第436話「父親」(通算第646回目)

放映日:1980/12/12

 

 

ストーリー

日曜日、西條はテニスコートにて、岩城と五代にテニスを教えている途中、コートの外に中山健一(18歳)(津田和彦さん)という少年がいるのを発見した。

会社役員の中山健太郎(48歳)(西本裕行さん)という男が、自宅の窓にて、頭を血塗れにして倒れていた。

中山夫人(渡辺知子さん)が帰宅後、倒れている中山を発見し、警察に通報した。

中山夫人は病院に搬送される中山に同乗していた。

七曲署捜査一係が現場の中山宅に急行した。

西條は中山宅を知っており、石塚から、中山が搬送された病院が、父親の病院である西條外科医院であることを告げられた。

山村は西條に、西條医院に行って中山の様子を見ること、主治医の話を聞くことを指示した。

西條は反対したが、石塚に仕事であると強調され、西條外科医院に渋々直行した。

中山夫人は激しく動揺し、号泣していた。

西條は父親の西條勝(梅野泰靖さん)と再会し、勝に中山の様態を尋ねた。

勝は中山の容態について、流動的で何とも言えないと返し、それ以上答えようとしなかった。

西條の弟の西條進(三景啓司さん)は医師の卵で、勝の手術の手伝いをしていた。

進は西條から、中山の容態のことを尋ねられ、屋上にて、中山が頭部を殴られ、倒れた弾みに窓ガラスに首を突っ込んだことを答えた。

進は爪楊枝のような木片が毛髪に絡まっていたことから、凶器が木製のものであると判定した。

中山の家族は夫人と、一人息子で予備校生の健一の2人だった。

健一は今日、朝から外出していて、連絡が取れていない状況だった。

中山宅からは金品が強奪された形跡も、凶器と思われる木製の物もなかった。

事件は空き巣の線も、怨恨の線も考えられた。

藤堂は石塚に凶器の捜索、滝と岩城と石塚に現場の聞き込み、山村と野崎に中山の対人関係、西條に西條外科医院に行くように指示した。

勝はあくまで、中山との面会を拒否し続け、西條から中山が意識を回復したため、少しの時間の面会を要求されても、患者に面会を許すかどうかは主治医の権限であるとして応じなかった。

勝は西條に捜査の妨害をするつもりかと警告されても、医師の使命が患者の生命を守ることで、少しぐらい捜査に支障をきたしても、口を聞いたら危険だと判断した以上、絶対に面会させないという理由で、面会を拒絶した。

勝は西條に、まだまだ信用が足りないという感想を抱いており、外科医院に西條を派遣した七曲署の対応を疑問に思っていた。

進は親との対話を復活させようとする思いやりではないかと思っていた。

西條は勝の面会の拒絶に激怒し、二度と頭を下げないと決心し、藤堂の指示に不満を抱いていた。

西條は覆面車を走行中、健一を発見した。

西條は健一に、かつてテニスを教えたことがあった。

健一は西條から、中山が重傷を負ったことを告げられても、平然としていた。

西條は覆面車に健一を乗せ、西條外科医院まで送迎し、中山の病室が302号室であることを教えた。

西條は実家を飛び出して刑事になったことから、勝に勘当されていた。

健一の態度が不審だった。

西條は野崎に、勝が非常に頑固な性格であるため、中山から話を聞けていないことを報告した。

現場は閑静な住宅街で、元々人通りが少なく、不審な人物を見た目撃者がいなかった。

滝は中山宅に急行し、中山宅を捜索したが、収穫を得られなかった石塚と合流した。

滝は健一が犯行時刻の午前11時頃、剥き出しのテニスラケットを持って血相を変えて走っていったという目撃証言を入手した。

藤堂と山村は犯人が外部から侵入した形跡が薄く、中山宅から金品が強奪されておらず、家庭の外で中山を恨んでいる人間も見当たらないことから、家庭内暴力の事件であると判断した。

西條は健一を幼少期から知っており、明るくて素直な良い性格であると意見したが、滝に、そういう性格ほどある日、突然性格が変わること、いい子ほど無意識のうちに自分の気持ちを抑圧していることが多いと助言した。

西條は凶器のラケットを発見することが先決であると意見した。

藤堂は相手が未成年であることから、西條の意見を一理あるとして聞き入れた。

西條は滝から、健一が逃走した場所がテニスコート付近であると聞き、石塚と五代と岩城に、テニスコートで健一を目撃したが、テニスラケットを所持していなかったことを伝えた。

五代は石塚と岩城と西條と一緒に付近の草むらを捜索中、テニスラケットを発見した。

テニスラケットには「K.N」というイニシャルが書かれており、健一のものであることが断定された。

テニスラケットのフレームには血液が付着していた。

西條は健一が中山を襲撃したことが信じられず、信じられないと連呼した。

西條は医科大学を中途退学して警察官になることを決意し、勝に打ち明けた際、勝と大喧嘩になったことを思い出した。

勝の考えは、西條が医師の息子であるため、黙って医師になればいいというものだった。

西條は父親の操り人形ではなく、自分の道ぐらい自分で決めると、勝に激しく反発していた。

西條は勝と大喧嘩になった時、もう少しエスカレートしていたらと不安になっていた。

西條は五代が運転する覆面車に乗っている時、藤堂から、健一が西條外科医院に来ていないという無線連絡を受けた。

健一は外科医院に入りづらくなり、引き返したものと考えられた。

野崎と石塚と岩城が健一を捜索していた。

西條と五代は中山宅を訪れた際、2階の電気が消えるのを目撃した。

西條は五代に裏手に回らせ、家の呼び鈴を鳴らし、健一を呼んだ。

健一は西條に、健坊と呼ぶのを止めるように頼んだ後、家の扉の鍵を開けたが、突然狂乱し、西條の顔面をゴルフクラブで執拗に殴って逃走した。

山村は中山から事情聴取をしていた。

中山は健一に、大学に入学するまでテニスを見合わせるように言ったが、健一が今日、自分の目を盗んで外出しようとしたため、軽く窘めた。

中山は健一が自分の子供であると信じられなかった。

中山夫人は健一が傷付けたのは発作的なことであり、実の父親であるため、罪にならないかどうか心配していた。

山村は夫人に、罪は罪であると説いた。

西條は西條外科医院の診察室で、進の治療を受けていた。

勝は進から西條がレントゲンを嫌がっていることを聞き出した後、西條の傷を治療した。

勝が西條に中山との面会を拒否し続けるのは、患者の秘密を守るという意味での医師の倫理だった。

西條は勝に、刑事の使命として、中山から絶対に聞かなければならないと説得した。

西條は中山が病院に搬送された時、勝と少し会話しているが、その時に犯人が健一であることを伝えたのではないかと突きつけた。

勝は西條に、わざと口をつぐんだために捜査が混乱していると指摘されても、簡単な事件で混乱するようでは大した警察ではないと冷たく言った。

勝は西條に、気に入らなかったらさっさと逮捕するように怒った後、中山が医院に搬送された時、消えかかる意識を懸命に呼び起こしながら、勝に黙っていてください、内緒にしてくださいと頼まれたことを打ち明けた。

勝は中山から、健一が最近、塞ぎがちで心配という相談を受けていたことから、中山の発言の意味をおおよそ察知していた。

勝が西條に中山との面会を拒否し続けたのは、医師の倫理としてではなく、同じ親として嫌だったからだった。

勝は西條に、健一が下手すると自殺するかもしれないことを告げ、早く健一を捕まえるように叱咤し、促した。

山村は西條と勝の話を廊下で立ち聞きしており、勝に西條がいい刑事になると言い残し、医院を立ち去った。

翌朝、西條はテニスコートを訪問していたが、藤堂からの無線連絡を受けた。

昨夜、246号線で一斉検問をしていた令子の同僚の婦警が、助手席に健一らしい少年を乗せた大型トラックを目撃していた。

西條は藤堂から、トラックが街道を西に走行していることと、トラックのナンバーを聞き出し、単独で健一の捜索に急行した。

西條は健一を逃がした責任を感じていた。

藤堂は現地の白バイ警察官(栗田八郎さん)に、西條の追跡を依頼していた。

白バイ警察官は西條を発見し、自分に同行するように指示し、大衆食堂まで案内した。

白バイ警察官は西條に、大衆食堂の中に、健一を乗せたトラックの運転手(佐藤晟也さん)がいることを教え、今後に公務で法定速度を超過する場合には、サイレンを鳴らすように言い残し、西條と別れた。

西條は運転手と接触し、昨夜の午後9時頃に倉沢橋のたもとで健一を気紛れで乗せたこと、大衆食堂の先の分かれ道で健一を降ろしたという情報を得た。

健一は山中湖に知人がいるようだった。

石塚と岩城と五代は西條のもとに向かっていた。

西條は運転中、6人の暴走族に絡まれ、ドアを蹴られるなどの挑発を受けた。

西條は暴走族の構成員の1人に車体を衝突させた。

構成員の1人はオートバイを横転し、負傷した。

西條は山中湖の別荘に到着し、覆面車の車内に手錠と拳銃を置き、窓から別荘に侵入した。

別荘の中には棒を構えた健一がいた。

健一は帰ろうという西條の説得にも応じず、ただ敵を倒しただけであり、自分の周りにいるのは全て敵、西條も中山も夫人も全て敵であると怒った。

西條は健一に、勉強がうまくいかなかったからって、テニスを止められたからといって、なんでもかんでも周りのせいにするなと叱咤し、そんなにテニスが好きなら堂々とやればいいと励ました。

西條は健一に、親は親で、健一は健一で、自分で意思を持ち、考えろと叱咤激励した。

健一は太い棒を喉に突き刺し、自殺しようとしており、西條に自殺を止めるように促されると、拳銃で自分を殺すように頼んだ。

西條は拳銃を所持していないことを打ち明けた後、健一が振った棒を回避し、瞬時に机の上に置いてあった箸を手に取り、健一に突きつけた。

健一は号泣し、周囲が悪いと嘆いた。

西條が健一を連れて帰ろうとした直後、暴走族の集団が西條の覆面車を発見してしまった。

暴走族の構成員の2人は別荘の窓に石を投げ、出てくるように迫った。

西條は健一に、成り行きで巻き込んでしまったことを謝罪した。

暴走族の構成員(中瀬博文さん、二家本辰巳さん他)は西條が別荘から出ないことをいいことに、鉄パイプで覆面車を破壊し、車内から拳銃を奪い取った。

健一は構成員の前に姿を現し、無関係であると主張し、構成員には聞き入れてもらえなかった。

暴走族は鉄パイプや拳銃で西條と健一を攻撃してきた。

西條は消火器で構成員を攪乱している隙に、別荘の中に入り、部屋の家具でバリケードを作った。

西條は健一に、今の健一が暴走族と同じ、結局は自分より弱い人間に当たるしか能のない連中であると言い放った。

健一は激しく恐怖していた。

西條は、別荘の窓を棒で割って侵入しようとする構成員に対し、電気スタンドで抵抗した。

西條は健一と組んで出場したダブルスの試合の相手が、自分達より強かった相手だったことを思い出した。

西條は健一に、その試合の時、簡単に負けたけど、全力で頑張ったこと、決して投げ出してはいけないことを諭し、自分も怖いことを説いた。

西條は健一と組み、事態を打開しようとしていた。

西條は健一との連携で、窓から顔を出そうとした構成員の一人を、フライパンで殴った。

構成員たちは拳銃で扉を破壊し、棒で窓を破り、侵入しようとしていた。

西條は、諦めようとする健一に武器を持たせた。

暴走族が木材で扉を破壊し、別荘に侵入してきた。

西條はフライパンで暴走族を殴り、抵抗を試みた。

健一も西條に加勢し、暴走族と戦った。

拳銃を持った構成員が西條と健一に銃口を向け、射殺しようとしたが、間一髪、石塚に撃ち落された。

石塚と西條と岩城と五代は暴走族構成員を格闘で叩きのめし、逮捕した。

健一は家庭裁判所に送られることになったが、中山と西條を殴ったのも一種の喪失状態だったため、減刑が認められる可能性があった。

暴走族は今まで散々暴れ回っていた連中だった。

勝は西條が刑事を続けると見込んでいた。

 

 

メモ

*「ドンマイです」を連呼するドック。

*ドックの父親、西條勝が初登場。梅野氏の配役が医師としても、ドックの父親役としてもピッタリ過ぎる。この回の他に、「ドック刑事のシアワセな日」と「落し穴」に登場している。

*ドックの弟、西條進も登場するが、今回のみの登場。演じるのは「愛の詩-島刑事に捧ぐ」にて、犯人役で出演したばかりの三景氏。

*冒頭、ロッキーとスニーカーにテニスを教えるドック。しかし、2人ともテニスは非常に下手だった。

*ロッキーとスニーカーに対し、「テニスのセンスがまるでない、諦めて帰れ、帰れ」と怒るドック。

*「いいコートがあるだろう、いいラケットがあるだろう、いいコーチがいるじゃないか、おっと空が青いぜ」とロッキーとスニーカーを煽るドック。2人は「コーチの選び方が間違っている、どうせ習うならもっと上手なお方に」とケチをつける(笑)。ここの下りが笑える。

*テニスコートの若い女性にボールを打ち返すドック。しかし、強く打ち過ぎて遠方に行ってしまう。

*風邪をひいたボス。

*人間の心理に長けているスコッチ。

*『太陽』では悲運な父親を多く演じる西本氏。「恐怖の食卓」では家族もろとも人質にされ、「スコッチ誘拐」では娘を誘拐され、今回は息子に重傷を負わされる羽目に。後の「生いたち」では息子が凶悪犯になってしまう…

*令子が名前だけ登場。ボスの連絡に、「早瀬婦警が?」と返し、ボスに「岩城婦警だよ」と怒られるドック。

*栗田氏は今回の数話後の「あなたは一億円欲しくありませんか」で、同じく白バイ警察官役(事件の黒幕)を演じているが、それと同一人物? 栗田氏では珍しい善役。

*ドックとトラック運転手とのやりとり。ドックは運転手からタバコを求められるも、非喫煙者であるために所持していなかった。ドックは運転手に120円を渡すも、今どき120円で買えるタバコがないと断られてしまう。

*運転手に5000円を渡すドックだったが、運転手は既にタバコを持っており、隠していた。「札で出る自動販売機あったかな。チャリーンと、おっ、出た、出た」

*山中湖の別荘に到着した後、手錠と警察手帳と拳銃を覆面車に置いていくドック。警察官としてではなく、西條個人として健一を捕まえたいドックの思いであると解釈している。

*別荘の窓や扉、物が多数破壊されており、損害賠償がかなり多額なものになりそう。

*ラスト、ボスの立ち合いのもと、西條外科医院で勝に頭の傷の治療を受けるドック。勝は「だから刑事という商売から足を洗えと言っているんだ」、「許したわけではない」と言いつつも、既にドックとの仲は打ち解けつつある様子。ラストのボスの「まあそうでしょうな」という笑顔が温かみに満ち溢れていていい。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子

西條勝:梅野泰靖

中山健一:津田和彦、中山健太郎:西本裕行、西條進:三景啓司

中山夫人:渡辺知子、トラック運転手:佐藤晟也、白バイ警察官:栗田八郎、大内幸子

暴走族構成員:中瀬博文、暴走族構成員:二家本辰巳、高橋正昭、城野勝己、井口修一

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:鈴木一平