第432話「スリ学入門」(通算第642回目)

放映日:1980/11/14

 

 

ストーリー

西條は銀行のATMから6万円を下ろし、五代と一緒に街を歩いていた。

西條と五代は今日、同僚の婦警とデートをする予定だった。

西條と五代は、道を歩いている途中に転倒した、菅井喜市(64歳)(浜村純さん)という老人を介抱し、鞄を拾ったが、菅井に財布をすられてしまった。

菅井は西條と五代に、タクシーを探していると嘘をつき、2人にタクシーに乗せてもらい、まんまと逃走することに成功し、西條を間抜けと嘲笑した。

西條と五代は婦警(木内マキさん他)と一緒に高級店で食事を済ませた後、会計の際に、菅井に財布をすられたことに気付いた。

西條と五代は事件の呼び出しと偽って婦警と別れた直後、巡回中の吉野巡査(横谷雄二さん)と遭遇した。

五代は吉野にスリのことを相談しようとしたが、スリのことを内密にしようとする西條に制止された。

西條は刑事が財布にすられたのを恥ずかしいと思っていたため、五代に、一係捜査員に内密にするように頼んだ。

翌朝、西條と五代は朝一番で七曲署に出勤し、資料室で前科者カードを漁っていた。

五代は西條に、被害金額が7万円であるために被害届の提出を提案したが、断られた。

午前9時5分、西條は、自分の財布をすった老人が菅井であることを突き止めた。

菅井は前科4犯で、全てスリの容疑で逮捕されており、蒲田3-15 かえで荘に住んでいた。

西條は五代に、捜査三係のスリ担当刑事に菅井のことを聞くように頼み、資料室を退室した。

五代は刑事(横森久さん)に、ある事件の参考人として菅井に会うこととなっているため、その前に予備知識をという理由で、菅井のことを尋ねた。

刑事は五代に、菅井がしたたかであり、たぶらかされないように気を付けるように警告した。

五代はかえで荘の住人から、菅井のことを聞いた。

菅井は現在、商事会社に勤務しており、毎朝午前6時30分頃に出勤していた。

大家は菅井が夫人を亡くし、子供もいない一人暮らしなのに、愚痴をこぼさない律儀な老人であると評価していた。

菅井の勤務の実態は、2日おきに夕方に商事会社の清掃員として働いているというものであり、毎朝午前6時30分の外出は、スリをするためだった。

菅井は「箱師」と呼ばれる、電車の中のスリの世界では知らない者がいない超ベテランだった。

西條と五代は、恐喝犯の水島徹(畑中猛重さん)の捜査のため、水島に恐喝された被害者の女と対面した。

女は秘密を守りたいことを理由に、恐喝を否認し、水島については知らないと話した。

五代は刑事から、菅井が夕方のラッシュアワーの前に、デパートで財布を掏りまくることを聞き出していた。

西條と五代は菅井を発見し、尾行した。

西條は地下の食料品売り場が、閉店前の1時間には大混雑するため、菅井がそこに行くと予測した。

菅井は服屋でネクタイの試着中、鏡に写った五代を発見し、スリの女性から、刑事に張られていることを告げられた。

菅井はエレベーターに一旦乗ったが、男から財布をすった後、すぐに下りた。

西條は菅井の前に姿を現し、警察手帳を見せ、保安係まで連行した。

しかし、菅井はエレベーターを下りた後、財布の入った紙袋をスリの女性に手渡していた。

西條は保安係から、掏り取った者を素早く仲間に手渡す、吸い取りという手口があるということを教えられていた。

菅井は証拠がないことを理由に釈放され、西條を挑発して立ち去った。

五代は岩城に財布をすられたことを打ち明け、西條と岩城と一緒にかえで荘を張り込んだ。

午前6時30分、西條と岩城と五代は自宅を出発した菅井を尾行した。

午前7時、西條と岩城と五代は、菅井を尾行し、同じ西馬込行の特急電車に乗った。

菅井の弟子の浦野茂(桑原一人さん)は電車が駅に着く寸前、西條の警察手帳をすった。

西條と五代は電車を降り、岩城も菅井のマークを離れ、電車から降りた。

浦野は駅の階段を上る途中、別のスリに警察手帳を渡し、スリが現行犯であるため、所持していない限り、無実であると主張した。

スリはさらに、別の弟子の根室明男(春田純一さん)に手帳を渡していた。

根室は西條に追跡されたが、西條に取り押さえられ、警察官が駆け付けた際、警察手帳で刑事と偽り、警察官に西條が強盗犯であると騙した。

藤堂は西條が警察手帳をすられたことを知り、なぜ最初にすられたことに事態を報告しなかったのか、隠し通そうとするから事態が大きくなったと厳しく叱責した。

五代は浦野と根室の身元を割り出した。

浦野と根室はスリの常習犯で、菅井の教え子だった。

浦野が警察手帳を渡したスリは、仙台のスリだった。

菅井の一声で、日本中から弟子が集まるという仕組みだった。

藤堂は何としても警察手帳を奪還するため、西條と五代に根室をあたるように指示した。

午前10時30分、菅井は西條と五代と入れ違いで一係室を訪問し、落とし物を届けに来たと偽り、藤堂に西條の警察手帳を返還した。

菅井は藤堂から、警察手帳を拾った場所を詰問され、新宿の矢追?の裏の空き地で拾ったと嘘をついた。

岩城は菅井の態度に激怒した。

藤堂は西條の警察手帳が悪用されなかったことに安堵した。

山村は菅井が西條を挑発しているものと推察した。

翌朝、西條は菅井の散歩に同行し、菅井にスリ学の基礎を教え、弟子にするように懇願した。

菅井はあくまで元スリで、現在、更生していることを強調した。

西條の目的は菅井から、菅井が築き上げたスリの技とテクニックを伝授するというものだった。

菅井は西條が休暇をとっていることを知ると、スリの修行が厳しいことを忠告しつつ、西條の弟子入りを許可した。

菅井は西條に、体力づくり、足腰の強化という口実で、腕立て伏せやうさぎ跳び、長距離走のトレーニングをさせた。

西條は菅井宅で、菅井から食事を振る舞われていた。

西條は部屋にスペースシャトルの模型やダンプカーのミニカー、怪獣のソフトビニール人形があったことから、菅井に子供がいるのではと思っていた。

菅井はあくまで、近所の子供が忘れて行ったものであると誤魔化したが、西條にソフトビニール人形が古いものであると指摘された。

菅井は西條を引き止め、爪が伸びていると指摘し、スリが爪の手入れに神経質であり、まめに切って、磨いておかないといざというときに引っかかると教えた。

菅井は西條を連れて外出し、実技講習という名目で、西條にスリの手本を見せようとしていた。

菅井は西條の財布を掏り取った直後に現行犯逮捕されることを先読みし、自分の財布を西條の服のポケットに忍ばせた。

菅井がデパートで財布を掏りまくるのは、昔のスリ仲間から、エレベーターの中が電車の中と構造が似ており、財布を掏りやすいということを聞いたからだった。

菅井は西條に、最初に、大金を所持していて財布を掏りやすい「太郎」という標的の選び方を伝授し、その一番手が、金持ちが多いうえに神経が鈍い太った者か、悩み事を抱いている者か、何かに夢中になって油断している者であると教えた。

菅井が西條と五代を標的にしたのは、西條と五代が夢中になって油断していたからだった。

菅井はスリの標的をじっくり見渡せるという理由で、駅のプラットホームを探す絶好の位置に指定していた。

菅井は西條に、刑事が後ろからスリを監視していることを教えた。

西條は菅井と一緒に?学園駅から急行上野駅行の電車に乗り、別の駅で電車を降りた。

菅井は電車を降りるときに西條の上着から、自分の財布を取り返していた。

菅井は新聞を幕にして、どのポケットに財布が入っているのか、どのくらい金が入っているのか、手で触って知っておく「なかがい」というテクニックを使った。

西條が菅井に弟子入りした目的は、菅井を逮捕するために、事前に菅井の癖や手口を知るためだった。

滝は菅井が刑事の西條に、スリの手口を教えるのと意見した。

菅井は西條と一緒に地下街を歩いている時、倒れたふりをして、西條の上着の左ポケットに入っていた自分の財布を、上着の右ポケットに移動させた。

西條は菅井の財布を、ズボンの後ろポケットに隠したが、菅井にエスカレーターに登る直前にすられてしまった。

西條は菅井と一緒に電車に乗っている途中、菅井に足を踏まれ、その隙に菅井に財布を取られそうになったが、間一髪阻止した。

菅井は西條に、商事会社で清掃の仕事をするという理由で、スリ学の基礎を学び終えたという口実で師弟関係を解消することを告げ、西條の休暇を延長するという申し出も断った。

西條は菅井の清掃の仕事を手伝うことを決心し、菅井に同伴した。

野崎は地下街にて水島を尾行していた。

水島は服屋に立ち寄った際、居合わせた浦野に手帳を掏り取られた。

水島は喫煙した際、手帳を掏り取られたことに気付き、新宿署靖国通地下臨時派出所の警察官(篠田薫さん)に、白い表紙の手帳を掏られたことを届け出た。

野崎は自分の背広のポケットの中に、水島の手帳が入っているのを確認し、浦野が水島から手帳を掏り取り、自分のポケットに放り込んだことに気付いた。

西條は菅井の、化粧室の清掃を手伝っていたが、商事会社に駆けつけた岩城に呼び出された。

西條は一係室に戻り、水島の手帳の件を知った。

水島の手帳には、強請った相手の名前と金額が全て書き込まれていた。

西條の警察手帳には、水島のことや、恐喝事件の被害者から証言を得られないことが書かれていた。

菅井は西條の警察手帳で水島のことを知り、浦野に水島の手帳を掏り取るように指示していた。

スリが掏り取ったものを証拠として使うことは不可能であり、西條が菅井にスリを唆したと疑われる可能性も濃厚だった。

西條は藤堂に、菅井が水島の手帳を掏り取ったのは、3日間、財布をすれなくて収入を得られず、弟子に金を払えないためであり、明朝に財布をすると意見し、もう1回だけ自分にチャンスを与えるように懇願した。

西條は居酒屋にて、失敗したら刑事を辞職する覚悟で菅井に挑戦することを告げた。

スリ係は菅井の逮捕に苦戦している状況だった。

刑事は西條に、菅井にからかわれているだけであり、挑戦をしないように説得したが、聞き入れてもらえなかった。

菅井の本当の得意技は西條に教えたものではなく、電車に乗り込む瞬間に掏り取り、瞬時に行列を離れるというもので、エレベーターの客の男から財布を掏った際に使用した手口だった。

刑事は酒を飲みながら、西條に、菅井に西條と同じくらいの年齢の一人息子がいることを教えた。

菅井はスリの名人とプライドだけを生き甲斐にしていた。

菅井は一人息子を溺愛していたが、3度目の服役を終えて自宅に帰ったところ、一人息子に所持金を全て持ち去られていた。

菅井が金を持った若い男を標的にするのは、一人息子の件からだった。

翌朝の午前7時、菅井は浦野と根室を引き連れ、駅のプラットホームに待機し、浦野から周辺に刑事がいないことを聞き出した。

菅井は電車を待っている吉野を標的に定め、電車の到着寸前に財布を掏り取ったが、西條に発見されてしまった。

五代は根室を、岩城は浦野の身柄をそれぞれ取り押さえた。

西條は菅井が吉野を標的に定めるのを見越しており、プラットホームを張り込んでいては菅井に発見されることを踏まえ、到着した電車に乗ってくるという対策をしていた。

西條は菅井に、更生すれば一人息子が必ず戻ってくると説得した。

菅井は素直に負けを認め、吉野の財布を返した。

西條は、財布を掏られても分からなそうな吉野を選任し、貸衣装屋に吉野を連れて行き、一番派手な背広を着せ、10万円入りの財布を渡していた。

水島の恐喝事件も、被害者の証言で解決していた。

菅井は西條に、7万円を返していた。

 

 

メモ

*ドックが犯罪者に入門する「ドック入門編」の第1弾。この後、「サギ師入門」と「からくり」に続く。

*春田氏は『大戦隊ゴーグルファイブ』に出演する前。

*ATMが古い。

*同僚の婦警を誘い続け、やっと1ヶ月でデートにこぎつけるドックとスニーカー。

*ドックの「食事の後にディスコに行こう」という誘いにも、「今日は昭と潤で呼び合おう」という提案にもノリノリで応じるスニーカー。すっかり明るくなった。

*菅井を助け、「小さな親切、大きな幸せ、今日はいいことありそう」と喜ぶドック。しかし、それは菅井の策略に過ぎなかった。

*ドックが財布をすられたことにより、高級料理店の食事代3万2000円を支払う羽目になるスニーカー。

*菅井に完全に蔑まれ、いつもの電車ではなく路上ですられたことに対し、完全に怒りを燃やすドック。

*水島に恐喝された女(夫人)に、「被害事実を隠してはいけません。そういうことを隠し続けるとどんな大事になるか分からない」と説得するドックだが、完全に人のことが言えない状態に。

*今回は最初期からのBGMが使われていることが多い。

*菅井に、「前途ある若い優秀な刑事」と自称するドック。

*菅井宅で、白飯を4杯も食べるドック。

*「能あるスリは爪を磨く」byドック

*長さんはドックの入門について、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という孫子の兵法と評するが、スニーカーに「古い」と言われてしまう。

*清掃中にロッキーに呼び出され、トイレブラシを持ちながら会話するドック。

*菅井逮捕のための囮に使われる吉野。私は吉野が10万円入りの財布を掏られていることに気付いていると思って見ていたが、長さんに言われてようやく気付いていた。かなり落胆していた。

*ラスト、ナーコの肩に手を置いているスニーカー。いつの間にそんなに親密になったの? 山下氏のアドリブ?

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子、吉野巡査:横谷雄二

菅井喜市:浜村純

七曲署捜査三係スリ担当刑事:横森久、七曲署婦警:木内マキ、山崎優子、浦野茂:桑原一人

水島徹:畑中猛重、根室明男:春田純一、丹羽たかね、神田盟子、牧野和子

ノンクレジット 靖国通臨時派出所の警察官:篠田薫

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:古内一成、小川英

監督:山本迪夫