第273話「逆恨み」(通算第483回目)
放映日:1977/10/21
ストーリー
囚人の上岡武(26歳)(剛達人さん)は護送中、付き添いの刑事(常泉忠通さん)から話しかけられていた。
護送車は前方から暴走したダンプカーを回避しようとして、壁に激突した。
護送車の後方からスカイラインが迫ってきた。
ダンプカーから1人、スカイラインから2人の男が現れ、護送車から脱出しようとした上岡を幇助した。
1人の男は散弾銃を発砲し、もう1人の男はスパナで刑事を殴った。
3人組の男はスカイラインに上岡を乗せ、その場から逃走した。
上岡は身長172cmで、右の目じりに約3㎝の切り傷があった。
臼井陸橋のたもとに、スカイラインが乗り捨てられていたという連絡が入り、藤堂は山村と島と岩城を直行させた。
上岡は暴行傷害の逮捕歴3回、典型的な粗暴犯タイプだった。
上岡は幸運なことに、これまでは微罪や、相手との示談成立で起訴に至っていなかった。
上岡は淀橋署の管内で質屋に押し入ったが、騒がれて何も取らずに逃走した直後に現行犯逮捕された経歴があった。
上岡は目撃者も証拠もあるにもかかわらず、犯行を否認し、ひたすら裁判で無罪を訴えた。
島は犯人の所持していた散弾銃が先週にクレー射撃場で強奪されたものと同一ではないか、そのときから計画を立てていたのではないかと推測した。
岩城は上岡が3人がかりで脱走させるほど、価値がある人物なのかと思っていた。
上岡は仲間から散弾銃のケースを手渡された。
藤堂は最高検察庁を訪れた。
雀荘オーナー(岸井あや子さん)とチンピラは岩城から聞き込みされていたが、別の刑事から既に聞き込みされていたため、不機嫌な態度をとった。
岩城は新宿製本の会社前で、先回りして捜査していた、淀橋署の尾崎刑事(金子信雄さん)と初対面した。
尾崎が七曲署の管轄であるにもかかわらず、捜査している理由は、質屋強盗事件の際に上岡を逮捕したからだった。
ダンプカーもスカイラインも盗難車であり、指紋がかなり検出されたが、上岡のものかどうかは不明だった。
上岡は職業を転々としているため、付き合っている人間が絞りにくかった。
藤堂は上岡の公判記録を眺めていた。
法廷では、上岡がその日、競輪で所持金をほとんど使い果たしていたことが、複数人の証言によって確認されていた。
しかも逮捕されたとき、覆面に使用されたと思われるタオル、軍手、ドライバーなど強盗の七つ道具を所持していた。
さらに有罪の決定的な証拠になったのは、尾崎に質屋から逃走したところを目撃されたことだった。
それでも上岡は最後まで否認し続けた。
質屋主人は強盗犯と格闘した際、登山ナイフで軽傷を負っていた。
上岡は逮捕された際、その登山ナイフを所持しておらず、最初から所持していなかったと言い張った。
捜査班は上岡が逃走中に処分したと見込み、近くのドブ川を始め、考えられる場所を徹底的に捜索していた。
登山ナイフは発見されなかったが、他の条件が揃いすぎていたため、上岡は有罪となっていた。
質屋強盗事件が発生した夜、登山ナイフを持ったチンピラが七曲署管内で轢き逃げされる事件が発生していた。
鑑識課員(松尾文人さん)によると、登山ナイフから指紋が検出されなかったが、刃先の方に微量の血液が付着していた。
ナイフに付着していた血液型は質屋主人と同型だった。
チンピラは何かに追跡されたかのように突然飛び出したため、避けきれなかった自動車に轢かれていた。
死亡したチンピラの身長と体重はほぼ上岡と同一で、同じような帽子と鞄を所持していた。
上岡の件が誤認逮捕であることが明確となった。
尾崎は捜査中、突然現れた上岡に散弾銃で撃たれ、七曲総合病院に搬送された。
藤堂は病院に駆けつけ、石塚と合流した。
尾崎は上岡に拳銃を奪われていた。
石塚はもうすぐ定年退職を迎える尾崎を撃った犯人に怒っていた。
散弾銃の薬莢から、上岡の指紋が検出された。
岩城は上岡が入り浸っていたディスコを突き止め、野崎と共に向かった。
藤堂は捜査員に、上岡が尾崎を撃ったことを伝え、注意喚起した。
島と岩城はディスコに入り、従業員から上岡の仲間のことを聞き出した。
上岡の仲間の1人の江尻(清水のぼるさん)は電話をしていたが、島と岩城に発見されて、逃走した。
島は上岡の仲間の1人の津村を逮捕した。
江尻は逃走を続けていたが、田口と岩城に逮捕された。
津村は島と岩城に、江尻は山村と田口に取り調べられていた。
津村は射撃場で散弾銃を強奪したことも、上岡の脱走を幇助したことも認め、正義のためであると主張した。
津村は上岡が無実であると主張した。
江尻は上岡とは麻雀仲間であり、大金を貸していたこと、質屋強盗事件の日が期限だったため、その晩に仲間と交代で上岡を尾行していたことを供述した。
江尻は上岡が無実であると言い張り、山村と田口に尊大な態度をとった。
江尻は山村から、すぐに名乗り出なかった理由、法廷で無実を証明しなかった理由を指摘された。
藤堂が取調室に入り、江尻達が名乗り出なかったのは、派手に銃を乱射し、悪いのは警察と言った方が、気分が爽快だからであると看破した。
藤堂は江尻に、江尻達の悪事が傷害器物破損、銃剣等不法所持、逃亡幇助並びに犯人隠匿、殺人の共犯になると厳しく叱責した。
藤堂は江尻に上岡が尾崎を撃ったことを告げ、上岡ともう1人の仲間の吉井の居場所を尋問した。
吉井はマンションの一室に潜伏していたが、急行した捜査員により屋上に追い詰められた。
吉井は逮捕を恐れて飛び降りようとしたが、田口と岩城に飛び降りたら死亡するだけと宣告され、観念して逮捕された。
マンションの一室には上岡がいた形跡があったが、一足違いで逃げられていた。
吉井は上岡の行方を知らなかった。
藤堂は岩城を連れて七曲総合病院に急行し、尾崎の病室に見舞いに入った。
山村から、強盗事件が発生した質屋に、上岡らしき男が3発撃ち込んだという連絡が入った。
尾崎は意識を取り戻し、藤堂と久々に対面した。
尾崎は藤堂から、上岡に狙われた理由を質問され、逆恨みではないかと答えたが、藤堂に無実の罪を着せられたのではないかと指摘された。
尾崎はあくまで犯人が上岡であると主張し、藤堂が江尻達から、上岡が質屋に入らなかったことを聞き出したことを伝えても、信用しなかった。
尾崎は上岡が逃走中にナイフを処分し、ただ見つからなかっただけであると思っていた。
藤堂は尾崎に、強盗事件で使用されたナイフを見せた。
七曲署捜査一係は当時、轢き逃げ犯人の追跡に専念し、ナイフに注意を向けなかった。
石塚と岩城は藤堂と尾崎の会話を聞いていた。
尾崎は藤堂から真実を告げられても、尾崎が質屋から逃走するところを目撃し、逮捕したと言い張ったが、藤堂に一度も男を見失わなかったかと質問され、何も言えなくなった。
尾崎は当時、質屋から逃走する犯人を追跡したが、途中で見失ってしまい、偶然目撃した尾崎を犯人と間違えてしまった。
尾崎は上岡が犯人でなかったにしても、七つ道具を持ってどこかに強盗に入ろうとしていたため、いずれ服役する身だっただろうと話した。
石塚と岩城は尾崎の病室に入った。
尾崎は長年の刑事生活の中で、単独で犯人を逮捕したのは上岡の誤認逮捕のときだけだった。
尾崎はどうしても上岡が犯人であってほしいと願っていた。
岩城は藤堂に、質屋が発砲された事件を報告した。
岩城は上岡が凶悪犯である以上、尾崎と同じ行動をとったかもしれないと伝え、もうすぐ定年となる尾崎を追及しないように頼んだ。
藤堂は江尻達が警察のミスを面白がる理由について、警察権力への憎さであり、岩城もそれを持っていることを説いた。
藤堂はいつでも、権力を自覚していない人間にとって、警察官の責任の重大さが分からないと思っていた。
藤堂は病院に接近する上岡を発見し、覆面車のドアに隠れた。
上岡は覆面車に数発乱射した後、逃走したが、岩城に追跡された。
藤堂は山村に、病院付近の緊急配備を命令し、覆面車を走行させた。
岩城は建設中のビルの上階にいる上岡を発見し、追跡した。
岩城はビルの一室で、負傷しているふりをしている上岡に拳銃を向けた。
上岡は岩城に恨み言を言い、すぐに射殺するように促したが、岩城が拳銃をしまった直後、岩城に拳銃を向けた。
岩城は上岡の発砲で右肩を負傷し、人質に取られてしまった。
石塚以外の捜査員が建設中のビルに到着し、上岡と岩城を見た。
上岡は誤認逮捕された以上、自分に刑事を射殺する権利があると捜査員を挑発した。
田口は上岡に痛めつけられる岩城を放置しておけず、上岡のもとに向かおうとしたが、藤堂に制止された。
上岡は徹底的に岩城を痛めつけた。
日没まであと1時間30分となっていた。
石塚は尾崎の警護にあたっていた。
上岡はビルの屋上に岩城を連れて行き、岩城に散弾銃の銃口を向けた。
上岡は山村の警告も岩城の説得も全く無視した。
岩城は手錠で拘束されていた。
上岡が捜査員を狙ったのは、捜査員が刑事だから、その一点だった。
上岡は尾崎が死亡していないことを知り、一目見に行ったところ、藤堂に発見されたため、発砲していた。
山村は上岡とのやりとりから、岩城が生存していることを知った。
上岡は山村に、美味い食事を振る舞うこと、屋上へのヘリコプターを待機させること、羽田空港に外国まで高飛びできる飛行機を用意すること、現金1億円を要求した。
上岡は更に、新聞で警視総監に誤認逮捕の謝罪まで要求し、それができない場合、岩城を射殺すると脅迫した。
上岡は岩城の渾身の蹴りの一撃で散弾銃を蹴り飛ばされたが、岩城に拳銃を突きつけた。
藤堂と田口が屋上に辿り着いた。
上岡は藤堂に拳銃を撃ち落とされ、隠し持っていたもう1丁の拳銃も撃ち落とされた。
山村と野崎も屋上に到着したが、上岡が岩城の喉にナイフを突きつけていた。
藤堂は、自分に構わず撃つように促す岩城に、必ず生還させると約束した。
藤堂は上岡に、ナイフが2,3mm切ったところで、自分の拳銃の銃弾が上岡の脳天を貫通すると啖呵を切った。
藤堂は岩城にじっとするように指示し、上岡が岩城を殺害しようとした瞬間、上岡のナイフを撃ち落とした。
藤堂は上岡が拾おうとした2丁の拳銃やナイフにも発砲し、上岡から遠ざけた。
上岡は観念し、田口により逮捕された。
藤堂は上岡に、してきたことの償いをしてもらうと一喝し、尾崎も同じように裁かれることを告げた。
尾崎は自分のミスを後悔し、昨日淀橋署に辞表を提出していた。
メモ
*ベテラン刑事の失敗、誤認逮捕による冤罪を描いた話。
*しかし、今回の上岡は粗暴な男で、仲間たちもろくでもない男だった。同じ冤罪を描いた「罪と罰」では、誤認逮捕された男は比較的善人だったが…
*ボスの、江尻への「もう1人の仲間はどこだ!」の怒り方が凄い。
*上岡の作戦でまんまと人質に取られ、負傷するロッキー。まだまだ甘い。もっとも、ボスに自分に構わず撃てと言っているところはさすが。
*ビルの外壁の梯子を上り、屋上に向かうボン。危なすぎる。
*ラスト、退院許可が出ていないのに退院しようとするロッキー。「ヒゲ、ヒゲ、ヒゲ」byボス。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
田口良:宮内淳
岩城創:木之元亮
野崎太郎:下川辰平
矢島明子:木村理恵
尾崎刑事:金子信雄
上岡武:剛達人(現:剛たつひと)
江尻:清水のぼる(現:清水大敬)、市東昭秀、野口真
護送車の刑事:常泉忠通、雀荘オーナー:岸井あや子、護送車の警察官:村上幹夫、岡田裕司、鑑識課員:松尾文人
石塚誠:竜雷太
島公之:小野寺昭
山村精一:露口茂
脚本:長野洋、小川英
監督:竹林進