第475話「さらば! スニーカー」(通算第685回目)

放映日:1981/9/18

 

 

ストーリー

西條と五代は張り込みをしていた。

早苗(山下幹子さん)は「海の牧場」を手伝うため、沖縄に帰りたがっていたが、五代に、子供だから一人で生活することが無理と言われ、反対されていた。

早苗は勤務中、有田信之(倉地雄平さん)という男から電話を受け、五代がなかなか納得してくれないことを話した。

西條は五代から早苗のことを聞き、美しき郷土愛と褒め称えた。

五代は早苗が東京の生活に慣れてきたのに、突然に海の牧場の話をしたことを疑問に思っていた。

西條と五代は仲本良男(大木正司さん)に、1丁目のサラリーマン金融で強盗傷害事件が発生した昨日の午後2時に何をしていたのかを質問した。

仲本はナイフを取り出したが、五代に蹴り飛ばされ、逮捕された。

仲本の鞄から、強奪された札束が発見された。

仲本は借金のため、覆面をして、自分自身が借りに行ったサラリーマン金融に強盗に入っていた。

事件ではサラリーマン金融の部長が刺されていたが、生命に別状が無かった。

野崎と五代は仲本を取り調べていた。

仲本は死亡した夫人の病気のために、借金をしていた。

野崎と五代は仲本に、立派に更生するように促した。

仲本は福島の出身で、父親の代から硫黄鉱山で勤務していたが、自動車の排気ガス規制の副産物と言われ、硫黄が取れなくなり、鉱山が潰れていた。

仲本は自分に故郷も帰る場所もないと嘆いた。

五代は自宅のすみれハウスに帰宅したが、自宅の中では早苗が今里幸子(水沢有美さん)と有田と一緒に談笑していた。

今里は幸子の同級生であり、レストランで勤務していた。

有田は今里の婚約者で、海の牧場計画に早苗を引っ張り込んでいた。

有田は五代に納得してもらうために、五代宅を訪れていた。

石塚は西條から海の牧場の話を聞き、関心を抱いていた。

五代は早苗に対し、有田が認める通り、資金も研究員も不足していることから、ないない尽くしでうまくいくのかと思い、心配していた。

早苗は難しいのを覚悟の上で、自分の故郷である沖縄のために「海の牧場」を手伝うことを強く志願していた。

今里と有田は今日、早苗は今月末に沖縄に帰ることになっていた。

五代は早苗の頼みを承諾し、帰りたくなったら帰って来いと激励した。

翌朝、早苗は今里と有田を送迎するため、一緒のバスに乗っていた。

早苗は自宅に、五代に感謝するという内容の書き置きを残していた。

倉田勇(酒井昭さん)という男がブザーを鳴らし、バスを降りようとした直前、最初に後部座席に向かって32口径の拳銃を発砲し、有田に命中させた。

倉田はその直後、拳銃を4発乱射し、逃走した。

その4発の中の2発が、乗客で短大生の大友弘子(19歳)と、早苗に命中した。

五代は早苗が入院している病院に急行し、石塚と今里と合流した。

早苗は胸を撃たれ、重態であり、302号室に入院していた。

有田は即死してしまった。

早苗は五代と対面した後、「お兄ちゃん、いちゃびら」と言い残し、息を引き取ってしまった。

捜査員は無線連絡で早苗の死を知った。

五代宅で早苗の通夜が執り行われ、五代と今里が参列した。

今里は明日、有田と早苗の遺骨を持って、沖縄に帰り、海の牧場の仕事を続行することを決意していた。

五代は早苗が自分のことを真剣な目で見たのは初めてだったため、沖縄に帰してやれなかったことを悔やんだ。

午後9時、石塚と西條と岩城はすみれハウスを訪れ、仕事の合間に早苗の通夜に参列しようとしたが、通夜の参列者(永谷悟一さん)から、通夜が終了したことを告げられた。

通夜が終了した理由は、五代が、明日の告別式には戻ってくると言い残し、出て行ってしまったからだった。

五代は犯人の逮捕に執念を激しく燃やしていた。

西條は五代が犯人を射殺するのではないかということを恐れた。

石塚と西條はバスの運転手(青柳文太郎さん)から、五代がバスの中を徹底的に調査していたことを聞き出した。

大友は今朝も意識不明が続いていた。

バスの運転手と数人の乗客の証言で、倉田のモンタージュが完成した。

倉田は20代で痩せており、サングラスをかけていて、紺系統のブレザーを着用しており、学生っぽかったという証言もあった。

発射された銃弾には線条痕がなく、改造拳銃であると推定された。

岩城は事件について、無差別に拳銃を発砲したことから、通り魔事件であると意見し、覚醒剤中毒者のマークも必要ではないかと訴えた。

山村は倉田が後部座席に向かって発砲し、1発で有田を射殺させていること、乗客が騒ぎ出すのと同時に続けざまに4発発砲し、大友と早苗に重傷を負わせていることから、後の4発が威嚇のための乱射で、倉田の目的が有田の殺害だったのではないかと推理した。

有田がこのバスに乗るのを知っていたのは、今里と五代兄妹だけだった。

山村は倉田の拳銃が改造拳銃で、命中精度が粗悪なことから、最初の1発が標的に命中しなかったのではないかということ、標的の人間に命中したのを見て逃走したのではないかと考察した。

山村は捜査員に、改造拳銃ルートの追求と異常者のチェックと並行し、大友と早苗の周辺捜査を命令した。

約半年前、七曲署が拳銃の一斉摘発を行った際、野崎は改造拳銃を担当していたが、疑いながらも証拠を掴めなかった相手が複数人おり、山村にその者のマークを最優先するように申請した。

野崎が改造拳銃の捜査を担当した際の相棒は五代だった。

山村は石塚に、野崎を手伝うように指令した。

五代はゲームセンターで射的ゲームに興じていた若者2人に、職務質問を行い、断られると格闘で叩きのめした。

若者は野崎に、改造拳銃を作っていないこと、昔に玩具のような物を作ったが、すぐに壊してしまったことを訴えた。

岩城はパブ「ビッグベン」に急行したが、店内ではマスター(若尾義昭さん)が五代によって痛め付けられ、拘束されていた。

岩城は床に落ちていた覚醒剤を回収した。

五代が「ビッグベン」を調査するように、110番通報していた。

石塚と西條は、子分が数千人いる竜神会本部の前に赴き、中から物音を聞いたことから、本部に入った。

本部の中では、五代が令状なしに家宅捜索をしていた。

竜神会幹部(木原正二郎さん)は五代に、組員を押さえるのにも限度があることから、早く帰るように促した。

幹部が激情し、組員に五代を襲撃させようとした寸前に、石塚と西條が本部の中に突入した。

五代は机の中から38口径の改造拳銃2丁を発見した。

組員の1人(永井政春さん)が、改造拳銃をつい高値で売れたことから製造していたことを自供し、石塚と西條に逮捕された。

石塚は組員の逮捕後も家宅捜査を続行しようとする五代を、強引に竜神会から連れ出した。

石塚は早苗の告別式の会場で五代を降車させ、人を弔う心のない者に捜査ができないと突き放し、五代に早苗を弔うように言い残して走り去った。

山村と直子は早苗の告別式に出席した。

五代は犯人を憎む一心で、告別式に出席せず、会場を立ち去った。

山村は、五代を心配する直子に、五代が刑事であると諭した。

滝は医師から、大友が死亡したことを告げられた。

大友の同級生の秋山光子が七曲署を訪れていた。

秋山は新聞のモンタージュを見て、山村と野崎に、倉田が大友に執拗に付きまとっていた男に似ていると証言した。

倉田は大友と町で知り合い、2度ほど茶を飲んだだけだったが、その後に学校や家の周辺をうろついていた。

倉田は1ヶ月前に大友に交際を断られた後、ただひたすら大友の周辺をうろうろするばかりで、大友に声をかけることもできなかった。

倉田は大友を独占するために、大友を殺害していた。

山村は捜査員に、大友が通っていた短期大学がある代々木を中心に、大友が常連の店を調査するように命じた。

五代は中華服の情報屋(江幡高志さん)から、男が売人に、32口径の銃弾だけ欲しいと言って、拳銃を購入したという情報を入手した。

五代は売人を詰問し、拳銃を販売した相手が、高山町102番地のアパート「弥生荘」に住む予備校生の倉田勇であることを聞き出し、逮捕して吉野巡査(横谷雄二さん)に身柄を引き渡した。

吉野は一係室の山村に、容疑者が倉田であることと、五代が自分の拳銃を強引に持って行ったことを報告した。

吉野は五代の後を追い、弥生荘の前で五代を発見した。

吉野は五代に、射殺に猛反対したが、大声を出してしまい、弥生荘の中にいた倉田に気付かれてしまった。

吉野は五代と一緒に倉田を追跡し、倉田の射殺を制止しようとしたが、倉田に右足を撃たれてしまった。

滝と岩城が現場に駆けつけた。

倉田は逃走し、石油タンクの階段を登っていった。

野崎、石塚と西條も滝と岩城と五代と合流した。

石塚と西條は五代に、倉田が上っていったタンクの中に、ガソリン600キロリットルが入っていることを告げ、引火すると数千人が確実に死亡することを呼び掛けた。

五代は石塚から、倉田が大友にふられて逆上しただけであると伝えられたが、石塚の制止を無視して、石油タンクの階段を上った。

石塚は山村が五代を信じたことから、自分も信じることにした。

警官隊がライフルを携え、現場に到着した。

倉田はタンクの中身を確認した後、拳銃を乱射した。

五代は階段を上っていった際、倉田の銃撃で左腕を負傷した。

五代は流血し、倉田に銃口を向けながらも、倉田に接近していった。

石塚は警官隊からライフルを受け取り、石油タンクの隣のビルに駆け上り、狙撃の準備を整えた。

倉田は観念して拳銃を放り投げ、大友と付き合いたかったが、大友に嫌がられて犯行に及んだことを自白し、殺害しないように懇願した。

五代は倉田に拳銃を突き付けたが、拳銃をしまい、倉田を連行した。

西條と岩城は倉田を追い詰めながらも、一人も犠牲者を出さなかった五代を、署長賞どころか総監賞ものであると称賛した。

五代は沖縄に帰郷するため、山村に辞表を提出した。

五代は、故郷の沖縄のために働きたいという早苗の遺志を受け継ぎたかった。

山村は五代の思いを強く尊重した。

 

 

メモ

*スニーカーが退職。新人刑事としては初めて、殉職ではなく退職という形での退場となった。また、初めてボスがいない中での退場となった。

*スニーカー、今回の事件で唯一の肉親の早苗を亡くし、天涯孤独の身に…

*最後の登場であるためか、早苗の台詞がいつもより多い。

*「海の牧場」とは、魚の乱獲や汚染から海を守り、研究開発した新しい種類の魚を放し飼いにするというもので、繁殖力が強ければ有力な産業にもなるとのこと。

*「いちゃびら」とは、沖縄方言で「さよなら」のこと。

*退職編だが、殉職編に匹敵する悲壮感と緊迫感の漂う作品。

*スニーカーの貴重な背広姿。

*出演はワンシーンのみだが、強烈な印象を残す情報屋。

*今まで「やさしい棘」と「紙飛行機」と「スニーカーよ、どこへゆく」で辞表を提出しては保留となっていたスニーカーだったが、遂に受理されることとなった。

*ラスト、「スニーカー刑事登場!」、「東京大追跡」、「引金に指はかけない」の回想シーンが挿入され、道を歩くスニーカーが映されて終了した。

*その後、スニーカーは次回の「ラガー刑事登場!」と、「帰って来たボス -クリスマスプレゼント-」に再登場した。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子、吉野巡査:横谷雄二、五代早苗:山下幹子

今里幸子:水沢有美、中華服の情報屋:江幡高志、倉田勇:酒井昭

仲本良男:大木正司、竜神会組長:木原正二郎、有田信之:倉地雄平(現:倉知成満)、竜神会組員:永井政春

「ビッグベン」マスター:若尾義昭、通夜の参列者:永谷悟一、バス運転手:青柳文太郎、見城貴信、大木裕司

宮田光、宇乃壬麻、大上あずさ、栃原真美、山崎康雄

ノンクレジット 竜神会組員:星野晃

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

撮影協力:ダイヤ物産株式会社

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:山本迪夫