放映日:1981/1/9
ストーリー
女子高生の辻本美奈子(白石まるみさん)がスナック「ゴロー」で弾き語りをしていた中、向井隆晃(17歳)という男が顔面を傷だらけにして入ってきた。
マスターの望月悟郎(柿沼大介さん)が事態を警察に通報した。
向井は救急車で病院に搬送され、病室で滝に事情聴取を受けていたが、病室に西條が入室した。
向井は私立白陽高等学校の3年生で、空手部員であり、空手2段だった。
向井は午後6時30分頃に学校を出たこと、遅くなったのは空手部の活動があったためであること、そのまま常連の「ゴロー」に向かったが、その途中で3人組の男に激しい暴行を受けたことを供述していた。
向井は相手に見覚えが無く、襲撃された理由が分からず、恨まれている相手に心当たりがないことを強調した。
向井を襲撃した3人組も空手の経験者だった。
滝は今朝に現場を訪れ、現場に争った痕跡がはっきり残っていたことから、襲撃の件と相手が空手経験者であることについては真実であると考えつつも、向井が襲われた理由を隠していると確信していた。
向井は左腕と肋骨3本を折られる重傷を負っていた。
西條は向井だけでなく、「ゴロー」から救急車に同乗してきた辻本も挙動不審だったという感触を得ていた。
山村は報復を恐れているか、2人に弱みがあるかのどちらかと推測していた。
向井の両親は2人とも共稼ぎで、2年間ほど会話をほとんどしておらず、犯人に全く心当たりがなかった。
藤堂は西條に辻本の担当を任せ、他の捜査員に向井の身辺捜査と目撃者の聞き込みを指示した。
若い男は岩城と五代に、昨夜の午後6時30分、付近に白の53年型カローラが停車していたこと、中に3人組の男が乗っていたことを証言した。
カローラのナンバーは「横浜58 ね 43-56」だった。
西條は花屋で花を買い、向井の見舞いに行こうとする辻本に接触し、覆面車で送迎した。
辻本は弾き語りが得意だった。
西條は辻本に、報復が怖いのであれば、責任を持って警護することを約束し、昨夜の事件の犯人を尋ねた。
辻本は何も隠していないと答えた後、黙秘を貫いた。
辻本の父親は普通のサラリーマンだった。
滝は向井が3人組については本当に面識がなく、3人組の背後に別人がおり、向井を襲撃させたのではないかと推理していた。
向井は学校内や近所で、無口だが正義感の良いスポーツマンであると、教師と生徒からも言われており、評判が良く、暴力事件を起こしたこともなかった。
五代の捜査により、上南大学3年生の小西直人、倉持稔(狩野勝彦さん)、森田正晴(石井茂樹さん)が容疑者として浮かんだ。
3人は半年前に暴力事件を起こして、空手部を除名されていた。
白のカローラは小西が所有しているものだった。
岩城と五代はドライブインにて、若い男に小西と倉持と森田を面通しさせ、間違いないという証言を得ていた。
山村と岩城は小西を、野崎と五代は倉持を、石塚と西條は森田を取り調べた。
小西はカローラを停めていたのを認めたが、喧嘩については否定し、3人で会話していただけであると供述した。
倉持は向井を知らないと述べ、自分達が真面目な学生であると主張した。
石井は右腕を負傷していたが、興奮するとすぐ力を入れる倉持に空手の練習でやられたと弁解した。
向井は滝に3人組の写真を見せられても、暗くて顔が見えなかったと嘘を吐いた。
滝は現場の道に街灯が立っていたこと、向井が囲まれたことから、向井の嘘を見抜いた。
向井はそれでも分からないと主張し続け、あの晩は空手の稽古で疲労していたため、普段なら相手が3人でも敗北しないことを強調した。
3人組の1人は空手3段、残りの2人は空手2段だった。
向井が自白しないのは復讐を恐れているためではないことが確定し、3人組が安心しきっているのは、よほど向井が自白しないと確信しているからであると考えられた。
藤堂は「ゴロー」を訪れ、刑事の身分を隠し、弾き語りを終えた辻本に直接接触することにした。
藤堂は辻本が自作した歌の助言をした後、辻本を送迎した。
石塚と滝は病院にて、向井の見舞いに来た、森山いずみ(青木純さん)という女子高生に事情聴取をしていた。
森山は向井と辻本と同じクラスだった。
森山は石塚と滝に対し、ひどく怖がった態度をとり、何も知らないとだけ言い残し、立ち去った。
滝は森山のことを調査することにした。
藤堂は辻本と親交を深めていた。
藤堂は辻本に、時々独りぼっちになるため、友達のことで悩んでいるのかと尋ねた。
辻本は嫌な思い出があるという理由で、友達のことを話すのを拒否した。
望月は藤堂に、辻本が去年(1980年)の夏に、高校こそ違うが、中学校時代からの親友の塚田久美(当時高校3年生)を自殺で亡くしていることを告げた。
藤堂は、嫌気がさして店を飛び出す辻本を追いかけた。
塚田は去年の5月、戸川組のチンピラに乱暴されたことが原因で、高架橋から線路に飛び降り、電車に轢かれ、自殺をしていた。
犯人は塚田の父親が警察に訴えたことにより、逮捕されたが、合意だと言い張っていた。
塚田は何度も警察と法廷に呼ばれ、忘れたいことや言いたくないことを無理やり繰り返し証言させられた。
そのことが原因で、乱暴のことが近所の住人や学校の友達に知られてしまった。
塚田は自殺する前の晩、辻本に、警察に訴えなければよかったと言い残す電話をしていた。
野崎は、塚田の事件の捜査を担当した城北署から、事件の資料を入手していた。
チンピラが逮捕されたのは事件から1週間後、塚田が自殺したのは2ヶ月後だった。
塚田の事件が辻本にどういう影響を与えたか、今度の事件とそれがどう関係しているかが問題点となった。
五代は辻本が、塚田の事件がきっかけで警察を嫌いになり、証言を拒否しているのではないかと意見した。
向井の事件の背後にも、塚田の事件に酷似した事件があるのではないかと思われた。
藤堂は辻本に、相談に乗ると持ち掛けた。
辻本は両親にも隠していた話を、藤堂に秘密厳守を条件に告白した。
辻本は向井を襲撃した3人組の背後に、指図している大学生がいること、その大学生が半月前、自分の同級生に乱暴したことを打ち明けた。
辻本は同級生に泣き付かれ、絶対に警察に知らせないように口止めし、向井を護衛に就かせ、相手の大学生の家に慰謝料を要求していた。
大学生は辻本に慰謝料を払っていなかったが、事実であれば払うと約束していたが、向井が約束を反故にされて襲撃されていた。
辻本はその大学生が3人組と同じ上南大学の生徒であることから、3人組の背後にいると確信していた。
辻本は大学生がいつ慰謝料を払うのかと、その大学生の名前については教えなかった。
藤堂は辻本に、聞き込み方が刑事のようであると怪しまれたことから、ついに自分の身分が七曲署の刑事であることを明かした。
辻本は藤堂を激しく糾弾し、怒りの目を向けた。
西條は辻本の心の傷を心配していた。
藤堂は、上南大学の学生の中で3人組の交友関係を捜査すれば、容易に犯人を特定できると考えており、単に傷害事件だけで終わらせず、半月前の女子高生の捜査の対象とすることを決定した。
滝は病院に見舞いに来た客の中で、唯一挙動不審だった森山が、半月前の事件の被害者であると特定した。
石塚と滝は直接、森山と対面することにした。
藤堂は野崎と岩城に犯人の捜査を指示し、犯人の復讐の阻止と、辻本の恐喝を放置できないという理由で、西條と五代に辻本の警護を命令した。
野崎と岩城は、容疑者で上南大学経済学部3年生の宮島伸彦(21歳)を張り込んでいた。
伸彦は小西とゼミナールが一緒であり、スポーツカーで街を突っ走り、目を付けた女性に声を掛けては車に乗せる、典型的な金持ちのどら息子だった。
伸彦の父親の宮島は南郷建設の常務をしていた。
藤堂は野崎と岩城に伸彦の張り込みの続行を命令した後、南郷建設に急行し、宮島(根上淳さん)と面会した。
藤堂は宮島に、伸彦が半月前に女子高生に乱暴した件を尋ねた。
宮島は藤堂に、伸彦が合意の上だった、むしろ誘惑されたと主張していたことを話し、伸彦が暴力を振るったという確証を求めた。
宮島は相手の女子高生の友達が用心棒として向井を連れ、慰謝料を払うように要求されたことについて、計画的な強請であると主張した。
宮島は伸彦が3人組を使って向井を襲撃させたことについて、知らないと答えた。
藤堂は宮島に、放置すれば一生取り返しのつかないことになるとして、伸彦に自首を勧めたが、宮島に、証拠もないのに人を犯罪者呼ばわりすると、取り返しのつかないことになると警告された。
石塚と滝は書店にて、森山に半月前の事件のことを尋ねようとした。
森山は友人が来たため、足早に立ち去った。
伸彦は自宅で、宮島に殴られ、暴行事件のことを怒られていた。
伸彦はあくまで女子高生に誘惑されただけであること、空手3人組の事件についても無関係であると弁明したが、宮島に二度と事件を引き起こさないように忠告された。
辻本が森山から、七曲署が半月前の事件を捜査していることを聞き出し、一係室を訪れ、抗議した。
午後6時50分頃、辻本は藤堂が本物の刑事であることを知り、森山に嫌なことを思い出せないように、そっとしておいてあげるように訴えた。
藤堂は辻本に、宮島から金を取るのは恐喝になると厳しく警告した。
辻本は藤堂の警告を全く耳に傾けず、森山が立ち直ったことを理由に、森山の事件を捜査しないように約束を迫ったが、藤堂に断られた。
辻本は激怒し、一係室を立ち去った。
藤堂は西條と五代に辻本の警護に行かせ、他の捜査員に森山の説得を命令した。
石塚と滝は森山に、話す気になったらいつでも声を掛けるように説得した。
森山は心を開こうとしたが、辻本が突然駆けつけた。
辻本は森山に、警察が非常に汚い手段を使うため、何も話してはいけないと厳命し、無理やり森山を連れ出し、今日から送迎を名乗り出た。
山村は辻本に接触し、辻本の何度も証言することへのつらさを理解しつつ、向井を襲撃した3人組が平然としているのは、辻本達が警察に訴えないからであると優しく言い聞かせた。
山村は辻本に、犠牲者を救う道が、犯人を逮捕することしかないと説得した。
辻本は友達の苦しむ顔を見たくないとして、山村に激しく反発した。
辻本は午後2時前にもかかわらず、学校を早退し、自宅とは全く逆の方向に歩いた。
辻本がこれから、宮島から身代金を貰うのではないかと考えられた。
五代は地下道に入って行った辻本を尾行した。
辻本は化粧室の個室で白のコートに着替え、サングラスを付けて変装したが、五代にはすぐに見抜かれた。
辻本は五代を鞄屋の倉庫に誘い込み、五代が倉庫に入った隙に、倉庫の扉をアタッシェケースでの入った台車で塞いだ。
西條は辻本が日の丸交通タクシーで北西方面に向かうのを目撃したが、辻本が変装していたため、別人であると判断してしまい、見逃してしまった。
伸彦が上南大学の駐車場から、スポーツカーで出発した。
野崎と岩城は狭い道路で伸彦のスポーツカーを尾行していたが、前方の乗用車がエンジンの停止で停車してしまい、さらに後方からバンが来たため、伸彦を見失ってしまった。
五代は西條と合流し、タクシーの追跡を開始した。
辻本は代々木公園でタクシーを降り、伸彦を待っていた。
藤堂は西條と五代に、代々木公園の捜索を任せた。
伸彦が辻本の前に現れ、スポーツカーに辻本を乗せた。
伸彦は小西と倉持と森田を連れていた。
西條と五代は代々木公園に到着し、藤堂に、辻本が黄色いスポーツカーで千駄ヶ谷方面に向かったこと、スポーツカーの後方から白いカローラが追尾していたことを報告した。
伸彦は辻本を、アルファーマンションに連れて行った。
小西と倉持と森田もアルファーマンションに到着した。
藤堂は宮島に、伸彦が女性を乱暴する時に使う場所に心当たりがないかを尋問し、被害者が真剣に苦しんでいると言って説得した。
宮島は伸彦の父親として、伸彦のことについては自分しか分からないと思っていた。
藤堂は宮島の、伸彦を信じようとする気持ちを理解しつつ、伸彦がまた女性を乱暴しようとしていることを告げた。
宮島は藤堂の説得が通じ、新宿の「アルファーマンション」を伸彦に買い与えたことを自白した。
伸彦は辻本に慰謝料を払うつもりがなく、部屋に小西と倉持と森田を招き入れた。
伸彦は辻本が何をしても自分を警察に訴えないことを利用し、ベランダに追い詰め、辻本を乱暴しようとした。
藤堂がアルファーマンションに到着し、小西と倉持と森田を蹴散らし、金を払うとして命乞いをした伸彦を殴り飛ばした。
藤堂は号泣する辻本を優しく抱き締めた。
森山が辻本の説得で、事件の証言をするため、七曲署を訪れていた。
メモ
*1981年最初の放映作品。『太陽』では珍しく、「暴行」を取り上げた作品。
*長さんの息子の俊一は高校生時代、ほとんど悩み事を両親ではなく、友達に相談していたらしい。
*女性の扱いに慣れていそうなドックだが、女子高生の相手は苦手らしい。
*辻本が「ゴロー」で歌っている歌は何の曲?
*喫茶店でよく流れるBGM(名称不明)は、この回で初めて使われた。
*辻本に肉まんを差し入れる山さんだったが、説得が珍しく効果が無かった。
*辻本の変装を瞬時に見抜くスニーカー。刑事として成長したと思ったが、辻本の罠にはまってしまった。
*伸彦が世良公則氏に似ている。
*空手有段者の3人だったが、ボスの前ではあっけなく蹴散らされた。恐らくゴリさんやスコッチでも同様だっただろう。
*ラスト、一係室の扉をノックする音を聞き、辻本かと思ったボスだったが、実際はドックとロッキーとスニーカーだった。「馬鹿者、早く行け」と怒るボス。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
滝隆一:沖雅也
岩城創:木之元亮
五代潤:山下真司
西條昭:神田正輝
松原直子:友直子
宮島常務:根上淳
辻本美奈子:白石まるみ
田中隆、大橋一輝、倉持稔:狩野勝彦、森田正晴:石井茂樹、望月悟郎:柿沼大介、森山いずみ:青木純
岸正昭、田丸一登、山中康司、真田陽一郎、島田久美
石塚誠:竜雷太
野崎太郎:下川辰平
山村精一:露口茂
脚本:小川英、古内一成
監督:山本迪夫