第558話「疾走24時間」(通算第437回目)

放映日:1983/5/27

 

 

ストーリー

春日部は給料日の夜、杉本良平(20歳)(長谷川諭さん)という若者に、給料をひったくられそうになったが、未然に阻止した。

杉本は赤いジャンパー、ジーパン、白いスニーカーを着用していた。

杉本は春日部が刑事であることを知り、どうしても金が必要だったと主張し、必死に謝罪した。

杉本は春日部に免許証を見せ、身分を示した。

杉本は山梨県甲府市に住んでいた。

杉本は父親が借金を残して蒸発し、明日が借金返済の期日だったが、どうしても足りず、母親が病気で寝たきりであったことを訴えた。

杉本は親類から借りようと思って上京したが断られ、激怒して犯行に及んだと釈明した。

春日部は「ラーメン専門店 ビリカ新宿店」にて、杉本にラーメンを奢った後、気前良く自分の給料を渡してしまった。

一係室に、城東銀行矢追支店付近の路上で引っ手繰り事件が発生したという通報が入り、春日部と竹本が出動した。

被害者(依田英助さん)は黒のアタッシェケースをひったくられており、引っ手繰り犯が赤いジャンパーを着ていたと証言した。

アタッシェケースの中身は少額の現金と、200万円分の有価証券と、会社の書類が入っていた。 

杉本は東都銀行の前にて、「八百安」店主(佐々木一哲さん)から封筒を引っ手繰った。

春日部は藤堂の指令で、竹本に城東銀行の捜査を任せ、店主がいる矢追二丁目派出所に急行した。

店主が引っ手繰られた封筒の中身は1000万円分の宝くじだった。

午後11時、杉本は「時間制限」があと8時間であることに焦っていた。

藤堂は正直に、昨夜の杉本のことを報告した。

山村は、杉本が春日部に話した借金のことが全て虚偽ではないかと助言した。

春日部は騙され、給料を全額渡してしまった自分を刑事として恥ずかしいと思っていたが、藤堂から勝手に犯罪者を見逃したことを叱責された。

藤堂は厳禁の被害が僅かであるため、杉本が犯行を続けると考えていた。

井川は杉本の次の標的が地理的に、富士見町か矢追4丁目の銀行ではないかという意見を出した。

藤堂と山村を除く捜査員は銀行員の張り込みを担当し、山村は山梨県警に杉本の身元調査を依頼した。

午後1時、「時間制限」まであと6時間となっていた。

令子と春日部は二手に別れ、太平銀行を張り込んだ。

伊藤順子(24歳)(野川愛さん)は太平銀行を立ち去った直後、杉本により鞄を引っ手繰られてしまった。

令子は引っ手繰りの光景を目撃し、伊藤に駆け寄った。

春日部は、伊藤の右腕の傷を治療した令子と合流し、杉本を追跡した。

何者かの黒い自動車が春日部を尾行していた。

伊藤は令子から病院で治療を受けるように勧められたが、公衆電話に向かった。

春日部は杉本を見失っていた。

伊藤が受話器を上に置いたまま、姿を消していた。

井川は令子と合流し、太平銀行で伊藤の身元を調査することにした。

春日部は必死に杉本を捜索していた。

杉本は階段下にて、伊藤の財布の中身が2万円であることを確認し、まだ足りないこととサイレンの音に激しく動揺した。

午後3時、「時間制限」まであと4時間となり、杉本は新宿駅のコインロッカー63番にジャンパーと伊藤の鞄を預けた。

伊藤は太平銀行の、「共栄興業」名義の貸金庫を利用していた。

共栄興業は竜神会の支配下の会社で、恐喝事件のために営業停止処分となっていた。

春日部は街角を捜査中、何者かの尾行の気配を感じた。

井川と令子は太平銀行の監視カメラの映像をチェックし、伊藤がキャッシュカードを利用していることを知った。

伊藤は半年前まで宝石店「名宝堂」の店員だった。

「名宝堂」は1年前(1982年頃)、客を装った男に、時価5000万円相当の3カラットのダイヤモンドの指輪を強奪された店であり、そのときに応対していたのが伊藤だった。

伊藤が共栄興業と関係していると仮定した場合、

*ハンドバッグの中にダイヤモンドが入っていたこと。

*犯人が共栄興業の関係者で、伊藤と共犯であり、1年間貸金庫にダイヤモンドを保管していた

という推理が出来た。

山村は春日部に杉本を、西條と竹本に共栄興業の捜査を任せ、井川と令子に名宝堂に行くように指示した。

春日部は「ビリカ」を訪れた際、近隣の店から出てきた杉本を発見し、取り押さえた。

杉本は激しく抵抗し、見逃すように懇願した。

杉本は、午後7時までに30万円を揃えないと恋人の香織が殺害されてしまうことを訴え、香織を救出したら自首するつもりであると泣き叫んだ。

春日部は杉本に、もう1度だけ釈明のチャンスを与えた。

杉本は昨日、甲府から香織(伊集院弓さん)を乗せ、上京していた。

杉本はデパートの店員である香織の定休日に合わせ、やっと休暇を貰っていた。

杉本はガソリンスタンドの店員だが、自動車の運転が得意でなく、原宿で綺麗な外車に衝突させてしまった。

杉本は外車の持ち主の3人組のチンピラ(小沢仁志さん)に恐喝された。

杉本はチンピラに、香織と共に倉庫に連れて行かれ、所持金を全て渡しても許してもらえなかった。

杉本はチンピラから、ポーカーで勝てば帳消しにするという条件を突きつけられたが、負けっぱなしだった。

杉本はチンピラから、制限時間の24時間、明日の午後7時までに30万円を持ってスナックに行かなければ、香織を殺害すると脅迫された。

杉本は香織の生命を尊重するため、昨夜に春日部に真相を告白しなかった。

杉本はチンピラのサングラスが目立ったため、人相も背格好も分からず、外車のナンバーも記憶していなかった。

春日部は杉本からチンピラを捜索するように懇願されたが、渋々杉本を逮捕した。

伊藤は共栄興業の畑中健二と親しかった。

井川と令子、西條と竹本は伊藤が既にアパートを引き払っていたため、畑中のアパート「北陽ハイツ」に急行した。

春日部は藤堂に杉本の逮捕と、コインロッカーのキーを預かったことを報告し、香織を救助するため、再度杉本を信じ、解決したら連行すると約束した。

春日部は再度杉本に騙された場合、辞職を覚悟していた。

伊藤は北陽ハイツから高飛びしようとしたところを、捜査員に逮捕された。

山村はコインロッカーから伊藤のハンドバッグを取り出し、ダイヤモンドを押収した。

伊藤は畑中から、危険であることを理由に、羽田のホテルでの待機を指示された。

午後5時55分、伊藤が全面自供した。

畑中がダイヤモンドを取り戻すため、仲間と共に春日部を尾行しており、隙を見て杉本を襲撃し、ダイヤモンドを奪取する計画だった。

杉本は春日部を、チンピラに脅迫されてポーカーをさせられた倉庫の一室に案内した。

春日部の所持している拳銃の銃弾は残り5発だった。

春日部と杉本は倉庫の一室に突入したが、蛻の殻となっていた。

春日部は最初、杉本を信用しようとしなかったが、床に落ちていたポーカーのコインを発見し、杉本を信じた。

午後7時まであと40分となり、春日部は杉本に、スナックでチンピラと対決するしかないと言い放った。

杉本の所持している金額は28万円で、あと2万円足りなかった。

共栄興業構成員(鈴木弘道さん)が春日部に拳銃を発砲し、杉本の身柄を渡すように要求してきた。

春日部と杉本は倉庫内を逃げ回ったが、畑中以下、共栄興業構成員5名に追跡された。

杉本を脅迫したチンピラは畑中ではなかった。

春日部と杉本は屋上に追い詰められてしまった。

春日部は杉本に、自分が発砲している間に端に立つように指示した。

春日部は銃弾を装填し、構成員1名を撃退した。

杉本は屋上から強引に飛び降りたが、足を捻挫してしまった。

春日部も屋上から飛び降り、赤い廃車(スカイライン)の下に隠れた。

廃車は畑中達の発砲により、炎上してしまった。

春日部は自分の上着を防災頭巾代わりに利用し、何とか脱出した。

西條と竹本、井川と令子が倉庫に到着し、畑中達の拳銃を撃ち落とし、ダイヤの押収と伊藤の逮捕を告げた。

春日部と杉本は令子と竹本から真実を告げられた。

井川と西條と竹本は構成員を蹴散らし、逮捕した。

春日部は令子から2万円を引っ手繰り、午後6時58分にスナック「キャビン」に到着した。

春日部と杉本は「キャビン」に入店したが、チンピラがいなかった。

「キャビン」の杉本宛にチンピラから、「キャビン」から2分の距離にある、エルムハイツ602号室に来るようにという電話が入った。

春日部と杉本は602号室に入った。

チンピラは杉本から30万円を手渡され、杉本にゲームの賞金として30万円を贈った。

チンピラは杉本が香織のために金を作って戻るか、見捨てて逃げてしまうかの24時間のゲームを計画していた。

香織は監禁されておらず、途中からチンピラと遊んでいた。

春日部はあまりにも軽はずみな態度をとるチンピラに激昂し、チンピラと激しい殴り合いとなった。

杉本はチンピラを叩きのめそうとする春日部を制止した。

西條と竹本が602号室に突入した。

チンピラは杉本をからかっただけで、金を取る意思がなく、恐喝罪が適用できなかった。

春日部はチンピラが微罪で、騙された杉本が重罪となることに納得できず、杉本を弁護し、杉本の方がチンピラよりよほど人間的であると訴えた。

杉本は一係室に入り、春日部のような友達がいると思えば、懲役も何でもないこと、藤堂や山村が情状酌量の証言をすると約束したことを伝えた。

春日部は罪を精算し、再出発を誓うことを約束した。

 

 

メモ

*まだ給料が現金で手渡されていた時代。

*「ラガーの借金は踏み倒そう♪」と言ってしまうボギー。おいおい(笑)

*減俸されていて給料が少なく、借金しまくっているにも関わらず、ラーメンを奢るばかりか、給料を全額渡してしまうボギー。お人好しな部分が裏目に出てしまった。

*杉本の件はドックやトシさん、山さんだったらどのような風になっていたのだろうか。

*少年課や交通課にまで借りに行ったらしいボギー。吉野にも貸すように言ったのだろうか。

*「全くどうなってんの~」by山さん。

*「(給料を)そんな奴(杉本)に貸すくらいだったら俺にくれ。皆で有効に使ってやるぞ」 ドックは金の管理が細かそう。

*引っ手繰りの件はDJ&警部編の「赤ちゃん」を思い出す。そちらは引っ手繰られた女性が殺害されている。

*久々に銃撃戦を見た感じがする。

*杉本のスタント担当は鈴木弘道氏?

*ボギーの上着が少し燃えた。

*後の「マイコン、疾走また疾走」を髣髴とさせるシーンがある。(脚本は同じ大川氏)

*一連のチンピラの脅迫はただのゲームで、香織も途中からチンピラと一緒に遊んでいたという、納得いくような、いかないような結末に。

*チンピラのしたことは明らかな脅迫罪。その件で杉本が引っ手繰りという罪を犯さなければならず、暴力団の襲撃にも遭っていることから、とても微罪で済むものではない。

*小沢仁志氏の俳優デビュー作。

*ボギーはチンピラに殴りかかったことで、減俸となった?

*結果的に恋人にも裏切られた杉本。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

春日部一:世良公則

竹本淳二:渡辺徹

岩城令子:長谷直美

 

 

杉本良平:長谷川諭

香織:伊集院弓、伊藤順子:野川愛、「八百安」主人:佐々木一哲

大谷一夫、滝川昌良、福島美由紀、引っ手繰りの被害者:依田英助、小沢仁志

藤岡大樹、藤井祥恵、三石義広、鈴木玄秀、益田哲夫(現:益田てつ)

ノンクレジット 共栄興業構成員:鈴木弘道

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

脚本:小川英、大川俊道

監督:鈴木一平