第718話「そして又、ボスと共に」(通算第412回目)

放映日:1986/11/14

 

 

ストーリー

澤村と太宰は午後1時から開催される射撃大会に、意欲を燃やしていた。

澤村は午後11時30分、新宿駅東口に太宰と落ち合うことにした。

午前7時40分、一係室に、富士見町のアパート「椿荘」にて、自動車窃盗犯の恩田三郎(杉欣也さん)を目撃したという匿名の密告電話が入った。

澤村は出発寸前、太宰からマグナムを手渡され、太宰にケーキ屋を教えてくれるように頼んだ。

澤村は椿荘から逃走する恩田を追跡したが、栄町の廃屋に逃げられてしまった。

澤村は廃屋を調査し、一室に隠れ潜んでいる恩田を発見した。

恩田は鉄パイプを振り回して抵抗を試みたが、あっけなく殴り倒されて逮捕された。

澤村は背後から謎の男の影を感じ、とっさに拳銃を構えようとしたが、謎の男に胸を撃ち抜かれてしまった。

太宰は待ち合わせ時刻になっても新宿駅に来ない澤村に怒り、一係室の西條と令子に電話していた。

西條と令子は澤村の、密告電話についてのメモを見た。

澤村は謎の男に向けてマグナムを発砲しようとしたが、力が入らず、謎の男に没収された。

椿荘付近に住む、主婦の初江(上野綾子さん)は午後9時30分頃、恩田と澤村を目撃したことを証言した。

西條は、澤村が恩田の恋人の古屋朱美の部屋で恩田を発見し、追跡していたことを確認した。

太宰は西條にケーキ屋の件を報告した。

ケーキ屋「パスコ」の店員は、澤村が開店後すぐに訪れてきたこと、バースデーケーキを予約したことを伝えた。

午後1時25分になっても、澤村からの連絡が入らなかった。

西條と太宰は富士見町界隈を捜査することにした。

令子と水木は「ポテトロード」に勤務する古屋を詰問していた。

古屋は昨日、恩田が勝手に自宅に来たことを伝えた。

西條と太宰は、澤村が謎の男に撃たれた廃屋を突き止め、くまなく調査し、澤村の血痕を発見した。

澤村と謎の男は既に廃屋から姿を消していた。

澤村は廃屋に警察手帳を残していた。

西條は澤村の出血量から、かなりの重傷を負っていると判断した。

今日は泉の誕生日だった。

水木は古屋を尾行し、古屋が映画館に入ったことを報告し、令子と太宰を招集した。

水木と太宰は映画館内で恩田を発見し、叩きのめして逮捕した。

恩田は澤村を撃ったことを否認した。

恩田は自動車窃盗の他に覚醒剤にも手を出し、ネタを握られて謎の男に協力したことを自白した。

恩田は謎の男から成功報酬100万円を受け取った後に、すぐに逃げ帰っており、澤村が腹部に被弾し、その場に倒れ込んで動けないほどの重傷だったことも供述した。

一係室に、多摩川の河原にて男の遺体が発見されたという通報が入り、捜査員が出動した。

捜査員は澤村が死亡したのではないかと危惧したが、遺体の身元は澤村ではなかった。

恩田の証言で、澤村を撃った謎の男の似顔絵が完成した。

西條は澤村が張り込み中であることを口実に、泉(渡瀬ゆきさん)にバースデーケーキを差し入れた。

澤村は謎の男の部屋に監禁され、手錠で拘束されていた。

藤堂は、澤村が撃たれたという知らせを聞き、一係室に現れていた。

謎の男はわざと水をこぼし、澤村を挑発した。

ビリヤードの線から、謎の男の正体が津坂久(29歳)(遠藤憲一さん)であることが判明した。

井川と令子は津坂宅を家宅捜索した。

津坂が所持していた漫画のページの間には、澤村を隠し撮りした写真が挟まっていた。

津坂はかなり周到に犯行を計画しており、澤村をマークし、恩田を利用していた。

太宰が津坂の身辺を捜査した結果、津坂の実兄の津坂肇という男が浮かんだ。

肇は3年前(1983年頃)、警視庁西署管内で宝石強盗事件を犯し、犯行後に死亡していた。

西署は澤村が交番勤務の実習をしていた警察署だった。

強盗犯は2人組であり、肇は警察官時代の澤村に撃たれていた。

井川と令子は西署の丸山刑事(今西正男さん)から、3年前の宝石強盗事件についての説明を受けた。

事件が発生したのは3年前の6月7日で、被害者は北川町の宝石商の山崎和男(42歳)であった。

被害額は時価6000万円相当の宝石類で、共犯者は肇の麻雀仲間の一ノ瀬孝司(時本和也さん)(当時27歳)だった。

一ノ瀬は現在も逃亡中であり、その後の痕跡は不明だった。

一ノ瀬の係累は妹の一ノ瀬僚子(24歳)で、病院の看護婦をしていたが、接触が確認されなかった。

澤村は肇と一ノ瀬を追跡し、栄町の廃屋に追い詰め、肇に銃撃していた。

肇の傷は致命傷ではなかった。

肇と一ノ瀬は廃屋から逃げ延び、1人が澤村を牽制し、1人が車を奪って逃走していた。

肇と一ノ瀬はどこかに潜伏していたが、1ヶ月後に突然、山梨県で肇の遺体が発見されていた。

山梨県は肇の故郷だった。

津坂は澤村が肇を撃ったことを突き止め、澤村に肇と同じような苦しみを与え、殺害しようとしていた。

津坂は山梨県に肇を埋葬しており、撃った警察官を突き止め、復讐を誓っていた。

橘と井川は、3年前に澤村が栄町の廃工場で肇を発見して撃ち、今度は同じ場所で撃たれたこと、撃たれた場所も被弾した箇所も肇と同じであることを察知した。

橘は津坂の意図に気付いた。

指名手配の肇が医師にも診せられず、苦しみながら潜伏していた場所を手繰る糸口は逃亡中の一ノ瀬だった。

井川と水木は僚子(桂田裕子さん)に、一ノ瀬から連絡が無かったかを尋ねた。

僚子は一ノ瀬のために苦労させられたため、一ノ瀬を兄と思っていなかった。

令子は津坂の身辺を捜査していた。

津坂は溶接の仕事を2ヶ月前に辞めており、肇を撃った警察官が誰なのかをずっと調査していた。

津坂は逃亡中の一ノ瀬と接触し、隠し撮りした澤村の写真を見せて確認を取り、退職して復讐に全てを賭けていた。

津坂の足取りは不明だった。

澤村は痛みの感覚が消えかけていることに感づいた。

藤堂は殉職していった部下達と出来ることなら変わってやりたいという思い、同じ人間でありながら憎しみがあり、時には血を流して殺し合うこと、警察官がそれを取り締まるために銃を向けなくてはならないことの虚しさを吐露した。

僚子の住むアパート「すみれコーポ」大家の梅子(岸井あや子さん)は、先月初頭にデパートから僚子のもとに小包が届けられたことを伝えた。

小包の送り主は、川崎市川崎区本町5-2-8の松本一郎だったが、偽名だった。

西條は小包の送り主が一ノ瀬であると断定した。

僚子は昭和37年(1962年)10月2日で、小包の中身のセーターの配送日と同じ日だった。

逃亡中の一ノ瀬が偽名で、僚子の誕生日プレゼントにセーターを贈っていること、僚子が何らかの手段で一ノ瀬と連絡を取っていることが断定された。

藤堂は七曲署に僚子を連行させた。

澤村は意識が朦朧としていた。

井川は僚子を取り調べたが、僚子は黙秘を決め込んだ。

藤堂は井川に代わり、僚子を取り調べた。

藤堂は周囲に不在であることを理由に、5年ぶりに喫煙したが、咳き込んでしまった。

藤堂は僚子に、生命の重さと大切さ、殉職した滝のことを語り、瀕死の澤村にもう一度、望に会わせてやりたいと伝えた。

僚子は一ノ瀬の居場所が横浜であることを自白した。

西條と令子と水木と太宰は一ノ瀬のアパートに急行し、一ノ瀬を追い詰めた。

西條は一ノ瀬に銃口を突きつけ、3年間潜伏していた場所を自白させた。

橘と井川は一ノ瀬の潜伏場所に急行し、瀕死の澤村を発見した。

橘は、澤村が死亡したと冷酷に言う津坂を殴り倒した。

澤村の手術が開始され、成功した。

西條は泉に、澤村の無事を知らせた。

東都銀行矢追支店にて強盗事件が発生し、捜査員は現場に急行した。

 

 

メモ

*14年4ヶ月続いた「太陽にほえろ!」の最終回。

*管内胆管炎の治療のため、「太陽」を降板した石原氏が1話限りの復活。しかし、痩せた身体と真っ黒な顔色が非常に痛々しく、辛そうである。

*ボスの復帰ということで、役目を果たした警部は本庁に帰還。12話という短い出番での登場となった。

*OPは今回のみの特別バージョン。ボス→警部→ドック→DJ→ブルース→マイコン→マミー→トシさん→ブルースとDJの激走→スタッフロール及び刑事のフラッシュカットという構成。

*ボスの紹介カットはデューク登場編のものの流用。警部の紹介カットは大幅に短縮されている。ドックがOPで3番手となったのは今回が唯一。

*ブルースは綺麗好きだが、無精髭をそらないらしい。

*最終回だからか、「青春のテーマ」や「太陽のテーマ’79」が流れた。

*登場から強靭な体力と攻撃力、タフさで不死身の印象を与えたブルースだが、あわや殉職まで追い詰められる。

*ブルースの警察手帳の写真は、明らかに最近撮られたもの。

*泉の誕生日の設定は「戦場のブルース」でも描かれているが、明らかに時期が違ってしまっている。

*望は男児の設定。

*ボスと警部の夢の共演。ボスの復帰の知らせを聞いたドックが非常に嬉しそうで、歓喜の声を上げていた。トシさんとマミーとマイコンも素で嬉しそう。

*警部と一緒に着任し、ボスの顔を知らないDJ。知らせを聞いた際には、警部が本庁に帰還してしまうと落胆。

*ボスとは初対面となったDJ。

*桑原氏は珍しく、チンピラでも売人でも中毒者でもない役。ビリヤードのプロの梶を演じているが、台詞がカットされている。

*ボスが過去に殉職していった刑事のことを回想。殉職シーンの映像が流れる(マカロニ:「13日金曜日マカロニ死す」、ジーパン:「ジーパン・シンコその愛と死」、テキサス:「テキサスは死なず!」、ボン:「13日金曜日ボン最期の日」、ロッキー:「岩城刑事ロッキーにて殉職」、ボギー:「戦士よさらば ボギー最後の日」、ラガー:「ラガーよ、俺たちはおまえがなぜ死んだか知っている」、山さん:「さらば! 山村刑事」)殿下とスコッチの回想シーンは流れなかった。

*今なお伝説として語り継がれている「ボスの取調べ」。そのシーンのボスは「藤堂俊介」ではなく、完全に「素の石原裕次郎」が憑依しているように見える。

*ボスは5年前(1981年頃)、心臓を切った大手術(解離性大動脈瘤の手術)以来、大好きだった煙草を禁煙していると語る。しかし、復帰した1982年には喫煙しているシーンがちらほらあった。結果、咳き込んでしまう。

*ボスは取調べの際、殉職したスコッチのことを語る。沖氏は放映時、既に亡くなられており、石原氏も胸に詰まるものがあったのだろう。

*スコッチは「日本茶、コーヒーは絶対に飲まない、朝は紅茶」、「煙草は洋モクしか吸わない」と語られている。しかし、一係に再着任後は、普通に麦茶を飲み、庶民的な煙草を吸っていた。また、「吐血している隙に撃たれて殉職」と語られているが、実際は犯人を仕留めた後、吐血している。

*命の尊さを語るボス。本人が死に迫りかかっているということもあり、説得力が物凄い。

*桂田氏はボスの取調べシーンにはかなり緊張したためか、演技ではなく完全に素のように見える。

*なんとか一命を取り留めたブルース。番組が続行していれば、殉職する予定もあったらしい。

*遠藤氏は短い出番ながらもさすがの存在感。

*ラスト、「太陽のテーマ’72」が流れ、「14年4ヶ月……長い間のご支援ありがとうございました」というテロップが入った。

*DJ&警部編では、2週分が放送されていない。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

橘兵庫:渡哲也

太宰準:西山浩司

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

津坂久:遠藤憲一、澤村泉:渡瀬ゆき

一ノ瀬僚子:桂田裕子、恩田三郎:杉欣也、一ノ瀬孝司:時本和也

丸山刑事:今西正男、めだちけん一、中西敦子、青柳有希子、梅子:岸井あや子

初江:上野綾子、梶:桑原一人、村上幹夫、今井登、田中なおみ

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

 

 

脚本:峯尾基三

監督:鈴木一平