第426話「愛の終曲」(通算第636回目)

放映日:1980/10/3

 

 

ストーリー

矢追マンションの住人の主婦(五月晴子さん)は、隣の203号室の住人の沖田清二(潮哲也さん)が部屋から飛び出してきたこと、沖田の手に血が付着していたことに驚愕した。

沖田は矢追マンションを走り去っていった。

主婦が沖田宅に入ったが、室内では、本間恒彦(26歳)(松田茂樹さん)が彫刻刀で刺されて死亡しており、沖田の妹の沖田恭子(23歳?)(佳那晃子さん)が血でシャツを汚し、呆然としていた。

石塚と五代は藤堂から、沖田宅で殺人事件が発生したという無線連絡を受け、現場に急行した。

沖田は4年前(1976年頃)、恭子の恋人を殺害していた。

西條は目撃者の主婦から事情を聴いていた。

被害者の本間が恭子の婚約者であることから、犯人は沖田であると推測された。

凶器の彫刻刀は、恭子が木彫りに使用しているものだった。

恭子はショックが強過ぎて気を失い、記憶を喪失しており、シャツの血も沖田を制止しようとして付着したものであると思っていた。

五代は恭子を七曲署に連れて行った。

本間の死亡推定時刻は午後6時前後であり、本間と恭子がワインを飲んでいるところに沖田が帰宅し、凶行に及んだと考えられた。

本間は後頭部から首筋を彫刻刀で滅多打ちにされていた。

彫刻刀には恭子と沖田の指紋が付着していた。

沖田は自宅から電車で一駅、約30分の距離にある、勤務先の自動車修理工場を午後5時に出発しており、帰宅直後の犯行であるという線が断定された。

本間が勤務するスポーツショップの同僚によると、本間は今日、恭子に結婚を申し込んでいた。

4年前の事件でも、沖田は恭子が婚約した直後、相手を殺害していた。

4年前の事件では、先に殴ったのが被害者のほうだったことから、沖田には傷害致死という判決が下り、懲役4年の刑に服していた。

沖田兄妹は幼少期に両親を亡くし、二人きりで生きていた。

沖田は独学でエンジニアになったが、恭子に男の友達ができるようになった5年前(1975年頃)から豹変するようになっていた。

恭子の男の友達は沖田の4年前の事件のことを知ると、全員が恭子から離れていっていった。

しかし、本間だけは別で、恭子の制作した木彫りを嬉しがり、沖田の昔の事件を気にせずに、恭子に結婚を申し込んでいた。

恭子は事件に関しての記憶を全て失っていた。

恭子は山村から、気付いた時の部屋の状況を尋ねられ、自分が床に倒れていて、本間が血塗れで死亡していたこと、沖田が彫刻刀を手に取っていたことを答えた。

恭子は沖田が事件の時、またやってしまったと言い残して部屋を出たことを述べた。

五代は矢追マンションまで恭子を送迎したが、事件が起きた部屋に泊まりたくないと断られた。

石塚と五代は矢追マンションを張り込み、沖田が戻ってくるのを待った。

石塚は五代に、4年前の事件も、沖田宅を張り込み、沖田が現れるのを待ったことを話した。

恭子は4年前では19歳で、死亡した父親の自宅に兄妹で住んでいた。

4年前の事件当日の翌晩、沖田は恭子の顔を見ずにはいられず、自宅に戻っていた。

五代は恭子を愛し抜こうとした本間を立派だと思っていた。

五代には、かつて結婚しようとした女性(小林伊津子さん)がいたが、恭子から逃げていった男と同じように、逃げてしまった。

五代の元恋人は、正月に帰郷した時、お見合いをしたが、その相手に気に入られ、五代に結婚することを告げた。

元恋人は母親が病気がちで、弟が高校生であり、父親が死亡してから困窮していた。

見合い相手はそれを承知で結婚を申し込んでいた。

元恋人はその見合い相手と結婚しようか迷っていた。

元恋人は五代が決断を迷っていたことから、五代のもとを去っていた。

五代は、元恋人の病気の母親と、高校生の弟を抱え込む自信がないという理由だけのために逃げてしまった自分を激しく後悔しており、逃げなかった本間を讃えていた。

五代は矢追マンションを捜索中、付近に隠れていた沖田を発見し、追跡した。

恭子は付近の家に泊まっていたが、サイレンの音を聞き、沖田の身を案じた。

五代は沖田を見失ってしまった。

藤堂は4年前、沖田がドヤ街に潜伏したことから、捜査員にドヤ街の捜査を命令した。

沖田は港湾作業員に成り済ましていたが、石塚に発見され、石塚と五代に包囲された。

五代は沖田を逮捕した。

本間の通夜が今日に執り行われることになり、新潟から本間の両親が上京することになっていた。

沖田は恭子から、いきなり本間が結婚相手であることを聞かされ、出所したばかりなのに恭子を自分から奪うのかと激情し、殺害してしまったと供述した。

沖田は矢追マンションに午後6時の少し前に戻ったこと、本間と一緒にワインを飲んでいた恭子から結婚を聞かされ、堪えて奥の部屋に戻ったが、恭子の笑い声を聞いて許せなくなり、恭子の仕事場にあった彫刻刀を凶器に使用したことを伝えた。

沖田は恭子が本間と一緒に楽しそうに笑っていたことに激怒し、無我夢中で後ろから本間の首元に彫刻刀を突いたと供述した。

山村は沖田に、ワイングラスが割れたことについて質問した時、曖昧に返したことを疑問に思った。

沖田は自分を制止して泣きわめいていた恭子を突き倒し、本間が死亡しているのを見て動揺したこと、恭子が気を失っていることに気付き、罪悪感を覚え、許してくれと言った後、部屋を立ち去ったことを伝えた。

沖田は血の付着したジャンパーを、逃走中に相模町の廃品処理場の焼却炉に放り込んでいた。

本間の両親(加藤茂雄さん他)が本間宅に入り、本間の通夜を執り行っていた。

五代が恭子を連れ、本間宅に入った。

五代は本間の両親に、恭子が一言お詫びを言いに来たこと、沖田を逮捕したことを告げ、恭子に焼香させるように懇願した。

本間の両親は無言のまま、怒りと悲しみが混ざった表情を向けた。

恭子は自分がいなくなれば、沖田が二度と凶行に及ばないと思い込み、本間宅を飛び出した。

恭子は車道に飛び出し、走行中のトラックに身を投げようとしたが、気を失って倒れた。

トラックは間一髪、その前で停車した。

恭子は救急病院に搬送された。

五代は藤堂と山村と石塚に、恭子が自殺未遂を図ったことを告げた。

藤堂は五代の、恭子のそばにいたいという申請を許可しつつも、事件が解決していないことを強調した。

山村と石塚は、衝動殺人犯の供述が興奮し、発言が支離滅裂になることが多く、4年前の沖田もそうだったのに、今度の供述でははっきりし過ぎていることを不審に思い、沖田が嘘を吐いていると直感していた。

藤堂は沖田の拘留期限まで、沖田の供述の裏付けを取ることを決定した。

五代は恭子に、幸福になってほしいために、二度と自殺を考えないと約束するように求めた。

恭子はそれに応じ、笑顔を見せた。

恭子は矢追マンションから転居することを決意していた。

五代は仕事が終わった後、恭子の引っ越しを手伝うことを決めており、恭子に沖田の供述の裏付けの確認を頼んだ。

しかし、恭子が事件当日に記憶していることは、本間が自宅に来てプロポーズしたことと、沖田が逃走したことだけだった。

西條は心理的な一種の記憶喪失であると判断した。

沖田は何度も同じ供述を繰り返していた。

沖田宅の隣人の主婦は西條と五代に、沖田が午後6時の少し前に帰宅したことを伝え、沖田が帰宅する前にガラスが割れたような音が聞こえたことを思い出した。

沖田の交流期限があと5時間に迫っていた。

五代は非番の日、恭子が新しく住むアパートを探すのを手伝っていた。

恭子は五代の勧めもあり、新しく住むアパートをふじ荘に決定した。

五代は恭子が作る木彫りを欲しがっていた。

沖田は事件未解決のまま、送検されることが決定した。

捜査員は矢追マンションと周辺の住宅を調査し、事件時刻に瓶や窓ガラスが割れた家が1軒もないことを突き止めていた。

沖田宅の真下の部屋の住人が、事件当日の午後5時10分ごろに、沖田宅から瓶の割れる音を聞いていた。

沖田宅でワインの瓶が割れたのは沖田が帰宅する前であることが確定し、犯人が沖田ではなく、第三者か恭子である可能性が浮上した。

五代は恭子が本当に本間を愛していたこと、実の兄の沖田が本間を殺害したために自殺しようとしたことから、犯人が恭子であるという可能性に異議を唱えた。

西條と五代は引っ越しの手伝いをするために、恭子の自宅を訪れた。

五代は、今回の事件だけは山村の推理が外れていると信じていた。

恭子は五代のために木彫りのペンダントを製作していた。

恭子は幼少期から指の汚れに神経質だったため、作業中にいつも手袋を付けていた。

凶器の彫刻刀には恭子の指紋が付着していたため、犯人が恭子で、沖田が身代わりである疑惑が濃厚となった。

五代はそれでも、恭子が犯人ではないと固く信じていた。

五代は恭子から承諾を得て、3本の彫刻刀を借りることにした。

五代が恭子を犯人でないと思っていたのは、いつも手袋を使うと正直に言ったこと、五代に彫刻刀を貸したことからだった。

鑑識課の山田(三上剛さん)は恭子の彫刻刀を鑑定し、五代に3本とも指紋が付着していないことを報告した。

午前9時10分、山田が一係室を訪問し、藤堂に恭子の彫刻刀を提出した後、指紋が全く付着していなかったことを報告した。

恭子は誰よりも沖田を信じて生きてきたため、沖田が自分に近付く男を次々と追い払った時から、少しずつ、その恋人を失いたくないと思うようになった。

恭子は本間を愛すれば愛するほど、本間を失うのを激しく恐れていたが、そこに沖田の出所と本間のプロポーズが重なった。

恭子は沖田に脅され、本間が離れていくのを激しく恐れ、本間を永遠に独占するために、本間を殺害していた。

沖田は恭子の殺人を目撃したために、恭子を庇っていた。

滝と西條は五代もこの事実に気付いていると考え、ふじ荘に急行した。

五代はふじ荘を訪れ、恭子と会った。

恭子は五代が注文した木彫りのプレゼントを完成させ、五代に贈った。

五代は木彫りのペンダントを高く評価した。

山村と野崎は留置中の沖田に、沖田が事件を起こしてから今まで、五代がずっと恭子の支えになっていること、五代が恭子に愛を告白することを話した。

沖田は山村と野崎に、五代が殺害されるために恭子を止めるように懇願した。

沖田は恭子が本間を殺害するところを目撃したことを自白した。

恭子は五代が結婚を願い出ると、一旦は涙を流して喜ぶも、豹変して彫刻刀を手に取り、五代を背後から殺害しようとした。

滝と西條が恭子の自宅に駆けつけ、殺害を阻止することに成功した。

滝は恭子に、病気であると告げ、恭子を連行した。

五代は自分で自分の気持ちが分かっていなかったが、藤堂に考えるのを後にするように促された。

 

 

メモ

*「愛の殺意」と「秘密」のミックス兼リメイクのような作品。

*ドックが着任してから軟派な部分が目立つようになったスニーカーだが、今回は着任してから殿下が殉職するまでの真面目なキャラクターに戻ったような感じになっている。

*細かいところだが、沖田宅は表札では「203号室」となっているが、ボスの無線連絡では「201号室」となっている。

*好青年だったのに、無意識の恭子に殺害されてしまった本間がひたすら哀れ。

*同じ親を幼少期に亡くし、兄妹2人きりで生きてきた身として、恭子に接するスニーカー。

*スニーカーの元恋人の女性は「トンコ」と聞こえたが、不明瞭なので「元恋人」とした。

*スニーカーに恋人がいたが、病気の母親と高校生の弟を抱え込む自信がなくて別れてしまったことが判明。

*スニーカーに対し、「愛というものは、それによって幸せになる人もあれば、不幸せになる人もある」と助言するゴリさん。自身の恋愛経験もあってから、説得力が半端ない。

*以前は暴走することも多かったスニーカーだが、今回は頑固な部分もありつつも終始冷静に対処。成長がみられる。

*「運転中は前を見て」としきりにスニーカーに言うドック。

*スニーカーに、明日の昼食を奢ると言われ、恭子の自宅の引っ越しの手伝いをする羽目になるドック。「警察の食堂では嫌だ」と愚痴を言う。

*「こんな箪笥を運ぶぐらい簡単す」byドック

*佳那氏の顔に青い光と赤い光が当たる演出が怖い。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

西條昭:神田正輝

 

 

松原直子:友直子

沖田恭子:佳那晃子

沖田清二:潮哲也

五代の元恋人(トンコ):小林伊津子、本間恒彦:松田茂樹、沖田の隣人の主婦:五月晴子

山田鑑識課員:三上剛(後の三上剛仙)、荒瀬寛樹、本間の父親:加藤茂雄、志村幸江

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、尾西兼一

監督:高瀬昌弘