第501話「ある巡査の死」(通算第711回目)

放映日:1982/3/26

 

 

ストーリー

竹本は退勤後、西條に酒飲みに誘われたが、君原誠一巡査(美木良介さん)と一緒にジョギングをする日課のために断った。

西條は吉野巡査(横谷雄二さん)と一緒に酒を飲んだ。

君原巡査は3年間、2丁目派出所に在籍しており、吉野と一緒に勤務していた。

吉野は西條に、君原巡査が東都大学法学部を首席で卒業していること、君原巡査の父親が本庁の君原警視正であることを説明し、君原親子がいる限り、日本の警察が安泰であると誇らしく思っていた。

加代(石井富子さん)が竹本宅を訪れていた。

竹本は山村から、東都銀行矢追支店で強盗事件が発生し、強盗犯がまだ構内にいるという無線連絡を受け、現場に急行した。

強盗犯は銀行員(布施絵理さん)に拳銃を突き付け、竹本を脅迫し、拳銃を捨てるように要求した。

竹本は拳銃を床に置いたが、強盗犯が56年型のベージュのフォードワゴン車に乗ろうとする隙をついて拳銃を拾おうとした。

強盗犯は逆上し、拳銃を発砲したが、現場に駆けつけた君原巡査が竹本を庇って銃撃されてしまった。

強盗犯は銀行員を置き去りにして、フォードワゴン車で逃走した。

藤堂は路上封鎖を実行した。

君原巡査は救急車に搬送され、竹本が救急車に同乗した。

強盗犯が逃走に使用したフォードワゴン車が高架橋下で発見された。

強盗犯は犯行に使用した帽子とサングラスとマスクを、フォードワゴン車の運転席に放置し、車両を乗り換えていた。

被害金額は約2000万円だった。

強盗犯は帽子とサングラスとマスクで顔を隠しており、モンタージュの作成も、防犯カメラによる割り出しも困難な状態だった。

強盗犯の拳銃は改造拳銃だった。

山村と野崎は一係室に入ってきた電話で、君原巡査が死亡したことを知った。

君原警視正は息子の君原巡査を自分の片腕にすることを熱望していたが、巡査勤務を続けたいという理由から断固拒否されていた。

君原警視正(安井昌二さん)は矢追警察病院を訪れた際、新聞記者からコメントを要求され、あくまで七曲署の事件であること、一般市民に被害が出なくてよかったことを伝えた。

竹本は霊安室で、君原巡査の遺体と対面し、君原巡査が銃撃された時のことを思い出していた。

君原警視正が霊安室に入り、竹本から謝罪を受けた。

君原警視正は、石塚が霊安室に入った直後、君原巡査の遺体に向かって、つまらない死に方と吐き捨てたことで、竹本から激しく抗議された。

竹本は君原警視正に、君原巡査が立派な警察官であることを訴え、どうしてつまらない死に方なのかと激しく突っかかった。

石塚は竹本を制止させた。

竹本は石塚に謝罪し、死亡した君原巡査の気持ちを思って激昂してしまったという心情を吐露し、捜査に戻った。

竹本は捜査中、君原巡査を殺害した犯人を許せない吉野から、捜査に参加させるように頼み込まれた。

竹本は吉野に、君原巡査がどういう性格だったかを話すように頼まれた。

君原巡査は一流校から一流校の超エリートコースを歩んでいたが、生涯を警察官でいたいといつも言っていた。

君原巡査が2丁目の派出所に来てすぐの頃、吉野と君原巡査が巡回中、挙動不審な男を発見し、不審尋問したところ、いきなり襲撃してきた。

男は君原巡査に、女を殺害しないうちに自分を逮捕するように懇願していた。

君原巡査はその後、自分の手が男と女の2人の人間を救ったことに激しく喜び、一生涯を警察官で過ごすことを決意していた。

捜査本部が本庁に置かれることになり、犯人の足取りと改造拳銃の入手先の捜査の2つが、七曲署の担当となった。

藤堂と山村は、通常であれば捜査本部が七曲署に置かれることになるため、異例であること、君原警視正が息子を殺害された怒りで、自分の手で犯人を逮捕するために本部を本庁に置いたのではないかと考えていた。

野崎は捜査中の竹本を発見し、定時連絡をしないために捜査員が心配していることを話した。

野崎は竹本の本心を理解していた。

竹本は捜査本部が本庁に置かれたことを知り、自分のしたことで迷惑をかけているのではないかと思い、激しく自信を喪失し、混乱していた。

野崎は竹本に、下積みの者が全員、君原巡査と同じ気持ちを持っていると激励した。

竹本は失意のまま帰宅していた。

加代は君原巡査が死亡したことを報道する新聞の記事を読み、眠っていた。

竹本は加代に、君原警視正に突っかかったこと、そのことで七曲署にしわ寄せがきているため、辞職を決意していることを告白した。

加代は竹本に、竹本の父親も、何度も警察官を辞めようとしていたことを打ち明けた。

竹本の父親は50代になってから、辞めなくてよかった、この世の中に自分が命を救った人間が確かに何人かはいる、その気持ちが何物にも代えられないとしみじみ語ったことがあった。

本庁の矢沢課長(川辺久造さん)が一係室を訪れ、捜査員に、竹本が初動捜査ミスで強盗犯を逃した上に君原巡査を死亡させているため、本庁ではその責任を追及する声が高く、竹本に謹慎1ヶ月の処分が下すようにということを告げた。

矢沢は謹慎1ヶ月が正式な辞令ではなく、本庁の意向であり、決定権が藤堂にあることを強調し、一係室を去った。

西條と岩城は、竹本があの場で最善を尽くしたため、懲罰がおかしいと納得できず、激しく抗議した。

竹本は強盗犯を逃したことに激しく責任を感じていた。

藤堂は竹本に、その責任を自分の手で償うのが刑事であると諭した。

藤堂は竹本に謹慎1ヶ月の処分を下すつもりがなく、竹本に、君原警視正に突っかかったことを含め何も間違ったことをしていないと激励した。

捜査員も竹本に同感していた。

竹本は男(二家本辰巳さん)を追跡し、男の改造拳銃を蹴り飛ばし、格闘の末に逮捕した。

男は竹本に詰問され、竜神会組員のサブから購入したことを自白した。

原はサブを尋問していた。

岩城はサブの自宅のベッドの中から、改造拳銃を発見した。

サブは改造拳銃を2丁だけ製作したことを自白したが、他の拳銃については自白しようとしなかった。

西條と竹本の捜査で、サブが最近に頻繁に会っていたのは、暴走族のリーダーの寺沢道雄であること、寺沢が銀行強盗事件以降、姿を消していることが判明した。

竜神会が組への加入を交換条件に、寺沢に銀行強盗をさせた可能性が浮上した。

竜神会は最近、覚醒剤ルートの摘発で、資金組織が壊滅状態にあり、現金を欲しがっていた。

野崎は竜神会が寺沢を匿っているのではないかと推理していた。

山村は野崎と石塚に竜神会の調査を命令した。

暴走族は竹本の捜査に非協力的だった。

野崎と石塚は竜神会を張り込んでいた。

岩城と原は、矢沢が警察官を指揮し、暴走族を強制的に連行するのを目撃した。

君原警視正は君原巡査のことを思い出していた。

矢沢は君原警視正に、暴走族も自白せず、サブも七曲署から本庁に連行して尋問したが、黙秘を貫いていることを報告し、竜神会を動かすことを提案した。

石塚と岩城は、矢沢が竜神会幹部の村田(島村卓志さん)を連行するのを目撃し、報告した。

本庁は寺沢の居場所を突き止めていないために焦っており、何とか竜神会を揺さぶるために村田を連行していた。

本庁の目的は竜神会が本庁の追及を逃れるために、寺沢を抹殺させて改造拳銃を回収させるように仕向けさせ、竜神会を尾行して寺沢の居場所を突き止め、踏み込むことで、一挙に竜神会と暴走族を壊滅させることだった。

しかし、その作戦は、一歩間違えば寺沢が死亡する危険なものだった。

竹本は君原巡査と加代の発言を思い出し、寺沢を何としても自分の手で逮捕することを決心した。

竹本は、本庁刑事(小寺大介さん他)が張り込み中の、暴走族の潜伏場所の倉庫に無断で突入した。

刑事は矢沢に、竹本が突入したことを報告し、引き上げるようにという命令を受けた。

竹本は暴走族の構成員に、寺沢が竜神会に殺害されそうになっていることを訴え、寺沢の居場所を自白するように説得したが、信じてもらえず、激しい暴行を受けた。

竹本は暴走族が会合するレストランまで尾行し、自分を信じるように頼んだが、やはり信じてもらえず、殴り倒されてしまった。

竹本は傷だらけの身で、暴走族が会合する公園に現れ、自分を信じるように懇願した。

矢沢が一係室に現れ、藤堂に、謹慎中の竹本が捜査の妨害をしたことについて激怒し、釈明を求めた。

藤堂は矢沢に、謹慎を意向という形で伝えたのが君原警視正の思いやりだとしても、断固無視すること、思いやりが無用であることを宣言した。

藤堂は矢沢に、竹本に警察官として許しがたい失態があるのであれば、査問委員会にかけて正式に究明するように申請し、そうなれば自分の信じている部下の行動について正式に答えることを告げた。

石塚と岩城、本庁刑事が竜神会を張り込んでいた。

村田が竜神会に帰った直後、暴走族のサブリーダーが竜神会に入ってきた。

サブリーダーは、寺沢の生命を何としても救うと約束する竹本を信じ、寺沢の潜伏場所を教えた。

野崎と西條は、電話ボックスで倒れている竹本を救出した。

石塚と岩城と原は、寺沢の潜伏場所の廃工場に突入し、室内にいた竜神会組員2人(星野晃さん他)の拳銃を撃ち落とした。

寺沢は逃走しようとしたが、西條に叩きのめされ、竹本に強盗及び殺人容疑で逮捕された。

後日、野崎と竹本は君原巡査の墓参りに行った際、君原巡査の墓の前で佇む君原警視正の姿を見た。

竹本は君原警視正に謝罪しつつも、君原巡査が好きだったことを伝えた。

君原警視正は処分が下されることが決定していた。

君原警視正は君原巡査が自分に逆らわせたことを竹本達のせいだと思い込み、憎んでいたが、藤堂が正しかったことを痛感し、竹本に謝罪した。

君原警視正は竹本が、君原巡査を立派だと言ってくれたことに感謝し、墓を去っていった。

 

 

メモ

*ラガーを酒飲みに誘うが、断られるドック。代わりに付き合う吉野が優しい。

*君原巡査は美木良介氏。まだ若く颯爽としている。

*美木氏は後に「探偵ゲーム」で、派出所の警察官を演じている。そちらは刑事志望で、大事件を担当することを希望していた。

*人質にされる銀行員は、後のふせえり氏。若い。

*長さんが自信を喪失したラガーを激励するシーンが非常に熱くてほっこりする。

*ラガーの父親は「警視庁城西署巡査 竹本宗喜」で、昭和51年(1976年)3月21日に銀行強盗殺人事件の時に犯人を追跡中、撃たれて殉職したということになっている。

*「この世の中に、俺が命を救った人間が確かに何人かはいる。その気持ちは何物にも代えられないって」。命はどうこうあれ、他の仕事にも同じことが言え、名言だと思う。このシーン、BGMも相まって泣ける…

*ラガーの処分に納得できず、自分も辞表を提出しようとするドックが良い。

*「お前が罪に問われるなら、俺も同じ罪に問われたい」(ボス)と「処罰されるときは私も一緒です」(山さん)という台詞が深い。

*川辺氏は珍しく善人役だが、嫌みな警察幹部役。

*ラガーの父親のことが触れるのは今回が最後。また、加代は今回を以ってしばらく登場しなくなる。次回の登場はラガー殉職後の「殉職刑事たちよ やすらかに」。

*ラガーが聞き込むシーンで、若い男がスニーカーのエンジェルスのスタジアムジャンパーを着用していた。

*ラスト、ラガーに一緒に河原でジョギングをしようと誘う長さん。

*今回は「不屈の男たち」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

松原直子:友直子

竹本加代:石井富子(現:石井トミコ)、吉野巡査:横谷雄二

君原警視正:安井昌二

矢沢課長:川辺久造

久保田鉄男、森洋二、市川勉、竹内靖、三遊亭遊三、早田文次、村田:島村卓志、君原誠一:美木良介、荒瀬寛樹

広森信吾(現:森しん)、本庁刑事:小寺大介、渡辺巌、郡司健、東都銀行矢追支店行員:布施絵理(現:ふせえり)

ノンクレジット 改造拳銃を買った男:二家本辰巳、竜神会組員:星野晃

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:奥村俊雄、小川英

監督:竹林進