第495話「意地ッ張り」(通算第705回目)

放映日:1982/2/12

 

 

ストーリー

謎の男が西新宿7丁目のビルにある「?栄ローンズ」に侵入し、金庫破り道具を利用して金庫の中身を強奪した。

翌朝、七曲署捜査一係が現場に急行した。

被害金額は120万円だった。

野崎は手慣れた人物の犯行であると判断した。

ビルの出入口は正面玄関と裏口の2ヶ所だった。

正面玄関にも裏口にも非常階段にも異常がなかった。

事件の犯人は城南署で3件、坂上署でも3件、同一の手口の金庫破り事件を起こしており、今回が7回目の犯行となった。

犯人が七曲署でもあと2,3件犯行を重ねることが推察され、西條は次に狙われやすいのが、サラリーマン金融やバー、キャバレーの事務所がある地帯ではないかと考えた。

藤堂はこの地帯を重点的に張り込むことを決定した。

西條と竹本は覆面車の車内で張り込み中、巡回中の袴田伝吉巡査(井上昭文さん)に、駐車している場所が24時間駐車禁止であると注意されてしまった。

袴田は西條の、捜査一係刑事であるという弁解を無視し、早く自動車を移動させるように指示した。

竹本は袴田に、ビル荒らし事件の張り込みをしていることを説明したが、車内ではなく外で張り込むように嫌みを言われ、激しく反発した。

袴田は警察官勤務三十数年で、頑固一徹な性格の名物警察官だった。

西條は駐車場に覆面車を停め、車内に竹本を残し、ビルを張り込んでいる途中、金庫破りの男がビルの非常階段を下りているのを目撃した。

袴田も金庫破りの男を発見し、非常階段を駆け上った。

男は非常階段から飛び降り、逃走した。

袴田と西條は金庫破りの男を追跡した。

金庫破りの男は袴田と格闘になったが、西條が駆けつけるのを見ると、袴田を突き飛ばして逃走した。

袴田は猛スピードで疾走する乗用車に轢かれそうになったが、西條に突き飛ばされて一命を取り留めた。

乗用車は路上に駐車されていた乗用車に衝突し、停止した。

西條は金庫破りの男を見失ってしまった。

乗用車の運転手は泥酔していたが、事件とは無関係だった。

袴田は西條に、邪魔しなければ犯人を逮捕できたと抗議し、西條と口論になった。

犯人はビルの一室の金庫を破った際、警備員の井本の頭部をスパナで殴り、殺害していた。

井本は所轄こそ違うが、袴田の同期の筆頭で、去年(1981年)の末に退職したばかりだった。

井本は侵入した犯人を発見し、格闘の末に犯人に殺害されたものと推測された。

袴田と井本夫人は、監察医務院で井本の遺体と対面した。

袴田は西條から、唯一、犯人の顔を正面から目撃しているため、自信がある場合にはモンタージュの作成を要請された。

袴田は犯人の顔の記憶には絶対の自信を持っていたが、犯人が覆面をしていたため、目しか記憶していなかった。

犯人のモンタージュは作成不可能だった。

西條は犯人の手掛かりについて、年齢20代後半、身長170cm、痩せ型であることを述べた。

西條は、井本の葬式に参列したばかりの袴田から声を掛けられ、犯人の見当が付いたかを聞かれた。

山村は西條に、とび職崩れの藤田(山本亨さん)という若い男が頻繁に行く、2丁目のゲームセンターに直行するように無線連絡した。

藤田は最近、景気が良く、犯人と背格好が酷似していた。

袴田は西條の覆面車に同乗し、西條と一緒にゲームセンターを訪れた。

藤田は逃走したが、西條と袴田に追跡され、西條と格闘の末に逮捕された。

藤田は金庫破り犯人ではなく、競馬のノミ屋が露見したと思って逃走しただけだった。

西條は袴田に、必ず犯人を逮捕すると励ました。

袴田は井本と似たように、一生コツコツ勤務し、大きな手柄も立てずに少額の退職金で警察を退職するのを心底嫌がっており、他の者にいくら嫌な顔をされても絶対に退職しない、必ず大きな表彰状を貰ってやると宣言した。

西條は石塚に、表彰状を貰うというのがそんなに嬉しいことなのかを相談し、いくら自分なりに精一杯職務を果たしてきたと思っていても、年を取ってくると形になるものが欲しくなるという助言を受けた。

西條は袴田の、人の顔を見るとすぐに突っかかる性格を嫌がっていた。

袴田は約3年前(1979年頃)に息子を亡くしてから、一層意固地になっていた。

袴田はそれより少し前に夫人を病気で亡くし、それ以来、息子の袴田憲一が非行に走り、暴走族に加入していた。

袴田は憲一を心配し、暴走族を辞めさせようと苦労していたが、頑固な性格のために頭ごなしに怒鳴ったり殴ったりしたため、逆効果となってしまった。

憲一はオートバイが横転した際に、頭を強打し、死亡してしまった。

袴田は憲一の死後から、滅多に笑わなくなり、いつも何かに腹を立て、怒鳴りまくっては、自分から人に嫌われるような性格になってしまった。

袴田には袴田律子という娘もいたが、結婚して大阪に移住していた。

袴田は現在、一人暮らしをしていた。

西條は袴田が3日間の休暇をとったことを知り、調査中の袴田を発見した。

西條は袴田が現場のビル付近で何かを発見し、密かに回収するのを目撃した。

西條は袴田の、自分で事件を解決したいという気持ちを理解しつつ、事件に関係する物なら提出を求めた。

袴田が西條に渡したのは、3日前から放置されていた犬の糞だった。

袴田は犬の糞の始末をしない飼い主に憤り、飼い主が野口(吉田義夫さん)という老人であると断定し、野口が現場を目撃しているかもしれないと考えた。

袴田は野口に犬の糞を見せつけ、何度も犬を飼うならば糞の後始末をちゃんとするように注意したはずであると話した。

袴田は野口が8日の夜の午後11時頃、飼い犬のシロを連れて、2丁目の派出所の前を通ったのではないかと指摘した。

野口は他の飼い主が犬を散歩していたかもしれないという理由で、道を通ったことを頑固に認めなかった。

野口は爺さんと呼ばれるのを嫌がり、袴田に同じ爺じゃないかと言ったことで、喧嘩になりそうだったが、西條に仲裁された。

野口は西條から、8日の夜に道を通った際、誰かを目撃しなかったかと尋ねたが、知らないと答えた。

袴田は野口が何かを目撃しているという意見が西條と一致し、西條に自分に任せるように頼んだ。

袴田は西條に、事件が捜査一係の刑事だけで解決すると思っているのかと怒鳴り、捜査一係の刑事が犯人を逮捕し、かっこよく報道されている陰で、制服警察官がどれだけ苦労しているかを考えたことがあるのかと尋ねた。

袴田は何としても井本の仇を取ろうとしていた。

山村は事件から最初から調査し直し、城南署と坂上署で発生した金庫破り事件各3件、七曲署で発生した金庫破り事件各2件、事件発生の直前かあるいは少し前に、必ず水道工事が行われていることを突き止めた。

水道工事の内容は新設修理だった。

工事関係者が事前に犯行の下見をしていたことが推理された。

水道工事を担当したのは高田水道工事店だった。

原は容疑者として、高田水道工事店に勤務する山上信吾(27歳)(鈴木弘道さん)という男を挙げた。

山上は身長170cm前後で、痩せ型であり、犯人のモンタージュの目と似ていた。

藤堂は袴田に山上の写真を見せる担当に、西條を指名した。

西條は袴田宅に入る直前、窓から室内を見て、袴田と律子(水沢有美さん)が口喧嘩をしているのを目撃した。

律子は袴田に、袴田の同期が全員退職していることを説得し、警察官を退職するように促した。

袴田は今日、無理をして発作を起こしており、律子がいなかったら危ない状態だった。

律子は袴田に、夫が袴田のことをいつも気にかけていることから、自分が住む大阪に来て同居するように申し出た。

袴田は今の自分から仕事を取り上げたら何が残るのかということ、頑固者の自分が行けば、律子が苦労を背負い込むということ、律子の夫にも親族がいるということで、律子の頼みを拒否した。

袴田は西條から山上の写真を見せられた直後、犯人が山上であると断定し、律子を突き飛ばして捜査に出掛けようとした。

西條は袴田を制止し、それだけでは決定的証拠にならないこと、1人の人間を逮捕、拘留するためには多数の証拠がいることを説き、これから先が自分達の仕事であるとして、袴田に捜査を任せるように話した。

野口は西條の協力を拒否し、山上の写真を全く見ようとしなかった。

石塚と竹本は山上を張り込んでいた。

野口は自宅の扉を閉め、西條を拒絶した。

岩城は山上が住むアパートの近所の住人から、井本が殺害された日の前日に山上が不在だったことを聞き出した。

山上は井本が殺害された日、午後7時頃にアパートを出発したのが確認されていたが、帰宅時間が不明だった。

西條は野口が本当に何も知らないと思うようになり、袴田の目撃した情報から証拠を固めたかったと吐露した。

石塚は袴田の証言を信用しつつも、西條に、捜査関係者の証言が裁判では信憑性がないと却下される例が多く、袴田の証言だけで今焦って裁判をひっくり返されたら、元も子もないと言い聞かせた。

山上は安い定食を食べ、安い煙草を100円ライターで吸っており、慎ましい生活をしていた。

西條と竹本は山上が勤務を終え、帰宅するまでを尾行していた。

西條は山上を参考人として連行することを意見したが、山村に却下された。

岩城は一係室に、山上が銭湯に出掛けたことを報告していた。

山村は山上が容疑者だとすると仮定すると、強奪した1000万円の使い道が問題点であるとして、捜査員に山上の身辺調査を指示した。

原の捜査で、山上の恋人が、喫茶店「蛮珈」のウェイトレスの三沢紀子(青木純さん)であることが判明した。

山上は1日でも早く結婚し、すぐに独立して自分の店を開業することを心の底から思っていた。

三沢は原に、2月8日の夕方から翌朝までずっと、自宅アパートの「さつき荘」で山上と会っていたことを証言した。

原は三沢の証言が、山上の指示による偽証であることを見抜いていた。

西條はさつき荘の帰り、野口と鉢合わせし、野口に袴田が捜査中に疲労による発作で倒れたことを告げた。

野口は袴田に対し、交番で迷子の世話をしていればいいのに、下手な真似をするからだと愚痴を言った。

西條は野口に、井本が袴田の元同僚であることから、自分でも同じようなことをしたと思うことを伝え、袴田の見舞いに行くように促した。

野口は西條に、写真を見せるように頼み、目撃した男が山上であること、8日の午後12時に山上がひどく慌てた様子でさつき荘に入っていくのを目撃したと証言した。

西條と原は三沢と対面し、三沢の、結婚相手を庇いたいという感情を理解しつつ、殺人者と結婚しても幸せにはなれないと説得した。

山上はマンションの建設現場で同僚とキャッチボールをしていたが、石塚と西條が接近すると、逃走した。

西條は山上を追跡中、袴田と合流し、袴田に抜け道を教えてもらい、山上を神社に追い詰めた。

西條は袴田と一緒に山上を格闘で制圧し、袴田に手錠を掛けさせた。

岩城は山上宅の天井裏から、山上が強奪した1000万円を押収した。

山上は1000万円を独立資金にするつもりであり、ほとんど手を付けていなかった。

袴田は体力の限界を感じ、警察官を退職することを決意していた。

袴田は最初に山上を逮捕し損ねた際と藤田を追跡した際、少し走っただけで息が切れたことから、体力の限界を痛感していたが、井本殺害の真犯人を逮捕するまでは何としても頑張ろうという気になっていた。

袴田は西條に、突き飛ばさなければ乗用車に轢かれて死亡していたことから、西條に感謝し、恩人であると思っていた。

藤堂は一係室に戻った西條に、矢追信用金庫で強盗事件が発生したため、すぐに行くように命令した。

 

 

メモ

*冒頭、一係室でトランプをしているドックとラガー。高笑いしてスリーカードを出すドックだが、あっさりラガーのフルハウスに負けてしまう。

*ドックとラガーのトランプ勝負は、ラガーの成績が23勝7敗らしい。

*「次が最後の勝負」と言ったのにもかかわらず、負けたことを理由に「最高の勝負と言った」と誤魔化してラガーと再度勝負しようとするドック。ラガーに「変なところだけ意地っ張り」と言われる。ラガーは「600秒の賭け」ではロッキーに将棋で勝っていた。

*「リンゴ15」byドック

*袴田による「目しかないモンタージュ」でも、「無いよりはマシ」と言って持って行くジプシー。

*「意地っ張り」同士の、袴田とドックのコンビネーション。

*山上はほとんど台詞がない。

*袴田に「ドッグ」と間違えられまくるドック。しかし、最後の時には修正しなかった。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

松原直子:友直子

袴田伝吉:井上昭文

野口:吉田義夫、袴田律子:水沢有美、山上信吾:鈴木弘道

三沢紀子:青木純、小池幸次、藤田:山本亨、白井権八

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:鈴木一平