第329話「タイムリミット」(通算第539回目)

放映日:1978/11/17

 

 

ストーリー

11月10日、マニラ市郊外において、響組幹部の本間進が射殺死体となって発見される事件が発生した。

その後の現地警察の捜査により、本間は響組と対立関係にある竜神会の手によって殺害されたという見方が濃厚だった。

本間殺害の容疑者と目される、竜神会幹部の市木武正(寺田農さん)と、竜神会組員の吉川大助(蟹江敬三さん)は、現地を離れ、日本に帰国していたが、成田新国際空港で逮捕されていた。

市木と吉川はそれぞれ、本庁のパトロールカーで連行されていたが、パトロールカーの前に響組組員の乗ったトラックが立ち塞がった。

本庁の警察官と刑事(水村泰三さん、村上幹夫さん)は響組組員が銃撃戦となった。

吉川は銃撃戦で混乱し、パトロールカーの座席にうずくまっていた。

銃撃戦で、警察官1名が殉職、1名が重傷を負い、2名が軽傷を負っていた。

響組組員は3名が軽傷を負って逮捕され、3,4名が乗用車で東京方面に逃走していた。

吉川は無傷で本庁に保護されたが、主犯の市木は混乱に乗じて逃走し、消息を絶っていた。

市木は矢追町界隈を根城にしていた。

市木は警察と響組の両方から追跡されているため、個人的な伝手を頼って矢追町に潜伏している可能性が高かった。

田口と岩城は矢追町を一晩捜査したが、収穫を得られなかった。

岩城は公園で田口と別れ、単独で、邸宅の多い新宿区錦ヶ丘を捜索することにした。

石塚も市木の行方を掴んでいなかった。

山村は市木がどこかに潜伏していると推測していた。

本庁刑事(水村泰三さん、村上幹夫さん)は吉川を尋問していた。

吉川は体調を崩し、刑事に便所に行かせるように頼んだ。

吉川は市木が本間を殺害し、三下の自身が本間の遺体の後始末を手伝っただけであると自白した。

吉川は書類の署名をした直後、激痛に苦しんだ。

岩城は錦ヶ丘を捜査中、市木を発見し、追跡した。

市木は錦ヶ丘2-3にある大河原邸の勝手口から邸宅に侵入した。

岩城は塀を飛び越えて大河原邸に入り、市木を追跡したが、市木が大河原の孫の健太郎を人質に取った。

大河原邸の家政婦が、巡回中の早瀬婦警(長谷直美さん)に事件を伝えた。

岩城は市木に拳銃を手渡すように強要された。

早瀬は一係室の藤堂に、事件を連絡した。

岩城は拳銃をホルスターごと放り投げ、市木に拳銃で殴り倒された。

市木が逃げ込んだ邸宅の主の大河原善三は、政界の黒幕と噂される人物だった。

人質にされているのは大河原夫人(水城蘭子さん)、たまたま里帰りしていた大河原の娘(田島令子さん)とその子供の健太郎、そして岩城の4人だった。

野崎、石塚、田口が大河原邸前に到着した。

大河原邸の勝手口は施錠されていた。

市木は岩城を手錠で拘束し、石塚と田口が鳴らした勝手口の呼び鈴も無視した。

野崎は電話ボックスから市木に電話をしたが、市木に一歩でも踏み込んだら人質全員を殺害すると脅迫した。

藤堂は野崎からの連絡を受け、市木に続けて電話をかけることを決定した。

市木は捜査員をじらすため、藤堂からの電話を無視した。

市木は大河原夫人から、金を差し上げると言われても、金ではどうにもならないとして突っぱねた。

市木は大河原のことを知っていた。

大河原夫人は市木に、大河原への電話を要求し、許可を貰った。

大河原は外出中だった。

藤堂は大河原夫人に電話をかけ、市木を電話に出すように要求したが、夫人から、市木が大河原と直接交渉することを告げられた。

山村は大河原の秘書(中田博久さん)に、大河原(安部徹さん)が重要な会談であることを理由に面会を断られたが、家族の生命が危機であることを告げ、大河原との面会に成功した。

山村は大河原に、焦らずにじっくり機会を待つように説得した。

大河原は現場の捜査員と話しても打開できないと考え、本庁と掛け合うことにした。

藤堂は本庁に赴き、幹部(武内亨さん)と話していた。

市木の要求は国外逃亡資金の3億円と、航空機1機だった。

大河原は資金については既に手を打っており、藤堂に何もしないで市木の要求に従うように強要した。

藤堂は市木を逃亡させる気などなく、大河原の要求に断固拒否した。

大河原は岩城が人質になっていることについて、刑事である以上、生命の危険も覚悟の上であるという考えであり、自分の家族が人質になっているという点も含めて、なおさら市木の要求に従うつもりだった。

藤堂は市木が岩城の拳銃を強奪しているため、もしも逃がせば、市木を空港まで運ぶ自動車の運転手、旅客機のパイロットの生命が危険に晒されると反論し、現状のまま解決を図るという考えだった。

飛行機の用意は、機体の整備とパイロット選出の問題があるため、4,5時間かかった。

大河原は本庁と藤堂に5時間の猶予を与えた。

藤堂は本庁を後にして、大河原邸に駆けつけた。

野崎は市木に人質の解放と投降を要求した。

市木は次の連絡が来ていないことに苛立ち、大河原に電話しようとしたが、警察が大河原邸の電話線を切断していた。

藤堂は幹部から、緊急事態が発生したため、すぐに本庁に戻るように命令された。

吉川は真性コレラと断定されていた。

吉川はコレラ菌の潜伏期間の最長である72時間ぎりぎりに発病していた。

市木にも数時間以内にコレラの症状が現れる可能性が出た。

大河原は激昂し、藤堂に市木を解放し、家族から引き離すように迫ったが、市木を絶対に表に出せないと断固拒否された。

藤堂は大河原の家族が仮に感染したとしても、発病までには余裕があると反論した。

大河原は幹部に、藤堂を解任し、別の指揮官をたてるように抗議した。

藤堂は幹部に事件の早期解決の手段を頼まれ、大河原と幹部に1時間だけ待つように懇願した。

幹部はタイムリミットを1時間後の午後2時に指定し、それまでに解決できなければ藤堂を解任すると宣言した。

石塚は市木がコレラであるため、強行突入を提案したが、藤堂に制止された。

藤堂は大河原邸の電話線を再び接続した。

野崎は市木に、テレビかラジオのスイッチを点灯し、市木へのメッセージを見るように電話した。

市木はテレビのニュースで、吉川が病院に収容され、エルトール小川型のコレラ菌が検出され、真性コレラ患者であること、自分もコレラに感染している可能性があることを知ったが、警察の小細工として信じなかった。

岩城は市木に、テレビのニュースが市木だけのために嘘のニュースを流さないことを伝えたが、痛めつけられた。

ニュースでは、空港の大規模な消毒、市木と吉川と同じ飛行機に乗り合わせた乗客の捜査が行われていること、吉川を取り調べた刑事が警察病院に隔離されたことが報道されていた。

市木は健太郎の頭に拳銃を突き付け、大河原邸を出発するため、医師と自動車を用意するように要求した。

藤堂は市木の要求を全面的に承諾することにした。

藤堂は大河原邸の前に護送車を用意し、護送車の運転手役を決意していた。

山村が遅れて藤堂達の前に駆けつけた。

大河原邸の前に医師(丸山詠二さん)が到着した。

医師によると、コレラ菌に感染している者に今更予防注射をしても、あまり効果がないとのことだった。

医師はすぐに市木を隔離し、発病の有無を確かめるように提案したが、断られた。

市木は護送車の運転手役に女性を指名した。

早瀬が護送車の運転手役に名乗り上げた。

山村は市木に、女性の運転手を用意する代わりに、人質には護送車に入った時点で釈放するように要求した。

岩城は市木の拳銃を蹴り飛ばし、揉み合いとなったが、市木に拳銃を回収され、殺害されそうになった。

市木は外に出て、護送車の運転手が早瀬であることと、護送車の内部を確認した。

市木は大河原の娘と健太郎を一時的に護送車に乗せた。

医師は藤堂が扮していた。

市木は藤堂の鞄の中身が医療道具だったことを確認し、大河原の娘と健太郎を解放し、護送車を出発させた。

山村と田口は大河原邸の庭を捜索し、庭の奥に放置されていた岩城を救出した。

岩城は山村に、市木が表札も見ていないのに、最初から邸宅が大河原の邸宅であることを知っていたこと、市木が別荘から不意に現れたことを報告した。

大河原の別荘には、市木が昨夜に潜伏していた形跡があった。

海外進出を画策する竜神会の背後には、大河原がいたことが明確となった。

石塚が藤堂と市木の乗る護送車を尾行していたが、島と交代した。

藤堂は市木から注射を要求され、ケースから注射器とアンプルを取り出したが、充填中にアンプルから液体を零してしまった。

藤堂は車内の振動で、予備のアンプルの1個を落としてしまい、早瀬に停車を要請した。

藤堂は最後の1個のアンプルをわざと落として踏み潰し、早瀬を逃がし、市木から拳銃を奪い取ろうとしたが、逆に拳銃を突き付けられた。

市木は医師が藤堂の変装であることに気付き、藤堂を殺害しようとしたが、藤堂に自分を殺害した後どうするかを尋ねられた。

藤堂は市木に、コレラの症状が、突然に吐き気と下痢の症状が表れ、その後に激しい喉の乾きが表れ、声が枯れ、体中の水分が失われ、苦しみぬきながら死ぬことを説明した。

市木にコレラの症状が出て、苦しみ出した。

護送車の停車した空き地は捜査員が包囲していた。

藤堂は市木に、市木と竜神会の背後にいるのは誰かを詰問した。

大河原は秘書から、藤堂が医師に扮装していることを知った。

市木は自分を外に出さない藤堂に怒り、殺害しようとしたが、コレラの症状に激しく苦しみ、昨夜に大河原の別荘に宿泊したこと、マニラで本間を殺害したのが大河原の差し金だったことを自供した。

市木は逮捕されたが、コレラ菌には感染しておらず、車内で吐き気をしたのは気のせいだった。

早瀬が一係室に現れ、藤堂と共にコレラに感染していなかったことを報告し、山村に感謝された。

大河原は地方検察庁に逮捕された。

 

 

メモ

*「勇気ある賭け」のリメイク的作品。

*ゲストが非常に豪華。寺田氏が若く、粗暴な雰囲気。

*前回の「待ち合わせ」に引き続き、竜神会と響組の暴力団抗争がテーマとなっている。

*サブタイトルの出るタイミングがおかしいような。

*今回からオープニングのテロップの字がやたら小さくなる。個人的にはテロップは大きい方が好き。

*寺田氏と田島氏は「共謀」でも共演。そちらでは夫婦役。

*ロッキーは市木の潜伏場所を突き止めるも、拘束されて、あまりいいところなし。ただし、大河原と市木の関係性を報告する手柄を立てた。

*市木が女性の運転手を指名し、そこに早瀬が名乗りを上げるというのは上手い流れ。「陸送屋の端くれ」と身分を偽ったが、違和感なし。

*医師に扮するボス。「大都会 PARTII」「大都会 PARTIII」を彷彿とさせる。ボスの市木の自白技術が結構見ごたえあり。

*結局、市木はコレラには感染していなかった。ボスの巧妙な誘導尋問が精神的に影響した?

*中田氏は出番が非常に少ない。

*早瀬婦警は今回の後、しばらく出演しなくなり、次回登場は半年以上後の「デイト・ヨコハマ」。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

早瀬令子:長谷直美

松原直子:友直子

市木武正:寺田農

大河原善三:安部徹

大河原の娘:田島令子、本庁幹部:武内亨、大河原夫人:水城蘭子、吉川大助:蟹江敬三

大河原の秘書:中田博久、本庁刑事:水村泰三、太田英夫、市川千恵子、医師:丸山詠二

ノンクレジット 本庁刑事:村上幹夫

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:小澤啓一

※2020/10/21執筆