第431話「誰が彼を殺したか」(通算第641回目)

放映日:1980/11/7

 

 

ストーリー

雑賀俊夫(27歳)(井上高志さん)は同僚の庄司実(27歳)(石田圭祐さん)、浜幸子(24歳)(伊海田彩さん)、平林泰子(28歳)(片桐夕子さん)、杉田明子(20歳)(里見和香さん)と一緒にボウリング場を訪れ、ボウリングを楽しんでいた。

俊夫は自分の番になり、自分のボールを投げ、ストライクを出した。

俊夫はその直後、心臓発作で倒れ込み、病院に搬送されたが、死亡した。

当直中の滝が矢追総合病院から、毒殺の遺体が出たという通報を受け、急行した。

滝は霊安室で俊夫の遺体と対面し、医師(大山豊さん)から詳細を聞いた。

俊夫は救急車に搬送された時には既に意識を喪失しており、午後8時15分に死亡した。

医師は俊夫の遺体に外傷がなく、死因に不審な点があったため、すぐに解剖に回したところ、胃の内部から毒物反応が検出されていた。

俊夫は心臓発作を併発するような特殊な毒を微量、長期間にわたって飲まされていたことが判明した。

俊夫は関東薬品開発部開発課に勤務しており、関東薬品の雑賀社長の息子だった。

滝は完全な計画殺人であると断定した。

滝と五代は、救急車に俊夫と同乗していた庄司に、毒殺のことを告げた。

庄司は俊夫と同じ大学に通っており、親しくしていた。

俊夫は週に2回、開発部のボウリング仲間と一緒にボウリングをしていた。

滝と五代は、雑賀の婚約者で、関東薬品開発部に勤務する本田澄子(瞳順子さん)が病院に現れるのを目撃した。

俊夫は本田と12月に結婚する予定だった。

滝は雑賀邸を訪れ、雑賀夫妻(久遠利三さん他)と面会した。

雑賀夫妻は俊夫の死亡が信じられず、俊夫の敵や犯人にも心当たりがなかった。

雑賀は滝に、毒薬が関東薬品から盗まれたものかもしれないということ、薬品会社が研究用に多種類の劇薬を使用しており、その中には俊夫のような症状を引き起こす薬もあったことを話した。

滝は俊夫の部屋を調査した。

部屋の机には、俊夫と本田のツーショット写真が置かれていた。

滝は俊夫の机の中から、俊夫宛に送られた手紙を発見した。

手紙には、活字の切り貼りで構成された「雑賀俊夫様」という文字と、逆向きのトランプのスペードのエースと、ハートの8が貼られていた。

山村は関東薬品第一工場を訪れ、保安課員の谷(松田茂樹さん)と会っていた。

谷は毒薬を扱っているが、3日おきにチェックしているため、盗まれるなどありえないことを伝えた。

山村は谷に研究室に入れてもらい、毒薬の瓶が入った段ボール箱を見せてもらった。

毒薬の瓶は数がぴったりだったが、中身のチェックは行われていなかった。

山村は谷に、毒薬の瓶の中身の調査を依頼した。

調査の結果、段ボール詰めの毒薬の瓶のうち、1本だけ中身が水だったこと、中身のチェックが3ヶ月以上行われていなかったことが判明した。

研究室は企業秘密を保持するため、管理が厳重で、開発部以外の人間が入室不可能だった。

犯人は開発部の誰かであると推理された。

滝は一係室に帰り、五代から毒物が開発部のものであることを聞くと、犯人が開発部の女性ではないかと意見し、俊夫の部屋から発見された手紙を見せた。

滝はジプシー占いに凝っている者に会い、手紙が殺人予告を意味するということを突き止めていた。

ハートの8は「愛の終わり」、逆さまのスペードのエースは「死」を意味していた。

石塚は西條の、犯人が俊夫に捨てられた女性であるという推理に対し、偽装工作の可能性かもしれないと反論した。

手紙からは俊夫の指紋以外が検出されなかった。

確実なことは、開発部の何者かが毒薬を持ち出したということだった。

杉田は開発課一番の新米で、可能な手口としては朝夕に社員に差し入れる茶だった。

野崎は杉田と会っており、俊夫に長期間毒を飲ませるような女性には思えないという感想を抱いていた。

杉田は来年の3月に結婚を予定しており、俊夫にどっちが幸せになるか競走だと励まされていた。

浜はボウリング大会の時、俊夫にいつもコーヒーを差し入れていたが、俊夫との付き合いについては常識的な域を出ていなかった。

浜の差し入れるコーヒーは、ボウリング大会の参加者全員が飲んでいた。

石塚は俊夫の親友で、いつも同じレーンに付く庄司であれば、いくらでも毒を盛るチャンスがあると疑っていた。

庄司は石塚に、自分を捜査するのは、俊夫の葬式が終わってからにするようにと言い残し、立ち去った。

石塚は社内を聞き込み、社内に派閥抗争があり、アンチ社長派にとって一番の邪魔者が俊夫だったことをつかみ、開発部のアンチ社長一派を捜査することにした。

雑賀家の家政婦の木村ミキ(17歳)(平田京子さん)は、俊夫が飲むコーヒーをいつも淹れていた。

雑賀家には開発部の社員が複数名訪れており、その社員と木村が共犯という可能性もあった。

木村は西條に疑われることを知ると、号泣した。

西條は木村が犯人ではないと確信した。

俊夫は休日にテニスクラブに通っており、通うたびに喫茶室でコーヒーを飲んでいた。

岩城は喫茶室の関係者全員が、その客が俊夫であることを知らなかったため、無関係であると思っていた。

平林はベテラン開発課員で、俊夫より1歳年上で、約1年前(1979年頃)まではかなり仲が良かったが、今は付き合いがなく、ボウリング場でも俊夫と距離を置いていた。

五代は平林と会った時、非常に冷静だったことから、殺人を犯せないと思っていた。

本田も開発部の社員だった。

藤堂は捜査員に、毒薬を入手するチャンスと愛憎問題の2点に絞って再捜査するように命令した。

五代は喫茶店にて、浜から、俊夫と本田についての話を聞いた。

開発部の社員は俊夫と本田が婚約発表した時、全員知っていたため、全く驚かなかった。

浜によると、平林と俊夫はかつて深い仲だった。

滝は杉田から、本田が最近いつも沈みがちで、俊夫のこともほとんど話さなかったことを聞いた。

本田の父親は関東薬品の子会社を経営しており、俊夫が婚約発表してから、会社が関東薬品との契約がかなり有利になっていた。

滝は本田宅を訪れ、本田と面会していた。

本田の父親の会社はここ1年、経営不振で、このままでは倒産という状態であり、俊夫と本田の婚約に救われていた。

本田は滝の、会社が救われたために要がなくなった俊夫を殺害したという推理を見抜き、帰るように怒った。

滝は俊夫と本田のアルバム写真と、未開封の紙封筒の中に入っていた2人のスナップ写真を見た。

本田は写真を大事そうに抱えていた。

五代の捜査で、平林が俊夫と親しかった当時、俊夫と結婚できると信じ、見合い話をことごとく断っていたことが判明した。

滝は一係室に帰り、藤堂に、本田の部屋に、俊夫と本田のスナップ写真が入った紙封筒があったが、最近3ヶ月間のもので、カメラ屋で打ったホッチキスが打ったままになっていることを報告した。

滝は本田が8月以降、俊夫との写真を全く見ようとしていないということから、本田の心境に何かが変化が起こったのではないかということ、家庭の事情が破談を許さなかったことから、俊夫を殺害したのではないかと疑った。

滝は本田が、それを知られた時に非常に動揺していたことを怪しんだ。

滝はスーパーマーケットで買い物中の木村に接触した。

木村は滝に、俊夫が手で虫を握り潰すこと、この前もゴキブリを手で潰していたことを教えた。

本田は会社に休暇届を出し、喫茶店に入り、時刻表の本を読んでいた。

滝は本田に任意同行を求め、証拠もなしに取り調べた。

藤堂は滝に本田のことを任せており、本田がもし犯人でなければ、それだけ疑いも早く晴れるというスタンスだった。

滝は本田に、心理テストのような形で次々に質問をした。

本田は滝からゴキブリのことを質問され、大嫌いと激怒して答えた。

本田は俊夫と婚約してから、俊夫の手で虫を握り潰す癖を知り、どうしても我慢できず、苦悩していた。

本田は犯人ではないと強調しつつも、俊夫の癖が我慢できずに俊夫を嫌いになり、いなくなってほしいと思うようになっていたという心中を吐露した。

滝は本田に、いい旅行をするように促し、取調室を去った。

滝は藤堂に、本田が犯人ではなかったと報告した。

山村が一係室に戻った。

谷は平林の職場友達で、8月4日の昼頃、平林に夜に食事を誘われ、予約の電話をするように頼まれていた。

谷は平林に研究室の留守を任せ、電話に出ていた。

その間の5分間、研究室には平林しかいなかった。

残る問題点は、平林が俊夫に毒を盛った手口であり、それが証明できなければ、事件の解決が困難な状態だった。

滝と西條は平林の隣人に俊夫の写真を見せた。

平林の隣人は、平林とはいつも食べ物や着る物の話ばかりで、そういう話をしていなかった。

平林が滝と西條の聞き込みに居合わせ、質問には答えるという自信に満ちた態度をとった。

平林は自宅に滝と西條を招き入れた。

平林は1年前から俊夫に避けられ始めて以来、俊夫とは会っていないこと、ボウリング場でもレーンが離れ、ゲームが終わればすぐに解散している状態だったことを話した。

滝は平林の書架に置かれている本の間に、トランプが挟まっているのを発見し、平林が、トランプが自分のものであることを言ったことから、俊夫に手紙を送ったのが平林であると断定した。

平林はトランプの中にスペードのエースとハートの8が抜けていることを認めつつ、滝と西條に、それだけでは証拠にならないと静かに挑発した。

平林は自分の手口にかなり自信があった。

滝はボウリング場に石塚と西條と五代を連れて行き、俊夫が死亡した状況を再現しようとしていた。

滝は平林を演じ、紙コップかあるいはその他の方法で毒を盛るかどうかを試すことにし、石塚に庄司を、西條に浜、五代に俊夫を演じるように指示した。

コップの目の前で、誰かが必ずスコアを付けているので、コップに毒を盛ることは不可能だった。

滝はボールに指を入れた際、ボールのことに気付き、五代を連れて庄司に、俊夫にボウリングをするときの癖を尋ねた。

庄司は俊夫が、気合を入れるときに、ボールの穴に指を入れる前に指を舐める癖があったことを思い出した。

木村によると、俊夫のボールは俊夫の通夜の時、平林が雑賀邸に届けていた。

開発部には専門のロッカールームがあり、ボウリングに行くときは、それぞれ自宅から持参したボールを会社に置いていた。

平林はボールの穴に毒を仕込んでいた。

平林はさらに、俊夫が救急車で搬送された時、手の汚れを拭くふりをして毒を拭き取り、毒の付いたボールを自宅まで持ち帰っていた。

西條と岩城がボールの店を調査したところ、ボールを買ったのが平林であること、2年前(1978年頃)の俊夫への誕生日プレゼントであること、イニシャルのデザインも平林が自分でしていたものであることが判明した。

山田鑑識課員(三上剛さん)は滝に、ボールから毒物が検出されなかったが、代わりにアルコールで消毒した痕跡があったことを報告した。

証拠は皆無だった。

滝は必死に平林を逮捕するための手段を模索していた。

滝はボウリング場でボウリングを楽しんでいる平林に接触し、一緒にプレイするように申し出た。

滝はわざと俊夫のボールを使い、平林に俊夫のイニシャルを見せ、俊夫の指を舐める癖も再現した。

滝は平林に、谷と会い、8月4日のことを思い出してくれたこと、その日に毒がすり替えられたことを伝えた。

平林は滝の、何かの拍子に口を滑らせないかという意図を読み取り、口を滑らせないのは犯人ではないからと挑発した。

岩城はボウリング場の常連客と偽り、平林と会った。

岩城は平林に、スペアボールのほうが手に合うというかまをかけた。

平林はボールが一つしかないと安心していたが、滝に俊夫もスペアボールを持っていたと言い放たれ、激しく動揺した。

平林はそれでも自信に満ち溢れていた。

五代がボウリング場に駆けつけ、平林にスペアボールを見せた。

平林は自分が俊夫にボールを贈ったため、自分を捨てた俊夫がスペアを作っているはずがないと考え、スペアボールが嘘であると思い込んだ。

滝は平林に、俊夫が平林を傷付けないように、スペアボールにも同じイニシャルのデザインを付けたこと、スペアボールには毒が残っていると考えていたことを告げた。

平林は滝から、五代が持ってきた鑑識結果報告書を見るかと尋ねられ、遂に観念し、俊夫を殺害したことを自白した。

五代は平林を逮捕した。

鑑識結果報告書は白紙で、スペアボールも昨日できたばかりのものだった。

滝は平林から鑑識結果報告書を見せるように頼まれたら、平林を逮捕するまで、捜査をやり直しするつもりだった。

 

 

メモ

*ボウリングの際、指を舐める癖がある俊夫。このフォームを真似たスコッチがストライクを決めたことから、意外と効果有り?

*「8とエース、カブだ」byドック

*スコッチの「ジプシー」発言。

*手で虫を握り潰す俊夫。虫が苦手な私としては確かに気持ち悪い。ナーコにもその癖を嫌がられてしまう。

*自分で「虫も殺さぬいい男」と豪語し、「(本田に)俺と付き合えばよかった」と呟くドック。

*俊夫の役目を演じることになり、被害者であるという理由で落胆するスニーカー。ドックにお金持ちの役なんだからと励まされるが、そのドックは浜の役目を演じることになり、女の役目であるという理由で落胆。そしてスニーカーに夫人の役なんだからとからかわれる。

*そして、浜を演じるのにノリノリなドック。オネエ言葉になる。

*ボウリング場の常連客と偽ってボールを投げるも、見事ガーターという結果のロッキー。

*結果的に偽の鑑識報告書とハッタリで、知能犯で用意周到な平林を逮捕したスコッチ。偽の鑑識報告書云々はいらず、単に「スペアボールの毒を消し忘れていた」だけで良かったような。

*スニーカーには、虫を潰す癖はないらしい。

*ラスト、一係室でボウリングをやろうということで、ボスの机で自分の拳銃の弾丸をピンのように並べるドック。スコッチは自分の懐中時計をボールに見立て、ピンのように並べた弾丸に投げ、見事ストライクを決めるが、当たり前のようにボスに怒られる。ここの一連のシーン、何度見ても笑える。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子

平林泰子:片桐夕子

本田澄子:瞳順子

杉田明子:里見和香、雑賀俊夫:井上高志、浜幸子:伊海田彩、雑賀社長:久遠利三、谷:松田茂樹、庄司実:石田圭祐

木村ミキ:平田京子、山田鑑識課員:三上剛(後の三上剛仙)、泉よし子、矢追総合病院医師:大山豊、山地美貴

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、古内一成

監督:山本迪夫