第471話「山さんに任せろ!」(通算第681回目)

放映日:1981/8/21

 

 

ストーリー

川上商事の川上社長(久遠利三さん)は倉山クレー射撃場でクレー射撃をした後、乗用車「品川56 て 42-13」で帰宅しようとしたが、乗用車の後部座席にクレー射撃用の散弾銃と実弾1ケースを置いた直後、電話で呼び出された。

電話は川上が出た直後、一言も話さずに切れてしまった。

川上が電話に出ている隙に、謎の男が川上の乗用車を運転し、逃走した。

事件は電話をかけた者と乗用車を強奪した者の2人以上の計画的犯行だった。

犯人は乗用車のナンバープレートを「品川56 ほ 26-33」の偽物に貼り替えていた。

2人組の犯人は、矢追町3丁目の太平銀行矢追支店に強盗に入り、大金を強奪した。

強盗の1人は散弾銃を所持しており、自分を追跡していた警備員や職員に向けて発砲したが、見当違いの方向にある看板に命中していた。

2人組の強盗犯は乗用車に乗り、逃走した。

被害金額は380万円で、負傷者が幸いにも出なかった。

強盗犯は2人とも覆面の上にストッキングを被っていたため、人相の特定が不可能だった。

強盗犯の1人は身長180cmで若そうだったが、もう1人は中肉中背で動作がもたついていたことから、意外と中年の可能性があった。

石塚は銃弾が見当違いの方向に命中していることから、強盗犯がド素人であると判断した。

滝と岩城は、太平銀行矢追支店から3kmの距離にあるレストラン「シークック」の駐車場で、強盗犯の乗用車を発見し、山村に報告した。

強盗犯の乗用車は左のフェンダーが凹んでおり、川上の乗用車と一致した。

車内からは遺留品も指紋も検出されなかった。

クレー射撃場の事務員は犯人からの電話を受けた際、声が若くなかったことを証言していた。

山村と滝と岩城は、強盗犯が危険な手段をとって、銃と乗用車を強奪したのに、380万円しか強奪できなかったことから、犯行を重ねる可能性を危惧した。

2人組の強盗犯は、城北署管内にある矢追銀行城北支店に強盗に入り、1200万円を強奪後、ライトバンで逃走した。

山村は城北署の捜査係長(大矢兼臣さん)と会っていた。

城北署捜査係長は山村から提供資料を提供されつつも、七曲署の捜査をまるで信用していなかった。

2人組の強盗犯は続いて、南町の銀行に強盗に入った。

強盗の1人は行員の1人が警報ベルを押そうとしているのを発見し、行員に向けて散弾銃を発砲した。

山村は銀行に急行した際、城南署の捜査係長(外山高士さん)から、七曲署の捜査がもたついたせいで負傷者が出てしまったと糾弾された。

警視庁第4方面管理官の大沢秀雄(神山繁さん)が七曲署を訪れ、一係室に入った。

大沢の任務は金融機関連続強盗事件の捜査に携わる各省の連絡、捜査方針の統一を図ることであり、第1事件の現場を抱える七曲署に特に重点を置いていた。

大沢は捜査員に、今回の事件においては、七曲署の初動捜査を非難するミスが各方面より上がっていることを告げた。

大沢は七曲署の捜査責任者の藤堂が長期にわたって不在であることについて、指揮官のいない軍隊が必ず敗れると厳しく批判した。

野崎は大沢に、藤堂が不在でも山村の指揮のもとに一致団結していると意見したが、馴れ合いと一致団結とはわけが違うと返されてしまった。

大沢は自分が捜査の指揮を執ることを決めた。

野崎は山村に、余計な意見を言ったばかりに大沢を意固地にさせてしまったと思い、謝罪した。

大沢は捜査員に、城南署や城北署に比べて、捜査が手ぬるすぎると怒鳴った。

山村は大沢に、証拠もないのに連行することができないと異議を申し立てたが、強盗犯が実弾入りの散弾銃を所持している以上、第4、第5の犯行を阻止するため、多少の行きすぎがあろうと、怪しい人間を徹底的に取り調べるのが当然であると命令された。

石塚と五代は野崎からの無線連絡、城北署が容疑者の1人を逮捕したことを知った。

しかし、その容疑者は事件とは無関係で、犯人ではなかった。

第1の事件から2週間が経過していたが、未だに手掛かりが掴めていなかった。

強盗犯は最初の5日間に立て続けに3軒の銀行を襲撃した後、行方をくらましていた。

山村は強盗犯の目的が遊ぶ金欲しさではないものと推理していた。

滝は強盗犯が第1の犯行から4日後に第2の犯行を実行し、さらにその翌日に第3の犯行を実行していること、遊び目当てであれば、強奪した金で使い切った後で犯行を実行するのではないかということから、山村の推理に同感した。

強奪した合計金額は約2500万円だった。

山村は強盗犯が借金返済などを理由に、3日間のうちに2500万円を揃える必要があったのではないかと推察し、結論付けた。

滝は西條を、吉井自動車修理工場に連れて行った。

修理工場の社長の吉井健造(広田正光さん)は仕事を趣味のようにしていたが、金勘定についてはさっぱりで、経営不振に陥っていた。

吉井は銀行からは見放され、サラリーマン金融からも借金を断られていた。

吉井は独身で、親しい友人もおらず、若い男の知り合いもいなかった。

吉井自動車修理工場の工員(菅野直行さん他)は2人とも小柄だった。

岩城は川上が吉井自動車修理工場で乗用車の整備をしていることを突き止め、山村に報告した。

吉井自動車修理工場は小さな町工場だったが、仕事が丁寧だったため、川上が気に入り、修理を依頼していた。

西條と岩城と五代は山村に吉井の逮捕を申請したが、大沢の判断を待ってからという理由で反対された。

大沢は城北署の誤認逮捕から慎重になっており、吉井の逮捕の申請を許可しなかった。

山村は物証も共犯者も突き止めていないことから、24時間体制で吉井の行動を監視することを決定し、捜査員に命令した。

石塚と五代は吉井を張り込んでいた。

五代は大沢が自分達を無能扱いしていること、山村が黙って大沢に従っていることに苛立っていた。

石塚は五代に、山村が藤堂の代行をしており、どんな小さなミスも藤堂の責任につながることを言い聞かせた。

石塚は自分を押し殺して済むことなら、山村がどんなことにも耐えるが、それでは済まない事態が起きた場合のこと、山村自身が決断を迫られる事態になることを危惧していた。

山村は犯人を吉井と断定していたが、吉井に金を貸した者、共犯と吉井の関係、銃の隠し場所の3点を疑問に思っていた。

山村は吉井に金を貸したのが江尻ではないかと考え、江尻宅を訪れ、江尻(野口元夫さん)と対面した。

江尻は金貸しをとっくの昔に廃業したと語り、吉井についても知らないと話した。

岩城と五代は吉井を張り込んでいたが、定時になっても自動車修理工場が営業していなかった。

吉井は外出し、上野浩一(村上弘明さん)と密会をしていた。

岩城と五代は吉井を尾行し、吉井が上野のスポーツタイプの紺色の乗用車から下りるのを目撃した。

五代は上野の乗用車を尾行していたが、途中で気付かれてしまった。

上野は城南署管内の工事現場に逃げ込んだが、トラックを回避しようとして、乗用車を横転させ、廃車と衝突し、死亡した。

大沢は山村と五代に、上野が吉井と共犯だった場合、吉井にとっては不幸中の幸いで、ますます用心を深め、証拠固めが困難になると厳しく叱責した。

大沢は本庁で善後策を協議すると言い残し、一係室を立ち去ったが、自動車での尾行も満足にできないのか、署員教育はどうなっているのかと言ったことで、捜査員の怒りを買った。

山村は城南署を訪れ、捜査係長と対面し、上野の事故死を責められた。

上野は元暴走族だったが、部屋からは事件に関係した物が何も発見されなかった。

山村は上野が逃走時に使用した乗用車を検証し、左前方に塗料の上塗りの痕跡があることから、上野が以前に事故を起こしているものと断定した。

山村は野崎に、最近発生した轢き逃げ事件のうち、未解決事件を調査するように連絡した。

吉井には何の変化もなかった。

五代は野崎の連絡を聞いており、最近の轢き逃げ事件を全部チェックすることを決めた。

山村は江尻と再び面会し、吉井と碁を打っていた。

山村は江尻が吉井に2000万円以上を貸したものと推測しており、江尻にモグリの金貸しがどんな罪になるのかを忠告した。

野崎は最近の轢き逃げ事件の資料を集めていた。

7月31日午後4時に発生した轢き逃げ事件で、路上及びガードレールに付着していた塗料は紺色であり、目撃者も逃走した乗用車が紺色のスポーツタイプの乗用車であると証言していた。

山村は上野の乗用車が紺色でスポーツタイプであること、左前方に上塗りの痕跡があることから、轢き逃げ犯が上野であると推理した。

上野は吉井自動車修理工場で密かに修理し、代わりに吉井に強盗の仲間に引き入れられていた。

強盗事件の証拠は、吉井自動車修理工場に隠されていると思われる散弾銃だけだった。

西條と岩城は吉井を尾行していた。

吉井は同じ場所を回っていた。

山村は西條と岩城から、吉井に気付かれそうという連絡を受け、現場に急行し、自分自身の責任で強制捜査に踏み切ろうとしていた。

山村は車内に散弾銃が隠されているものと見込んでおり、西條と岩城の覆面車と一緒に、吉井の乗用車の進路を塞いだ。

山村は吉井を強制的に降車させ、乗用車の車内を捜査したが、散弾銃どころか、覆面も発見できなかった。

山村は吉井を強制連行した。

石塚と滝は二人とも、逮捕状が出ていない以上、吉井の取り調べについては数時間が限度であり、その間に吉井が自白するか、散弾銃を探し当てるかのどちらかに成功しないと、山村が責任をかぶらなくてはならなくなることを考えていた。

石塚は滝に、五代と合流して吉井の工場とその周辺を徹底的に捜索するように指示した。

大沢が吉井の強制連行を聞き、一係室に飛び込んだ。

山村は大沢に、吉井をこれ以上放置すると、証拠固めがかえって困難になると判断して吉井を強制連行したことを報告し、吉井の取り調べを開始した。

大沢も取調室の隣の部屋から山村の取り調べを見ることにした。

西條と岩城も吉井自動車修理工場に向かった。

西條は近所の住人の証言から、7月31日の晩に吉井自動車修理工場にて深夜まで照明が点灯していたこと、明け方までうるさい音が鳴っていたことを目撃していることを突き止めた。

山村の取り調べは難航しており、吉井が自白しそうになかった。

山村は吉井に、上野の轢き逃げ事故の件を突き付けた。

上野は7月31日、轢き逃げ事故を起こし、吉井自動車修理工場に逃げ込んだ。

吉井は上野の乗用車を見て、人を轢いた自動車であることに気付いたが、自分の強盗に協力をすることを条件に、黙って修理を引き受けていた。

吉井は山村から、江尻を知っているかと尋ねられた時、動揺した素振りを見せた。

石塚は江尻と会っていた。

江尻は一係捜査員の結束の深さに感心し、証拠が出たら潔く降参することを約束した。

吉井は犯行を否認し、山村に証拠を見せるように迫った。

滝と西條と岩城と五代は吉井自動車修理工場と、吉井の部屋を捜索したが、散弾銃を発見することができなかった。

西條と五代は工員から、午後6時にスクラップ屋が白の廃車を回収に来ることを聞いた。

午後5時55分、山村は吉井が頻繁に時計を見ることが引っかかり、午後6時に何かが起こることを察知し、野崎を通して滝達に知らせた。

滝と西條と岩城と五代は廃車の中に散弾銃が隠されているのではないかと断定し、廃車の中を徹底的に捜索した。

その結果、車内から、3つのパーツに分割された散弾銃が発見された。

山村は吉井に散弾銃を見せつけた。

吉井は犯行を認めようとしなかったが、石塚から江尻が全部認めたことを告げられた。

吉井は小さな工場を倒産させたくないと思い、犯行を実行していた。

大沢は捜査員に、今後もっと慎重に行動するようにということ、特に命令を無視して独断専行することが絶対に許されないことを肝に銘じるように言い聞かせた。

本庁の人事で、藤堂が不在の間、代わりの係長を派遣しようという話が出ていたが、大沢はその必要がないと判断した。

 

 

メモ

*ボスの長期不在を生かした作品。山さんの指揮能力と責任を被る覚悟、捜査員のチームプレーが色濃く描写されている。

*久遠氏は「疑わしきは」でも猟銃を盗まれる役。

*ちょい役や端役が多い広田氏だが、今回は晴れて主犯役に昇格(?)。小市民的犯人をうまく演じている。

*OPのハイライトには、大沢が乗用車から出るシーンが挿入されているが、本編ではカットされている。

*城北署が誤認逮捕をしたことについて「やった、管理官が明日どんな顔をするか楽しみ」と喜ぶドックに、「大沢さんだって一生懸命なんだ」と諭す長さんがいい。

*若き日の村上弘明氏が強盗の共犯役で出演しているが、出番が少なく、台詞もなく、途中で事故死する役。ちょうど『仮面ライダー』終了から10ヶ月が経過した時期。

*「山さんの確信は我々の確信です」、「この商売に楽な仕事ってありますか」と言うスコッチが深い。

*散弾銃をスクラップの廃車に隠していたというアイディアが個人的に良かった。

*ラスト、ボスの席を見る山さん。結局、山さんは一度もボスの席に座ることがなかった。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子

大沢秀雄:神山繁

吉井健造:広田正光、上野浩一:村上弘明、江尻:野口元夫

城南署捜査係長:外山高士、川上社長:久遠利三、城北署捜査係長:大矢兼臣

荒瀬寛樹、吉井自動車修理工場工員:菅野直行、山崎之也、平野正人

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋、小川英

監督:竹林進