第258話「愛の追憶」(通算第468回目)

放映日:1977/7/1

 

 

ストーリー

深夜、香西隆之(23歳)(角野卓造さん)は夜の道を歩いていたが、三好京子(18歳)(村地弘美さん)に尾行されていた。

京子は地下鉄の富士見駅の階段で香西を突き飛ばした。

山村は自宅にいたが、石塚からの連絡で現場に急行した。

香西は司法研修所の修習生(司法試験の合格者が検事や弁護士になる前に研修する期間)であり、軽傷で済み、矢追救急病院で治療していた。

香西が突き落とされる瞬間を目撃した者はいなかったが、第一発見者の駅員によると、香西は病院に搬送される寸前、「女に突き落とされた」と証言した。

香西は島に事情聴取された際、気が動転していて何を話したか記憶していないこと、貧血気味だったことを述べ、証言を翻し、捜査中止を要請した。

石塚は藤堂に、自分で足を滑らせただけで、激しく階段を転落するとは思えないと主張した。

山村は香西が犯人の何かを目撃したが、警察に知らせると自身に不利益な状況になることに気付いたのではないかと想像した。

藤堂は香西の申し立てとは関係なく捜査を開始した。

山村は法律事務所を訪れ、佐野弁護士(岸本功さん)から話を聞いた。

佐野は香西について、誠実で性格も明るく、面白い青年であり、他人から感謝されることがあっても、恨まれることについては考えられないと述べた。

佐野は山村に、香西の東都大学時代からの親友で、一緒に司法試験を合格した、宮田幸一のことを話した。

山村は宮田のアパートを訪問したが、宮田が不在だった。

アパート住人の主婦(松浪志保さん)によると、宮田は近頃生活が荒れ、4,5日留守にすることが頻繁にあった。

香西は入院中、三好の赤いハイヒールのことを思い出していた。

京子が香西の入院する306号室に入った。

田口は本部で刑事から、昨日の事件が発生した時刻に、スリの辰吉(野呂圭介さん)が現場近辺をうろついていたことを聞き出した。

辰吉は新聞で香西の事件のことを知り、富士見駅で京子の鞄から財布を窃取したこと、倒れている香西を発見したことを思い出した。

辰吉は京子のキャッシュカードを見て、京子の名前を知ったが、石塚に発見された。

石塚と田口は逃走する辰吉の身柄を取り押さえた。

京子の住所は新宿区矢追町2丁目5番地緑荘だった。

辰吉は京子について、17,18歳の少女のようだったと供述した。

山村は京子と対面し、辰吉から押収したキャッシュカードのことについて尋ねた。

京子はニュースで事件を知ったと誤魔化したが、山村から辰吉がキャッシュカードを窃取した時刻と場所を告げられた。

京子は何かの間違いであると否定した。

山村は京子宅の遺影の写真を発見した。

遺影の写真に写っていたのは、京子の夫の三好則文(松田茂樹さん)であり、去年(1976年)の秋の交通事故で亡くなっていた。

山村は書架の小六法を手に取ろうとしたが、京子に取り上げられた。

小六法には、三好と京子のツーショット写真が挟まっていた。

藤堂は辰吉が嘘を吐いていると思えず、山村に京子の周辺捜査を指示した。

山村は京子を尾行していた。

緑荘の管理人(井上和行さん)は山村に、三好夫妻のことを説明した。

三好夫妻は仲が良く、夕食前に決まって2人一緒に銭湯に行くのが日課だった。

三好は東都大学法学部の学生で、香西と同じ学部に在籍し、一緒に司法試験に合格していた。

京子が香西を突き落とした動機が問題点となった。

野崎は香西の友人や恩師に聞き込み、香西が三好と宮田とドライブ中、交通事故に遭い、運転していた三好が死亡していたことを突き止めた。

事故には他に過失が無く、他人から恨まれる部分も無かった。

山村は京子宅を張り込んでいたが、子供の線香花火を見て、脳裏に三好夫妻のことを思い浮かべていた。

翌日、山村は再び宮田のアパートを訪れたが、扉から新聞や電気料金領収証が溢れているのを発見し、宮田宅に突入した。

宮田は青酸カリで服毒自殺しており、死後3日が経過していた。

宮田の遺書には、「許してくれ。もう耐えられない」と書かれていた。

山村は宮田の自殺と香西の事件に関係性があると考えた。

山村は香西に、去年の交通事故について詳しく説明するように質問した。

香西と宮田(永野明彦さん)は奇跡的に軽傷で済んだが、運転していた三好は死亡していた。

去年の10月末、香西達3人は司法試験に合格した記念にレンタカーを借り、伊豆にドライブに出掛けており、長い試験勉強から解放され、伊豆の秋を満喫していた。

香西達のレンタカーは前方から来たクレーン車を回避しようとして、ガードレールを突き破り、崖から海に転落した。

香西は、自分と宮田は割れたフロントガラスから必死に抜け出し、海面に浮上して助かったが、泳げない三好が溺死してしまったことを話し、自分達が助かるのが精一杯だったと主張した。

山村は香西の発言に嘘を感じ、事故が何者かによる殺意のある行為だとすれば、警察に捜査をする義務があることを伝え、尋問した。

看護婦は京子らしい女性が香西の病室から退出するのを目撃していた。

島は京子が犯人なのかどうかを疑っていた。

山村は勤務中の京子を張り込み、京子がなぜ香西に殺意を抱いたのかを疑問に思っていた。

京子は少女がワゴン車に轢かれそうになるのを目撃し、動揺した。

山村は京子が香西を突き落とした後、罪の意識にかられて自首するつもりで香西の病室を訪れたが、香西に自首を中止させられたのではないかと推測した。

宮田と香西と京子を結び付けるものは、去年の交通事故のみだった。

山村は静岡県警伊豆署を訪れ、署員から事件の記録を見せられていた。

事件には不審な点が無かった。

署員は京子が、三好が外出前に体調不良を理由に運転しないと言い残していたため、運転していたのが三好ではないと話していたことを記憶していた。

香西と宮田は運転手が三好であると証言しており、覆す証拠もなかった。

京子の想像どおりに、運転手が三好ではないとすると、宮田は免許を所持していなかったため、香西が運転していたことになった。

石塚は宮田の部屋のゴミ箱から、京子宛の手紙の書き損じを発見した。

書き損じには、事故当時にレンタカーを運転していたのが三好ではないと書き残されていた。

宮田は自殺する前日、京子に全てを告白する手紙を書いていた。

夜、岩城は外出する京子を尾行した。

京子は香西の病室を訪れた際、宮田の遺した手紙を突きつけ、香西を憎んでいたという心情を吐露し、香西を罵った。

香西は病室を抜け出そうとしたが、島に過失致死容疑で取り調べられていた。

岩城から、京子が上野駅に向かったという連絡が入った。

藤堂は動揺して香西が自供するのも時間の問題だとして、自供を待ち、京子を上野駅で逮捕するように命令した。

山村は藤堂に、京子に自首を促したいため、逮捕状を待つように進言した。

京子は上野駅から列車に乗った。

岩城は京子の乗った列車を見送った。

列車には山村も乗り合わせていた。

京子は家族に勧められて決意を固め、帰郷した。

山村は京子に、香西と何を話したのかを質問し、帰郷したら一生怯えて生きなければならないと警告した。

京子は黙秘を貫いていた。

香西は運転していたのが自分であること、事故の原因が脇見運転だったこと、宮田と口裏を合わせ、三好が運転していたことにしたことを自供した。

山村は京子に、妻の高子を去年心臓病で亡くしたことを話し、夫婦生活の思い出を語った。

山村は夫婦生活の思い出が今になっては辛いが、思い出すのに十分な価値があるからこそ、忘れたくないと話した。

山村は京子の愛の思い出に汚点を残したくなかった。

京子は在りし日の三好を回想し、自首した。

 

 

メモ

*今回からなぜかOPのゴリさんのカットが微妙に変更されている。

*冒頭、山さんが高子の遺影に黙祷。また、山さんが京子に高子のことを話す。「刑事の妻が死んだ日」から約1年が経ったことを思わせ、感慨深い。

*角野氏の太陽初出演。現在のキャラクターとは全く違う二枚目ぶり。

*山さんの考えは「ただ真実を知りたい」。

*京子の勤務先はモスバーガー。

*ボンとロッキーは今回あまり目立たない。

*同じ結婚相手を亡くした身として、京子を自首させたい山さん。

*山さんと高子はかつて、京子の部屋と同じようなアパートに住んでいた。その生活はそれなりに楽しかったという。一緒に銭湯に行ったのは1回きりだったらしい。

*ラスト、高子の墓参りをする山さん。そこにボスが現れる。「当分再婚できそうにないな」と茶化すボスだったが、結局山さんは再婚しなかった。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

田口良:宮内淳

岩城創:木之元亮

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

三好京子:村地弘美、香西隆之:角野卓造

緑荘管理人:井上和行、三好則文:松田茂樹

達吉:野呂圭介、アパート住人の主婦:松浪志保、佐野弁護士:岸本功

白木由美、岩瀬裕美、丸岡晴久、ワゴン車の運転手:鹿島信哉

ノンクレジット 宮田幸一:永野明彦

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:桃井章

監督:斎藤光正