第487話「ケガの功名」(通算第697回目)

放映日:1981/12/11

 

 

ストーリー

午後5時前、山村と西條は一係室で平和な時間を過ごしていた。

その時、竹本宛に山崎内科クリニックから電話が入っていた。

遅れて入ってきた竹本は杉田恵子という女性に会ってほしいと頼まれたので、今夜に待ち合わせの約束をして、西條から金を借りた。

竹本はカフェ「ブティック」で杉田(早乙女愛さん)と会っていた。

杉田の兄は海外出張中で、最初には1年で帰国する予定だったが、実際には出張してから3年が経過しており、また1年帰国が順延していた。

竹本は杉田の兄から、杉田に悪い男が付かないか監督するように頼まれていた。

杉田は薬指にルビーの指輪をはめており、竹本にそれが本物であると言い、婚約者から贈られたことを報告した。

3人組の強盗犯がトラックで、山崎内科クリニックが7階にあるビルに駆けつけた。

同じビルの3階にある共和ローンズの警備室で、警備員の大島(市川好朗さん)は同僚の警備員の井上(村上幹夫さん)と将棋をしていたが、不審な物音を聞いた。

その直後、3人組の強盗犯が警備員室に侵入した。

井上は警報装置を鳴らそうとしたが、強盗犯の主犯格にサイレンサー付きの拳銃で腹部を銃撃され、強盗犯の共犯に蹴り倒された。

大島は主犯に飛び付き、上着の袖をまくった際、腕の傷跡に見覚えがあったが、強盗犯の共犯に鞄で後頭部を殴られ、昏倒した。

強盗犯は共和ローンズの事務室に侵入し、金庫を時限爆弾で爆破した。

七曲署捜査一係が現場に駆けつけ、捜査を開始した。

大島は野崎に、強盗犯が3人で、ストッキングを顔に被っていたため、顔を判別できなかったことを証言した。

時限爆弾はプラスチック爆弾で、必要最小限の爆弾で金庫を破壊していることから、専門家の手口と推測された。

強盗犯は正確に、現金が最も入っている金庫を狙っていた。

石塚は犯行が、他の署の管内を荒らし回っているビル荒らしグループの仕業であると判断した。

山村は岩城と竹本に聞き込みを、石塚に本庁に行き、他の管内のデータの調査を指示した。

入院中の井上は野崎に、大島が犯人のことを知っているような気がすることを話した。

大島は野崎に、井上を銃撃した犯人の腕に長細い傷跡を見たこと、傷跡に見覚えがあることを述べた。

ビル荒らしグループの主犯格が使用した拳銃は32口径だが、前科が無かった。

裏のビルの管理人はビルの裏に停まっていた、ビル荒らしグループの幌付きトラックを目撃しており、何とか運送と書かれていたことを西條に証言した。

過去半年間、運送店から幌付きトラックが強奪されたという届が3件提出されていた。

山村は西條と竹本にトラックの線を、野崎に大島の記憶の洗い直しを、石塚と岩城に共和ローンズの関係者の徹底的な調査を命令した。

山村はビル荒らしグループが犯行の前に必ず事前調査をしているものと考えていた。

野崎は大島と面会し、記憶の洗い直しをしていた。

大島はサウナには高価を理由に行っておらず、傷跡を見たのは最近ではないと思うようになっていた。

竹本は西條に、杉田が高等学校時代に世話になった先輩の妹であること、外国に転勤になった杉田の兄から、留守中に杉田を監督するように依頼されていたこと、昨日に会った時には大きなルビーの指輪を付けていたことを打ち明けた。

西條は竹本が杉田の婚約者の職業を知らないことを聞くと、ビル荒らしグループが青山の宝石店を襲撃した犯人と同一犯であることから、ビルで勤務している女性に接近して現場の下見をさせることも可能ではないかということを思い付いた。

竹本は共和ローンズのビルの7階に山崎内科クリニックがあることを思い出し、山崎内科クリニックに急行し、杉田から話を聞いた。

杉田はこのビルで事件が発生したことを知り、驚愕していた。

杉田は勤務中にはルビーの指輪を外しており、竹本に今日会うように頼まれたが、婚約者とデートをすることを理由に断った。

杉田は勤務を終えた後、バーで婚約者の坂井康夫(本郷直樹さん)と会った。

西條と竹本は杉田と坂井を張り込んでいた。

坂井と杉田の出会いの経緯は、坂井が1ヶ月前、街を歩いている時に痙攣を起こし、飛び込んだ病院が山崎内科クリニックだったからであった。

坂井は右腕の、ビル荒らしグループの主犯格と同じ位置を負傷しており、包帯で巻いていた。

坂井は職業不明だった。

西條と竹本は坂井を徹底的に調査することにした。

今年(1981年)の6月に発生したビル荒らし事件で、青山の宝石店から強奪されたルビーの指輪は、ビルマ産ルビーのオーバルミックスカット、ダイヤ1.04カラットであり、杉田が付けていたルビーの指輪と酷似していた。

竹本は坂井が強盗犯だと判明した場合に、杉田が傷付くことを激しく心配していた。

杉田は坂井が運転する乗用車で、自宅アパートに送迎してもらったが、竹本が自宅の前に待機していた。

竹本は杉田にルビーの指輪を見せてもらい、坂井を信用しているのかどうかを尋ねた。

杉田は坂井の兄が宝石の輸入業をしており、現に今もサファイアの仕入れで南米のコロンビアに出張していることを告げた。

竹本は、坂井が杉田と出会ってたった1ヶ月なのに、300万円のルビーの指輪を贈ったことを不審に思い、指摘した。

杉田は坂井を信用しており、坂井を疑う竹本に対し、不快な態度を露わにした。

杉田は銀行で現金を下ろし、喫茶店で坂井に手渡したが、西條と竹本に見られていた。

坂井はマンションの405号室に住んでいた。

マンションの管理人(中島元さん)は西條と竹本に、坂井宅に女性の出入りが全くないこと、坂井が見掛けの割には真面目で、誰も部屋に出入りしないことを教えた。

管理人は坂井が3日前に部屋にいたかを記憶していなかった。

ビル荒らしグループの幌付きトラックが発見され、車内からはメンバーが覆面に使用していたストッキングも発見された。

トラックの指紋は完全に拭き取られていた。

野崎は大島に付き添い、おでん屋の屋台で一緒に酒を飲んでいた。

大島は屋台の主人(三重街恒二さん?)の左腕に細長い傷があるのを見て、反応を示した後、明日から仕事に出るという理由で退席した。

大島は記憶を思い出すことがもう不可能であると思い込んでいた。

岩城は坂井が犯人だった場合、普段には包帯で隠している傷跡をなぜ犯行の時に隠していなかったのかを指摘した。

現時点では、ルビーの指輪を取り上げて鑑定するか、坂井の包帯を剥がすことが不可能だった。

山村は、以前の事件で被害に遭った宝石店の店員の浜田広子に、坂井を面通しさせることを提案した。

浜田は事件後、宝石店にいづらくなったことから、店を退職し、アパートを引っ越していたが、新宿でホステスをしているという噂があった。

山村は石塚に浜田の捜索を、西條と岩城に、竹本の応援を要請した。

杉田は坂井と一緒にディスコで踊っていたが、張り込み中の竹本に気付き、二度と尾行しないように警告した。

杉田は坂井の乗用車に乗る際、坂井に竹本が刑事であることを告げた。

坂井は杉田を自宅アパートまで送迎し、走り去った。

西條は坂井の乗用車を尾行し、杉田が帰宅したことを確認した。

別の日の夜、坂井は乗用車でアパートの11号室の杉田宅を張り込み、杉田が消灯し、就寝したことを確認すると、杉田宅の扉をピッキングで開錠し、侵入した。

坂井は就寝中の杉田の顔に、クロロホルムを染み込ませたハンカチーフを当て、眠らせた。

坂井は部屋の照明を点灯し、室内を探し回った後、杉田のルビーの指輪を回収し、部屋を立ち去った。

西條と竹本は山崎内科クリニックの看護婦から、今まで一度も無断欠勤をしていない杉田がまだ出勤していないことを知った。

西條と竹本は杉田宅を訪れ、杉田を起こした。

杉田はもうすぐ昼にもかかわらず、早朝と勘違いしていた。

杉田は西條と竹本から、ルビーの指輪の提出を求められ、室内を捜索し、ルビーの指輪が無くなっていることに気付き、慌てた。

西條は室内からクロロホルムの匂いを嗅ぎ、鑑識を招集した。

西條と竹本は杉田を連れて坂井のマンションに急行し、杉田に坂井宅に行くように指示した。

坂井はアタッシェケースに荷物を詰めていたが、突然の杉田の来訪に驚愕しつつも、杉田を招き入れた。

坂井は杉田に、兄からの電話で急に南米に行かなければならなくなったこと、3ヶ月もすれば大量の土産を買って帰国することを告げた。

坂井は杉田が自宅を突き止めた理由をかなり気にしていた。

杉田は坂井に、指輪を持って行った理由を質問し、坂井に眠らされた時に半分目が覚めていたこと、看護婦だからクロロホルムの匂いを判別できることを伝えた。

坂井はあくまで何も知らないと惚け続けたが、杉田に茶を淹れようと棚を開けた際、クロロホルムが入った瓶を取り出し、布に染み込ませた。

杉田は坂井の無実を信じていたが、坂井にクロロホルムの布を顔面に当てられそうになった。

西條と竹本がテラスから坂井宅の窓に侵入し、坂井を叩きのめし、傷害未遂並びに暴力現行犯で逮捕した。

西條は坂井のアタッシェケースを開け、小袋に入っていた杉田のルビーの指輪を回収した。

坂井は傷について、火傷であると言い張った。

大島は取り調べ中の坂井を見て、犯人と似ていると野崎に証言したが、以前にどこで会ったかについては思い出せなかった。

しかし、浜田(藤悦子さん)は坂井と一度も会ったことがないと述べた。

坂井の傷は火傷であることが断定され、それ以前には何の傷もなかった。

坂井は偽名で、本名を坂田康弘(29歳)といい、結婚詐欺容疑で神奈川県警に指名手配されていた。

坂田が所持していた宝石は全て模造品であり、杉田に贈った宝石も偽物だった。

野崎は大島が犯人を確実に知っていると直感し、大島の経歴を詳しく調査し、栄総合警備を訪れ、大島と面会した。

大島は履歴書に、昭和51年(1976年)から53年(1978年)にかけて、目黒区の材木問屋に勤務していたと記載していたが、虚偽であり、その間には傷害致死罪で西東京刑務所に服役していた。

大島はいつか露見することを覚悟しており、自分の責任であることを感じていた。

野崎は前科者の再就職の難しさを痛感しており、あくまで目的がビル荒らしの犯人の手掛かりであり、大島の過去を暴くつもりではないことを訴えた。

大島は刑務所内で犯人の傷跡を見ていたが、会話をしたことが無く、名前も知らなかった。

ビル荒らしグループの主犯格は友田健夫(35歳)(関戸純さん)であり、強盗殺人罪で懲役5年8ヶ月の刑を受け、去年(1980年)末に出所していた。

大島は服役中、同じ作業場で約3ヶ月間、友田と一緒に作業していた。

友田は現在、橘町4丁目の自動車修理工場で勤務していた。

野崎と石塚と西條と竹本は自動車修理工場で岩城と合流し、友田の共犯3名を逮捕した。

友田は捜査員に包囲されるが、拳銃を発砲して抵抗した。

友田は自分を追跡する竹本に銃口を向け、射殺しようとしたが、西條に拳銃を撃ち落とされ、竹本との格闘の末に逮捕された。

杉田は今夜に出発する夜行列車で、北海道の実家に帰郷することを決意していた。

 

 

メモ

*「何もないかクリニック」byドック

*ラガーに金を貸すように頼まれ、紙幣(500円か1000円?)を渡そうとするが、ラガーに財布から1万円を強引に抜き取られてしまうドック。

*そして、今朝に山さんに金を借りたばかりなのに、もう1万円借りる羽目になるドック。

*「ブティック」という店名の、ややこしい名前のカフェ。

*ドックに(坂井が二枚目であることの対比に)「三枚目」と呼ばれるラガー。

*ドックに、自分と杉田のコーヒー代の支払いを任せるラガー。

*ラガーと杉田の話と、ビル荒らしグループの結び付け方が上手い。

*坂井(坂田)のクロロホルムの瓶には、分かりやすく赤い文字で髑髏の絵と、「クロロホルム」という字が書かれている。

*結局、今回の2つの事件は同じビルが関係していること以外、無関係だった。

*この時期(ラガー登場編)では、インベーダーゲームのようなブリッジBGMが流れることが多い。

*ラスト、ドックに1杯おごるように頼むラガー。しかし、1万円を返すように迫られる。

*そして、ドックに2万円を返すように言う山さん。

*今回は「偽証」以来、4年ぶりの鴨井氏の脚本。しかし、次回はその4年後の「美しき花の誘惑」までお預けになる。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

岩城創:木之元亮

竹本淳二:渡辺徹

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子

杉田恵子:早乙女愛

坂井康夫(坂田康弘):本郷直樹

大島:市川好朗、友田健夫:関戸純、浜田広子:藤悦子、井上:村上幹夫

おでん屋台の主人?:三重街恒二、林弘造、マンション管理人:中島元、谷村慶子、直井ひろか

ノンクレジット 医師:大矢兼臣

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:鴨井達比古、小川英

監督:鈴木一平