放映日:1980/9/12
ストーリー
野崎は父親の法事で、夫婦揃って5年ぶりに帰郷し、2,3日の間に自宅を留守にすることを、近所の主婦に話していた。
武田収(田中浩二さん)という新聞配達員の少年が、野崎と主婦の話を立ち聞きしていた。
テレビのニュースで、新宿区矢追町2丁目にて、ジョギング中の会社員の水上進(28歳)が轢き逃げされるという事件が報道された。
水上は救急病院で治療を受けていたが、足の骨を折る重傷を負っていた。
ちょうど自動車で通りかかった目撃者が事故の現場をはっきり目撃していたが、自動車のナンバーをよく記憶していなかった。
野崎は康江(西朱実さん)と一緒に、小田急電鉄の成城学園前駅に到着した時、轢き逃げ事件のことが引っかかり、康江に先に行くように促した。
目撃者によると、犯人の自動車はジョギング中の水上を轢き、一旦急ブレーキを踏んだが、急にスピードを上げ、矢追町3丁目方面に逃走していた。
犯人が背広姿の男のであること、自動車の色が白であること、品川ナンバーで末尾が65であったことが判明していた。
水上は左足膝関節の複雑骨折で、全治2ヶ月だった。
野崎が一係室に入り、石塚に、目撃者がいるにもかかわらず、犯人が逃走した理由を質問した。
山村と石塚と岩城は事件について、水上が生命に別条がなく、厄介な事件でないことからすぐに解決するとして、法事に行くように勧めた。
野崎はそれでも解決するまで事件を手伝うことを決意していた。
滝は陸運局から藤堂に電話し、該当する自動車が1500台あることを報告した。
野崎の捜査で、村上慎一(35歳)という男が容疑者として浮かんだ。
村上は芸能関係のルポライターで、昨夜から行方不明だった。
村上は今朝、自宅に助手を呼んでいたが、自宅には村上の自動車も、村上の姿もなかった。
野崎と岩城は、村上と頻繁にコンビを組む芸能ルポライター(安原義人さん)から話を聞いていた。
ルポライターは昨夜、村上とは会っていなかった。
村上は切れ者で、芸能界では今やトップランクのライターだった。
芸能ルポライターは野崎と岩城に、村上の居場所を質問され、昨日に村上が電話で、守田と話すと言っていたと答えた。
守田は、今売り出し中の歌手の堀川陽子(16歳)が所属する星和プロダクションの社長だった。
野崎と岩城は星和プロダクションの女性事務員から、守田が堀川を送迎に、城北高等学校に向かっていることを聞き出した。
堀川(池田信子さん)は明日のテレビのリハーサルのため、途中で下校した。
守田(頭師孝雄さん)は先生に、堀川のことについて電話をしていて、堀川に乗用車の車内で待機するように指示した。
野崎は事件解決のめどがつきしだい、法事に急行する予定だった。
武田と、相沢武(星野浩司さん)は、車内で待機中の堀川にサインを求めるふりをして、ナイフを突きつけ、連れ出した。
武田と相沢は堀川を拉致中、横断歩道のない場所を通ったため、野崎と岩城の覆面車に轢かれそうになり、注意された。
野崎と岩城は城北高等学校に到着後、堀川を捜索中の守田を発見した。
野崎と岩城は守田から、堀川が制服を着ていることを伝えられ、堀川を目撃したことを思い出した。
派出所の警察官は堀川の大ファンで、毎日見ていたため、武田と相沢に連れ出されたのが堀川であると断定した。
守田は堀川が誘拐されたと思い込み、これから堀川に仕事があること、堀川が仕事を放り出す性格ではないことから、激しく取り乱した。
堀川は定期券を、武田と相沢は新宿までの切符を所持していた。
西條と五代は藤堂から、堀川が誘拐されたという疑いがあるという連絡を受けた。
西條と五代、石塚と滝はそれぞれ新宿駅に急行し、堀川を捜索した。
守田は村上と会ったことを認めたが、今はそれどころではないという理由で、そのことを話そうとしなかった。
野崎は新宿に到着するまでの間、質問に答えるように頼んだ。
守田はもしも高額の身代金を強要されたら、プロダクションで用意できないとして、激しく混乱していた。
守田は昨夜、赤坂のクラブ「マイ」で村上と会ったこと、村上がいつも通りにしていたこと、村上と午後9時から閉店の午後11時30分まで会い、朝が早いためにそこで別れたことを答えた。
守田は警察が堀川の誘拐より、村上の質問を優先することに不快感をあらわにしていた。
五代は西口広場の階段にて、堀川の後ろ姿を発見したが、堀川の手を引っ張っていたのが相沢だけだったため、堀川と違うと思って見逃してしまった。
五代は堀川の顔を見て、追跡したが、武田に突き飛ばされた。
武田と相沢は堀川を連れてバスに乗り、滝と五代をまこうとした。
西條と五代はバスを急停車させたが、車内には既に3人の姿が無かった。
バス運転手(中島元さん)によると、3人は1つ目の停留所でバスを降りていた。
城北高等学校の窓から、堀川が拉致されるのを目撃した生徒がいた。
藤堂は事件を誘拐と断定した。
野崎は武田と相沢を一度目撃した時には、全く注意していなかったため、高校生風の男というぐらいにしか記憶していなかった。
五代は1人がチェックのシャツにジーパン、もう1人が横縞のシャツを着用していたことを記憶していたが、顔までは見ていなかった。
城北高等学校の生徒の中には、犯人に該当する人物がいなかった。
守田は犯人に全く見当がつかなかった。
守田は明日に大事な特番の生放送があること、今日がそのリハーサルであるということから激しく動揺していた。
藤堂は明日、その番組の放送が開始すれば、公表せざるを得ないことを懸念した。
野崎は守田の様子に不審さを感じ、守田に何か後ろ暗いことがあるのではないかと直感していた。
守田がクラブ「マイ」から真っ直ぐ帰宅したことは確定していた。
守田は暴力団とも関係性があり、噂のある男であり、誘拐の原因とも考えられた。
藤堂は野崎に、村上も含めて守田を捜査するように命令し、康江に電話するように促した。
武田と相沢は堀川を連れて、一般家屋に侵入し、カップラーメンを食べていた。
野崎は再度、芸能ルポライターと対面し、守田のことを聞いた。
守田にはタレントのギャランティをごっそり搾取したという噂や、移籍を希望したところ、脅迫したという噂があったが、やり口が巧妙で起訴されていなかった。
1年前(1979年頃)、堀川と同じ、高等学校1年生の女性歌手で、星和プロダクションに在籍していた古城冴子が、睡眠薬を飲んで自殺するという事件が発生していた。
事件は城西署が徹底的に捜査したが、結局、仕事に自信を喪失したノイローゼ自殺と断定され、それ以上何も出なかった。
芸能ルポライターは村上が守田を叩くため、古城の事件を徹底的に調査していたことを思い出した。
村上(西田健さん)が今朝に、乗用車で人を轢いたと言って自首してきた。
野崎は一係室に戻り、村上を取り調べた。
村上は守田と別れた後、明け方近くまで中央公園で酔いをさましていたと述べた。
野崎は村上に対し、才能があるルポライターであるにもかかわらず、その日に人を轢き、目撃者がいるのに夢中で逃走したことを疑問に思っていた。
村上は激しく動揺した。
野崎は村上に、守田に昨夜の村上のことを質問すると、今の村上のように激しく動揺することを指摘した。
村上は堀川が誘拐されたことを知らなかったが、野崎から、堀川を誘拐したのが高校生風の2人であることを告げられると、動揺した。
村上は高校生風の2人の名前と顔を知らなかった。
古城が自殺してから約3ヶ月後、村上のもとに、高校生風の男が匿名で、古城が自殺ではなく殺害されたと電話で訴えてきた。
男は村上に、古城が死亡する少し前、電話で古城と話をしたこと、古城が助けを求めてきたことを伝えた。
古城は守田に移籍すると言ったため、脅迫されていたようだった。
村上は守田の言い方がきついから、いつも女性がびっくりするだけであるとして、守田を庇った。
村上は守田にしつこく調査を依頼され、調査を一応約束した。
男は村上に、毎月10日に電話をすると言い残し、電話を切った。
村上は野崎に、男ともう1人、同い年ぐらいの若い男が電話をかけてきたことを供述した。
村上が屋台で酒を飲んだのは、若い男からの電話を避けるためでもあった。
村上は明け方近くに帰宅後、男からの電話を取ったが、いくら調査してもそんな事実がないと言って、電話を切っていた。
村上は男2人が事実に納得いかず、守田を撃破するために堀川を誘拐したのではないかと思っていた。
野崎は村上が守田に買収され、事実を黙殺したのではないかと推測していた。
村上はあくまで男2人の誤解であると言い続けた。
守田が村上と「マイ」で会っていたのは、村上を買収するためだった。
村上は昨夜、守田に買収され、調査した事実を黙殺すると約束してしまった。
武田と相沢は一晩中、村上に電話を掛けたが、素っ気なく返事されたため、激怒して堀川を誘拐していた。
守田は現在、堀川を売り出していたが、1年前までは古城一人で毎月数千万円を稼いでいた。
しかし、守田は古城に毎月10万円しか払わなかった。
野崎は守田が堀川の誘拐を知った直後、まず金の心配をしたことから、タレントへの愛情が皆無であると断言した。
藤堂は野崎に、自分達が解決しなければならないのは誘拐事件であり、古城が死亡している以上、脅迫も横領も成立しないことを言い聞かせた。
しかし、古城の高等学校の友人は全員犯人ではなかった。
午後2時、野崎は古城の中学校時代の友人と小学校時代の友人まで調査する気でいた。
堀川が出演する番組は午後5時10分に放送するため、これでは穴が開いてしまう状態だった。
野崎は五代に堀川の中学校の調査を指示し、着替えをするために表通りで降ろすように頼んだ。
野崎は自宅に帰ったが、室内には武田と相沢と堀川がいた。
武田は新聞配達中、野崎が自宅を3日間留守にすると聞いたため、管理人室から合鍵を盗み出し、相沢と堀川と一緒に野崎宅に侵入していた。
野崎は武田と相沢を誘拐罪で逮捕すると宣告し、堀川に番組への出演を促した。
野崎が七曲署に通報しようとした直後、武田と相沢がそれぞれナイフを喉元に突きつけ、自殺しようとしていた。
武田と相沢は逮捕を覚悟し、堀川が出演する番組に穴を開けることと守田への復讐を目的として、堀川を誘拐しており、番組の放送が終了したら、堀川を釈放するつもりだった。
武田と相沢は古城の友人で、頻繁に遊んでいたが、古城が歌手になってからはずっと会っていなかった。
去年の夏、古城は武田と相沢に、友達が君たちしかいない、守田が怖い、もう歌が歌えないと助けを求める電話を呟いていた。
武田は古城の電話を冗談と思っていたが、その晩に古城が自殺したことを聞き、相沢のもとに飛んでいった。
相沢は古城が自分達のことを友達だと言い残して死亡したことから、古城のことを放置できなかった。
武田と相沢は村上に調査を依頼したが、村上が先月までは、ペンの力で制裁を加えると言っていたのに、態度が豹変したことから、村上が守田に買収されたと思っていた。
そして、武田と相沢は守田に少しでも打撃を与えるために、堀川を誘拐しており、野崎に番組が終了するまで待つように懇願した。
野崎は武田と相沢の懇願を断り、誘拐が殺人の次に罪が重いことを言い聞かせ、ナイフを下ろすように迫った。
堀川は武田と相沢に同調し、誘拐をしておらず、自分から2人について行ったと言い始めた。
堀川は守田がどんなに酷い性格か、古城がどんなに苦しんだかを知っていた。
堀川は嘘の笑顔をつくるより、武田と相沢と友達になりたいと思うようになっており、野崎に番組が終了するまで待つように求めた。
野崎はあと3時間待つだけであると悩んでいたが、そこに藤堂から電話が入った。
五代が中学校を調査したことにより、2人の少年の身元が武田と相沢であること、2人とも古城のクラスメートであることが判明した。
藤堂は、野崎が武田と相沢の住所を聞かずに電話を切ったことを疑った。
武田と相沢は野崎が自分達を見逃してくれたことに喜んだ。
野崎は事件を見逃せないと考え、藤堂に3人が自宅にいることを電話連絡した。
武田と相沢は野崎が自分達を騙したと思い、野崎に暴行を加えた。
野崎は玄関から逃走しようとする武田と相沢の身柄を押さえ込み、殴られながらも誘拐罪で逮捕すると宣告した。
西條と岩城と五代が野崎宅に駆けつけた。
野崎は堀川に、武田と相沢を騙したのではなく、2人を見逃そうかどうか迷っただけであることを話した。
堀川は今夜の番組に出演する気も、歌う気も無くしていた。
野崎は堀川に、堀川も歌もプロダクションのものではなく、多数のファンのものであり、そのファンに歌うことを約束した以上、守らなければいけないのが仕事であると説得した。
野崎は堀川に、武田と相沢の友達になるように頼んだ。
武田と相沢は留置場にて、警察への恨みを叫び続けた。
午後5時、堀川は番組に出演し、持ち歌を歌っていた。
メモ
*『踊る大捜査線』の脚本家、君塚氏が執筆した回。君塚氏は『太陽』では今回と「ある誘拐」を執筆している。(同じ長さん主演作)
*5年ぶりに帰郷することになっていたのにもかかわらず、轢き逃げ事件が引っかかり、康江を先に行かせる長さん。
*「刑事の娘が嫁ぐとき」や「ウェディング・ドレス」でもそうだが、捜査を優先して旅行に行けない長さん。
*「別人28号」byドック
*いちいちアクションが華麗なスコッチ。
*ラスト2分、堀川の歌が延々と流れる。尺稼ぎ?
*ラスト、堀川が出演する番組を見ている一係捜査員。ボスやゴリさん、スコッチもノリノリで見ているようだ。
*堀川の持ち歌は、どうやら浦部正美氏の「ふるさとは春です」のようだ。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
滝隆一:沖雅也
岩城創:木之元亮
五代潤:山下真司
西條昭:神田正輝
松原直子:友直子、野崎康江:西朱実
武田収:田中浩二、堀川陽子:池田信子、相沢武:星野浩司
守田社長:頭師孝雄、村上慎一:西田健、芸能ルポライター:安原義人
木村令子、バス運転手:中島元、福岡由里子、植村恭子、工藤えり
石塚誠:竜雷太
野崎太郎:下川辰平
山村精一:露口茂
脚本:小川英、君塚良一
監督:山本迪夫