第278話「刑事嫌い」(通算第488回目)

放映日:1977/11/25

 

 

ストーリー

簡単に鍵を開け、現金だけを強奪し、物色した形跡を必ず元通りにするという窃盗事件が頻発していた。

手口は空き巣の犯行とは思えず、そのために発見が遅れ、捜査が後手に回っていた。

類似事件はこの半年間に4件あり、半年前から古田有三(江幡高志さん)という男が七曲署管内に引っ越していた。

古田は窃盗、詐欺、恐喝の合計前科8犯で、20年間釈放されては服役されることを繰り返す強かな性格であり、今までずっと北署管内を荒らしていた。

警視庁北署の、古田の担当の刑事(八木隆さん)は空き巣事件を古田の犯行と断定した。

古田は以前には、逃走時に施錠するまではしなかったが、手口を決定的証拠にさせないため、いつも何か一つだけ新しい手口を付け加えていた。

刑事は古田が七曲署管内に引っ越したとき、心底安心していた。

石塚と田口が古田宅を張り込んで3日が経過していた。

石塚と田口は古田が外出したために尾行した。

古田は空き地に座り、ビル街の風景をスケッチしていた。

石塚は古田が、元々絵を好きとしていたため、改心したとも思っていた。

古田はスケッチ対象の、家屋の一つから住人が外出するのを目撃し、空き地を去った。

石塚と田口は少年のサッカーボールに気を取られている隙に古田を見失ってしまい、二手に別れて捜索を開始した。

古田は家屋から外に出たところを石塚に発見され、職務質問されそうになって逃走した。

田口は聞き込み中に石塚を発見して合流したが、古田にパチンコ屋に逃げ込まれた。

石塚は古田を取り押さえようとして揉み合いになり、足を踏まれたために突き飛ばした。

古田は突き飛ばされた衝撃でパチンコのガラスが割れたのを利用し、ガラス片でわざと手を流血させた。

古田は警察を糾弾させるように仕向けようとしていた。

石塚は古田の所持品を調べ、明子に古田の傷を治療させた。

石塚は窃盗容疑と公務執行妨害の現行犯で古田を逮捕していた。

古田は無実を主張し、素直に所持品を取り出した。

古田は財布に36万4000円もの大金が入っていた理由について、全財産で所持して歩いている方が安全であると釈明した。

古田は出てきた家屋が自宅でも知人宅でもないと認め、逃走した理由については、捜査員がおっかなかったから、刑事だと思ったら反射的に行動していたと述べた。

古田が侵入したと思われる家屋の住人の主婦は、いくら調査しても何も強奪されていないと証言していた。

田口は住人が自宅に現金を置かない主義であるため、古田がそれで何も強奪せずに逃走したと推測していた。

古田は顧問弁護士の大友を手配した。

大友(袋正さん)が一係室に入り、捜査員と対面し、石塚から古田の勾留理由を聞き出した。

古田が大友を呼び出すときには、古田が警察に暴力を振われたケースが多かった。

石塚は暴力を振ったことを認めたが、田口はすぐに石塚を擁護し、古田の罠であると説明した。

古田はわざと石塚の足を踏み、石塚を挑発させていた。

大友は田口から、古田が負傷したこと、古田の傷を治療した明子が看護婦の資格を持っていないことを知ると、人権無視の疑いが十分あると指摘した。

石塚は負傷させた責任を取ると発言した。

大友は古田の面会に向かった。

大友の目的は古田の早急な釈放だった。

石塚は藤堂に、古田が負傷したことが事実であることを認め、古田が必死に逃走したのは、七曲署管内で何らかの犯行を実行しているからであると断言した。

藤堂は石塚に古田の捜査を、それ以外の捜査員に古田の余罪の追及を指示し、拘留期限48時間以内に証拠を掴むことを強調した。

古田は大友に、窃盗未遂の事実がないと虚偽の説明をした。

古田は家屋に侵入した件について、絵になると思って庭を見ただけであると供述し、家主に許可を得ようとしたが留守だったためにそのまま退出したと弁明した。

古田は石塚と田口に、毎日ブラブラしているのにどうやって36万4000円を稼いだのかを尋問され、自分の絵の理解者がいたために、絵を40万円で譲渡したと答えた。

古田は理解者については、住所も名前も分からない通りすがりの人であると話し、激怒した田口には、それが嘘かどうかを立証するように強要した。

古田はいつも自宅付近で犯行を重ねるため、空き巣事件の4件は条件的に当てはまっていたが、決定的証拠に欠けていた。

石塚は古田に関する証拠を集めていた。

山村は古田の所持金の1万円のナンバー「DU285713J」が、脅迫事件で強奪された200万円のうちの、ナンバーの控えのある50枚と一致することを突き止め、報告した。

1ヶ月前、犯人がスーパーマーケットの倉庫をほんの少し爆破した後、次にスーパーマーケットの店自体を爆破すると脅迫する事件が発生していた。

スーパーマーケット側は犯人に、要求通りに200万円を支払っていた。

この犯罪が成功した理由の一つは、要求金額が200万円と少額であることだった。

脅迫事件の犯人が古田である可能性が出てきた。

古田の前科には恐喝が2件あり、そのうちの1件は見せかけの時限爆弾で脅迫したというものだった。

藤堂はこの1万円札を所持しているというだけでは、古田が犯人であるとは断定できないと意見した。

山村は恐喝犯か爆破犯の自宅から、古田がこの1万円札を盗んだのではないかと推測していた。

200万円のナンバーの控えは銀行や金融関係には手配されていたが、一般公表されていなかった。

石塚は古田に、取り調べの過程で1万円札の件をそれとなく探りを入れて、古田の本性を露わにしようとしていた。

藤堂は田口に、古田の取調べと、他の捜査員に200万円の調査を指示した。

翌朝、石塚は古田の独房を解放し、取調べを開始した。

古田は取調べを続行するなら、指の傷の件を告訴するとそれとなく伝えた。

石塚は昨日、パチンコ屋で自分が暴力を振ったという目撃者の証言を集めていた。

石塚は古田に、古田が七曲署管内で半年間に実行した空き巣の記録を見せたが、否定された。

石塚は拘留期限延長が、空き巣事件の証拠固めのためであると説明した。

古田は10日前の木曜日の午前1時、11月3日の午後3時30分、類似事件のあった1ヶ月前の10月20日の午後2時のアリバイについて、全く記憶していないと供述した。

古田は10月20日に、スーパーマーケットが脅迫されて金が強奪されたことをはっきり記憶していたが、大々的に新聞に掲載されていたために記憶していたと話した。

古田は高笑いし、恐喝犯であることを否定したが、強奪された紙幣に何か秘密があると発言した。

石塚は古田が、犯人ではないのに強奪された紙幣のことがなぜ分かるのかと指摘し、強奪された紙幣をなぜ持っているのかを詰問した。

石塚は犯行を認めない古田に激情したが、田口に制止され、窃盗の現場検証に古田を同伴させた。

石塚と田口は、窃盗現場のアパートに古田を連れて行った。

11月3日、窃盗現場のアパートの一室から12万8000円が強奪されていた。

古田は犯行を否認し、石塚と田口を挑発した。

石塚と田口はアパートの住人(高杉哲平さん)に古田を面通しさせたが、見覚えが無いと返されてしまった。

いずれの空き巣事件の被害者も、古田のことを記憶していなかった。

古田は石塚と田口が捜査しても何も掴めなかったことを嘲笑し、石塚に、強制捜査と人権蹂躙で謹慎が固いと脅迫した。

石塚は、感情が高ぶっている田口を落ち着かせた。

古田はレストランでステーキを注文していた。

田口は石塚と別れ、北署で刑事から古田についての説明を聞いていた。

古田は細かい点が違うが、自分が犯人であろうとなかろうと、警察を打ち負かすためには何でもする性格だった。

古田の担当刑事によると、古田は物凄く頭がいい男で、行動が全て刑事を撃破するための闘いだった。

古田は19歳のとき、万引で逮捕され、刑事に殴られて石の階段から転倒し、5針縫っていた。

古田は未だにその頭の傷の恨みを募らせており、窃盗や恐喝の常習犯になったのも警察への憎悪だった。

古田は逮捕されたときもあらゆる手段を使って無実を主張し、警察権力の不法を訴え、送検の決定的証拠を与えないために、弁護士には出し惜しみせずに大金を払っていた。

一係室に、大東スーパーに、また爆破に関係された脅迫電話が入ったという通報が入った。

要求金額は500万円で、警察に通報すると店を爆破すると脅迫していた。

石塚は恐喝事件について、手口が違うことと、古田が誰も信じないことから、古田とは無関係であると思っていた。

藤堂は石塚と田口に、窃盗に絞って古田の捜査を続行するように命令した。

山村と島は大東スーパーの社長室に待機していたが、脅迫犯から電話が入った。

脅迫犯は社長(小笠原弘さん)に、今夜午後5時に新宿駅西口改札前広場に大金を持ってくるように要求した。

石塚と田口は古田を、城南署管内と北署管内の空き巣事件の現場に連れて行っていた。

古田は観念し、マンションの一室から現金20万円を盗んだことを認めた。

空き巣事件の被害者の女性は20万円を盗まれたことを認めたが、2年前(1975年頃)に事件が発生し、もう既に犯人の古田が逮捕されていると証言した。

古田は石塚を嘲笑した。

マンションの廊下から、古田のスケッチに描かれていた教会が見えた。

石塚は古田のスケッチが画家を装っているだけでなく、絵を描きながら、窃盗に入る家を物色していたということを推理していた。

石塚は藤堂にスケッチのことを報告した。

スケッチの中には、古田が金を盗んだと思われるアパートやマンションが入っていたが、スケッチの中に周辺から被害届が提出されていない絵が何枚かあった。

藤堂は捜査員に、スケッチの中から脅迫犯を探し出すように命令した。

島はマンション303号室の住人の西勝利が2週間前に空き巣に入られたが、被害金額が少額であることを理由に、警察に届け出を出していないことを調べ上げた。

西は約半年前、大東スーパーで万引きしたことを警備員に咎められていた。

西は1時間前に外出していた。

石塚と田口、島と岩城は新宿駅で西を取り押さえるために急行した。

午後4時49分頃、石塚達は新宿駅に到着し、社長を見守った。

西が新宿駅に現れたが、岩城を目撃したため、新宿駅を立ち去った。

島と田口は西を尾行した。

大友は藤堂に、拘留期限の延長が別件逮捕、逮捕理由のすり替えであるとして、暴力行為並びに不法を断固抗議すると宣言した。

大友は石塚の暴力行為が明白な事実で、人権蹂躙で告訴すれば石塚が無事では済まないことを説明し、直ちに古田を釈放すれば、告訴を見合わせ、別件逮捕の件を公表しないと譲歩した。

藤堂は石塚が、古田が犯人ではないという報告をしない限り、古田を釈放しないことを告げた。

石塚はどうしても古田を自白させようと取調べを開始していた。

石塚は古田に、西の部屋から金を盗んだと証言するように懇願した。

古田は早急に釈放するように要求し、石塚に免職することになったらもう威張れなくなると挑発した。

古田の挑発により、古田を取り調べてきた刑事は全て諦めていた。

古田は石塚から、これまで刑事が古田の相手になったら損をするだけで黙っていると説得されたが、自分としては満足で楽しいと言い張った。

石塚は古田に薄汚い泥棒と言い放った。

古田は野崎の説得にも全く応じず、他が爆破されても知らないという態度をとり、刑事が苦しめばそれでいいと発言したため、石塚に殴られた。

石塚は取調室に入ってきた大友に、自分が古田を殴る瞬間を目撃したと糾弾されたが、古田に病院に行くことを奨め、人権蹂躙で告訴すればいいと言った。

古田は恐喝犯が西であると証言した。

古田は戸棚の中の鞄に、200万円が入っていることを記憶しており、新聞ですぐに分かっていた。

古田は遂に改心した。

西はコインロッカーから鞄を取り出そうとした直後、爆破及び恐喝容疑で、島と田口に逮捕された。

鞄の中身はダイナマイトだった。

石塚は藤堂から、古田の歯が1本折れていたことを告げられ、署長室に謝罪に行くように要求された。

 

 

 

メモ

*狡猾な上にしたたかで、顧問弁護士まで用意している古田。江幡氏の怪演が光る。

*今回、主演作では以外では最近目立つことが少なかったボンが久々に活躍。しかし、他のメンバーがあまり目立っていない。

*ボン&ロッキー編になると、「青春のテーマ」はアクションで使用されることがほとんどだが、今回はスケッチの捜査シーンで使用。

*ゴリさんに殴られた途端、態度を軟化させる古田。恐らく古田としては、刑事を最大限に苦しめ、屈辱を与えることが目的だった。他の刑事も辞職を恐れてそれ以上の捜査に踏み切れなかった。しかし、ゴリさんが全く免職を恐れずに捜査し、ひたすら説得したため、遂に崩れて態度を改めたと思われる。

*古田が改心した理由が分からないロッキー、ロッキーに説明できないボン。ゴリさんも分からないようだ。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

古田有三:江幡高志

大友弁護士:袋正、北署刑事:八木隆、大東スーパー社長:小笠原弘

山科志子、杉浦光郎、槇ひろ子、野村光絵

宇乃壬麻、空き巣事件の被害者(アパート住人):高杉哲平、空き巣事件の被害者(服屋店主):大山豊、山本恵子

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:山本迪夫