第282話「婚約指輪」(通算第492回目)

放映日:1977/12/23

 

 

ストーリー

島京子(23歳)(中田喜子さん)が新幹線で京都から上京し、A&Aインテリアの前で婚約者の達村明(28歳)(秋野太作さん)と待ち合わせた。

達村は松本への出張が急遽決定し、翌日の夕方に再会することになった。

京子は「珈琲専科 茶亭 門」にて、島に達村と婚約することになったことを打ち明けた。

達村は福岡県生まれで芸術大学出身、A&Aインテリアでデザイナーとして勤務していた。

達村は変わり者で、最高の芸術家を自称していた。

達村は去年(1976年)末まで京都支社に在籍し、その頃に京子と知り合っており、人事異動で現在は東京本社に勤務していた。

京子は島に話さないうちに婚約を決定したことを謝罪したが、島に祝福してもらった。

達村は1ヶ月前、出張で京都に来たとき、京子に50万円のダイヤモンドの婚約指輪を贈っていた。

その婚約指輪は非常に独特なデザインをしていた。

坂上充夫(三浦伸六さん)が島兄妹の会話を別の席から盗み聞きしていた。

達村は金回りが良くなさそうな雰囲気だった。

京子は結婚式用に金を残すために、島宅に泊めてくれるように頼み、島から自宅の鍵を手渡された。

京子は帰宅中の夜道で、坂上に指輪とハンドバッグを強奪されてしまった。

島は矢追町派出所からの通報を受け、派出所に急行し、京子から事情を聞いた。

巡査(神山卓三さん)によると、ハンドバッグのひったくりはたまにあるが、指輪まで強奪したというケースは初めてだった。

京子は現場が暗闇だったため、坂上の顔を覚えていなかった。

京子は島に、達村が出張から帰ってくる明日の夜までに、指輪を捜索するように懇願した。

翌朝、島は一係室に出勤したが、手掛かりを得られなかった。

山村は坂上が最初から指輪を狙っていたことが引っかかっていた。

坂上は工場にて、横田栄一(24歳)(本田博太郎さん)という男と密会していた。

坂上は京子から強奪した指輪が横田のデザインであることを見抜き、汚い金儲けをしていると糾弾した。

横田は自分ひとりの仕事ではないため、金を所持していないと弁明したが、坂上に警察に密告すると脅迫され、ナイフを取り出した。

横田の仲間の伊藤春夫(32歳)(椎谷建治さん)はロープを切断し、頭上に鉄製のおもりを落下させ、横田に反撃しようとした坂上を殺害した。

現場に七曲署捜査一係が駆けつけた。

石塚は坂上の遺体から、坂上名義の東西銀行の預金通帳を発見した。

坂上の口座の残額は2300円だった。

近所の住人が約3時間前、不審な自動車が駐車しているのを目撃していた。

坂上は宝石デザイナーで、半年前に赤坂ジュエル工房を退職してからは、失業中の身だった。

坂上はここ数ヶ月間、生活にかなり困窮していた。

石塚は現場の状況、鉄製のおもりやロープから指紋が検出されなかったことから、殺害の手口がかなり計画的であると推理した。

島と田口は坂上宅を訪れたが、何者かに家探しされた形跡があった。

島と田口は京子のハンドバッグと定期券を発見し、ひったくり犯が坂上であると断定した。

島は伊藤が指輪を捜索していたのではないかと推測し、達村と会ったことがなく、素性を知らないことから、達村を疑った。

キッチンシンクから、京子の指輪が発見された。

京子は遺体が坂上であると確認した。

京子は指輪が殺人の動機であると全く考えていなかった。

野崎は鑑識に出向き、偽造ダイヤの指輪を渡されていた。

偽造ダイヤの指輪は非常に精巧で、素人が騙されても無理がないものだった。

島は達村に激しい疑いの目を向け、達村と対面することにした。

藤堂は山村と岩城に坂上の交友関係の調査、石塚と田口に現場付近の聞き込み、野崎に偽宝石に関連する事件と前科者リストの捜査を命令した。

島は喫茶店で、出張から戻った達村と対面し、達村から指輪を探し出したことを感謝された。

達村は指輪の購入先を尋ねられ、誤魔化して正確に答えなかった。

達村はトイレに島を案内し、このトイレが自分のデザインであることを話した。

達村は給料日の翌々日の11月27日、福田一郎と名乗る知人のセールスマンから、スナックで指輪を買わないかと話しかけられ、指輪を購入したことを伝えた。

しかし、達村は福田の住所を知らず、泥酔したためにスナックの名前も覚えておらず、新宿にあったことしか覚えていなかった。

島は達村が何かを隠していると思い、激しく疑った。

達村は大事な客が入ったという電話を受け、喫茶店を足早に去った。

山村と岩城は東京ジュエルデザイン学校を訪れ、講師(矢田稔さん)から話を聞いた。

講師は坂上が目立たない生徒だったため、ほとんど覚えていなかった。

講師は山村から指輪の写真を見せられ、横田のデザインであると見抜いた。

横田のデザインは非常に特徴的だった。

横田は昭和28年(1953年)3月4日生まれ、新宿区南町4-5-5 あかね荘に住んでいた。

坂上は横田と同じクラスだった。

岩城は横田を犯人と断定し、横田が坂上に偽造ダイヤの秘密を掴まれて強請られ、坂上を殺害したと推理した。

山村は犯人が2人であることから、坂上が模造ダイヤの密売組織の存在を知っていたのではないかとも考えた。

山村はA&Aインテリアのカレンダーを発見し、受付職員から、9月に理事室を改装した際、そのときに来ていたデザイナーが置いていったものであることを聞き出した。

そのデザイナーは達村だった。

京子はレストランで達村と会い、事情聴取されたときのことを伝えた。

達村は島のことを気にしておらず、京子も達村と結婚する意思を固めていた。

正規の宝石業者にも詐欺の前科者にも、福田一郎という者は存在しなかった。

山村は藤堂に、達村が約1年前に、東京ジュエルデザイン学校の校内を改装したときのデザイン担当だったことを報告した。

野崎は藤堂に、12月4日に、2丁目の川村宝石店に鑑定を依頼された宝石を提出した。

中央ジュエル協会は、十数社の電話番を請け負っている女性職員が1人しかいない、完全な幽霊会社だった。

中央ジュエル協会の職員に給料を振り込んでいる相手の素性は不明だったが、名前が福田一郎だったことだけは判明された。

依頼者は佐久間家具社長夫人の佐久間孝子だったが、孝子に安価のダイヤが入手できると紹介したのは達村だった。

島は達村の友人に聞き込みをしていたが、藤堂から達村と模造ダイヤの関係性が深いことを告げられた。

横田は3日間、アパートのあかね荘に帰宅していなかった。

藤堂は石塚に、あかね荘の張り込みを、田口と岩城の横田の立ち回り先の捜索を命令した。

野崎は孝子(渡辺知子さん)と対面していた。

佐久間は達村のトイレ美学に感心し、達村に自宅のトイレをデザインさせていた。

孝子は客が指輪をしきりに褒めたため、達村の人柄を信用していた。

孝子は独特なデザインの上、ダイヤモンドのカットが高品質で、相場の半値以下だったため、非常に指輪を気に入って購入し、知人6人にその指輪を紹介していた。

孝子は指輪を18万円で購入していた。

島は達村の自宅である第2KY荘を訪れたが、達村はまだ帰宅していなかった。

隣人の主婦(金子勝美さん)によると、達村は遅く帰ることが多かった。

島は京子に電話し、京子から事件と達村が無関係であると言われたものの、京子に達村から連絡があったらすぐに藤堂に連絡するように依頼した。

島は達村宅に電話したが、達村は不在だった。

京子はA&Aインテリアで達村を待っていたが、島が達村をどこかに連れて行くのを目撃した。

達村は泥酔し、公園のベンチで熟睡していた。

達村は島から、指輪のダイヤモンドが偽物であることを知っていると詰問され、激しく動揺していた。

京子は島の詰問を立ち聞きしていた。

達村は孝子に福田を紹介させ、指輪を18万円で売り付け、京子に50万円相当と称して指輪を贈ったと思われた。

達村は島から、福田の素性と、横田の所在を尋問され、何も言えなくなった。

京子が島の尋問に割って入り、逃走する達村の追跡を妨害した。

京子はそれでも達村のことを信じていた。

島は人混みで達村を見失ってしまった。

捜査により、達村が孝子だけでなく、得意先の2人にも指輪を紹介したことが判明した。

その2人にも指輪を勧められた者がおり、被害者が総計12人、被害総額が180万円となった。

横田は未だに行方不明のままだった。

京子が島から離れ、京都で暮らすようになったのは、独り立ちしたかったからと、島が刑事であることからだった。

京子は島が刑事の目をしているのを寂しく思い、達村が島には犯罪者に見えるのかもしれないが、自分とは1年以上ずっと見てきたため、島よりずっと明確なことを知っていると強調した。

京子は達村について、とても誠実で気持ちが優しく、子供みたいにデザインに夢中になり、計算無しで行動してしまうため、誤解されるだけであることを語った。

島は京子の思いを汲み、先入観だけで達村を容疑者扱いしていたことを反省した。

京子は指輪が胡散臭いことを知っていた。

達村は京子に、2丁目のスナック「びすとろ」で会った福田から偽指輪を購入したことを、正直に話していた。

島は「びすとろ」に急行し、達村を発見した。

達村は自分の手で警察に福田を突き出すために、島から逃げ出したことを告白し、島に謝罪した。

達村はダイヤモンドが偽物であることを知らなかった。

達村は京子に指輪を手渡した際、京子が同じくらいの指輪が60万円だったと発言したことで、偽指輪の値段が約50万円であると誤魔化していた。

達村は偽指輪を12万円で購入していたが、その晩から値段を誤魔化したことを恥ずかしく思い、「びすとろ」の名前を言えなかった。

偽指輪の言い値は18万円だったが、達村は所持金が少なかったため、福田から買い手の紹介を条件に、12万円に減額させてもらっていた。

達村は福田とは指輪のことしか話していなかった。

達村は島と話しているのと同じ座席に座り、福田はカウンターの陰の席に座っていた。

福田は店員に時計が遅れていることを伝え、自分で椅子に乗り、針を進めていたが、そのときに達村と視線が合い、話しかけていた。

島は福田が時計の針に素手で触ったことに着目し、鑑識を手配した。

時計の針に付着していた指紋から、伊藤の身元が割り出された。

伊藤は詐欺師でも暴力団でもなく、強盗の前科者だった。

伊藤は自宅のマンションの一室で、横田と偽造指輪を製作し、大量に販売することを画策していた。

伊藤は坂上の指輪が発見されたことが報道されていなかったため、安心しきっていた。

伊藤は窓から捜査員を発見し、横田と二手に別れて逃走しようとした。

横田は石塚と岩城に、伊藤は島と田口に逮捕された。

偽指輪の被害者は総計18人となった。

京子は達村と結婚することになった。

 

 

 

メモ

*「兄妹」に登場した殿下の妹、京子が再登場。ずっとプライベートについては干渉しあわなかったらしい。

*無名時代の本田博太郎氏が出演。

*京子の婚約者の達村。変人の「トイレデザイナー」。「トイレ哲学」もあるようで、佐久間には感心されたが、孝子には受け入れられなかったようだ。

*達村の嘘がきっかけで複雑化してしまった事件。もっとも、達村には全く悪意も無かったが。

*福田=横田かと思ったら、正体は伊藤だったようだ。

*京子は達村と結婚したようだ。しかし、京子は今回が最後の登場となり、刑事の親族であるにもかかわらず「殉職刑事たちよ やすらかに」には登場しなかった。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

島京子:中田喜子

達村明:秋野太作

佐久間孝子:渡辺知子、東京ジュエルデザイン学校講師:矢田稔、伊藤春夫:椎谷建治

根本好章、横田栄一:本田博太郎、坂上充夫:三浦伸六(後の三浦伸)、矢追町派出所巡査:神山卓三、達村の隣人:金子勝美、川畑恵子

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、うどふみこ

監督:小澤啓一

※2019/10/10執筆