放映日:1980/4/18
ストーリー
午前11時、五代は喫茶店を訪れたが、待ち合わせの相手の島がまだ来ていなかった。
島は喫茶店に向かう途中、逃走する強盗犯の長沼和雄(高橋利道さん)と、強盗犯を捕まえるように叫ぶ栗田洋三(鈴木弘道さん)を発見し、長沼を追跡した。
長沼は乗用車に乗って逃走した。
島は長沼の乗用車を狙い撃ちすることができず、居合わせた佐川勉(栗原敏さん)のイースタンのタクシーに乗り、長沼を尾行した。
煙草屋の老婆が、タクシーに乗る島を目撃していた。
長沼は川崎の廃工場に入り、乗用車を降りた。
島はタクシーを降り、乗用車に長沼がいないことを確認した後、佐川に七曲署への連絡を要請した。
島は工場内を探索した。
午前11時40分、石塚と岩城は空き巣事件を解決させ、一係室に戻った。
事件の犯人は被害者の一人息子の高校生で、最近(1980年当時)流行のアンティークコレクションに夢中になり、友人からの借金が増えていったことが動機だった。
被害金額は約20万円だった。
野崎は島が五代と一緒に恐喝事件の聞き込みをしていると思っていた。
五代は島がいつまで経っても喫茶店に現れないことを不審に思い、藤堂に報告した。
島は工場を調査中、乗り捨てられたタクシーを発見したが、その直後、何者かからライフルで銃撃された。
島は拳銃で応戦し、周囲を見渡し、犯人が3人であることを確認した。
岩城は美容室の美容師から、ウェーター風の男が、強盗犯を捕まえてくれと叫んでいたという証言を入手した。
岩城は美容師の、強盗犯を追跡した刑事が紺のスリーピースを着用していたという証言から、その刑事が島であることも確認した。
五代は岩城と合流し、岩城に煙草屋の老婆が、島がイースタンのタクシーで他の乗用車を追跡していたのを目撃していたことを告げた。
五代は強盗事件であるにもかかわらず、被害者が全く通報してこないことを疑った。
午後0時25分、藤堂は岩城と五代に、その被害者を探し出すように命令した。
一係室にタクシーが強奪されたという事件が通報された。
強奪されたタクシーのタクシー会社はイースタンだった。
強奪されたタクシーの運転手は気絶し、公衆便所の個室に倒れているところを近所の子供に発見された。
運転手は午前10時頃、用を足すために公衆便所に入った際、何者かにスパナで後頭部を殴られ、個室に監禁されていた。
運転手は振り向く間も無かったため、何も犯人については覚えていなかった。
島は工場が静かすぎることを怪しみ、拳銃の残りの銃弾が3発で、予備の銃弾が無いことを心配した。
島は思い切って犯人たちを誘い出すことを決心し、外に飛び出し、犯人たちの狙撃を回避した。
島は瓦礫の山に隠れたが、向かいの工場から犯人の1人にライフルで狙撃され、回避した。
島は工場内に突入したが、既に犯人がいなかった。
島は狙撃犯がなぜ弾を外したのかを疑問に思った。
島は逃走する佐川と長沼を見て、佐川がタクシー運転手、長沼が逃走する強盗犯だったことを思い出し、2人が共犯で自分の生命を狙っていると推測した。
藤堂達も、佐川と長沼と栗田が共犯で、島を殺害する目的でどこかに島を拉致したと推理した。
山村は捜査記録から、島に逮捕された前科者のリストをチェックしていた。
滝と岩城は前科者の1人を詰問した。
前科者は覚醒剤中毒者で、滝と岩城に逮捕された。
野崎は前科者の1人の工員の男(増岡弘さん)と会っていた。
工員は島に恨みを抱いておらず、更生して真面目に働いていた。
工員には半年前、子供が生まれていた。
前科者の1人の、クレー射撃場の男は、朝からクレー射撃場にいたことを強調し、これ以上付きまとわないように嫌みながらに言った。
島は工場から脱出しようと走ったが、そこにオートバイに乗った栗田が現れた。
島は栗田を迎撃しようとしたが、拳銃の射程では遠距離すぎるとして断念した。
さらに佐川と長沼がジープに乗って駆け付け、島を襲撃した。
長沼はカメラを携え、島を撮影した。
午後1時55分、容疑者が全員犯人ではないことが確定した。
藤堂は山村と野崎と岩城と五代に、最近に島の身辺に起こった変化を尋ねた。
岩城は事件の数日前、矢追町で発生したひったくり事件の犯人を、島と自分が逮捕したことを思い出した。
岩城は島と一緒に犯人を逮捕した際、長沼にカメラで撮影されたことを記憶していた。
岩城は最近、自主制作映画がブームだったため、偶然居合わせてカメラを回したのではないかと考えていた。
1週間前、五代は「はかた」で島と一緒に食事をし、島と別れた直後、長沼にカメラで撮影された。
岩城と五代は長沼がオレンジのチロリアンハットを被っていたことを記憶していた。
島は佐川と栗田のライフルの銃撃を回避し、工場の階段を上った。
島は佐川が階段を上っているのを発見し、砂山に飛び降りた。
島はプレハブ小屋の中に公衆電話を発見し、何とか七曲署に連絡しようと公衆電話まで疾走した。
しかし、公衆電話は不通だった。
長沼と栗田がクレーンにヒューム管を付け、プレハブ小屋に激突させた。
島は小屋から脱出した直後、自分を撮影する長沼を発見し、取り押さえようとしたが、佐川に左腕と右足を撃たれてしまった。
栗田がトラックを運転し、島を轢こうとしたが、島がタイヤを銃撃したことで、トラックが塀に激突した。
タクシー運転手は病院に入院していたが、犯人のことを何も思い出せなかった。
運転手は看護婦が差し入れたバラの花を見て、自分を襲撃した佐川のジーパンの裾に、赤いバラの刺繍がされていたことを思い出した。
島は物陰に隠れ、傷の治療をしていた。
島の拳銃の残りの銃弾はあと2発だった。
石塚と五代は撮影所の職員から、オレンジ色のチロリアンハットを被っている長沼が映像集団「地平線」のメンバーであること、メンバーの中に赤いバラの刺繍のジーンズを着た佐川がいることを聞き出した。
石塚と五代は「地平線」の事務所に突入したが、中には若い女性の事務員がいるだけだった。
事務員は事件について何も知らなかった。
事務所の映写室には既に滝がいて、長沼が撮影したフィルムを上映していたが、フィルムには島が映っていた。
フィルムには島と岩城がひったくり犯を逮捕した光景も、島が女子高生に聞き込みをしている光景も映っていた。
島は砂山を降り、栗田の銃撃から逃走していたが、被弾し、泥の水溜まりに倒れ込んだ。
島は接近してきた栗田の右腕を銃撃し、ライフルを撃ち落としたが、栗田にライフルを回収された。
島の拳銃の残りの銃弾はあと1発だった。
石塚と五代は事務員から、佐川と長沼と栗田の3人が、島を殺害するという内容の殺人映画を制作し、何者かに販売するつもりであることを聞き出した。
約2ヶ月前、事務員は忘れ物をして事務所に引き返した際、佐川と長沼と栗田が50万ドル(日本円に換算して1億円以上)で、銃撃戦の末に主役を殺害するという条件のもと、映画制作を依頼されたことを発言していたことを立ち聞きしていた。
殺人映画の題名は「島刑事よ 安らかに」だった。
佐川と長沼と栗田は、主役兼殺され役に島を抜擢していた。
カメラマンの長沼と、ディレクターの佐川は中野のアパート「青葉荘」に同居しており、滝と五代が急行した。
もう1人のディレクターの栗田は、蒲田の常盤マンションに住んでいた。
野崎と岩城は常盤マンションの栗田宅に急行し、机の上と引き出しの中から、大量の廃工場の写真を発見した。
岩城は写真に写っている工場の煙突から、工場が川崎の埋め立て地帯にあると断定した。
山村は2ヶ月前、栗田の預金に、依頼者が準備金として2万ドルを振り込んだ形跡があるという情報を入手した。
「地平線」は経営不振で、2000万円の負債を抱えていた。
佐川と栗田はライフルの免許を所持していた。
島は佐川と栗田の発砲から逃げ回っていたが、工場に閉じ込められてしまった。
島は栗田の銃撃から逃げ回る途中、工場内の照明が点灯されたこと、栗田の「テイクラスト、カット」という発言から、佐川と長沼と栗田の殺人映画の筋書が自分を廃工場に追い込んで殺害するものだったことに感付いた。
石塚、野崎と岩城、滝と五代は川崎の埋め立て地帯に急行した。
島は佐川と栗田の銃撃を物陰に隠れて回避していた。
島は銃撃を回避しながら階段を駆け上り、ゴンドラを操縦し、長沼に接近した。
長沼は激しく動揺し、命乞いをした。
佐川はゴンドラの電源を切ろうとしたが、その隙に島に右足を撃ち抜かれた。
長沼が動揺した影響で、カメラが上から床に落ち、破損した。
島はゴンドラを止めた。
栗田は激怒し、島を射殺しようとしたが、工場に到着した石塚と岩城にライフルを撃ち落とされた。
島は救急車に搬送された。
フィルムの依頼者は全く不明で、佐川と長沼と栗田も依頼者のことを知らず、いつも向こうから連絡してくるのを待つだけだった。
依頼者は事件を知って以降、何も連絡してこなかった。
依頼者が本気で殺人映画を購入しようとしたかも謎のままだった。
メモ
*「島刑事よ」3部作の1作。サブタイトルから殿下が殉職するかと思いきや、殉職はしない。しかし、殺人映画の標的にされてしまう。
*犯人の栗原氏、高橋氏、鈴木氏はジャパン・アクションクラブのスタントマン兼スーツアクター。
*殿下から追跡される際、墓地を通る殿下。
*撮影直前に雨が降ったのか、工場の地面が泥の水たまりだらけ。
*殿下を救出したい一心か、襲撃されたタクシー運転手に対して執拗に質問し、長さんに注意されるスコッチ。
*「殿下に恨みを抱いていそうな人物」の前科者リストの写真の1人が、堀礼文氏。本編には未登場(写真は「密偵」の流用?)
*「かつて七曲署刑事に逮捕されたことのある前科者」を演じることが多い増岡氏。今回は殿下。
*タクシー運転手が何も思い出せないと言うと、激情して何か思い出せないのかと怒鳴るスコッチ。殿下の生命の危機が迫っていたとはいえ、若干焦り過ぎ。看護婦も驚いて花瓶を落としてしまっている。
*カメラアングルが非常に独特。
*今回は『刑事貴族』の「殺人ビデオへの招待」にリメイクされている。
*煙突だけで川崎の埋め立て地の工場であることを見抜いたロッキー。工場マニア?
*左腕と右足を負傷し、窮地に陥るも、冷静に残弾数を把握しながら応戦していく殿下。特にゴンドラを利用してフィルムを破壊し、佐川の右足を撃ち抜いて打破したのは見事。
*救急車を急ぐように叫び、殿下に寄り添うスコッチ。
*結局、「地平線」メンバーに殺人映画制作を依頼したクライアントの正体が不明のまま、事件は幕を下ろした…
*ラスト、七曲署の防犯PR映画の主役に殿下を抜擢するボス。しかし、やんわりと断られる。
*OPのハイライトシーンに、誤って「紙飛行機」の1シーンが挿入されてしまっている。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
滝隆一:沖雅也
岩城創:木之元亮
五代潤:山下真司
松原直子:友直子
佐川勉:栗原敏、長沼和雄:高橋利道、栗田洋三:鈴木弘道
工員:増岡弘、岸野一彦、大曲えり子、乃母一平
小池幸次、小林玉枝、橋本康秀、小川真喜子、ジャパン・アクションクラブ
石塚誠:竜雷太
島公之:小野寺昭
野崎太郎:下川辰平
山村精一:露口茂
脚本:小川英、古内一成
監督:斎藤光正