第381話「ともしび」(通算第591回目)
放映日:1979/11/16
ストーリー
五代は石塚と一緒に聞き込み中、小便をするため、石塚と別れた。
石塚は五代と別れた直後、白百合荘の前の路上で、若杉勇(32歳)(沖田駿一さん)という男が篠村綾(谷口香さん)に対し、騙されたと罵る光景を目撃した。
篠村は何でもないと誤魔化した。
若杉は篠村に対し、乱暴な態度をとり、石塚が警察手帳を見せても、何も話そうとしなかった。
篠村は石塚に謝罪し、若杉のことを何も言わずにアパートに戻った。
五代は若杉を追跡したが、見失ってしまった。
石塚と五代は食堂で食事をしていた。
夜の地下道で、アベックの男が別の男に殴られ、財布を強奪される事件が発生した。
強盗犯はサラリーマン風の男を徹底的に叩きのめし、財布を強奪したが、巡回中の吉野巡査(横谷雄二さん)に目撃された。
強盗事件が3件発生していたが、事件の手口は、いわゆる「ノックアウト強盗」という、有無を言わさず殴りつけてから金品を強奪するというものだった。
強奪された金額は6万8500円だった。
犯人は同一犯でかなり凶暴な性格の男であると推測された。
被害者の傷は全治5日間から1週間であり、アベックばかりが狙われていた。
吉野が犯人の顔を目撃しており、強盗犯のモンタージュ作成協力のために七曲署を訪れた。
石塚と五代は吉野と一緒に、強盗犯のモンタージュを作成していた。
石塚は強盗犯のモンタージュを見て、若杉に似ていると思った。
吉野は冷静になればなるほど自信を喪失し、強盗犯が若杉とは断定できなかった。
山村は岩城と五代に、モンタージュ写真を持って野崎達と合流するように、石塚には篠村を調査するように指示した。
石塚は篠村が七曲図書館に勤務していることを突き止め、昼休み中の篠村と会話した。
篠村は「ともしび」という雑誌の1979年11月号を読んでいた。
石塚は篠村に、若杉がノックアウト強盗犯と酷似していることを告げた。
篠村は激しく動揺する素振りを見せたが、若杉が押し売りみたいな人物で、品物を断ったら乱暴されたと言い張り、仕事に戻った。
石塚は篠村の態度と、若杉の騙されたという発言が激しく引っかかり、篠村が嘘を吐いているのではないかと直感していた。
被害者と現場付近の目撃者はモンタージュを見て、若杉とそっくりであると証言していた。
五代は現場周辺の遺留品捜索を続行することにした。
藤堂は管内を徹底的に捜索する方針とした。
石塚は吉野と会っていた。
その後、若杉の手による強盗事件は発生していなかった。
吉野は若杉の逮捕に執念を燃やしていた。
七曲図書館は吉野のパトロール区域内にあり、吉野は篠村のことを良く知っていた。
石塚は吉野に、篠村の警護を要請した。
五代は現場の地下道のゴミ箱を調査中、被害者が若杉から強奪された財布を入手した。
財布には、前科4犯の若杉の指紋が付着していた。
若杉は22歳の時に強盗殺人罪で無期懲役の判決を受けていたが、10年目の仮釈放で4日前に宮城刑務所を出所していた。
若杉が篠村を責め立てた日は、若杉が出所した日だった。
石塚は若杉と篠村の関係性を疑問に思い、五代と一緒に七曲図書館を訪れた。
七曲図書館の職員の石野ミキ(立枝歩さん)は石塚と五代に、篠村が今朝に仕事を休むという電話を入れていることを伝えた。
石野は七曲図書館で勤務して3年目だったが、篠村が仕事を休むのは最初だった。
石野は若杉が篠村と会話しているのを見たことがなかった。
石塚と五代は白百合荘に直行し、篠村宅の扉をノックした。
篠村は自宅の中にいたが、新聞のノックアウト強盗の記事を見て呆然としており、石塚のノックを無視した。
石野は七曲図書館から帰宅しようとした際、巡回中の吉野と話した。
七曲図書館に残っているのは守衛だけだった。
石野は吉野と別れた直後、待ち伏せしていた若杉に声をかけられ、逃走しようとした。
若杉は石野と話をしたいだけだったが、石野に拒絶された。
吉野は石野の悲鳴を聞き、守衛の導きのもと、若杉と石野を発見し、逃走する若杉を追跡した。
吉野は若杉と林の中で揉み合いになった末、拳銃が暴発して足にかすり傷を負い、さらに若杉に拳銃の台尻で頭を殴られ、拳銃を強奪されてしまった。
吉野は病院に搬送され、犯人が若杉であることを伝えた。
吉野は拳銃を強奪されたことに激しく責任を感じていた。
五代は若杉が篠村の同僚の石野を襲撃したことを疑問に思っており、石塚から、医務室で治療を受けている石野から話を聞くように指示された。
篠村は七曲図書館に電話をかけ、電話に出た守衛から、石野が若杉に襲撃され、吉野が銃撃されたことを告げられ、激しく動揺して電話を切った。
石野は五代に、若杉が何もしない、ただ話をしたいだけだと発言していたことを述べた。
石塚は白百合荘に急行し、篠村宅の扉をノックした際、ガスの臭いを嗅ぎ、篠村宅に突入し、部屋を換気して篠村を救出した。
篠村は病院に搬送されたが、一命を取り留めた。
吉野は全治5日と診断されており、石野には怪我がなかった。
若杉と七曲図書館の関係性は不明だった。
篠村が事件の全ての鍵を握っていることは明白だった。
篠村が意識を回復したが、精神的にかなり追い詰められているようだった。
石塚は篠村に、若杉との関係性、なぜ自殺をしようとしたのかを尋ねた。
篠村は事件に対し、自責の念に激しくかられており、罰を自分で受ける気でいたが、質問には何も答えなかった。
石塚は篠村が重大な秘密を隠していることを認識していた。
白百合荘の管理人(松尾文人さん)は石塚に、篠村が7,8年前に白百合荘に入居したこと、実にきちんとした性格で、深夜に帰ることも滅多に無いことを教えた。
篠村はバスに乗り、片道15分で七曲図書館に通勤していた。
石塚は篠村の通勤経路を歩いていた。
図書館の守衛は篠村のことを、誰に対しても親切で優しく、あんなに良い人はいないと評した。
篠村の机の上には、篠村が図書館に勤務し始めてから個人的にずっと購読している「ともしび」が置かれていた。
図書館のロッカーには大量の「ともしび」が並べ置かれていた。
石塚は「ともしび」の1974年号に、若杉が「ある終身刑囚人の告白 『彼方へ』」という小説を寄稿しているのを発見した。
若杉は管理人から篠村が入院していることを聞き出し、電話ボックスから、入院中の篠村に電話をかけた。
篠村は五代が自分を張り込んでいるのを見て、図書館からの電話であると装う返事をして、電話を切った。
石塚は1時間前に図書館にいて、誰も篠村に電話をしていないことを知っていた。
篠村は診察後、散歩という名目で病院を抜け出しており、若杉に会うため、タクシーに乗った。
石塚と五代は篠村が乗ったタクシーを追跡した。
篠村は空き地でタクシーを降り、空き地に潜伏している若杉と合流した。
篠村は若杉から逃走資金を要求されたが、キャッシュカードも預金通帳も自宅に置きっぱなしにしていた。
若杉は篠村から、凶行を止めるように説得されたが、全く応じなかった。
若杉は石塚と五代を見て、篠村が自分を通報したと思い込み、石塚と五代に発砲した。
石塚と五代は若杉を追跡しようとしたが、篠村が覆面車の前方に立ち塞がり、追跡を妨害したため、若杉を見失ってしまった。
山村が宮城刑務所に問い合わせたところ、篠村が5年前(1974年)から1ヶ月に2通ずつ、若杉宛に手紙を送っていたことが判明した。
若杉は篠村を糾弾した日まで、篠村とは一面識もなく、手紙だけで交際しており、身寄りがなかったため、それで篠村宅に来ていた。
若杉の騙されたという発言の真意が不明だった。
篠村宅の捜査令状がようやく出た。
石塚は篠村宅に入り、篠村と若杉の手紙を熟読していた。
手紙には、若杉が収監中の身であることを恨めしく思い、篠村と会ってもう一度再出発したいこと、手紙を受け取るたびに抑え切れない思いにかられること、過去に犯した罪が拭いきれないが、篠村と出会って生きる希望を見出したということが書かれていた。
若杉は篠村と一緒に、夕陽に黄金色に染まる海をいつまでも見ることを夢見ており、手紙にも書いていた。
手紙には、手紙に貼られたスナップ写真が非常に可愛く、妹のような気がしたとも書かれていた。
若杉は手紙を読み、執筆者が若い女性であると思い込んでいた。
篠村は若杉の夢を打ち壊すことが我慢できず、手紙に、自分ではなく石野の写真を貼っていた。
篠村は終身刑の若杉であれば美しい夢を壊すことがないと思い、若い娘になりきって手紙を執筆し続けていた。
若杉は手紙に仮出所のことを書いていなかった。
若杉は福島県出身だったが、県警によると若杉の親しい人間がもういなかった。
若杉が頼れる人間は篠村しかいないと思われた。
野崎と五代は篠村を尾行していた。
篠村は途中でバスを降り、地下道に逃走し、野崎と五代をまいた。
吉野は若杉からどうしても拳銃を取り返したいと思い、傷の痛みを押して退院し、七曲図書館を張り込み中の石塚と合流した。
石塚は篠村が若杉と会うのではないかと思い、その場所が、若杉が篠村と一緒に行きたがっていた海ではないかと思っていた。
海の鉛筆画には、左手にヨットハーバー、向こうに江の島が見えることから、湘南海岸であると考え、吉野と一緒に急行した。
若杉は石野と話がしたい一心で、石野に声をかけていた。
石塚と吉野は湘南海岸に到着し、海の鉛筆画に描かれている地点を捜索した。
石塚と吉野は鉛筆画に描かれている地点をようやく探し当て、小屋内で若杉が叫んでいるのを聞いた。
石塚は拳銃を取り返そうと躍起になっている吉野を制止し、手前で待つように指示した。
石塚は自分の拳銃に銃弾を装填し、吉野に、万一のことがあったら発砲するようにと言い残して手渡した。
石塚は小屋の中に突入したが、若杉が篠村の頭に銃口を向けた。
若杉は手紙の相手が中年の女性であることを知り、希望を失っていた。
若杉は5年間、篠村が送ってきた石野の写真を壁に貼り、一日中眺めて暮らしており、それだけでうれしく思っていた。
石塚は若杉に、篠村が手紙の一通一通に心を込めて人間と人生を語ろうとしたこと、篠村も孤独で、心の友と呼べる人物が若杉しかいなかったことを伝え、説得した。
若杉は号泣し、観念した。
メモ
*吉野、初めて一係室に入室。
*若杉と交戦するも、負傷して病院に搬送される吉野。吉野は「バイオレンス」や「バラの刺青」でも重傷を負っており、受難も多い。
*沖田氏は「危険な約束」のような、凶暴だが可哀そうな一面のある役。
*若杉への手紙に勝手に石野の写真を貼り、ある意味騙していた篠村。全然違うが、このネタは『銀魂』でも見た。
*このあたりの話は、事件解決時に「ボス愛のテーマ」を流すことが多い。
*ラスト、ボスに、収監されたら素敵な可愛い女性から手紙を貰われるのではとからかわれるゴリさん。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
岩城創:木之元亮
五代潤:山下真司
野崎太郎:下川辰平
松原直子:友直子
篠村綾:谷口香
若杉勇:沖田駿一(現:沖田峻一郎)、石野ミキ:立枝歩、吉野巡査:横谷雄二
白百合荘管理人:松尾文人、森村菜摘、丸山詠二
和田一壮、大原穣子、茂木幹雄、杉山真稀子
石塚誠:竜雷太
島公之:小野寺昭
山村精一:露口茂
脚本:尾西兼一、小川英
監督:木下亮