第360話「ボンは泣かない」(通算第570回目)
放映日:1979/6/22
ストーリー
矢部(栗田八郎さん)と溝口(鶴岡修さん)と河内(福井友信さん)の3人組が戸川興業(戸川組)の事務室に侵入し、金庫を開錠し、大量の宝石類を強奪した。
幹部の倉田(木原正二郎さん)は別室で麻雀をしていたが、休憩中に事務室を覗いた際、3人組を発見した。
3人組は非常階段から逃走し、矢部と河内、溝口が二手に分かれて逃走した。
溝口は、自分を追跡していた組員の長井修(29歳)に拳銃を発砲し、殺害した。
溝口は組員に追い詰められ、北新宿2丁目の「ひまわり荘」に逃げ込み、偶然にも銭湯に行こうとしていた102号室の住人の柳井千佳(紀比呂子さん)と鉢合わせし、柳井の部屋に押し入った。
溝口は柳井に拳銃を突き付け、脅迫した。
七曲署捜査一係が出動した。
石塚と田口は倉田と組員から事情聴取をしていた。
倉田と組員は犯人が3人組で、暗くて顔までは見えなかったと述べた。
倉田は石塚と田口から強奪された物を質問されると、何も盗まれていないと偽証し、岩城から戸川組の組員が付近をうろついていることについて尋問されると、捜査に協力していると返した。
犯行に使用された拳銃は弾丸から改造拳銃であると判明した。
弾丸は殺傷力を強めるために、弾頭に刻みが入られていた。
石塚と田口は戸川組関係者が、仲間が殺害をされているのに他のことに気を取られていることに疑惑を抱いた。
ひまわり荘の103号室の住人の主婦は、午後10時頃に隣の柳井宅で大きな物音がした後に扉が閉まったこと、柳井宅から男の話し声が聞こえたことを証言した。
柳井は丸国建設の電話交換手として勤務していた。
田口は柳井と対面した。
柳井は田口の、事件についての事情聴取に答えようとせず、捜査協力を拒否した。
柳井が階段を登ろうとした時、男2人とぶつかり、紙袋が崩れ、中身の果物が落ちてしまった。
田口は果物を拾った。
柳井は田口に心を開き、溝口のモンタージュ作成に協力した。
柳井は溝口から、警察に密告したら殺害するとくどく脅迫されていたこと、溝口が明け方にどこかに逃走したことを打ち明けた。
田口は柳井の警護を担当することになった。
柳井は外出中、ハンバーガーショップで財布を忘れてしまった親子を見かけ、手話を使って話し、代わりに代金の500円を支払った。
柳井は以前、隣の部屋に口の不自由な女の子が住んでいたことがあり、親しくしていくうちに手話を覚えていっていた。
その女の子は友達ができず、いつも門の陰にしゃがみ込み、通行人と自動車ばかり眺めていた。
柳井は女の子を放っておけず、友達となっていた。
柳井は電話交換手という職業上、多数の人と話をするが、誰もその相手が自分であることを知らないことを嘆き、女の子に同情していた。
山村は矢部宅に突入し、倉田と2人の組員を発見し、尋問した。
矢部はかつて戸川組の運転手だったが、勝手に覚醒剤を売り歩いたことが発覚し、制裁を受けていた。
倉田は矢部が泥棒の1人だったことを隠し、矢部が突然消息を絶ったため、行方を探していただけであると誤魔化した。
石塚は藤堂に、モンタージュの男が溝口と似ていることを連絡した。
溝口は工場の工員で、事件当日から消息を絶っており、時々に遅い時間まで工場に残り、何かを製作している節があった。
藤堂は石塚に、溝口の捜索を命令した。
田口はひまわり荘を張り込み中、柳井から握り飯と茶の差し入れを受けた。
岩城はひまわり荘に駆けつけ、田口に溝口のことを報告した。
柳井は銭湯に向かった。
岩城が田口に溝口の写真を手渡し、柳井に部屋に逃げ込んだ男が溝口かどうかを確認するように伝えた直後、謎の乗用車が柳井を轢こうと激走した。
田口が間一髪、柳井を庇い、事なきを得た。
柳井は自宅に田口を招き入れたが、柳井宅に強盗犯からの脅迫電話が入った。
強盗犯は柳井に、溝口のことをこれ以上証言すると殺害すると脅迫した。
柳井を襲撃した乗用車は盗難車で、手掛かりが何も発見されなかった。
柳井は自宅に逃げ込んだ男が溝口であると断定し、溝口が黒い革の鞄を所持していたことを伝えていた。
田口と岩城は溝口の仲間が柳井から溝口の居場所を聞き出そうと脅迫してきたことから、溝口が仲間割れを起こしたこと、戸川組が矢部達に大変な物を強奪されたことを推測した、
倉田は矢部と溝口を捕まえたことを否定した。
強盗犯は柳井に、柳井が会社にいれば爆弾を仕掛けるという脅迫電話を入れていた。
柳井は会社に迷惑をかけたくないため、早期退社していた。
矢部と溝口が高校時代からの不良仲間であること、2人には当時から付き合いがある河内という仲間がいるが、事件当日から姿を消していることが判明した。
島が強盗犯の強盗の目的を突き止め、一係室に帰還し、藤堂に報告した。
戸川組は宝石の密輸に手を出しており、事件当時、3億円相当の宝石を受け取ったところだった。
溝口が所持していた鞄の中身は宝石だった。
藤堂は溝口が最後に会ったのが柳井であるため、柳井の危険が増大したことを察した。
倉田と組員(新井一夫さん他)は矢部と河内の潜伏場所を突き止め、拳銃を突き付け、宝石の隠し場所を詰問した。
柳井は溝口達の脅迫に恐怖し、東京を離れ、親戚のいる三浦市に行くことを決断していた。
田口は柳井を守れなかったことを謝罪したが、柳井に運が悪かっただけであると励まされた。
岩城は田口と合流し、戸川組の行動が突然に慌ただしくなったことを報告した。
田口は何の罪もない柳井がヤクザに付きまとわれることに怒りを燃やしていた。
柳井は自宅に入ろうとした寸前、扉が開いているのを発見した。
柳井宅では、倉田が侵入し、室内を探し回っていた。
柳井は倉田がスーツケースをピッキングで開けようとしているのを目撃し、耐え切れなくなった。
柳井は部屋に密かに入り、背後から置物で倉田の頭部を殴打し、撲殺してしまった。
柳井は倉田の遺体を床下に隠した。
柳井は既に溝口を殺害していた。
藤堂は柳井の安全を最優先し、柳井を三浦まで送り届け、しばらく護衛するように命令した。
石塚がホテルやモーテルなどを捜索し、山村と島が戸川組をマークしていたが、未だに矢部と河内の居場所を突き止められていなかった。
山村は倉田が昨晩、柳井宅に向かう途中で消息を絶ったという情報を入手した。
田口は倉田が溝口に的を絞り、捜査一係の柳井の警護が外れるのを待機するために潜伏していると考え、柳井の警護に向かった。
野崎と石塚は矢部と河内の捜索に出動した。
山村は溝口と倉田が柳井宅で消息を絶っていることを不審に思っていた。
柳井は田口の警護のもと、電車に乗り、三浦市に向かっていた。
野崎と石塚は矢部と河内が宿泊していたモーテルを突き止めたが、既に昨夜に出発していた。
モーテルの従業員は矢部と河内が出発した時、倉田と組員に乗用車に押し込められていたことを証言した。
野崎と石塚と岩城は倉庫に突入し、戸川組の組員を叩きのめした。
倉庫内には、戸川組組員に痛め付けられ、重傷を負った矢部と河内が拘束されていた。
田口は、電車内にいた行商人風の老婆(木下ゆず子さん)が電話ボックスからどこかに電話しているのを発見した。
田口と柳井は京浜急行のバスに乗ったが、老婆もバスに乗り合わせていた。
矢部と河内が犯行を自白した。
強奪された宝石は、溝口が独占して逃走しているようだった。
柳井は近日中にヨーロッパ1週旅行に出発する計画を立てていたが、田口と岩城には全く話していなかった。
柳井は地味で目立たない性格だが、反面思い切ったこともする性格だった。
柳井は長期旅行の申し込みも、旅行会社の反対を押し切って行っていた。
柳井の旅行出発日の予定は本来、今日だったが、ツアーが定員不足で中止になり、20万円ほど高価な別のツアーに振り替えられてしまった。
柳井は金額不足を理由に、返事を保留にしていた。
柳井が犯人である可能性が浮上した。
田口は柳井と一緒にバスを降りたが、老婆もバスを降りて自分を尾行していることに気付き、老婆を追跡した。
老婆が逃走した直後、4人の戸川組組員(戸塚孝さん他)が田口の前に現れ、柳井の身柄を渡すように強要してきた。
田口は柳井を連れて逃走し、神社に逃げ込んだ。
柳井は転倒してスーツケースを落としてしまった際、スーツケースに執着する素振りを見せた。
田口は物陰に柳井を避難させ、威嚇射撃で組員をおびき出し、2人の組員に銃撃し、撃退した。
田口は残る2人の組員に奇襲攻撃を仕掛け、格闘で組員を叩きのめした。
神奈川県警の警察官が田口のもとに駆けつけ、組員を逮捕していったが、柳井が姿を消していた。
柳井宅の床や絨毯からルミノール反応が検出された。
柳井宅の床下から、倉田と溝口の遺体が発見された。
遺体と一緒に埋められていた凶器から、柳井の指紋が検出され、犯人が柳井であると断定された。
柳井は溝口の殺害をひた隠しにして、倉田まで殺害したため、正当防衛が成立しなかった。
田口は柳井がひたすらスーツケースに執着していることを思い出した。
柳井は三浦市の親戚の家に、怖いからしばらく身を隠すという電話を入れていた。
柳井が保留していたヨーロッパ旅行のツアーは明日に出発することになっていた。
柳井が遺体発見の報道を見て、どういう行動を取るかが問題点となった。
藤堂は柳井の行方を捜索することを最優先とする方針とした。
田口は柳井の元隣人の、口の不自由な女の子のことを思い出し、単独でその女の子が住んでいる伊豆に急行した。
田口は柳井が溝口の拳銃を所持していることを忘れていた。
藤堂は岩城に、柳井と親しくしていた女の子の住所に急行するように命令した。
田口は伊豆に到着し、伊豆の海辺にて、口の不自由な女の子と手話で交流し、遊んでいる柳井を発見した。
田口は柳井から女の子が離れたのを確認し、柳井の前に姿を現した。
田口は逃走する柳井を追跡したが、柳井に銃口を向けられた。
柳井は溝口に脅迫された時、拳銃の撃ち方を学習していた。
田口は柳井に、本心が優しい人物であると説得した。
柳井は観念し、女の子にヨーロッパの人形を大量に買う約束をしていたことを話した。
柳井は犯行の動機が旅行に行けないのが我慢できず、卑劣な性格になりたかったことであると自白した。
田口は午前6時40分に柳井の取り調べを終わらせた。
田口は柳井について、控えめで優しくて、思いやりがあったが、交換室で知らない人と言葉を交わす生活しかなく、淋し過ぎたという感想を抱いていた。
田口は柳井に好意を抱いていた。
メモ
*殉職編を除くとボン最後の主演作。「冬の女」のリメイクっぽい部分があり(脚本が同じ畑氏)、ボン悲恋編の集大成のような作品。
*木原氏は今回が「太陽」初出演だが、全ての回で暴力団幹部役。
*表と裏の二面性があまりにも極端な柳井。倉田を殺害するシーンで、青い光が当たっている演出が怖い。
*謎の老婆が不気味。
*「犯罪スケジュール」と同様に、犯行の動機が「海外旅行」。
*「ゴリさんのテーマ」がバックの、ボンの格闘が格好いい。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
田口良:宮内淳
岩城創:木之元亮
野崎太郎:下川辰平
松原直子:友直子
柳井千佳:紀比呂子
倉田:木原正二郎、河内:福井友信、矢部:栗田八郎、溝口:鶴岡修
行商人風の老婆:木下ゆず子、平隆有子、重盛てる江、三沢もと子、小野田博美
武田倫一、鈴木実、戸川組組員:新井一夫、大島光幸、藤田康之
ノンクレジット 戸川組組員:戸塚孝
石塚誠:竜雷太
島公之:小野寺昭
山村精一:露口茂
脚本:畑嶺明、小川英
監督:竹林進