第382話「甘ったれ」(通算第592回目)

放映日:1979/11/23

 

 

ストーリー

野崎は、子供が二人とも自立したことにより、康江が知人に誘われて、花園盲学校で目の不自由な子供の面倒を見るボランティア活動をしているという話をした。

野崎は藤堂に、近日中に花園盲学校で運動会が開催されるが、飾り付けに男手が不足しているため、午後から手伝いに行くことを申請し、許可をもらった。

野崎は花園盲学校を訪れ、子供達と遊び回った。

野崎は事件が発生しない限り、花園盲学校の運動会に行くことを子供達と約束していた。

野崎は康江(西朱実さん)と帰宅中に、団地の敷地内にて、加藤進(頭師佳孝さん)が自動車を盗もうとしたとして、持ち主の男(小寺大介さん)に詰問されているのを目撃した。

持ち主は野崎に、会社から帰る途中、加藤が自動車のドアをこじ開けようとしたと説明した。

加藤は必死に無実を訴えた。

野崎は加藤を身体検査し、加藤が道具を何も所持していないことを確認し、持ち主に被害が無いため、自分に任せるように頼んだ。

加藤は自分の名前も住所も何も答えなかった。

野崎は加藤に、日暮れ時に団地の住人でない加藤が他人の自動車を覗けば、文句を言われるのは当たり前であると注意した。

加藤は、自分みたいな人間は何をやっても真っ先に疑われると悲観的で、食事をする金もないため、警察に連れて行ってくれと自暴自棄な態度をとった。

康江は加藤に食事を振る舞った。

加藤は自分の名前を名乗り、先月まで働いていた会社が倒産し、今日も職探しをして歩き回っていたが、いい会社が見つからず、故郷には誰もいないこと、これから先どうしようかと悩んでいたところ、いつの間にか団地に迷い込んで、持ち主から尋問されたことを話した。

野崎は加藤の事情を知り、加藤に謝罪した。

加藤は今月末までアパートの家賃を払っているとして、野崎宅を後にした。

康江は加藤に、少額の金を与え、加藤と別れた。

加藤は新宿区矢追町3-58 矢追マンションの地下駐車場に侵入し、自動車の持ち主のスーツの男がマンション内に入った隙をついて、自動車を運転してその場を走り去った。

スーツの男は自分の自動車を強奪されたことに激しく動揺した。

加藤は河川敷に自動車を停め、車内を調査し、トランクの中身に驚愕した。

スーツの男はスーツケースの中に部屋の荷物を入れていた。

加藤は電話ボックスで警察に通報しようとしたが、結局しなかった。

翌日、野崎と岩城が管理人(中島元さん)の通報を受け、矢追マンションに急行した。

管理人によると、305号室の住人で、赤ん坊の母親の松井陽子(23歳)が戻ってこないまま3日が経過しており、昨日までは赤ん坊の泣き声が聞こえていたが、今日は聞こえていなかった。

松井は銀座の一流クラブ「エリーゼ」のホステスで、いわゆる未婚の母親だった。

管理人は一昨日、松井が305号室に戻ってくるのを目撃していた。

野崎と岩城は305号室に入り、相当衰弱している赤ん坊を発見し、病院に搬送した。

野崎は部屋内を調査していた。

赤ん坊はあと半日放置すれば生命の危機になる状況だったが、一命を取り留めた。

駐車場から松井の自動車が消えていた。

加藤は解体屋の工員(井上三千男さん)に、松井の自動車を売り渡し、大金を得た。

富士銀行の松井の預金通帳からは、この1週間、1円も引き出されておらず、松井がキャッシュカードを使用して金を下ろした形跡も無かった。

松井は「エリーゼ」に勤務してからは身持ちが固いことで有名だった。

野崎は松井の失踪事件の理由で、運動会への参加を諦めた。

スーツの男は新聞で、松井の失踪が警察に通報されたことを知った。

加藤は何者かと電話し、調査するために何者かに例のものを忘れないように念押しした。

その後、加藤は康江と会っていた。

加藤は小さな町工場に就職先が見つかったため、報告したいと嘘を吐いた。

加藤は失踪事件について事細かに話題にして、松井が殺害されたかもしれないと口走ったため、康江に疑われた。

康江は加藤に、盲学校の生徒が、目が不自由でも生徒それぞれなりの生き甲斐があり、変に共感し、必要以上の同情が禁物であると説いた。

康江は加藤の就職祝いのために、オープンシャツを購入していた。

野崎はオープンシャツを持って、アパートの加藤の自宅を訪れたが、不在だった。

野崎は加藤の隣人(上野綾子さん)から、加藤がアパートに来てから1年以上経過しているが、いつも定職に就かずに遊んでいること、最近景気が良くて新しいステレオを購入したことを告げられた。

加藤はアパートに戻って来たところ、野崎と鉢合わせしてしまい、野崎に、康江に心配をかけたくなかったために嘘を吐いたことを謝罪した。

加藤は開き直り、真面目に働くなど馬鹿馬鹿しいと軽はずみな態度を取った。

加藤の父親は水道工事の下請け業者をしており、開業するのを夢見て、一生懸命働き、やっと自分の店を開業したが、不景気のあおりで倒産していた。

加藤の父親は加藤の母親と、加藤の弟と妹を絞殺後、首つり自殺をしていた。

加藤はその頃に他の場所で働いていたために難を逃れていたが、そのことから真面目に働く気を失い、競輪と競馬で毎日遊ぶ暮らしをしていた。

加藤は競馬で穴を当てたとして、野崎に食事をおごろうとしたが、野崎に殴られ、いい加減な生活がいつまで続くと思っているのかと激怒された。

加藤は謝罪し、帰宅した。

加藤は野崎の贈り物の中身が、自分のイニシャル入りのオープンシャツであることを知った。

加藤は何者かに、野崎が何も事件のことを突き止めていないこと、自動車を解体屋に売ったことを連絡した。

山村は解体屋を訪ね、解体屋に置かれている、塗装したての茶色の乗用車のトランクの中から、毛髪を発見した。

島は松井宅から、ヘアーブラシに付着していたものと、ベッドの枕元に落ちていたものの2種類の、松井の毛髪を入手し、鑑識に提出した。

解体屋は山村に取り調べられ、乗用車を売り渡した男に、ほんのわずかだが東北地方の訛りがあったことを供述した。

野崎は加藤に東北地方の訛りがあったことを思い出した。

加藤はアパートに一旦帰宅した後、また外出していた。

分析の結果、トランクから発見された毛髪が松井の毛髪であることが断定された。

藤堂は失踪事件を殺人事件に切り替え、捜査を開始した。

野崎と岩城は加藤宅を張り込んでいた。

野崎は加藤が自分の息子の俊一と同年代であることから、加藤を心配しており、加藤が殺人をするような男には見えなかった。

加藤は帰宅したところを野崎と岩城に発見され、逃走を図ったが、身柄を取り押さえられた。

加藤は野崎と岩城に取り調べられ、自動車を盗んだ証拠を提出するように求めた。

山村が取調室に入り、解体屋が自動車を売り渡した男が加藤であると自供したこと、トランクに残っていた指紋と加藤の指紋が一致したことを伝えた。

加藤は街を通っていたら、鍵を付けっぱなしの自動車があって、出来心で盗んだと供述したが、松井の遺体に関しては知らないと主張していた。

松井の遺体が発見されなければ殺人の立証は不可能だった。

加藤と松井の関係性は不明だった。

野崎と山村は松井殺害の真犯人が別にいるのではないかと推理していた。

野崎は松井が既に殺害されていると断定した。

松井は失踪した日の深夜、勤務を終え、子供を引き取って矢追マンションに戻ったところまでは確認されていた。

野崎は、身持ちが固い性格の松井が赤ん坊を置いて家を出たとは考えられず、自宅で殺害されたのではないかと思っていた。

松井宅からは金品が強奪された形跡がなく、加藤が強盗の目的で侵入したとすると、化粧台の上の指輪やネックレス、預金通帳などを放置しないと考えられるため、野崎は殺人の動機が強盗ではなく、怨恨であると推理していた。

犯人は松井が殺害されると分かると、真っ先に疑われる人物である可能性が高かった。

島の捜査で、松井が「エリーゼ」に勤務する前、赤坂の「夢」という店にて勤務していたこと、その当時に交際していたのが、新東京商事営業第2部の沢村祐一(久富惟晴さん)であることが判明した。

沢村は出世街道まっしぐらの、エリート中のエリートだった。

沢村は勤務中、新聞の、松井殺害の容疑者が逮捕されたという記事を読んでいた。

野崎と五代は沢村と面会した。

沢村は赤ん坊の父親が自分であることを認めたが、道義的に非難されるのを覚悟のうえで、自分の将来を台無しにすることを嫌がり、松井が赤ん坊を出産した後、赤ん坊を認知せず、松井達を放置していなかった。

沢村は1年前(1978年頃)、松井とははっきり縁を切ったと断言し、赤ん坊の父親と名乗り出る気も無かったことを認めた。

沢村は事件当時、バーにいたというアリバイがあった。

沢村は自宅にて、荷物をスーツケースにまとめていた。

沢村にはアリバイ工作をしていた疑いが出た。

五代は沢村が近日中、新東京商事の中近東にある支店に転勤すること、突然に沢村が自分から志願したという情報を入手した。

藤堂は山村に、証人のバーのママに会うように、石塚と五代にはバーテンダーに会うように指示した。

バーテンダーは競馬場で高額の馬券を購入していたが、石塚と五代に身柄を取り押さえられた。

バーテンダーは沢村から金を貰ったことを自白した。

石塚と山村は沢村を取り調べた。

沢村は松井が別れた後も執拗に子供の認知を迫るため、再度話し合いに行くために松井と会ったことを認めたが、殺害に関しては否認した。

沢村は山村に、本当に松井が殺害されているという確証があるのかを質問した。

山村と石塚は沢村の取り調べを切り上げた。

加藤は釈放された。

加藤が強奪した自動車のトランクの中に松井の遺体が入っており、沢村を強請ったという推理ができた。

2人の逮捕には松井の遺体の発見が必要だった。

野崎は盲学校の運動会に加藤を連れて行き、子供達を見るように促した。

野崎は盲学校の生徒が、目が見えないというハンディキャップを乗り越え、努力して頑張っていることを説き、加藤に不自由のない体で、何かに力一杯ぶつかったことがあるのかと説得した。

野崎は加藤に、懲役1,2年の刑に服した後、沢村から金を強請り取ろうとしているのだろうが、世間が沢村と加藤を放置するほど甘くないと熱弁し、松井の遺体をどこに隠したのかを質問し、盲学校の生徒を見て人生をどう生きるかよく考えるように話した。

加藤は号泣し、観念して松井の遺体の隠し場所が河川敷であることを自白した。

河川敷から松井の遺体が発見された。

野崎は手錠に繋がれた加藤に、何年収監されようと、若さがあれば必ず再出発できると激励した。

沢村が全面自供した。

沢村の犯行の動機は、子供の認知を迫られ、話し合いが決裂して殺害したというものだった。

沢村は自動車のトランクに遺体を隠した後、書類鞄を忘れて取りに戻った間に、加藤に盗まれていた。

野崎は加藤と団地で初めて会った時、もっと厳しく接していればと後悔していたが、藤堂に野崎と康江のおかげで加藤が更生するきっかけをつかんだと励まされた。

 

 

メモ

*個人的な長さん主役編の最高傑作。

*ボランティアという言葉がまだ一般的ではなかった時代?

*花園盲学校で子供達と遊ぶ長さん、というか下川氏が本当に楽しそう。

*本当に優し過ぎるぐらい優しい康江。

*松井のマンションは表札では「矢追マンション」、新聞では「あおいマンション」となっている。

*「俊一が今では一人前の大学生面をしているが、一時はグレかかったこともある」というのは「おやじバンザイ!」のことかな。懐かしい。

*長さんが加藤を説得するシーン、実際の盲学校の運動会を映しているので、長さんの説得に物凄い重みがある。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

野崎太郎:下川辰平

 

 

松原直子:友直子、野崎康江:西朱実

沢村祐一:久富惟晴

加藤進:頭師佳孝

解体屋:井上三千男、加藤の隣人:上野綾子、自動車の持ち主:小寺大介、矢追マンション管理人:中島元

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:木下亮