第493話「スコッチよ静かに眠れ」(通算第703回目)

放映日:1982/1/29

 

 

ストーリー

滝は入院中、激しい胸の痛みで目を覚まし、医師(渥美国泰さん)の2ヶ月前の診察のことを思い出した。

医師は滝に、以前に胸に受けた傷の奥の部分が化膿しているが、切除してしまえば問題ないと診断していた。

滝は医師に、今すぐに手術するように願い出たが、医師から、無茶を言ってはいけない、手術するにしてもそれ相応の準備が必要で、しばらく入院して様子を見ることと告げられた。

東都銀行矢追支店に強盗犯(小池雄介さん)が強盗に入り、大金を強奪し、警備員に向かって拳銃を乱射した後、赤い乗用車を運転して逃走した。

強盗犯は矢追橋の検問を突破し、西に向かっていた。

石塚と西條、岩城と竹本は山村から無線連絡を受けた後、強盗犯の乗用車を発見して追跡し、挟み撃ちにした。

強盗犯は乗用車から下り、拳銃を構えたが、石塚に拳銃を撃ち落とされ、岩城と竹本に逮捕された。

強盗犯の拳銃はS&Wのマグナムに酷似していたが、鑑定の結果、日本国内のどこかで密造された物と判定されていた。

密造拳銃は銃身に螺旋状の溝まで刻み込まれている精巧な代物で、趣味で製作したものならともかく、これだけ精巧な物となると相当大量生産しないと採算が合わず、同型の拳銃が大量に流出している可能性が濃厚だった。

石塚と岩城は強盗犯を取り調べていた。

強盗犯はサラリーマン金融から強奪した現金で密造拳銃を購入しており、強盗を犯したことを激しく後悔していた。

強盗犯は売人の名前を知らなかったが、強盗犯の証言により、売人の似顔絵が完成した。

西條と石塚は似顔絵を見ても、売人に心当たりがなかった。

岩城と竹本は逃走する男を追跡し、追い詰めた。

男は岩城に拳銃を向けたが、後方から竹本に飛び付かれ、あっさり取り押さえられた。

男の拳銃は安物の改造拳銃だった。

石塚は滝の見舞いに行く途中、花屋の温室でサボテンの鉢植えを見て購入し、滝に差し入れた。

滝は石塚のサボテンを、何より嬉しい贈り物と言って喜んだ。

石塚はサボテンに小さな花の蕾が付いていることを喜び、花が咲くころに滝が退院できればいいと願って、病室を立ち去った。

滝は石塚が去った直後、サボテンの花の蕾を見て、自分の命も花が咲く頃までかと不安な気持ちになり、心の底から死にたくないと思うようになった。

石塚は帰宅中、3発の銃声を聞き、銃声が鳴った現場の路上に駆け寄った。

路上では小島隆夫(46歳)(広田正光さん)という男が胸を銃撃され、死亡していた。

小島は似顔絵の売人と顔が似ていた。

滝が銃声を聞いて、石塚のもとに駆けつけた。

滝は小島のことを知っていた。

強盗犯は小島の前科者カードを見て、自分に拳銃を販売したのが小島であると断定した。

小島は昭和10年(1935年)6月10日生まれで、山田署に在籍していた時の滝に、拳銃密造組織の一員として逮捕されていた。

小島は販売専門のセールスマンであり、出所後、再び拳銃密売の仕事に逆戻りしていた。

石塚は小島が殺害された理由について、仲間割れであれば人目につかない場所で密かに殺害されていることから、購入者とのトラブルが原因ではないかと推測していた。

小島の体内から摘出された銃弾が、密造拳銃の銃弾と一致した。

竹本は捜査が難航していることから、入院中の滝のもとを訪れた。

滝は竹本に、以前には小島と妻同然の関係で、飲み屋を転々としている、緒形澄江(藤江リカさん)という女性を探すように助言した。

山村は飲み屋で勤務中の緒形から話を聞いた。

緒形は現在では小島を快く思っておらず、出所後に自分を訪ねてきた小島を追い返していた。

小島は懲りずにそれでも緒形を訪ねていた。

緒形は小島の拳銃密売のことを知っており、黙認していたが、山村には自分が拳銃密売とは一切無関係であることを強調した。

緒形は小島が殺害された前の日、自分の飲み屋で、小島がどこかに電話していたことを思い出し、山村に話した。

小島はその時、購入者に取引場所を警察病院と指定され、明日の午後10時に時刻を指定していた。

小島は手帳を開き、密造組織に客が1人入ったと電話をしていたが、殺害された時には手帳を所持していなかった。

購入者が小島の手帳を強奪し、密造組織の秘密を掴んだことが推察された。

山村は拳銃の購入者が警察病院を取引場所に指定したことを疑問に思っていた。

野崎は小島が服役していた刑務所を調査し、小島と同じ房にいた井関四郎(野瀬哲男さん)の情報を入手していた。

小島の服役態度は真面目だった。

井関は以前、滝に強盗未遂で逮捕されており、さらに逮捕の際、共犯の弟を滝に射殺されていた。

山村と石塚は滝の生命の危険を感じ、出動した。

井関は矢追警察病院に侵入し、白衣を奪って医師に成り済まし、滝の病室に接近したが、滝に足音で気付かれてしまった。

井関は拳銃を構えて滝の病室に突入し、ベッドに向かって5発発射した。

滝はベッドの下に隠れ、銃弾を回避し、井関が拳銃を撃ち尽くしたのを見計らって、逃走する井関を追跡した。

滝は井関と格闘になったが、井関に患部を強打されて苦しみ、井関を取り逃がしてしまい、直後に吐血した。

山村と石塚が矢追警察病院に急行し、医師から緊急の手当てを受けている滝の姿を見た。

医師は有事に備え、滝の病室を、詰め所に近い211号室に移動させることを決定した。

医師は山村に、滝の病状が、後どこまで持たせるかという末期の状態であること、傷の表面が完全に治癒していたため、本人も気付かなかったことを伝え、あまりにも遅過ぎたと告げた。

石塚は滝のそばにいたが、滝の願いで病室にサボテンの鉢植えを持って行った。

山村は滝が入院していた病室に入り、ベッドの弾痕を確認していたが、そこに石塚が入ってきた。

医師は滝に、安静にしていることが最も大事であると診断していた。

山村は、滝が入院中に耳が敏感になり、足音で井関の奇襲に気付いたが、刑事の本能のままに病気を忘れて井関を追跡したことで、寿命を縮めたのではないかと考えていた。

石塚は山村の発言で、滝が余命僅かであることを察知してしまった。

野崎は滝の見舞いに行き、康江が作った弁当を差し入れた。

戸川組幹部の吉本(新井一夫さん)が子分の組員を引き連れ、カフェ「ベルミネット」を出た直後、乗用車の車内から待ち伏せていた他の暴力団組員に狙撃される事件が発生した。

相手は竜神会か梶田組ではないかと思われた。

石塚は山村に、機動隊の配備で戸川組を完全に封じ込め、身動きを封じたことを連絡した。

負傷者は警察病院に搬送されたが、吉本が肩と腹部に2発被弾して重態になり、チンピラも軽傷を負っていた。

竹本は執刀医(原田千枝子さん?)から、摘出された銃弾を預かった。

吉本と組員から摘出された銃弾は密造拳銃と同一の物だった。

密造拳銃が暴力団にも流出し始めた。

岩城は滝に、密造拳銃のことを心配せず、ゆっくり養生するように勧めた。

滝は吉本が銃撃された事件の拳銃が、小島が販売していたのと同型の拳銃であることを察し、井関を捕まえてさえいれば、拳銃の密造工場を壊滅できたと激しく後悔したが、岩城に励まされた。

滝はサボテンの花がいつ咲くのかを気にしていた。

西條は矢追警察病院の前で、吉本がパトロールカーに乗せられるのを見送った後、滝の命を狙おうとして病院の周辺を張り込んでいた井関を発見し、声を掛けたが、井関に発砲された。

西條は、銃声を聞いて駆けつけた岩城と一緒に覆面車で、乗用車を運転して逃走する井関を追跡した。

井関は逃走中、乗用車の後部を、走行中のダンプカーのフロントバンパーに衝突させつつも、逃げ切った。

西條は井関が予備の銃弾を所持していたことから、小島の手帳を手掛かりに密造組織から銃弾を入手したのではないかと推理した。

滝は井関を逮捕した時のことを思い出していた。

井関と井関の弟は滝と警察官から逃走中、大川町の林に追い詰められた。

井関の弟は接近してくる警察官の足を散弾銃で銃撃し、井関の制止を無視して突撃しようとしたところを滝に射殺されていた。

井関は警察官に身柄を取り押さえられたが、滝に激しい殺意を抱き、恨み言を残した。

山村は藤堂に、滝が今となっては手術も不可能な状態であるが、安静にしていれば今すぐどうということはないということを報告した。

藤堂は滝が病院から脱走したことを知り、捜査員に報告した。

石塚と竹本は滝のマンションに行き、滝が帰宅していないことを知った。

滝は夜の道を歩いていた。

滝が電話ボックスから、一係室の藤堂に電話をかけてきた。

滝は藤堂に、心配をかけたことを謝罪したが、居場所を尋ねられても答えなかった。

滝は藤堂に怒鳴られつつも、自分の最後の願いとして、最後まで刑事でいたい、最後まで藤堂の部下でありたいという思いから、単独行動を許すように懇願し、許可された。

滝は電話ボックスを出た直後、胸の痛みに苦しみながら、道を歩いていった。

藤堂は捜査員に、滝が井関を捕らえ、拳銃密造グループを摘発することに生命を賭けたことを無線連絡し、滝を絶対無駄死にさせないように命令した。

石塚は滝が拳銃を所持していないことを心配した。

朝になり、滝は大川町の林に到着した。

今日は井関の弟の命日だった。

滝は大川町の林の、かつて井関の弟を射殺した場所を訪れ、井関兄弟のことを思い出していたが、背後から忍び寄る井関に足音で気付き、銃撃を回避した。

滝は逃走しながら、井関の2発の発砲を回避し、物陰に隠れた。

石塚と竹本は大川町の林に急行した。

井関は滝に対し、滝がここの林で弟を殺害したから、その命日に弟の魂が滝を呼び出したと大声で叫び、滝を挑発した。

滝は上空に自分のコートを放り投げ、井関の銃口をコートにそらせた隙に、井関の拳銃を蹴り落とした。

滝は井関を格闘で叩きのめした。

滝は井関に密造拳銃の銃口を向け、井関が自分の奇襲に失敗して逃走後に銃弾を補給していることから、拳銃や銃弾を入手できるルートを知っているという推理を突き付け、どこでどうやって入手したのかを詰問した。

滝は全く自白しようとしない井関を見て、井関に、拳銃のシリンダーの中の銃弾が1発であることを見せ、シリンダーを回転させて戻し、ロシアンルーレットを実行した。

井関はロシアンルーレットをされても1発目には動じていなかったが、徐々に動揺が大きくなり、滝が5発目を撃とうとしたところで命乞いをした。

石塚と竹本は林に到着後、井関の悲鳴を聞き、直行した。

滝は井関から拳銃の密造工場を聞き出した後、大量の血を吐き、倒れてしまった。

石塚と竹本は滝と井関を発見した。

滝は息も絶え絶えに、石塚に拳銃の密造工場が2丁目のバー「黒猫」であることを教えた。

石塚は滝が搬送された救急車に同乗し、ハンカチで滝の口に付着していた血を拭いた。

滝は病院の第一処置室に搬送された。

山村と野崎と西條と岩城が警官隊を引き連れ、「黒猫」の地下室に隠されていた密造工場に突入し、構成員(柿木恵至さん、星野晃さん他)を殴り倒して逮捕した。

密造工場には、出荷寸前で箱に詰められていた、大量の密造拳銃が置かれていた。

山村は野崎達に後を任せ、滝の病室に入り、石塚と一緒に滝を見舞った。

山村は滝に事件を解決させたことを告げ、藤堂がもうすぐ病室に来ると言って励ました。

石塚は滝に、サボテンを見せ、もうすぐ花が咲くと言って元気付けた。

滝は「死にたくない」と言い残し、息を引き取った。

藤堂と直子、野崎と西條と岩城と竹本は滝が死亡したことを知った。

 

 

メモ

*登場時にはそれまでにいないキャラクターで番組に新風を巻き起こし、復帰後にはコミカルさも加えつつ安定感と貫禄が増していたスコッチの殉職編。

*スコッチの死はレギュラー刑事の死因では唯一の「病死」となった。それもあってか、ストーリーにはずっと緊迫感と悲壮感が漂う。

*「スコッチ・イン・沖縄」から、細部を変えて使用され続けていたOPも今回が最後となり、次回からタイトルバックが一新される。石原氏が病気で欠場していなければ、ラガーの着任時に一新されていたのかもしれない。

*沖氏は以前と比べてかなり太っていた(むくんでいる?)が、台詞回しについては以前と全く変わらないように思える。

*沖氏は今回放送のわずか1年5ヶ月後に死去… 非常に辛い。

*スコッチと井関の因縁の場所は「砧公園」(劇中では大川町の林と呼ばれている)。偶然にも「さらば、スコッチ!」でスコッチが回想シーンで元恋人とデートしていた場所でもある…

*長期にわたって入院していたことにより、足音で知っている人間については見分けることができるようになったスコッチ。

*ボスとドックは石原氏と神田氏のスケジュールの影響なのか、スコッチとの共演シーンがなかった。そのため、石原氏は「ボス、俺が行きます!」、神田氏は「ラガー刑事登場!」が『太陽』における沖氏との最後の共演となった。

*病気見舞いに鉢植えの花は縁起が良くないというのは、「オリの中の刑事」でも言われていた。

*数少ない、スコッチとラガーの共演。今回は病室のシーンと林のシーンで2回共演があった。

*長さんがスコッチに、康江が作った弁当を差し入れるシーンが非常に微笑ましい。

*康江は今も、自宅に遊びに来たロッキー達に食事を振る舞っているらしい。

*ラガーが疾走するシーンは表情が違うカットが、次回の「ジプシー刑事登場!」のOPのハイライトに挿入されている。

*お馴染みの茶色の三菱ふそうのダンプカーが今回も登場。

*スコッチの私室が映る際、ティーカップが映るのが粋な演出。

*「スコッチ刑事登場!」の回想シーンが挿入される。この時には既にいなくなっている殿下、ボン、アッコが懐かしい。

*スコッチが井関を叩きのめすシーンは非常に迫力と躍動感がある。

*スコッチはどうしても自白しようとしない井関のため、「ロシアンルーレット」を実行。格好良過ぎるが、弾が出て井関が死亡したら終わりだったので、ギリギリの賭けだった。「刑事はもうすぐ廃業だ」という台詞が渋い。

*スコッチの大量の吐血はかなりインパクトがあり、表情が怖い。

*ゴリさんから見せられたサボテンを手に取ることができず、「死にたくない」と言い残して死亡するスコッチ。口の震えが物凄くリアル。

*今回の後、スコッチが劇中で触れられるのは、「殉職刑事たちよ やすらかに」までお預けとなる。最終回「そして又、ボスと共に」ではボスが容疑者に取り調べるシーンでスコッチのことを話しているが、死亡した原因が違っている(ボスの発言ではスコッチは撃たれて吐血したことになっているが、実際には撃たれていない)。

*OPのハイライトには、未使用カットと思われるカットが複数挿入されている。

*かつて地方局で『太陽』が最終回まで再放送された時、ジプシーの登場している話が全て放送されなかったようで、今回の次に「マミー刑事登場!」が放送されたという。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

竹本淳二:渡辺徹

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子

井関四郎:野瀬哲男

矢追警察病院医師:渥美国泰

緒形澄江:藤江リカ、小島隆夫:広田正光、矢追警察病院の執刀医:原田千枝子、銀行強盗犯:小池雄介

高橋ゆかり、大木裕司、伊沢勉、藤田康之、石崎洋光

ノンクレジット 吉本:新井一夫、拳銃密造組織構成員:柿木恵至、拳銃密造組織構成員:星野晃

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:竹林進