第369話「その一言」(通算第579回目)

放映日:1979/8/24

 

 

ストーリー

島は五代と一緒に競馬場を訪れ、五代に競馬帰りの、青いTシャツを着ている男から目を放さないように命令した。

青いTシャツの男は、競馬場帰りのサラリーマン風の男から鞄をひったくって逃走したが、島と五代に先回りされ、五代との格闘の末に逮捕された。

五代は島の直感力と、犯人の逃走経路を先読みして先回りした勘を称賛した。

野崎と島は男の取り調べを終わらせ、藤堂に、男が他に3件のひったくり事件を自白したことを報告した。

島がひったくり男の犯行を直感したことについて、まぐれであると答えた。

8月21日、新宿区坂田町郵便局にて、江口進(小林尚臣さん)という男による強盗事件が発生した。

江口は郵便局の前に停めていた白色のライトバンを運転し、矢追町方面に逃走したが、発進した際に車体をガードパイプに衝突させていた。

七曲署捜査一係捜査員が現場に出動した。

山村は野崎と石塚、島と岩城に江口の追跡を指示し、現場での捜査を担当することにした。

午後2時30分頃、江口は高架橋下でライトバンを停め、犯行時に着用していたマスクとサングラスと軍手を外したが、付近を犬と一緒に散歩していた、丸田謙介(日野道夫さん)という老人に自分の姿を目撃された。

丸田は江口を目撃した後、来た道を引き返したが、野球少年とすれ違った。

五代は、強盗事件発生時に郵便局で江口にナイフを突きつけられた赤ん坊と、その母親を心配し、救急車に乗せた。

郵便局の局長(永谷悟一さん)は山村に、被害金額が320万円であること、人質を取られていたために江口の要求に従わざるを得なかったことを伝えた。

局長が江口に大金を手渡しており、窓口の女性局員は怯えて動けなかった。

局長は江口がサングラスとマスクを着用していたことを証言した。

江口のライトバンが高架橋下の河川敷で発見されたという連絡を受け、野崎と石塚が高架橋下に駆けつけ、島と岩城と合流した。

通報者は、付近の河川敷で野球をしていた少年たちで、野球のボールがライトバンの窓を割ってしまい、謝るつもりで警察に届け出をしていた。

ライトバンの車内から所有者の車検証が発見されたが、盗難車の可能性が濃厚だった。

野球をしていた少年は江口の姿を目撃していなかった。

岩城は河川敷の草むらで、江口のものと思われるマスクと軍手を発見した。

江口が犯行に使用された軍手は市販品で、所有者の特定がほぼ不可能だった。

ライトバンは工務店の棟梁と若い工員が坂田町2丁目の工事現場付近に駐車していた自動車だが、ちょっと目を放した隙に強奪されていた。

午後2時頃、工員が工具を取りに行き、ライトバンが強奪されていたことに気付いていた。

工務店の棟梁と若い工員の2人ともアリバイがあった。

郵便局の局長と女性局員は、江口が身長170cm前後、ベージュのサファリジャケットを着ていたことを証言したが、肝心の顔を目撃していなかった。

岩城はマスクが新品のようだったことに注目し、江口が犯行直前に購入したのではないかと考えた。

売店の店員(高橋和枝さん)は五代に、この時期にマスクが売れるのが珍しいため、マスクを購入した男のことを記憶していることを伝えた。

店員は江口が若い男だったことを話した。

店員は五代にモンタージュ写真の作成の協力を要請されたが、そんなに覚えていないという理由で難色を示し、五代から江口が強盗犯であることを告げられると、嫌がって拒否した。

五代は店員を七曲署に連れて行った。

島は不機嫌な店員を説得し、五代のことを謝罪し、うろ覚えでいいことを条件に、モンタージュ写真の作成協力を要請した。

店員は機嫌が良くなり、島の要請を承諾した。

犯人のモンタージュ写真が作成された。

店員は江口の記憶が曖昧で、モンタージュに自信がなく、どの程度まで似ているかどうかは不明だった。

店員は江口の鼻の脇に黒子があったことを記憶していた。

五代は藤堂が、苦労して作られたモンタージュ写真で公開捜査に踏み切らないことに納得できず、イライラしていた。

島は五代に、大切なのが、店員が江口を目撃している事実であること、人間の記憶が不明瞭だが、何かのきっかけで決定的なことを思い出すかもしれないことを諭した。

丸田は帰宅した際、夫人から郵便局強盗犯が未だに逮捕されていないことを告げられ、高架下で江口を目撃したことを思い出した。

丸田は夫人に江口のことを伝えず、息子の遺影に合掌した。

島は五代に、河川敷で野球をしている少年に聞き込むように指示した。

島は売店の店員と再び会った。

店員は島との会話で、江口が定期券を所持していたことを思い出した。

岩城は河川敷に駆けつけ、五代に江口が泪橋駅を通る電車で通勤していることを伝えた。

五代は泪橋駅の入口を張り込み、江口を探し当てようとしていた。

石塚の捜査で、江口が容疑者として浮かんだ。

江口は泪橋付近の鉄工所に勤務しているが、大のギャンブル好きで、事件当日に鉄工所を休んでいた。

江口は小鼻の脇に黒子があった。

江口は、坂田町郵便局と近距離にある坂田町1丁目に居住しており、泪橋から2駅だったが、電車で通勤していた。

五代は泪橋駅の入口を張り込み中、江口を発見し、犯人と確信して尾行した。

野崎は江口がサラリーマン金融に50万円の借金をしていたが、事件の翌日に返済していたという情報を入手した。

江口は返済金について、競馬で大穴を当てたと弁解していた。

江口は五代の存在に気付き、挑発した。

五代は江口に自分の身分が刑事であることを告げ、怯えていることを指摘したが、チンピラだと思ったと発言され、怒った。

五代が江口の胸倉を掴んだ際、江口の懐から何かが落ちた。

江口は五代を突き飛ばし、逃走したが、歩道橋の階段付近で五代に殴り飛ばされ、逮捕された。

島は自分の指示を無視して、勝手な行動をとった五代を叱責した。

五代は犯人が江口であると頑固に信じていた。

郵便局の局長と局員は取調べ中の江口を見たが、犯人であると断定できなかった。

店員は江口が犯人であると間違いないと証言した。

店員は江口がマスクを購入したか購入していないというだけの証人で、江口を犯人とは断定できない状態だった。

江口は身に覚えのないという供述の一点張りで、犯行を否認していた。

山村の心象は、江口が犯人であるというものだった。

江口は事件当日にアリバイが不明瞭で、借金返済も実際に競馬で当てたところを見た者は皆無であり、さらにナイフを持ち歩いていた。

江口には前科が無かったが、取調べに慣れているような態度をとっていたことから、江口が未成年の時に罪を犯したことが推測された。

江口はこのまま否認で押し通すと読んでいる節があった。

江口は頻繁に耳を掻く癖があった。

江口宅からは何も発見されなかった。

裁判所は昨夜の緊急逮捕があくまでも暴力行為での逮捕ということで、江口を郵便局強盗事件の容疑者と断定するには証拠が不十分過ぎるという判断を下していた。

石塚は、家宅捜索を実行すれば強奪した320万円が発見されるかもしれないと意見する五代に対し、江口が強奪した金の大半を持っている可能性が高いが、まだ江口に手を出すのが早過ぎたと言い聞かせた。

藤堂は五代の意見を退け、江口を釈放した。

五代は自分が余計な早とちりをしてしまったことを後悔していた。

島は五代を励まし、自分も江口が犯人であると考えており、五代に明確な証拠を掴むことが先決であると諭した。

島と五代は河川敷での少年の野球に寄り添った。

少年は野球のボールを拾った時、丸田と遭遇し、島に犯行当日にも丸田を見たことを話した。

丸田は島と五代に8月21日、江口を目撃したことについて、記憶していないと返した。

丸田は島から江口の写真を見せられ、動揺したが、物忘れが激しいと言い張って捜査に協力しようとせず、その場を立ち去った。

島は丸田が何かを隠しているのではないかと直感した。

島は8月21日の午後2時30分ごろ、丸田が土手への階段を上ったのを目撃した者を発見した。

五代は丸田に、報復阻止のための警護を自分がすることを言って、証言をするように必死に懇願した。

丸田は自分の証言で、人の運命を左右するのが懲り懲りという理由で、証言をするのを激しく拒否した。

丸田は元々、高校の教師をしていたが、現在は駐車場の係員をしていた。

島は七曲署に戻ってきた五代を連れて、丸田の過去の調査を開始した。

島は丸田がかつて勤めていた高校に赴き、情報を入手した。

丸田は記憶力がいいことで有名で、教師をしていた頃、教え子の名前と顔を必ず記憶していた。

約10年前(1969年頃)、丸田は息子と一緒に横断歩道を歩いていた。

その時、ダンプカーが前方から暴走し、丸田の息子が丸田を庇ったために逃げ遅れて轢かれ、死亡していた。

ダンプカーはそのまま逃走していた。

丸田は目の前で息子を殺害されたことで半狂乱になり、轢き逃げ犯を探し回り、遂にある男を捕まえ、警察に突き出していた。

しかし、その男は犯人ではなく、真犯人が全く別のところで逮捕されていた。

丸田が捕まえた男は真犯人と容貌が良く似ていたが、全くの別人だった。

丸田は記憶力に一挙に自信を無くし、道義的な責任を取り、教師を退職していた。

五代はアパートにて、犯人と間違われた男(矢田稔さん)と面会した。

男は丸田の、目の前で息子を殺害された気持ちには同情していたが、人違いで犯人と間違われ、警察に留置され、会社を免職された。

男は事件と無関係ということで免職を取り消しになったものの、社内にいづらくなり、退職していた。

男は五代に、最初、丸田を憎んでいたが、丸田が、自分が釈放された日に男のアパートに急行し、両手をついて謝罪し、慰謝料まで差し出したことを語った。

夜、五代は一係室に帰還した。

五代は、退職金の全額を男に慰謝料として渡した江口を、これ以上責めることを嫌になっていた。

島はあくまで江口を逮捕するために、丸田の証言が絶対に必要であるという考えであり、五代に丸田から証言を取るように命令した。

島は五代に、今逃げ出してもまた同じようなケースにぶつかる、自分たちが刑事である限り、ここで逃げ出すことが絶対に許されないと叱咤した。

五代は自宅から出勤する丸田に謝罪したが、無視された。

五代は丸田が勤務する駐車場を張り込み、サングラスとマスクをして丸田に接触した。

五代は自分がサングラスとマスクを付けているのにもかかわらず、すぐに丸田が自分だと分かったことから、記憶力が確かであると説得し、江口の写真を見せたが、拒否されてしまった。

島は五代に丸田のことを任せていた。

島は丸田夫人に、丸田に証言をさせるように説得するように頼んだが、夫人に丸田が頑固であると返答された。

競馬場の男(市村昌治さん)は島に、江口が予想屋の客であるためよく知っていること、江口が午後2時過ぎにいなかったこと、島と五代がひったくり犯を逮捕したのと同時期に江口が駅のほうに歩いて行くのを目撃したと証言した。

丸田が帰宅した。

五代は丸田宅の建て付けの修理と、居間の棚を作っていたが、丸田に怒られてしまった。

五代は一人の人間を逮捕すること、証言を取ることの大変さを痛感していた。

島は五代から、丸田の心を開かせるにはどうすればいいかを尋ねられ、誠心誠意、自分の心をぶつけるしかないと答えた。

石塚は江口が今日、鉄工所を休み、部屋で荷物を纏めていることを無線連絡した。

江口は自分の逮捕が近付いていることを察知し、高飛びすることを計画した。

藤堂は石塚にその場で待機し、江口が行動したら連絡を入れるように命令した。

島は藤堂に、もう少しだけ五代に時間を与えるように懇願した。

藤堂と山村は五代を待つことにした。

五代は丸田が勤務する駐車場にて、自動車の出入りの誘導や修理をしていた。

島は丸田と面会し、息子の件について同情しつつ、凶悪犯の江口を逮捕するために丸田の証言が必要であると説得し、五代が証言を取ることについての難しさを体で理解しようとしていることを言い聞かせた。

丸田は五代について、息子の笑った顔によく似ていると思っていた。

丸田は島に、江口の写真では自信がないため、直接に江口の顔を見ることができれば、犯人を江口と証言できることを話した。

江口がアタッシェケースを抱え、アパートから出発した。

島は覆面車に丸田を乗せ、江口宅に急行し、丸田に江口を面通しさせた。

丸田は江口の顔を見ただけでは犯人と断言できなかったが、江口が耳を掻いたことで犯人であると断言した。

江口は逃走したが、島の覆面車の後部座席に隠れていた五代と、野崎と石塚に追跡され、空き地で五代に叩きのめされ、逮捕された。

江口のアタッシェケースから大金が発見された。

島は丸田に感謝した。

江口が全面自供した。

 

メモ

*日野氏と小林氏という渋いメインゲストの二人。

*「動物的な勘はどっちかと言えばゴリさん」と山さんに言われてしまうゴリさん。ロッキーとナーコに笑われてしまう。

*「動物的な勘」の流れを受けて、ゴリさんのゴリをゴリラのゴリと間違えるスニーカー。スニーカーも間違えていたとは。(脚本は「マカロニ刑事登場!」と「ボギー刑事登場!」と同じ長野氏)

*「今時(1979年8月当時)にマスクを付けている人は滅多にいない」と発言するロッキー。今(2021年4月現在)となっては、マスク着用が当たり前のものとなった。

*売店の店員をうまく説得する殿下。

*インベーダーゲームが流行していたのがよく分かる、ゲームセンターのシーン。

*「スコッチ刑事のテーマ」が流れた。

*ふり幅が激しいスニーカー。

*意外と器用な部分を見せるスニーカー。

*江口が逃走に使った用水路の細い道が、地味にかなり細くて危険そう。

*ラスト、殿下に心酔しているスニーカー。長さんにボスの湯飲みを、殿下に長さんの湯飲みを渡してしまい、気まずい雰囲気に(笑)。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

野崎太郎:下川辰平

 

 

松原直子:友直子

丸田謙介:日野道夫、江口進:小林尚臣

売店店員:高橋和枝、轢き逃げ犯と間違われた男:矢田稔

競馬場の男:市村昌治、進藤幸、新宿区坂田町郵便局局長:永谷悟一

中山一也、及川真美、半田昌子

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:山本迪夫