第365話「その一瞬……!」(通算第575回目)

放映日:1979/7/27

 

 

ストーリー

今朝未明、茨城県那珂湊市内で巡回中の警察官がナイフを所持した男に襲撃され、拳銃を強奪される事件が発生した。

現場に残されたナイフの指紋から、犯人が小田邦雄(27歳)(片桐竜次さん)と断定された。

茨城県警は直ちに県下に緊急配備を敷き、小田の行方を追っていた。

小田はトラックの荷台に隠れ、運転手が駐車場にトラックを停め、その場を離れた隙に、荷台から降りて逃走した。

茨城県警は小田が1年前(1978年頃)、東京都内矢追町に住んでいたことがあることから、東京方面に逃走したと考え、所轄の七曲署に捜査協力を要請した。

石塚は五代と一緒に覆面車内で張り込み中、資材置き場に犯人を追い詰めるが、犯人に銃撃され重傷を負い、倒れる悪夢を見て、激しくうなされていた。

五代は、小田の元恋人の自宅を2日間張り込んでいたことによる疲労であると励ました。

石塚は田口の殉職が頭から離れなかった。

五代は自分が見張るので、石塚に寝るように要請した。

小田の元恋人の自宅の照明が10分前に消えていた。

小田は1年前に元恋人と別れていた。

石塚は五代に、犯罪者の心理として、追い詰められると、生まれた家、育った町、一緒に暮らした女性といった自分の過去に後戻りすることがあることを説いた。

一係室に茨城県警から、小田に刺された警察官が死亡したこと、小田が都内に逃げ込んだということが間違いないという電話が入った。

山村は小田が次の犯行のために拳銃を強奪したと考察していた。

小田には特に親しく付き合っていた者がいなかった。

小田はどこの職業に就いても長続きせず、職を転々としていた。

小田の潜伏場所は元恋人の自宅とみられた。

五代は藤堂に、石塚が激しく疲労していることを報告し、張り込みを自分一人に任せるように進言したが、藤堂に断られ、石塚が来るまで待つように命じられた。

石塚は捜査中、恩師の豊島辰次(近藤洋介さん)と再会し、喫茶店で会話した。

豊島は石塚が七曲署捜査一係で勤務していることを知っていた。

石塚は警察学校時代、優等生であり、学校内でも随一の射撃の腕を持っていた。

豊島はかつて警察学校の教官をしていたが、約2年前(1977年頃)に退職し、現在は第一信用警備保障の警備部長をしていた。

豊島は有能な部下を欲しがっており、優秀な警察官が入社すれば、対外的に信用が高まるとして、石塚に、第一信用警備保障に来るように勧めた。

豊島は石塚に警察官という職業の危険さを説き、貴重な人生を賭けるだけの何があるのかを質問した。

石塚は現状に満足しており、転職する意志がないと返し、喫茶店を立ち去った。

石塚は豊島が別人のように変わってしまったと感じていた。

豊島は警察学校時代、「鬼の豊島」と呼ばれるほど一徹な性格だった。

石塚は藤堂に豊島の一徹さが妙な自信、傲慢さに変わり、物の言い方が高圧的でいい印象ではなかったと話した。

午前11時10分、石塚は五代と一緒に、小田の元恋人の自宅のアパートの張り込みに向かった。

夜、石塚と五代は不審な人影を発見したが、小田ではなかった。

五代は夜食を買うため、石塚と一旦別れた。

石塚は小田が階段からアパートに入り、小田の元恋人が窓のカーテンを閉めるのを目撃し、五代の帰りを待った。

五代は夜食を買い、覆面車に戻る途中、暴走族の集団が通行中のオートバイの運転手を転倒させたのを目撃した。

五代はオートバイを拝借し、暴走族を追跡し、全員に道路交通法違反容疑で逮捕すると宣言し、暴走族と格闘になった。

石塚は五代が戻ってこないため、単身アパートに入っていったが、その途中で豊島の発言と田口の殉職を思い出しつつも、拳銃を構えた。

石塚は小田の元恋人の自宅の扉を蹴破って突入しようとしたが、恐怖心から蹴破るのをやめ、ノブに手をかけた。

石塚が小田の元恋人の自宅に突入した直後、小田は机の上の本を電球に投げつけ、素早く飛び込んで物陰に隠れた。

小田は拳銃を発砲し、テラスから外に逃走した。

石塚は小田の元恋人(金子勝美さん)の妨害で小田を取り逃がしてしまった。

藤堂は石塚の連絡を受け、緊急配備を敷いた。

石塚は小田を探し回ったが、見つけられず、途方に暮れた。

石塚と五代は藤堂に、小田を取り逃がしてしまったことを謝罪した。

野崎は石塚に、小田の逃走進路が完全に塞がれたため、網を絞れば必ず捜索できると激励した。

山村は聞き込みをしていたが、期待できる情報を入手できていない状態だった。

小田は東京に居住していた2年間、少なくとも十数回転職しており、勤務先で知り合った人間も多数おり、相当な時間がかかる状態だった。

藤堂は捜査員に、小田の過去を調査するように指示した。

藤堂は石塚に、どんな射撃の名手でも暗闇の中で標的を銃撃するのが不可能で、部屋の中に女がいたため、結果的に犯人を取り逃したが、判断が間違っていなかったと激励した。

石塚は防衛本能で、小田の元恋人の自宅に突入することを躊躇った一瞬の間に、小田に隙を与えてしまったということを告白した。

石塚は一昨日の晩、犯人の凶弾を浴びて殺害される夢を見たこと、その夢を見たのは自分の頭の中に恐怖心があったからであることを打ち明けた。

石塚は早見、柴田、三上、田口が凶悪犯と果敢に戦って殉職したのに、自分は命を惜しんで犯人を逃がしてしまったことを激しく後悔した。

藤堂は早見達が犯人を検挙するために命を捨てたのではなく、結果的に犠牲になっただけであり、犠牲と犬死ではまるで意味が違うことを説き、むしろ命を惜しんでもらいたい、これ以上殉職者を出したくないという胸中を吐露した。

石塚は聞き込みに向かう途中、小田が自分の懐に向かって飛び込んできたことに気付いた。

小田の元恋人は島に、小田に脅迫されていたこと、銃撃戦に巻き込まれて死亡することを恐れ、必死に石塚の腕にしがみ付いたことを伝えた。

石塚は小田の元恋人の自宅に向かい、現場検証を行った。

小田は石塚が突入する前、箪笥の上に拳銃を置いていた。

石塚は小田が拳銃を取らず、電球を破壊し、前方に飛び込んだことから、小田が自分の拳銃を強奪しようとしたのではないかと推測した。

石塚は小田の行動が護身術の型であると判断し、明らかに訓練された行動であると考えた。

石塚は警察学校時代、小田の行動と同じ、相手の意表を突いて内懐に飛び込む訓練を豊島に叩き込まれていた。

小田が豊島からこの訓練を受けたこと、かつて第一信用警備保障に勤務した可能性があると考えられた。

石塚は豊島に小田のことを質問したが、心当たりがないと返された。

小田が第一信用警備保障に警備員として勤務したことがあれば、小田が当時派遣されていた会社、金融関係も襲撃される可能性があった。

豊島は警備会社が契約した会社の安全を守ることが仕事で、その事実があったとしても、警察が下手に介入すれば相手方が不安になり、会社の信用も失墜することから、警察の手を借りないと言い放った。

豊島はどうしても警察に捜査協力をしようとしなかった。

豊島は日南商事の警備員を3名から7名に増員し、東洋銀行の通用門に2名の警備員を配備すること、東急ストアの現金輸送にコンテナ車を使用すること、現金の搬出に10名の警備員を配備することを決定した。

第一信用警備保障が契約している金融機関や企業は大多数に上り、とても全てを警護するのは不可能だった。

小田は東急ストアに接近し、裏口で第一信用警備保障の警備員が現金をコンテナ車の荷台に輸送するのを見た。

小田は現金が入ったアタッシェケースを強奪し、逃走しようとしたが、乗用車で来た別の警備員に進路を塞がれた。

小田は警備員に身柄を取り押さえられそうになり、アタッシェケースを奪い返された。

小田は拳銃を発砲し、素早く検品所のプレハブ小屋の屋根に飛び乗り、さらにそこから建物の屋根に上って、西矢追町方面に逃走した。

小田の現金輸送車襲撃未遂事件が一係室に通報された。

小田は逃走中、巡回中のパトロールカーを見た。

中央通りは封鎖され、公園通りと矢追2番街の東西出入口には警邏隊、西大通り交差点には検問所、さらに裏通りには警察官が配置された。

石塚は小田に逃走を手引きしている者がいるのではないかと意見した。

小田が狭い範囲内で、これだけ厳重な警戒網を潜り抜けて逃げ回るとなると一人では無理で、第三者が逃走を幇助している可能性が十分にあった。

この界隈には小田の交友関係がいるのかは、現在の捜査段階では不明だった。

石塚は捜査中、ガソリンスタンドにいる豊島を見かけ、話し掛けた。

石塚は豊島に、犠牲者を出さず、現金が無事だったため、豊島も第一信用警備保障も信用を失墜せずに済んだこと、自分たちの対面のために小田を逃がしたのではないかと突きつけた。

豊島は民間の警備会社に責任を転嫁するのは本末転倒であると激しく抗議し、立ち去った。

石塚は豊島の苛立った態度を不審に思った。

ガソリンスタンドの従業員は豊島から、豊島の愛車のガソリンを満タンにするように、トランクの中のポリタンクにもガソリンを満タンに入れるように依頼されていた。

豊島は1時間後にガソリンスタンドから愛車を取りに行くことになっていた。

石塚は第一信用警備保障に電話し、警備員と話した。

警備員も豊島の様子を不審に思い、心配していた。

豊島は決済で現金500万円を不正に引き出していた。

石塚は警察学校に赴き、職員から豊島が退職した経緯を聞き出した。

豊島はガソリンスタンドから愛車を出発させようとしたが、そこに石塚が乗り込んできた。

石塚は豊島に小田の居場所を質問したが、知らないと返されたため、小田の居場所を聞くまでは降車しないと宣告した。

豊島は500万円についても誤魔化した。

豊島は小田のかつての上司で、小田が逮捕されることで自分の信用と名声に傷が付くことを恐れ、小田の逃亡を幇助しようとしていた。

豊島は激昂し、自分たちのことを放っておくように頼み、石塚に降車するように懇願した。

石塚は小田が豊島宅に押し入り、豊島の家族を人質に取っていることを見抜いた。

豊島の退職の理由は、教え子が次々に殉職していくことに耐えられなかったからだった。

石塚は、かつての豊島の教え子である小田をこのまま野放しにして、殉職した教え子に申し訳が立つのかと説得した。

豊島は昨夜の午後8時20分ごろ、小田が自宅に侵入して、拳銃で夫人と娘を人質に取ったことを自白した。

小田は豊島から金を取ることを思い付き、豊島に明日中に現金500万円と逃走用の車両を用意するように脅迫した。

豊島は石塚に、自分達を助けると思って、小田を見逃すように懇願した。

豊島は夫人と娘が奥の部屋にいて、小田が入口付近に座り込み、自分の帰宅を待っていることを教えた。

石塚は豊島の愛車の鍵と自宅の鍵を抜き取り、豊島宅に突入し、小田を逮捕しようとしたが、豊島にそんなことをしたら拳銃を持っている小田に殺害される、黙って小田を見逃せば誰も殺害されずに済むと警告、制止された。

石塚は豊島に、誰も傷つけずに、豊島夫人と娘を必ず救助すると約束した。

藤堂は連絡を受け、岩城と五代を応援に出動させた。

岩城と五代は豊島の自宅のマンションに到着した。

小田は豊島夫人と娘に拳銃を突き付け、部屋で待機していた。

石塚は岩城と五代と合流し、2人を裏手に回らせた。

石塚は豊島宅の扉の鍵を開錠し、拳銃を構え、扉を開けた後、部屋の中に飛び込んだ。

小田も前方に飛び込んだが、石塚に右腕を撃ち抜かれ、拳銃を落とした。

岩城は小田を逮捕した。

豊島夫人と娘は石塚に感謝した。

豊島はマンションに駆けつけ、石塚から夫人と娘の無事を告げられ、石塚に謝罪した。

五代はもしも自分が踏み込んでいたら殺害されたと思い、反省した。

藤堂と石塚は居酒屋でビールを飲んでいた。

藤堂は一瞬でも命が惜しいと思えば、逆に冷静になれると説得した。

 

 

メモ

*冒頭のアナウンサーの声は予告編担当の小林恭治氏?

*冒頭、犯人の銃撃を何発も受け、殉職する夢を見るゴリさん。3年後の「石塚刑事殉職」での殉職と重なる部分がある。

*「13日金曜日 ボン最期の日」のボンの殉職シーンが回想として挿入されている。ボンの殉職も今回のゴリさんに影響を与えている。

*小田の元恋人はアパートの表札に名前があったが、読み取れず。

*防衛本能と一瞬の躊躇いにより豊島を取り逃がしてしまい、号泣するほど激しく後悔するゴリさん。「犯人を逃がしてしまって」の声が裏返っているのが辛い。

*中島元氏は警察学校の職員の声?

*ロッキーがかなり空気。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

岩城創:木之元亮

五代潤:山下真司

野崎太郎:下川辰平

 

 

松原直子:友直子

豊島辰次:近藤洋介

小田邦雄:片桐竜次

小田の元恋人:金子勝美、摂祐子、警察学校職員の声?:中島元、大辻鉄平、山本敏之

郷内栄喜、前川広一、高橋義浩、後藤久男、前田克典

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:中村勝行

監督:児玉進