第302話「殺意の証明」(通算第512回目)

放映日:1978/5/12

 

 

ストーリー

矢追1丁目の第1コーポで、入江京太郎(56歳)が何者かに絞殺される事件が発生した。

犯人は入江宅にかかってきた電話を強制的に切った。

田口と岩城は学園通りの矢追交差点付近を巡回していたが、野崎から入江が殺害された事件の連絡を受けた。

田口と岩城は終電間近の、第1コーポの最寄り駅を捜査することにした。

田口は、プラットホームのベンチに座っていた寺山元晴(29歳)(三浦浩一さん)に職務質問を行い、運転免許証か身分証明書を見せるように頼んだ。

寺山は終電が迫っていることを理由に、職務質問に答えず、田口に七曲署に連行されそうになると、田口を突き飛ばして駅から逃走した。

田口は、物陰に隠れた寺山に奇襲され、掴み合いになったが、殴り飛ばし、銃口を向けた。

田口は公務執行妨害で寺山を逮捕した。

寺山はあくまで、田口が自分を無理やり逮捕しようとしたために激高しただけであると述べ、謝罪した。

入江は入江観光という仙台の観光会社の社長で、殺害現場の第1コーポの部屋が、東京での仕事場だった。

部屋は荒らされていなかったが、財布が無くなっていた。

田口と岩城は寺山を取り調べた。

寺山は田口から、入江が殺害されたことを告げられたが、寺山のことを知らず、寺山のことを話してくれれば、職務質問に応じたと発言した。

寺山は美容師であり、資格を持っていた。

寺山には前科が無かった。

寺山は逃走して暴力で抵抗したため、公務執行妨害の線こそ明白だが、犯人という証拠は無かった。

田口は自分に襲撃してきた時の寺山が、明らかに殺意を抱いていたため、入江殺害の真犯人であると直感した。

寺山と入江には共通点がなく、現場から検出された指紋には寺山の指紋と一致するものがなかった。

寺山は手袋を所持しておらず、8万5000円ほどの現金を所持していたが、入江の財布を所持していなかった。

入江はいつも扉を施錠しており、こじ開けた形跡が無かったため、顔見知りの犯行の線が濃厚だった。

田口は藤堂に、寺山の捜査を申請し、許可を貰った。

藤堂は捜査員に、寺山と入江の結びつきの捜査を命令した。

入江収(内藤栄造さん)が、収の弟と霊安室で入江の遺体と対面した。

収と弟は、入江を殺害した真犯人に心当たりが無かった。

収は家族も会社も仙台にあるため、遺骨と一緒に仙台に帰ることにしていた。

田口が、寺山が今まで住んでいた町の警察署に問い合わせた結果、寺山にもう1件の殺人容疑がかかっていたことが判明した。

3年前(1975年頃)、名古屋にて、寺山と2年間同棲していた、古畑信子という女性が失踪していた。

信子には1000万円の保険金が掛けられており、受取人の名義が寺山となっていた。

寺山は任意出頭の形で取り調べを受けていたが、殺人の証拠が皆無だったため、捜査が打ち切られていた。

田口は寺山が名乗らなかったのは、その事件のことを知られたくなかったからと思っていた。

田口は岩城を連れ、名古屋に行くことにした。

寺山の勾留期限は今日の1日しかなかった。

田口と岩城は愛知県警に赴き、刑事(金内喜久夫さん)から信子(新海百合子さん)の写真を見せてもらった。

3年前、信子の住んでいたアパートの住人から、ある晩に信子の悲鳴と物が壊れる音を聞き、その翌日から信子が消息を絶ったという通報を受けていた。

刑事が信子の部屋を捜査した結果、ゴミ箱から血痕が付着した布が発見された。

さらに、厨房の床からも血液反応が検出され、検査の結果、血液型は信子のものと判明していた。

その時、寺山は競艇に行っており、帰ってきたところを名古屋県警に連行されていたが、悲鳴が聞こえた晩は帰宅していないと言い張り、深夜映画を見て、そのまま競艇場に行ったと供述していた。

事件は寺山のアリバイが判明しないまま、信子の死体が発見されなかったため、迷宮入りとなっていた。

信子は家出人扱いとなっており、事件以来、信子の戸籍を触った者はおらず、住民登録もなかった。

田口と岩城は、東京で半年間、寺山と一緒に勤務していた美容師(小林尚臣さん)と会っていた。

寺山は美容師にも、自分のことを全然喋らなかった。

美容師は寺山が、名古屋の東山動物園が映った、3月3日のテレビのニュースにかなり反応を示していたことを記憶していた。

3月3日、東山動物園は子供の祭りが開催されていたため、子供連れで賑わっていた。

田口と岩城は中京テレビを訪れ、東山動物園の子供の祭りのニュースのフィルムを見せてもらった。

そのニュースには、信子が複数人の幼児と一緒に映っていた。

田口は信子が寺山に殺害されるのを恐れて、消息を絶ったこと、寺山が東京のテレビで信子を発見したことを推理した。

田口は信子の失踪と、入江の殺害に何かを感じていた。

田口と岩城は信子が幼稚園の教諭ではないかと推察した。

田口と岩城は名古屋東動物園の職員に、3月3日の動物園の団体入場者を質問した。

職員は、中学生以下の子供が、動物園の入場料が無料だったため、記録を取っていなかった。

山村と島が一係室に帰還し、藤堂に収のことを報告した。

入江の長男の収は養子であり、入江の次男は実子であった。

入江は長い間に子供ができず、養子を迎えたところ、その後に子供が誕生していた。

収は入江の観光事業には全く無関心で、道楽半分のカメラに熱中していた。

入江夫人が去年(1977年)に亡くなって以降、入江と収の関係がうまくいかなくなり、親子喧嘩が絶えなかった。

入江は近日中に収の養子縁組を解消するつもりだった。

収には入江を殺害する動機があったが、殺害時刻には仙台にいた。

寺山が収に雇われたとすると、入江宅に容易に侵入できた謎も解けたが、プロの殺し屋ではない寺山が収に殺害を依頼された理由が謎だった。

石塚が駅付近のドブ川を捜索した結果、下水溝の金網から、手袋と入江の財布が発見された。

寺山が逃げ出した理由は、手袋と財布を処分するためだったと考えられた。

収には動機があったがアリバイがあり、寺山にはアリバイが無いが動機が不明だった。

藤堂は交換殺人ではないかと推理した。

寺山の勾留期限があと8時間となっていた。

田口と岩城は名古屋中の幼稚園と保育園を、片っ端から捜索することにした。

収は入江の通夜を抜け出し、取材と称して、仙台港から名古屋行のフェリー「いしかり」に乗っていることが判明した。

交換殺人の線が強くなってきた。

「いしかり」の名古屋の到着は、明朝の午前9時30分だった。

田口は藤堂から、交換殺人と「いしかり」のことを告げられた。

入江は数億円の遺産を持っていた。

収は寺山が入江を殺害した代償として、信子を殺害するために名古屋に赴いたという仮説ができた。

藤堂は田口と岩城に、推理が的中していれば、収の行先に必ず信子がいるとして、収を見失わないように命令した。

寺山が釈放された。

石塚と島は寺山を尾行した。

翌朝、田口と岩城は名古屋港にて待機していた。

「いしかり」が名古屋港に着港した。

田口はフェリーから降りる乗客、岩城はフェリーから降りる車を監視していた。

田口はフェリー内を走り回り、収を捜索したが、収を見つけられなかった。

岩城は収の乗用車「宮55 す 51-27」を発見したが、収がいなかった。

フェリーの乗組員は、収が急用を理由に、新幹線で名古屋に来たのではないかと証言した。

収は捜査員のマークを見越し、既に名古屋に到着していた。

田口と岩城は手分けして託児所を捜索することにした。

田口は堀川のすみれ託児所で、信子を発見することに成功した。

信子は田口に、警護しに来たと告げられても、平気な顔を見せた。

信子はおかしな経緯で名前を変え、名古屋に来ていた。

岩城は愛知県警から連絡を受け、すみれ託児所で田口と合流した。

信子は児童を連れ、散歩に向かった。

信子の自宅から検出された血痕は、寺山の留守中に信子が食器を割り、指を切った時に流した血だった。

1000万円の保険金は、掛けたのも保険料を払っているのも信子自身で、寺山への謝罪の気持ちからだった。

信子は寺山を好きになって同棲したが、遊び好きの寺山と性が合わず、逃げ出していた。

寺山は信子が逃げてから殺意を抱いていた。

石塚と島が県警指令室から、田口と岩城に、寺山が名古屋に来ているという連絡をした。

寺山は石塚と島をアリバイの証人に仕立て上げるために、平気で名古屋に来ていた。

石塚は信子が収に殺害されるのではないかと断定した。

信子は児童を遊ばせていたが、児童の一人が信子から離れてしまった。

収がオートバイに乗り、信子を轢き殺そうと爆走した。

田口は間一髪、信子の生命を守ることに成功した。

田口と岩城はオートバイで逃走する収を追跡した。

石塚と島も愛知県警から出動した。

収のオートバイは地下道に入ったが、運転の途中で段ボール箱に激突し、横転した。

田口と岩城は覆面車を降り、収を追跡した。

収はエレベーターで地下に降り、地下駐車場にて、走行していた名鉄運輸のトラックの荷台に飛び乗った。

田口と岩城は石塚と島の覆面車に乗り、トラックを追跡した。

収はトラックがパトロールカーによって進路を塞がれると、人通りの多い地下街に逃走した。

愛知県警刑事も人通りの多さに、収を見失ってしまった。

田口は工事中の瀬戸線の地下路線に入り、調査を開始した。

今日は工事を休んでいた。

田口と岩城、石塚と島は二手に分かれ、収を捜索した。

田口と岩城は照明を点け、潜伏していた収を発見して追跡した。

収は工事現場の階段を上り、逃走しようとしたが、先回りした石塚と島に包囲され、観念した。

収は寺山が、入江と自分の喫茶店での口喧嘩を聞き、犯行を持ちかけてきたと自供した。

石塚と島、田口と岩城は、新聞を読んでいる寺山の前に現れ、手錠をかけた収を見せた。

田口は寺山に、一瞬見せた寺山の殺意が、自分を捜査に駆り立てたと突きつけた。

田口は寺山を逮捕した。

 

 

メモ

*300回記念の一環なのか、名古屋のロケーション回。

*交換殺人というテーマは、同じロケーション回の「南国土佐・黒の推理」と「南国土佐・黒の証明」でも使われているが、そちらは前後編。

*フェリーの乗組員の滑舌が悪く、何を言っているかが分からない。

*「序曲」が長時間流れる。

*後半からゴリさんと殿下も名古屋に駆けつける。

*収が信子の殺害に失敗したシーン以降は、ほとんど追跡のシーンが主要。

*地下鉄の路線でボンとロッキーが収を追跡するシーンがやたらに長い。

*ラスト、ロッキーと二人で名古屋に行こうとするボン。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

寺山元晴:三浦浩一、入江収:内藤栄造

古畑信子:新海百合子、愛知県警刑事:金内喜久夫

美容師:小林尚臣、大矢甫、松澤重雄

酒井宣行、林実、古河茂樹、野口俊和、巣山プロダクション

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

協力:中京テレビ、名古屋鉄道、太平洋沿海フェリー

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:木下亮

※2020/5/22執筆