第456話「ボス、俺が行きます!」(通算第666回目)

放映日:1981/5/8

 

 

ストーリー

大学生の江島大助(早坂直家さん)と大助の恋人(彩瀬晶子さん)は、乗用車を運転中、スピード違反でパトロールカーに追跡されていた。

石塚と五代は巡回中、サイレンの音を聞いた。

大助は強引に車両進入禁止の道路を突っ走り、前方を走行中のオートバイを転倒させた。

大助は一方通行の入口で石塚と五代の覆面車に進路を塞がれ、石塚に免許証の提示を求められたが、石塚が交通課の署員でないことを理由に調子に乗った。

大助はそれでも石塚に免許証の提示を求められ、免許証を渋々見せた。

大助は政界の黒幕の江島大造の息子で、刑事を江島の権力で簡単にひれ伏せられると思っていた。

大助は石塚に対し、弁護士を呼ぶように要求し、江島家顧問弁護士の上野(加藤和夫さん)と一緒に七曲署を立ち去った。

大助は恋人に乗用車を運転させ、クラクションを鳴らし、交通課の婦警が駐車違反を取り締まり中の道路を強引に突破した。

その直後、何者かがミニパトロールカーの車内に、ラッピングされた時限爆弾を放り投げ、爆弾が爆発した。

七曲署捜査一係が現場に急行した。

爆弾による負傷者はいなかった。

婦警(木内マキさん、森愛さん)は大助の乗用車のクラクションに気を取られ、ミニパトロールカーにいつ爆弾が仕掛けられたのかについては分からなかった。

婦警は滝と西條に運転手が若い女性で、助手席にサングラスをつけた男がいたことを証言した。

夜、七曲署矢追町巡査派出所の警察官は、2丁目で喧嘩が発生したという通報を受け、自転車で現場に急行した。

ミニパトロールカーに時限爆弾を投げ掛けた謎の人物が、無人の派出所に、ラッピングされた時限爆弾を机の下に投げ、爆発させた。

連続して発生した爆破事件に使用された爆薬及び時限装置は分析の結果、共に同種のものであると鑑定され、2つの事件の犯人が同一犯、もしくはグループであると断定された。

爆発の規模は共に軽微で、よほどの至近距離にいない限り、人体に損傷がないものだった。

山村は犯人の目的が殺人ではなく、遊びではではないかと推理した。

昨夜の派出所爆破も、喧嘩をしているという偽電話で警察官が呼び出された後に時限爆弾が投げ込まれていた。

滝は藤堂に、婦警が描いた、大助と大助の恋人の似顔絵を提出した。

午前9時20分頃、一係室に謎の男から電話が入り、藤堂は現場に捜査員を急行させた。

謎の男は高笑いをするばかりで、藤堂の質問に答えなかった。

電話の場所は矢追橋の電話ボックスであることが判明した。

石塚と五代は電話ボックスに急行したが、電話ボックスでは少女が電話をしていた。

石塚は電話ボックスに、ラッピングされた時限爆弾が置かれているのを発見し、少女を避難させた。

時限爆弾が爆発し、電話ボックスが吹き飛んだ。

石塚は大助が川の向こうから電話ボックスを監視しているのを発見し、五代に少女を任せ、大助を追跡した。

大助はビリヤード場「スワン」を訪れ、ビリヤードに興じていた。

石塚は「スワン」の店内に入り、大助に事情聴取しようとしたが、大助の取り巻きのヤクザの上田(佐藤晟也さん)と坂口(スーパー・リキさん)に威圧された。

上田は石塚が警察手帳を示しても、全く動じない態度をとり、石塚の捜査を妨害した。

石塚は、名乗りを上げた大助に対し、七曲署への任意同行を要求し、大助が拒否すると、運転免許停止済みなのに法定速度を遥かに超えるスピードで自動車を運転した容疑で逮捕すると宣告した。

大助は上田が石塚に掴みかかるのを見て、石塚が自分をどう扱うか興味があると言い残し、素直に同行に応じた。

石塚と大助が立ち去った直後、ビリヤード場の店員の小島(市川好朗さん)が現れた。

大助は山村と石塚に取り調べられていたが、連続爆破事件の犯人と告げられても高笑いし、犯行を否定した。

石塚は大助に、交通違反で検挙されたくらいのことで、もう少しで少女を殺害するところだったと厳しく怒った。

婦警は大助を見て、乗用車でクラクションを鳴らしていた男であると確認した。

大助は自動車のメカニックに関しては非常に詳しいが、爆発物については全く知識が無かった。

上田と坂口は喧嘩が強いだけが取り柄で、同様に爆発物に対する知識が無かった。

山村は大助を取り調べ、心象的には犯人だが、自白するにはかなり時間がかかるという感想を抱いていた。

午前10時20分頃、上野が一係室に入り、藤堂に大助の拘留理由の開示を要求した。

石塚は大助が温室育ちであるため、このまま尋問したら確実に自白できるという自信を持っていた。

上野は藤堂に、大助が3日後には海外留学のために出発する予定であることを伝え、藤堂にこのままでは済まないと抗議し、一係室を立ち去った。

大助は事件を知らないと主張し続けるも、山村と石塚に苛立った態度で、上野を呼ぶように要求した。

藤堂は署長室に招集され、西山署長(平田昭彦さん)に自白の強要などもってのほかと注意されてしまった。

上野は、自白の強要をしていないと反論する藤堂に対し、世間知らずの大助を取調室で尋問したら、本人だってやってもいないことをやったような錯覚に陥る、一種の拷問であると抗議した。

藤堂は西山に、大助を今すぐに釈放するように命令され、大助を渋々釈放した。

石塚は藤堂に勇み足をしたばかりに大助を自白させられなかったことを謝罪した。

大助は恋人と一緒にバーで酒を飲み、かなり荒れていた。

大助はグラスを床に叩きつけ、石塚に対する怨念を強めた。

大助はどこかに電話しているようだった。

午後11時25分、一係室に大助から、翌日の午前0時、西口公園の正面の電話ボックスに石塚単独で来るように強要するという内容の電話が入った。

大助は要求に従わないと、爆弾で大量に死者が出ると脅迫し、名前を名乗らずに電話を切った。

石塚は大助が、全く関係ない人間を殺害すると脅迫し、自分に挑戦してきていると確信した。

野崎と西條と五代は石塚に対し、爆破の件が脅迫で、江島が本気で大量殺人をする気がないが、石塚には恨みを持っているとしいう理由で、要求に従わないように助言した。

石塚は西條に、爆破がただの脅迫だったら殺され損であると制止されたが、無関係の人間が殺害される可能性が少しでもある限り、行かなければいけないのが刑事の仕事であるという考えのもと、藤堂に警察手帳と手錠と拳銃を預けた。

藤堂は、石塚の申し出を許可した。

石塚は滝からトランシーバーを手渡されたが、すぐに身体検査されるという理由で携帯を拒否した。

野崎と西條と滝は石塚の尾行を、五代は岩城と一緒に大助の張り込みを、山村は爆弾の捜査を担当することにした。

石塚は西口公園の公衆電話の前で待機していた。

岩城と五代は大助を張り込んでいたが、大助が全く動いていなかった。

午前0時、公衆電話が鳴り、石塚が電話に出た。

石塚は電話を切り、地下鉄の入口に向かっていたが、滝に尾行されていた。

石塚は東大島駅行の電車に乗った。

地下鉄の中は無線が通じないため、西條からは石塚がどこの駅に向かったが分からなかった。

滝は石塚を尾行中、酔漢に絡まれ、石塚を見失ってしまった。

石塚は小島が運転する乗用車に乗った。

小島は石塚を「スワン」まで連れて行き、普段は緑のマットで入口を隠している地下室に案内した。

地下室は爆弾製造工場で、上田と坂口が中で待機していた。

小島は大助に拾われ、ビリヤード場の店員をしていたが、かつては花火工場の職人で、爆弾製造を得意としていた。

上田と坂口は石塚の上着を強引に剥ぎ取り、荷物検査をした。

上田は石塚から、爆弾の場所を質問されたが、約束を反故にして答えず、坂口と一緒に石塚に激しい暴行を加えた。

岩城は藤堂に、大助が自宅に戻ったと連絡し、そのまま待機するように命令された。

上田と坂口は石塚の質問を無視し続け、石塚を痛め付け続けた。

上田と坂口は小島に制止されたが、小島を突き飛ばし、石塚を昏倒させた。

上田と坂口は見張り役に小島を残し、地下室を立ち去った。

石塚は小島を説得し、爆弾の場所を尋ねようとしたが、小島に拒絶された。

石塚はここに来た理由を質問され、それが刑事の仕事であると答えた。

石塚は大助の行動が自分に対する復讐ゲームであることを伝え、取り返しがつかなくなると説得した。

小島は自分の面倒を唯一見てくれた小島に恩を感じており、石塚の説得にも、もう遅いと耳を貸さなかった。

石塚は小島に、今度は無関係の人間が死亡すると力強く訴えた。

滝が旅行会社に問い合わせた結果、大助が今日の夕方、予定を繰り上げて成田からアメリカに出発することが判明した。

爆破予告はただの脅迫か、大助が日本を飛び立った後、予定通りに決行するかの2つの可能性が考えられた。

大助が運転手付きの外車に乗り、自宅を出発したが、岩城と五代に尾行された。

大助は「スワン」で外車を降り、のんびり玉を突いていた。

「スワン」には裏口がなかった。

大助は自分以外の客2人が帰ったのを見計らい、小島に閉店するように指示した。

岩城と五代は「スワン」に急行し、小島に大助の居場所を質問した。

小島は岩城と五代に、化粧室が「軽食&喫茶 ベン」と共用であることを教えた。

岩城は大助が付近にいると推測し、五代に外車を張り込み、運転手を締め上げるように指示した。

しかし、大助の外車が「スワン」付近からいなくなっていた。

小島は岩城と五代が「スワン」を立ち去った隙に、地下室に入っていった。

大助は地下室の中に隠れていた。

大助は午後4時に成田空港から飛び立つこと、小島に製作させた時限爆弾を午後5時に爆破するようにセットし、石塚を爆死させることを計画していた。

大助は石塚が爆死するところを見られなくても残念であると言い、嘲笑した。

大助は石塚が自分の要求に答えないと思い、「スワン」の地下室以外の場所にも爆弾を設置していた。

大助は、自分に「屑以下の化け物」と罵って反抗した石塚に暴行を加えたが、小島に制止された。

大助は初めから小島を利用することしか考えておらず、上田と坂口に小島を縄で拘束させ、爆破犯を小島に仕立てようとしていた。

西條は大助を捜索中の五代と合流した。

大助は上田と坂口に報酬の大金を手渡し、警察の尾行の対策のために、先に外車を成田空港に向かわせたことを教えた。

西條と五代はタクシーに乗る大助を発見し、覆面車で追跡した。

藤堂は岩城に、「スワン」の調査を命じた。

小島は完全に諦めており、石塚の、爆弾の設置場所についての質問に対しても答えようとしなかった。

岩城は「スワン」に突入しようとしたが、正面の入口も裏口も施錠されていた。

坂口は令状が無ければ警察が入れないと挑発した。

石塚は小島が人を殺せないと信じ、今ならまだ殺人者にならなくて済む、更生するチャンスが残されていると懸命に訴え、爆弾の場所を尋ねた。

小島は爆弾が午後5時に七曲署の署長官舎で爆発することを自供した。

石塚は縄を解き、坂口が地下室の入口を開けた瞬間に飛び出し、「スワン」から出ようとしたが、上田と坂口に妨害された。

岩城は物音を聞き、「スワン」の扉を破り、石塚から爆弾の場所と時間を聞き出した後、石塚に加勢した。

石塚は自分が上田と坂口の相手をするので、岩城にすぐに連絡するように要請した。

西山は藤堂から、官舎に爆弾が設置されていること、既に爆発物処理班が向かっていることを告げられ、家族に避難するように促された。

石塚は上田と坂口との格闘の末、2人を叩きのめした。

西條は大助が乗るタクシーに追い付き、殺人未遂並びに爆発物取締条例違反容疑で逮捕すると宣告した。

大助は容疑を認めなかったため、西條と五代に殴り飛ばされた。

大助は口内裂傷並びに顔面内出血で全治1週間の傷を、上田と坂口は全治1ヶ月の重傷を負っていた。

西山は石塚と西條と五代に、大助と上田と坂口への暴力の件で各方面から抗議が殺到していると激怒したが、藤堂に上田と坂口が逮捕の際に抵抗したため、やむを得ずと弁解され、納得した。

西山は自分の家族の生命を救った石塚に感謝し、一係室を立ち去った。

 

 

メモ

*「刑事・ゴリさん」というサブタイトルが付いてもよさそうな、ゴリさん主演作。「爆弾」、「何としても市民を守ろうとする責任感」、「悪への怒り」、「弱者の救済」、「強者との格闘」などといった、拳銃を除く全てのゴリさん主演作の要素が入っている傑作。『太陽』ベスト5に入るぐらい大好きな作品。

*スコッチがこの話を最後に、「六月の鯉のぼり」まで欠場。ボスも「サギ師入門」から長期にわたり欠場するため、オープニングの刑事8人が一係室に揃っているのは今回が最後となる。

*大助、上田、坂口と凶悪な人物が多い中、唯一の救いが小島。

*個人的に今回が好きな理由は、爆弾で死亡者が出る前に小島を説得し、救済することができたところ。

*ゴリさんを終始心配するドックが良い。

*ゴリさんは「激突」で犯人の原口を「屑の屑」と罵ったが、今度はもう1段階下の「屑以下の化け物」が出てきた。

*いつの間にか縄を解いたゴリさん。どうやって解いたんだろうか。

*ゴリさんと上田、坂口の格闘が大迫力。

*大助を殴るスニーカーに、「待て、スニーカー、容疑者をそう簡単に殴っちゃいけないよ」と言いながらも、激怒した顔で大助を殴るドック。ドックの大助に対する怒りがよく伝わる。「ゴリさんの分」と「自分の分」で計2発殴った模様。

*ラスト、西山に感謝されるゴリさん。「私にも握手していただけますか、石塚君」とボスに言われ、「いいだろう、藤堂君」と笑って握手するも、怒られるゴリさん。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

西條昭:神田正輝

 

 

西山署長:平田昭彦、松原直子:友直子

江島大助:早坂直家、小島:市川好朗

上野弁護士:加藤和夫、上田:佐藤晟也、坂口:スーパー・リキ

七曲署交通課婦警:木内マキ、大助の恋人:彩瀬晶子、七曲署交通課婦警:森愛、尾形恵子

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:竹林進