことを聞き出した。

山村は早川産科病院を訪れ、友子の診療記録を調査した。

友子の血液型はB型、黒田はAB型だった。

山村は清の血液型検査成績に何も記載されていないことを不審に思い、看護婦に質問した。

看護婦は清の出産当時には病院に在籍していなかったため、何も知らなかった。

山村は野崎から、清の血液型がO型であるという報告を聞き、清が黒田の実子ではないことを突き止めた。

山村は早川院長(加藤和夫さん)を懸命に説得し、清の出産のことを聞き出した。

早川は黒田に、戸籍に実子と届けるように指示したわけではなかった。

早川は友子の3度目の出産の時、何とか流産を食い止めたが、死産となってしまった。

同日、養子に出すしかない赤ん坊が誕生しており、早川はどちらの母親にとっても生まれてきた子にとっても、それが一番幸せな道だと信じていた。

竹本は野崎から、黒田が逃走しようとしたことを告げられた後、黒田の警護を野崎と交代した。

アパートの管理人は山村に、柏木が多方面から借金をしていることを証言した。

黒田は竹本が寝ている隙を見計らい、病室を脱走し、パジャマ姿でタクシーに乗った。

竹本は寝ているふりをしているだけだった。

山村は藤堂から、10分前に黒田が脱走したことと、竹本が消息を絶っていることの無線連絡を受けた。

山村は黒田の行き先が桜ヶ丘のコンクリート工場であることを見抜いていた。

黒田はコンクリート工場でタクシーを降り、工場内に潜伏していた柏木(原口剛さん)と再会し、柏木を問い詰めた。

柏木は黒田に謝罪し、黒田が警察に何も話さなかったことを知り、安心していた。

黒田を尾行していた竹本が黒田と柏木の前に現れ、拳銃を突き付けた。

柏木は黒田が自分を裏切ったと思い、逆上した。

柏木は操作盤の始動のスイッチを押し、竹本の頭上に吊るされていた鉄箱を落下させた。

竹本は黒田の一声で鉄箱の落下に気付き、回避したが、鉄箱が右腕に当たってしまい、拳銃を落としてしまった。

柏木は竹本の拳銃を拾い上げ、黒田と竹本を射殺しようとしたが、駆けつけた山村に拳銃を撃ち落とされ、同じく駆けつけた岩城に逮捕された。

9年前(1971年頃)に早川の乗用車の運転手だった柏木は、サラリーマン金融の借金返済に困窮したために、清の秘密をネタに黒田を脅迫していた。

黒田は柏木に強盗を持ち掛けられるも断り、柏木が強盗をやめると言ったのを聞いたが、事件当日に気になって様子を見に行き、後藤を殺害して2000万円を強奪した柏木の姿を見ていた。

黒田は柏木から、警察に話せば清の秘密を暴露すると再び脅迫され、清と一緒にいられなくなると思い、脅迫に屈していた。

石塚がコンクリート工場に清を連れてきた。

柏木は自分だけが悪いという状況が納得できずに激昂し、岩城を突き飛ばし、清が黒田の実子ではないことを大声で告げてしまった。

清は黒田が実の父親ではないと思い、困惑した。

山村は黒田に本当のことを打ち明けるように促し、血の繋がりだけが全てではないと説得した。

清は黒田が実の父親ではないことを知っても、温かく受け入れ、黒田に抱き締められた。

 

 

メモ

*刑事2人の名前が付くサブタイトル「○○と○○」の1作。

*二家本氏が珍しく目撃者役。

*黒田が犯人という仮説に、非常に固執するラガー。「ジプシーとラガー」で自分の推理が的中したことで、自信過剰気味だった?

*辻氏は後に「山村刑事の報酬なき戦い」で、今回と同じく、血の繋がらない子供がいることを犯人に脅され、犯行に加担してしまう役を演じている。そちらも同じ山本監督で、さらに加藤氏も出演している。

*隆が台詞のみ登場。今年に小学2年生になるようだ。

*ラガーの台詞から、高子が病死したことが触れられているのが懐かしい。

*結果的に黒田親子の命を救ったジプシー。

*清の台詞に「ゴッドマーズを作った」というものが。『六神合体ゴッドマーズ』は1981年10月から1982年12月に、NTV系で放送されていたロボットアニメ。

*子供への対応が神がかり的に上手い山さん。

*加藤氏はワンシーンのみの出演で出番が少ないが、安定の存在感。

*真犯人役は、辻氏と顔が似ている原口氏。

*山さんが窮地に陥ったラガーを助けるため、珍しく発砲。

*「血の繋がりだけが全てじゃない」という山さんの台詞が深い。

*「何だい、その声は」の山さんの声色が面白い。

*ラスト、ボスに始末書だと言われてしまうラガー。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

松原直子:友直子

黒田正己:辻萬長

柏木:原口剛、早川院長:加藤和夫

黒田清:川辺太一朗、寿司屋の出前持ち:二家本辰巳、丸山詠二

野路きくみ、津島瑞穂、側見民雄、沢柳迪子

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:山本迪夫