第289話「殿下と少年」(通算第499回目)

放映日:1978/2/10

 

 

ストーリー

田口は島を上野駅で下ろした。

島は宮城県警まで、戸川組の牧野昭夫(片岡五郎さん)を護送することになった。

ヤクザ2名(井上博一さん、伊東平山さん)が島と牧野を尾行していた。

島と牧野は互いに手錠で繋がれ、23時55分発の列車に乗ったが、ヤクザも列車に乗っていた。

牧野は島から仙台で何をしたのかと質問されても、何もしていないと答えた。

島と牧野の向かいの席に、孝(5歳)(青木文武さん)という少年と、乳児を背負った孝の母親が座った。

列車が出発した。

孝は島からちらっと見えた手錠を見て、母親に手錠のことを話してしまった。

孝の母親は親戚に警察関係者がいたと誤魔化した。

孝はかつて父親が逮捕されて連行される瞬間を目撃していたため、島を軽蔑の目線で見ていた。

その際、孝の母親は孝に、父親が悪事を何もしていないと説明していた。

石塚と岩城は宮城県警の、牧野の身柄送致要請の理由が分からなかった。

5日前、牧野は喧嘩で傷害事件を起こしたが、それから3日間、どこかに旅行をしていて留守だった。

牧野は帰宅寸前に島と石塚に逮捕されていた。

牧野の大きなボストンバッグの中に入っていたのは旅行用具だけだった。

牧野は何処に行っていたのかを決して自白しなかった。

石塚は七曲署正門の前に、戸川組の息がかかっている中里(村田正雄さん)という中年男性がいるのを発見した。

ヤクザが島と牧野の席と近い席に座り、2人を監視していた。

石塚は一係室に中里を引き入れ、話を聞いた。

中里は戸川組のおでん屋の屋台を経営しており、7:3の割合で戸川組に収入を巻き上げられていた。

中里は石塚に、ただ石塚の顔を見たくなっただけであると話したが、この時間まで残業していると分かった理由を指摘された。

孝の母親は乳児が泣きだしたため、孝を置いて、空いている席を探しに、席を離れた。

列車はもうすぐ黒磯駅に到着する予定だった。

牧野は仙台まで遠いため、島にトイレに行かせるように頼んだ。

孝は島を激しく憎んでいた。

島は牧野の手錠を外した直後、ヤクザの1人に拳銃を突きつけられ、もう1人のヤクザにより孝を人質に取られた。

ヤクザは島を拳銃で脅迫した。

石塚は中里が自分の顔を一度もまともに見ていないことを厳しく詰問した。

中里は島が危険であると告白した。

島は牧野とヤクザに脅迫され、黒磯駅で下車した。

牧野達は改札を通過したが、駅員に何も不審がられなかった。

石塚は藤堂に事態を報告したが、列車との連絡が付いていなかった。

石塚は列車が黒磯を出て白河に向かっていることを突き止めていた。

藤堂は田口を覆面車で出発させ、野崎と一緒に列車を追跡することを命令し、山村が一係室に到着後に中里の取調べを開始することを決定した。

島は手錠をかけられ、牧野や孝と一緒に、ヤクザの自動車に乗って行った。

孝は牧野やヤクザに全く恐怖していなかった。

牧野は島の、孝を釈放するようにという要求を無視し、刑事は手錠と拳銃が無くなればただの負け犬と嘲笑した。

牧野はヤクザから預かり物のことを質問され、いいところに隠してあり、組長に届けておくから安心するようにと伝えた。

島は牧野が預かり物のために仙台に旅行したと推理したが、ヤクザに拳銃を突きつけられた。

ヤクザは預かり物の警護も頼まれていたため、自動車を東京方面に走らせた。

牧野の預かり物は一つで2,3人が自殺するほどの影響力があるものだった。

山村は中里を取り調べた。

山村は護送中の犯人を脱走させるのはヤクザでも手を付けない大犯罪であるため、戸川組がそれを実行する以上、何か裏があるのかを突きつけた。

中里は理由を知らなかったが、戸川組が牧野を助け出した後、島と牧野を殺害するということを記憶していた。

藤堂と石塚は車内を調査し、島と牧野が列車内にいないことを掴んでいた。

宮城県警から藤堂のもとに連絡が入った。

宮城県警では、仙台を本拠とする、ある大物政治家の周辺を捜査していた。

地方検察庁特捜部もその政治家を内偵していた。

その政治家の懐に、牧野が数億円の現金とされるリベートを運んだという容疑があった。

戸川組はその秘密を守るため、リベートの領収書を持つ牧野を狙った可能性があった。

その事件は下手すると大疑獄事件に発展しかねなかった。

石塚と岩城は戸川興業(戸川組)に突入した。

事務所内には深夜にもかかわらず、組長の戸川(伊豆肇さん)と、3人の組員(戸塚孝さん他)がいた。

戸川は石塚から牧野の脱走を告げられても、牧野が血の気が多すぎるという理由で、ほとんど驚いていなかった。

戸川は組員の1人に、石塚と岩城を尾行させた。

石塚は戸川が脱走の黒幕であると察知し、戸川組を張り込むことにした。

野崎と田口は黒磯方面を走行していた。

ヤクザは牧野と島と孝を連れて走行中、検問に引っかかりそうになった。

ヤクザは島を脅迫した。

検問の警察官は孝がトイレと言い出したため、孝に気付いた。

警察官は島が、孝がトイレを我慢していたと弁明したため、ヤクザの自動車を通した。

孝は牧野に同伴され、自動車から離れた。

ヤクザは警察官に、東京方面に行く理由について、年に一度の旅行と誤魔化して説明した。

孝は自動車に戻ってきた。

島は孝が牧野のもとから逃げず、警察官に救助を求めないことに不審に思った。

牧野とヤクザは警察官が「男4人」と言っていたことから、捜査が自分達にまわっていると直感した。

牧野は警察から逃れるため、ヤクザに国道を直行せず、矢板の交差点を左折するように指示した。

その直後、野崎と田口がその道を通過していた。

野崎は藤堂に、乗客の孝が牧野達に人質に取られていることを報告した。

黒磯駅の改札の駅員も牧野と島たちを目撃していた。

牧野はヤクザを、領収書の隠し場所である山中に案内するつもりだった。

島はヤクザの目的を察知し、牧野に、領収書の居場所を自白したら殺害されると警告した。

島は牧野に、戸川の目的がその領収書だけで、最初から牧野も殺害する気だったと忠告したが、ヤクザに拳銃の台尻で後頭部を殴られた。

牧野はヤクザが領収書の隠し場所ばかり気にしていたため、島の忠告を信じたが、ヤクザ2人に拳銃で脅迫された。

牧野が運転手のヤクザの手を掴んだ影響で、自動車が暴走し、小道で立ち木に激突して停止した。

牧野は激情し、頭部を負傷して気絶したヤクザ2人からそれぞれ拳銃を強奪した。

牧野は足を負傷していた。

島は上着のポケットから手錠の鍵を拾ったが、落としてしまった。

孝は鍵を拾い上げたが、なぜか島のもとから逃走した。

牧野は島と孝に銃口を向け、島の発言から孝が手錠の鍵を持っていることを知った。

孝はトイレに行く際、牧野に、父親を逮捕して連行した警察を憎んでいることを話してしまっていた。

孝は警察に逮捕された父親の姿が忘れられず、牧野達に同行していた。

孝は牧野の要求を受け入れ、牧野に手錠の鍵を手渡してしまった。

牧野は領収書で大金を強請り、高飛びする手段を提案し、島に同行を強要した。

牧野は高飛び後、島と孝の釈放を約束した。

野崎と田口は検問の警察官から検問の状況のことを聞き出した。

別の警察官が、牧野達の自動車が矢板から東南2kmの林の中で発見されたという情報を伝えた。

ヤクザは取り調べられていたが、子供連れが店の途中で挙手していたので、自動車に乗せただけだと供述していた。

小道に血痕が残っていたため、血液反応を調べていた。

地元民の話によると、小道に入ったということは、高確率で烏山へ抜けるつもりだったのではないかということだった。

現場付近の農家で自動車が盗まれたという情報が入り、野崎と田口は烏山へ急行することにした。

仙台のヤクザは戸川組との関係が未だに証明できていなかった。

岩城は石塚のもとに向かった。

山村が一係室に戻り、藤堂に、牧野が旅行に出発する時、大量の札束が入ったボストンバッグを持って行ったことが確認できたことを報告した。

戸川が牧野を助けたのは、リベートの領収書を持っていたためだった。

牧野が旅行から戻った後、どこかに寄った形跡が全く無かったため、領収書は牧野自身が所持しているか、留置場で同房だった男が所持しているのではないかと推測された。

牧野は逮捕されてから2日間、七曲署の留置場にいた。

牧野が留置されていた2日間、牧野と同房で既に釈放されているのは、細野達夫と寺田三郎と須藤健文の3人だった。

牧野は星野屋自動販売機で一旦、停車した。

島は車内で、手錠に繋がれていた。

孝は島から、父親がなぜ逮捕されたのかを質問され、母親から父親が悪事を何もしていないと言っていたと答えた。

孝はあくまで自分の父親の無実を信じており、刑事が悪いと思い込んでいた。

牧野は自動販売機で食品を購入して自動車に戻り、孝に差し入れ、出発した。

仙台で降りた、列車の乗客は、孝が自分から牧野達について行ったと証言していた。

岩城は戸川組を張り込み中の石塚と合流していた。

戸川と3人の組員は全く戸川組から動いていなかった。

戸川はどこかからの電話を受け、メモをとっていた。

2人の組員が自動車で戸川組から出発した。

石塚と岩城は2人の組員を取り押さえ、メモを奪取した。

メモには寺田が千葉県我孫子の製材所跡で取引をすることが書かれていた。

製材所跡には牧野も来ることになっていた。

山村の捜査で、昨日に寺田だけが行方不明になったということが判明した。

牧野は島に、過失傷害で逮捕された寺田に、留置場で領収書を渡したこと、寺田が安孫子にいることを告白していた。

牧野は、寺田が恋人の住む安孫子にいることを、誰も知らないと思い込んでいた。

牧野は寺田に、戸川を強請るように連絡しており、島と孝についても寺田と相談して決めると言い放った。

牧野は待ち合わせ場所の安孫子の製材所跡に到着し、寺田(久米冬太さん)と会った。

島は隙をついて牧野のズボンから拳銃を奪い返し、牧野のもう1丁の拳銃を撃ち落とし、牧野に拳銃を突きつけ、寺田に手錠の鍵を取るように指示した。

寺田は単独で戸川組と取引することを決めており、牧野を裏切った。

寺田の仲間の3人が現れ、1人が島から拳銃を奪い取った。

牧野は落ちていた拳銃を拾おうとしたが、寺田の仲間の1人に殴り飛ばされた。

石塚と岩城、野崎と田口が製材所跡に到着した。

島は自動車の中に入り、孝を保護した。

捜査員と寺田達は銃撃戦となっていた。

寺田の仲間の1人が島を射殺しようと、牧野の自動車の窓に向けて発砲してきた。

田口は覆面車を発進させ、岩城がその後部に飛び乗った。

石塚は仲間の1人の拳銃を撃ち落とした。

田口と岩城が残った仲間の2人を、野崎が寺田を格闘で逮捕した。

牧野が狂乱して拳銃を拾い、孝を人質に取った。

孝が牧野に抵抗した隙に、島がドアを蹴って牧野の注意をそらし、田口と岩城が牧野を逮捕した。

孝は牧野の上着のポケットから手錠の鍵を取り出し、島に手渡した。

孝は父親の方が嘘つきだと思っていたが、島に母親が言葉を簡単にしただけであり、父親が更生して戻ってくると言いたかったと説得された。

孝の父親は子煩悩という点ではいい父親だったが、窃盗罪で逮捕されており、前科3犯だったため、懲役4年、長ければ5年の刑が下っていた。

島は孝にそのことを話すことを決意していた。

 

 

メモ

*ボスの自宅が映っている。

*孝の軽蔑の目が恐い。警察嫌いの理由は子供らしいといえば子供らしいが。

*結局、信じていた寺田に裏切られてしまった牧野。凶暴だが、片岡氏の演技でどうも憎めない。

*ボスも孝の協力で大悪党を何人も逮捕できたため、孝に感謝しているようだ。

*今回は「トラック刑事」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

牧野昭夫:片岡五郎、仙台のヤクザ:井上博一、仙台のヤクザ:伊東平山(現:吾羽七朗)

戸川:伊豆肇、中里:村田正雄、孝:青木文武

寺田三郎:久米冬太(後の吉良冬太→久米じょう)、石橋幸、真田五郎、大峰順二

戸川組組員:戸塚孝、井口義亮、石崎洋光、西内彰

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、大山のぶ代

監督:櫻井一孝

※2020/2/28執筆