PART2 第12話(第730話)「さらば!七曲署」(通算第424回目)

放映日:1987/2/20

 

 

ストーリー

竹内印刷店にて、主人の竹内久夫(51歳)が殺害される事件が発生し、七曲署捜査一係が駆けつけた。

凶器は硬い鈍器のようなものと思われた。

第一発見者の青木清文(24歳)(井上純一さん)は竹内の知人で、竹内印刷店に遊びに来た際、竹内の遺体を発見した。

清文は篁の息子だった。

篁は久々に清文と再会した。

清文の父親の青木は今度、大臣に随行してカナダに行くことになっていた。

清文は篁に、継母の美沙子が会いたがっていたことを伝えた。

篁は野崎と井川に、清文を事情聴取するように指示した。

清文は東和証券に勤務しており、竹内との関係について、先週の金曜日、混雑していた飲み屋で相席になった際、色々話しているうちに親しくなったと話した。

清文は井川から竹内と年齢が違いすぎる点、話題が合わなさそうな点を指摘されたが、何となく話が合ったと述べた。

篁は一係室を離れた。

清文は新宿の「漁火」で、午後7時に竹内と会ったこと、今度遊びに来いと言われたことを伝えた。

清文は遺体を発見したときの様子について、午後6時30分に竹内印刷店に到着し、竹内の遺体を発見した後、驚愕して抱き起こしたが、既に亡くなっていたと説明した。

井川は清文を自宅まで送迎した。

解剖の結果、死亡推定時刻は昨夜の午後6時30分前後、死因は頭蓋骨骨折を伴う脳挫傷と判明した。

凶器及び犯人の遺留品は発見されず、指紋も竹内以外のものがいくつか検出されたが、前科者に該当者がいなかった。

清文の指紋は表戸とその取っ手の部分から検出されていた。

竹内は近所の住人によると、ほとんど仕事らしき仕事をしておらず、店も閉まっていることが多かった。

竹内の出身地は青森県八戸市だった。

容疑者は清文のみとなっていた。

篁は母親の勘で、清文が嘘を吐いていると直感した。

令子と太宰は清文が凶器を持っていなかったこと、血液の付着が不自然ではないことを反論した。

喜多は竹内の死亡推定時刻と清文が竹内印刷店を訪問した時刻が一致する点が引っかかっていた。

篁は喜多に、水木と一緒に清文を捜査するように命令した。

西條は篁に、離婚の経緯を話すように求めた。

篁は、警察庁保安関係の仕事をしていた昭和36年(1961年)の春、財務省に勤務していた青木と結婚していた。

篁は昭和37年(1962年)の春に清文が誕生してから10年間、家庭と仕事をなんとか両立させてきたが、現場の捜査担当を希望し、城西署少年課に移籍してから、青木との仲が悪くなった。

篁は仕事が多忙となり、家庭が疎かとなってしまい、青木に「父親は家庭に2人もいらない」と言われてしまった。

篁は昭和52年(1977年)に協議離婚し、清文(当時15歳)は自分の意思で青木に引き取られていた。

清文はその後、東都大学の経済学部を卒業し、東和証券に就職していた。

青木は3年後(1980年)に再婚し、財務省の次官となっていた。

青木の再婚相手は旧姓を松井美沙子といい、実家が横浜の開業医で、以前の夫を交通事故で亡くしていた。

喜多と水木は「漁火」を聞き込み、竹内と清文が会っていた時刻が清文の証言と一致することを確認した。

水木は清文が「漁火」の常連で、店主にも顔を覚えられていたため、清文を疑わなかったが、喜多は2人の会話の内容が誰にも分からないことを不審に思った。

喜多と水木は美沙子(水原英子さん)と会い、竹内が殺害されたこと、清文が竹内の遺体を発見したことを告げたが、美沙子は竹内を知らなかった。

西條は竹内印刷店を捜査した際、棚の引き出しの奥から、古い美術専門紙の切り抜きを発見した。

切り抜きは昭和34年(1959年)度青龍展油絵部門にて佳作に選ばれた、田坂圭吾の紹介記事だった。

田坂は昭和10年(1935年)青森県出身で、日本画家の吉田静観に師事していた。

田坂の生年月日と出身地は竹内のものと一致し、田坂が竹内と同一人物であることが断定された。

竹内は昭和34年頃、一部で注目された新進画家だったが、その後は全く評価されず、いつの間にか画家を廃業していた。

澤村は竹内印刷店付近のドブ川から、凶器らしきバールを発見し、野崎に報告した後、鑑識に提出した。

バールに付着していた血液は竹内の血液型と一致し、バールが凶器であることが断定されたが、指紋は検出されなかった。

井川と令子は坂口画廊主人で、画商の坂口常幸(睦五朗さん)から話を聞いていた。

坂口は竹内の住所録に記載されていた。

坂口は竹内が画家だった頃からの付き合いで、竹内が頻繁に坂口画廊を訪れていたことを話した。

井川と令子は事情聴取中に奥から不審な物音を聞いたが、坂口は誰もいないと誤魔化した。

井川は美術品保管庫を調査していた際、不審な男がグレーのワゴン「品川52 は 91-60」に絵画を積み、逃走するのを目撃した。

井川と令子と水木は坂口が住むマンション303号室を張り込んでいた。

「91-60」のワゴンの持ち主は都内に6人いたが、その中に小田恭三(40歳)という、詐欺の前科のある美術ブローカーがいた。

喜多と澤村は「オフィス小田」を訪れたが、小田が不在だった。

「オフィス小田」社員(星野晃さん他)は昨夜、全員残業でオフィスにいたと主張した。

喜多は誘導尋問で、坂口画廊から絵画を持ち出した「オフィス小田」社員を特定した。

喜多と澤村は「オフィス小田」社員と格闘になり、社員を蹴散らした。

澤村は控室から非情階段に逃走した社員の1人を捕まえ、坂口画廊との繋がりを詰問した。

社員は坂口画廊との関係性を否定したが、澤村に非常階段から外に上半身を出された。

社員は坂口画廊とは仕事上の関係であり、小田に命令されて絵画を持ち出したことを自白したが、持ち出した理由については知らなかった。

社員は再び非常階段から外に上半身を出され、何も知らないことを強調したが、喜多に竹内と清文の写真を見せられた。

社員は清文のことを知っていた。

喜多は京王プラザホテルにて、小田(中田博久さん)と対面した。

小田は先週の土曜日に銀座のバー「VIP」に行き、清文と同伴したこと、客を紹介してもらうため、坂口に清文を紹介されたことを認めた。

清文は東和証券に勤務していたため、人脈が広かった。

坂口は竹内から清文を紹介されていた。

小田は社員に坂口画廊から絵画を持ち出したことについて、坂口が絵画の代金を支払わないため、実力行使に出ただけと説明した。

清文は先週の土曜日、「VIP」で坂口と小田と会ったこと、昼間に坂口から「竹内に紹介された。ぜひ一度会って欲しい」と依頼されたことを認めた。

清文は事件と関係性が無いと思い、話さなかったと供述した。

篁は野崎と水木と、清文の取調べを交代し、何を隠しているのか、本当に竹内と偶然会ったのかを尋問した。

清文はあくまで偶然に会っただけであると強調し、何も知らないと主張したが、篁に目を見ていないことを指摘された。

清文と竹内の関係性が不明だった。

篁は絶対に清文が真相を話さないと確信し、清文が息子だから必ず自白するだろうという甘えがあったが、既に自立していたことを自覚した。

篁は清文を釈放させたが、厳重な張り込みを継続させ、西條には逃走したら逮捕するように命令した。

喜多と澤村は「オフィス小田」を張り込んでいた。

午前6時5分、篁は熟睡から目を醒ましたが、一係室に青木(米倉斉加年さん)が待機していた。

青木は今朝、篁のマンションに電話したが、篁が不在だったため、七曲署を訪れ、警察官に通してもらっていた。

青木は午前9時に、大臣と同伴して成田空港に行かなければならないため、早朝に七曲署を訪れていた。

青木は篁に、清文に何の容疑がかかっているのかを尋ね、田坂の写真を見せられた。

青木は田坂(竹内)を見たことが無かった。

篁は青木に、清文のことを任せるように頼み、どんな結果が出ようと必ず事件を解決することが自分の仕事であると伝えた。

「オフィス小田」に社員が集まっていた。

坂口と清文は普段通りに出社していた。

井川と水木は、小田が有名な画家の絵を偽造し、富豪に売り捌いているという噂を聞きつけた。

坂口が絵の偽造に協力していたか、もしくは主犯である可能性が濃厚だった。

実際に偽絵を描いていたのが竹内であれば、頻繁に閉店していた理由も説明がついた。

「オフィス小田」社員が坂口画廊から持ち出した絵も偽物ではないかと推測された。

エリート商社マンで、富豪を多く知っている清文が偽絵の販売に協力していた可能性が浮上した。

坂口は秘書を連れて外出したが、令子と太宰に尾行された。

小田は社員を連れ、ワゴンで出発したが、喜多と澤村に尾行された。

坂口は突如、車を乗り捨て、地下鉄に入り、令子と太宰をまいた。

坂口の秘書は令子に坂口がどこに行ったか詰問されたが、知らなかった。

喜多と澤村は、坂口画廊から絵を持ち出した「オフィス小田」社員に追跡を妨害された。

西條は小田の乗るワゴンに発信機を射出した。

小田と社員は倉庫に入り、大量の偽絵を運び出そうとしていた。

喜多と澤村と太宰は小田と社員を叩きのめした。

小田は坂口が竹内を殺害したこと、竹内が偽絵の値段を釣り上げ、絵を200万円で購入するように坂口を脅迫したことを自供した。

小田は坂口が清文の弱みを握っていたと発言したことを記憶しており、清文に坂口と一緒に富豪を紹介するように依頼しただけだった。

坂口はまだ逮捕されていなかったが、時間の問題だった。

篁は警察を辞職する覚悟が出来ていた。

清文は篁が辞職しなければならないことを何もしていないと強調したが、野崎に真実を自白するように迫られた。

清文は「漁火」で酒を飲んでいた際、竹内に美沙子のことで話しかけられた。

竹内は昔、美沙子と愛し合っており、清文にそのことを公表されたくなければ、坂口と小田に会うように強要した。

美沙子は戸棚に竹内の絵を保管していた。

清文は大学生時代、大掃除をしていたとき、美沙子が竹内の絵を懐かしそうに眺めていたことを目撃していた。

美沙子は竹内の絵について、青木も知らない大切な青春の思い出と誇っていた。

清文は美沙子の思い出を壊したくなかっただけであり、篁に謝罪した。

清文はバーで坂口に小田を紹介され、富豪の顧客に絵を買うように口を聞いてほしいと依頼され、依頼を飲めば秘密を守ると約束された。

清文は3日間悩み、依頼を断るために竹内宅に行ったが、到着していたときには既に竹内が殺害されていた。

篁は清文に、美沙子が最も大切に思っているのは昔の思い出ではなく、青木と清文と幸福に暮らしていることではないかと言い聞かせた。

清文は篁に、坂口の申し出を承諾した場合の、坂口の連絡先を教えた。

篁は美沙子に真実を話すことにした。

坂口は愛人と一緒に旅行に出発しようとしたが、井川と喜多に逮捕された。

美沙子は篁から真実を告げられ、迷惑をかけたことを謝罪した。

篁は清文の母親として、美沙子に、清文を優しい心の持ち主に育ててくれたことを感謝した。

清文は美沙子と一緒に七曲署を去った。

 

 

メモ

*PART2の最終回。実質的な「太陽」最終回でもあるが、あまり最終回の雰囲気ではなく、これからも続いていくという雰囲気。

*篁の唯一の主演作。

*篁の家族と過去が判明。トシさんのように仕事に打ち込んだ結果、離婚してしまったようだ。

*親族が容疑者となっても、一切私情を交えない篁。

*「君は再婚評論家かい?」(オサム)、「マイコンです」

*ドブ川から凶器のバールを拾うも、ブルースに手柄を横取りされるDJ。

*睦氏は「太陽」の出演では「ダーティなゴリ」と並び、数少ない悪役。

*坂口画廊から絵画を持ち出した「オフィス小田」社員を、「坂口画廊から飛び出した際、犬の糞を踏んだ」と引っかけて特定するオサム。

*長さんが外で張り込んでいる。

*篁と青木の会話は独特の温かい雰囲気が出ている。

*特撮に出てきそうな、発信機を発射する銃が登場。

*最終回だが、「青春のテーマ」や「序曲」といった懐かしのアクションBGMが流れた。

*ラスト、事件解決を祝し、飲み会に行く捜査一係一同。

*ちゃっかり篁を「朝子ちゃん」と呼んでしまっているブルース、「おっかさん」と呼ぶオサム、上着の着せ方が荒く、篁に「女性にもてない」と言われるドック。

*篁とオサムは1クール(12話)のみの登場となったが、非常に個性豊かなキャラクターで、もっと見たかった。しかし、奈良岡氏は舞台のスケジュールの関係で、1クールの出演期間が限度だったらしい。

*今回は「真夜中の殺意」でデビューした古内氏と、「都会の潮騒」でデビューした鈴木監督の「太陽」最終作。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

篁朝子:奈良岡朋子

太宰準:西山浩司

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

青木:米倉斉加年

青木清文:井上純一

坂口常幸:睦五朗

小田恭三:中田博久、石森武雄、青木(松井)美沙子:水原英子

山河連滉、五代哲、今井登、石川重己、「オフィス小田」社員:星野晃、藤原益二、秋元政志

 

 

西條昭:神田正輝

野崎太郎:下川辰平

井川利三:地井武男

喜多収:寺尾聰

 

 

脚本:古内一成、小川英

監督:鈴木一平