第357話「犯罪スケジュール」(通算第567回目)

放映日:1979/6/1

 

 

ストーリー

午後2時、謎の男は電話ボックスから森川倉庫に、地下のトランクルームに30分後に爆発する時限爆弾を仕掛けたという脅迫電話を入れた。

森川倉庫管理部の芝岡部長(田口計さん)の通報を受け、野崎と島と田口と岩城が森川倉庫に急行し、芝岡の案内でトランクルームに入った。

トランクルームからは煙が出ていた。

野崎達は警備責任者の鈴木(大矢兼臣さん)から貸金庫の鍵を手渡され、全てのロッカーを開錠し、調査した。

トランクルームには発煙筒が仕掛けられていた。

島はトランクルーム内の円筒形のゴミ箱の中から時限爆弾を発見し、午後2時30分の直前にリード線を抜き、解除することに成功した。

時限爆弾の中身は爆薬ではなく石灰で、偽物だった。

犯人は警備員の話によると、出入りの清掃業者に扮装して地下のトランクルームに潜入していた。

犯人は作業用の帽子をかぶり、マスクを着用していたため、人相が不明だった。

時限装置に使用されていた時計は市販品で、発煙筒は自動車の非常連絡用の市販品だった。

藤堂は野崎と田口に時計の販売経路を、石塚に発煙筒の販売経路、山村にトランクルームの契約者の捜査を命令した。

島は前科者の捜査をするために出動しようとした。

芝岡が一係室を訪れ、事件を契機に、七曲署に森川倉庫の警備体制の強化の指導を要請した。

芝岡は混乱に乗じて、顧客の大切な預かり物を盗まれることを危惧した。

藤堂は芝岡の要請を承諾した。

芝岡は島に、森川倉庫の地下室の構造を説明した。

トランクルームの出入り口は1ヶ所のみで、奥が二重扉となっていた。

客はエレベーターから貸金庫に入ることができた。

森川倉庫の非常扉の鍵も鈴木が保管していた。

非常扉を開けると階段があり、上ると通用口から外に出ることができた。

島は訓練計画表を完成させ、芝岡に計画表を渡したが、警備員には当日に口頭で説明するように要請し、他の社員に口外することを禁止させた。

訓練計画の概略は

*犯人が警備員を混乱させるために、トランクルームに時限発火装置のついた発煙筒を設置し、手製の時限爆弾をロッカーにセットしたと想定する。

*午後3時、警備員に発煙筒の煙を噴き出させる。

*同時に、芝岡から七曲署に通報があり、七曲署から島の覆面車に緊急無線連絡が入る。

*さらに島の連絡で同僚刑事2名が現場に急行する。

*一方、警備員2名が非常持ち出し用のトランクと消火器を持って待機する。

*捜査員が到着するのは5分から10分後で、鈴木からロッカーの鍵を受け取り、爆発物を捜索し、発見次第、直ちに非常口から屋外に出て、時限装置の解除作業を行う。

島の計算では、通報から全ての作業が完了するまで、15分から20分かかると予測された。

明日の午後3時、防犯訓練計画が行われることが決定した。

島は計画表に正確な時間が書き込まれているが、応援の田口と岩城に知らせないように申請した。

防犯訓練計画には防毒マスクが必要だった。

田口と岩城は公園付近で待機していた。

午後2時30分、島は森川倉庫に向かう途中、杉田運送店のコンテナ車に尾行され、進路を塞がれた。

島はコンテナ車の運転手の相沢(片岡五郎さん)を詰問しようとしたが、相沢の仲間にスパナで後頭部を殴られて気絶し、コンテナ車の荷台の中に手錠で監禁された。

午後2時50分、相沢と仲間2名は、コンテナ車を空き地に停車させ、防毒マスクを強奪し、島の覆面車で森川倉庫に直行した。

午後3時、鈴木と警備員が発煙筒を点火させ、芝岡が七曲署に通報した。

藤堂は島の覆面車に無線連絡をしたが、応答がないことを不審に思った。

相沢と仲間は藤堂の無線連絡を無視し、防毒マスクを装備した。

藤堂は島の異変を察知し、田口と岩城を森川倉庫に向かわせた。

相沢達は七曲署の刑事に成り済まし、鈴木からロッカーの鍵、警備員からトランクと消火器を受け取り、警備員に待機するように指示した。

そして、相沢達は貸金庫の保管品を次々に強奪し、トランクの中に詰め込んだ。

島は気絶から目を覚まし、ネクタイの針金で手錠を外した。

相沢達は鈴木に訓練が終了したと偽り、通用口から島の覆面車で逃走した。

島はコンテナ車の荷台から脱出し、タクシーに乗って森川倉庫に急行した。

島は藤堂に、迂闊だったと謝罪した。

相沢達が島を拉致したコンテナ車は盗難車で、乗り捨てられていた覆面車からも遺留品が発見されなかった。

訓練計画を事前に知っていたのは芝岡のみで、田口と岩城も詳細を知らなかった。

島は犯人が訓練計画を利用して強盗を企んだのではないかと推理した。

偽時限爆弾の事件も、強盗犯の仕業である可能性が出てきた。

トランクルームの契約者18名から被害届が提出されており、強奪されたのは貴金属や株券、土地の登記書などで、現金がなかった。

被害総額は約2600万円だった。

貴金属類を換金するには、故買屋を通すか、加工業者に密売するしか手段がなかった。

島は芝岡と会っていた。

芝岡に訓練計画を推進した特定の人物はいなかったが、警備体制の不備を事件で見せ付けられたため、社内にそのような声が上がっていたのは事実だった。

芝岡は訓練計画表をコピーし、社長に渡したことを思い出した。

中井貴金属の工員は野崎と田口に、今朝に若い男がオートバイで工場を訪れていたこと、荷台に段ボールの箱を括りつけていたことを証言した。

男は工員に、金融流れの宝石や金の買取りを要求したが、断られていた。

男はヘルメットとサングラスを着用しており、「新宿 い 00-30」のオートバイに乗っていた。

男の身元が寺田英男(東条きよしさん)であることが判明し、野崎と田口はあけぼの荘に急行した。

寺田は盗品を500万円で売りさばき、自宅にて相棒の安藤(酒井昭さん)と報酬を山分けしていた。

寺田はもう1人の犯人の相沢には、喫茶店で報酬を渡していた。

野崎と田口はガス会社社員を装って寺田宅に突入し、寺田を逮捕した。

安藤は窓から逃走を図ったが、田口に逮捕された。

寺田は田口に取り調べられ、盗品を売りさばいて得た金を3人で山分けしたこと、自分と安藤が120万円ずつ、相沢が260万円を受け取ったことを自白した。

しかし、寺田は相沢の居場所を知っておらず、相沢という名前が本名なのかどうかも不明な状態だった。

島は安藤を取り調べた。

安藤は相沢に犯行計画を持ち掛けられたことを自供したが、相沢が訓練計画を知っていた理由、相沢の居場所を全く知らなかった。

安藤は相沢とは昨日、ディスコで知り合っただけの仲だった。

捜査員は故買屋から、あやうく加工寸前の盗品の貴金属を回収した。

石塚は寺田宅から、株券や不動産の登記書を押収していた。

相沢の足取りは不明だった。

山村は盗品の中に、平島昌造の名義の株券と不動産登記書の約6000万円相当分に被害届が提出されていないことを不審に思った。

平島に資産隠匿容疑が出た。

建設業界関係者は山村と島に、半年前に平島の経営する建設会社が倒産してから、全く交流がないことを話した。

倒産原因は、平島の傲慢経営による資金繰りの行き詰まりと言われていたが、一部の債権者から、偽装倒産の疑いが出ていた。

盗品の株券と不動産登記書は、平島の隠し財産であり、平島に背任横領と脱税の容疑がかかった。

山村は何者かが平島の隠し財産を暴こうとして、強盗事件を画策したのではないかということ、偽爆弾事件が強盗事件の伏線ではないかということを推測した。

山村と島は平島(幸田宗丸さん)と対面し、犯人についての心当たりを尋ねた。

平島は犯人が、以前に自分の経営していた会社の下請けの配管業者の吉村浩(宗近晴見さん)ではないかと断定した。

吉村は平島のもとに乗り込み、私腹を肥やすために下請け業者を切り捨て、会社を倒産させたと詰め寄り、後でそのからくりを暴いてやると糾弾したことがあった。

山村と島は吉村を連行し、取り調べた。

吉村は、自分たちのような下請け業者を冷酷に使い捨てる平島を激しく憎み、偽爆弾を仕掛けたことを自白した。

吉村の目的は、爆弾の騒動で警察の捜査が開始され、平島の隠し財産が暴かれることにあった。

平島は強盗事件とは無関係であると強調した。

島は寺田に吉村を面通しさせたが、相沢とは別人だった。

山村と島は再度、事件を整理した。

主犯の相沢はどこかで防犯訓練の情報を入手し、翌日にコンテナ車で島の覆面車を尾行した。

相沢達は午後2時30分に島を襲撃し、コンテナ車を空き地に乗り捨て、森川倉庫に向かい、予定より早い午後3時4分に到着し、予定より早い午後3時8分に終了させていた。

島は相沢達が訓練計画を忠実に実行した場合、非常口から逃走するはずなのに、表玄関から逃走していることを疑問に思った。

相沢達が見取り図を3分の2しか見ていないこと、芝岡が訓練計画表のコピーに失敗し、下の3分の1が感光していないものが出来てしまったということが推理された。

芝岡は訓練計画表のコピーを1枚失敗し、それをゴミ箱に処分したことを話した。

ゴミ箱のゴミは毎日、掃除婦が集め、地下のゴミ捨て場に投棄していた。

島はゴミ捨て場のゴミから、訓練計画表の3分の2がコピーされたものを発見した。

芝岡は訓練計画表が外部に漏洩されていなかったことを喜んだ。

山村はこのコピーを何者かが外部のコピーサービスで複写し、元のゴミ捨て場に戻したのではないかと意見した。

強盗事件には森川倉庫の内部関係者が関与していた。

野崎と石塚は男2人(星野晃さん他)、30分前に矢追2丁目のゲームセンターで相沢を目撃したという証言を入手した。

田口と岩城は野崎と石塚の無線連絡を受け、矢追2丁目に急行し、ゲームセンターで相沢を発見した。

相沢は逃走し、階段下で抵抗したが、逮捕された。

相沢は島と田口に取り調べられ、寺田と安藤を引きずり込んだのが自分であることを認めた。

相沢はディスコ「カンタベリーハウス」にて知り合った女から、訓練計画表のコピーを受け取ったことを供述した。

相沢の供述によると、女はカーリーヘアーにトンボのファッショングラスをしており、名前も顔も不明だった。

相沢は女に報酬の分配金の60万円を渡して以来、女と会っていなかった。

島は芝岡に訓練計画の説明をした日に、自分に茶を差し出した、庶務課社員の村瀬恵子(嶋めぐみさん)を怪しんだ。

相沢は自分に計画表を渡した女が、村瀬と似ていることを証言した。

相沢は島から村瀬のことを教えてもらい、森川倉庫庶務課に電話をかけ、村瀬を呼び出し、村瀬に今夜の午後8時、「カンタベリーハウス」に来るように差し向けた。

田口は相沢を引き連れ、ディスコで待機していた。

相沢は女がフーテンの女で、ディスコに来るわけがないと思っていたが、その女がディスコに現れた。

女は田口と相沢が手錠で繋がれていることを発見し、逃走しようとしたが、島に呼び止められた。

女の正体はカーリーヘアーの鬘とサングラスで変装した村瀬だった。

島は村瀬を逮捕した。

村瀬の強盗事件の動機は一度、海外旅行をしてみたかったというものであり、他にすることがなく、毎日がとても退屈だったと述べた。

村瀬は偶然、ゴミ捨て場でコピーを発見し、強盗事件を発案し、ディスコで初めて会った相沢にコピーを渡していた。

 

 

メモ

*「待伏せ捜査」に続き、またも犯人に自分の計画を悪用される殿下。

*田口氏は黒幕に見せかけて善役。

*ディスコのBGMは「お富さん」のアレンジ。ディスコのシーンがよく出る。

*2つの事件が複雑に絡み合う展開が非常に面白い。

*嶋めぐみ氏は「撃てなかった拳銃」でも事件の黒幕役。(同じ殿下主役編)。

*黒幕の村瀬の動機は盗んだ金で海外旅行というもの。そのために全くの無計画で犯行を重ねており(相沢にコピーを渡したのも偶然)、ある意味恐ろしい。後の「ボンは泣かない」の動機も海外旅行だった。

*捜査員は村瀬の心情が全く理解できていない様子。ただ、ナーコはボスに60万あったら嫁入り道具を買うのかと尋ねられ、「海外旅行」と答える…

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

松原直子:友直子

相沢:片岡五郎、安藤:酒井昭、寺田英男:東条きよし

村瀬恵子:嶋めぐみ、芝岡部長:田口計、平島昌造:幸田宗丸

高崎良三、吉村浩:宗近晴見、鈴木:大矢兼臣、高松政雄、若原初子

小坂生男、森川倉庫警備員:森下明、渡辺真六、武田倫一、岩本照雄

ノンクレジット 野崎と石塚の聞き込みを受ける男:星野晃

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:中村勝行、小川英

監督:児玉進