第717話「女たちは今……」(通算第411回目)

放映日:1986/11/7

 

 

ストーリー

令子と太宰は、少年を人質に取って逃走する犯人(星野晃さん)を追跡した。

犯人は西條が覆面車の扉から勢いよく飛び出した際に転倒した。

令子は少年を襲撃しようとする犯人のナイフを蹴り落とし、格闘の末に揉み合いとなった。

少年は西條に保護され、犯人も澤村に逮捕された。

太宰は令子の奮闘ぶりに感動していた。

一係室に波江から、裕太が保育園で長田勇という園児と喧嘩し、相手を負傷させてしまったという内容の電話が入った。

勇は裕太によって花壇に突き倒し、煉瓦に頭を強打し、東都中央病院に搬送されていた。

勇は医師から、軽度の脳震盪と診断されていた。

令子は長田の母親から冷徹な視線を向けられた。

令子は強引に裕太(服部賢悟さん)を呼び出し、なぜそうしたかの理由を話すように叱った。

陽子(中原有弥子さん)は、勇の方が悪く、裕太に責任がないことを説明した。

令子は裕太に、絶対に暴力はいけないと叱咤したが、裕太は勇への謝罪を拒否し、死亡した岩城を嫌っていた。

保育園の発表会で演劇をすることとなり、父親役に裕太と勇が立候補していた。

結局、ジャンケンで裕太が選ばれたが、その後、勇は父親のいない裕太に、父親役ができないとからかっていた。

翌朝、令子は井川から、マンションの部屋で殺人事件が発生したという連絡を受け、現場に急行した。

被害者は部屋の持ち主の小泉忠夫(35歳)(伴直弥さん)で、株式関係の業界紙の記者だった。

小泉は登山ナイフのような鋭利な刃物で刺殺されたと考えられた。

小泉は遺体の死後硬直の様子から、死亡推定時刻が昨夜の午後9時前後と推定された。

早朝、第一発見者と思われる女性の声で110番通報があったが、その女性が未だに発見されていなかった。

小泉宅の中を物色された様子が無く、怨恨の線が濃厚だった。

小泉宅の机の上から、結婚紹介所「城南マリッジセンター」のパンフレットが発見された。

小泉は独身だった。

令子と太宰は城南マリッジセンターに赴き、谷口所長(東丘出陽さん)と対面した。

城南マリッジセンターの入会金は男性の場合、10万円だった。

令子は谷口に、小泉に紹介された女性のデータを見せるように依頼した。

谷口は最初、外部に会員のデータを漏洩しないということが原則であるのを理由に断ったが、太宰から殺人事件の捜査であると強調され、許可した。

最初の相手は、約8ヶ月前に小泉と会った、原田紀子(30歳)(奈美悦子さん)だった。

原田は大東出版副編集長で、令子とタイプの似ているキャリアウーマンだった。

原田はテレビのニュースで小泉が死亡したことを知っており、令子と太宰の訪問もそのことが目的であることを見抜いていた。

原田は小泉とは半年以上前、1,2度会っただけであること、昨夜は徹夜明けで昼に帰宅して寝てしまい、目を醒ましたら午後11時過ぎだったことを主張した。

原田は結婚紹介所に入会した理由について、ただの気まぐれであると述べた。

2人目の相手は、美容室「メール」店主の小池節子(31歳)(高沢順子さん)だった。

小池は5ヶ月前に、城南マリッジセンターの紹介で小泉と会っていた。

小池は美容師という職業上、男性と知り合う機会が無く、他人に勧められて入会していた。

小池は小泉と3,4度デートしたが、結局別れたこと、最後に会ったのが3ヶ月前であることを説明した。

小池は昨夜の午後8時に閉店し、上で弟の小池剛(小沢和義さん)と一緒に、テレビを見ながら帳簿の整理をしていたことを話した。

3人目の相手は、神橋小学校教師の広田由美(29歳)(東啓子さん)であり、小泉が殺害される直前まで交際していた可能性が強かった。

広田は約2ヶ月前に城南マリッジセンターの紹介で小泉と会い、複数回交際していたが、先週の月曜日に会ったときにはっきり断ったことを伝えた。

広田は小泉との交際を断った理由について、もう終わったことであるとして、何も話そうとせず、昨夜には一晩中自宅でテストの採点をしていたことを話した。

裕太は仮病で保育園を休んでいた。

小泉の周辺で、3人以外に交際している女性が浮かばなかった。

西條は小泉のギャンブル仲間から、約1年前(1985年頃)にある女性から、詐欺同然で大金を騙し取ったということを聞き込んでいた。

小泉の目的は独身女性の結婚資金であり、3人も小泉に強請られたのではないかと推測された。

橘は捜査員に、3人の身元の再捜査を指示した。

アパートの管理人や隣人から、広田のアリバイが確認できず、近所の住人からも真面目な女性教師というだけで、男の噂は皆無だった。

広田は約3ヶ月前、担任のクラスの生徒が放課後に遊び中、誤って片目にボールをぶつけ、失明した事件の責任問題で揉めていた。

裕太は令子が見に行かない限り、劇に出演しないと言い張った。

保育園の中で、両親が不在なのは裕太と陽子だけだった。

令子は絶対に劇を見に行くと約束した。

令子は太宰から、原田が逃亡したことを告げられた。

原田には、有名な推理作家の松本健夫という愛人がいた。

松本夫人は、時々テレビに出演している婦人評論家だった。

井川は原田と松本の不倫を知り、原田を強請っていたのではないかと推理していた。

太宰は原田が小泉を殺害したのではないかと考えていた。

原田は昨夜からマンションに戻っておらず、大東出版に、2,3日休暇をとるという内容の電話をかけていた。

松本は原田との不倫関係を認めたが、強請られた事実を否認した。

原田は6ヶ月前から給料日直後に10万円ずつ引き出されていた。

令子と太宰は原田宅を張り込んでいたが、原田は自宅にも北海道の実家にも戻っていなかった。

裕太と真のトラブルは、令子側が治療代を支払うということで決着が付いていた。

令子は橘に相談を受けようとしたが、一係室の令子宛に、原田が自首してきたという内容の電話が入った。

原田は温泉で一晩ゆっくり考え事をして、自首するという結論に達したことを話した。

原田が自首した理由は、松本と事件が無関係であるため、松本の名前を公表しないことだった。

原田は松本のことで小泉に強請られ、殺害しようと思ったことを認めたが、実際に殺害したことについては否認した。

原田は小泉と2度会っており、2度目は交際を断るためだった。

1ヶ月後、突然に原田のもとに小泉から電話が入った。

小泉は松本のことをネタにして、週刊誌に掲載させたくなかったら、手切れ金を払うように脅迫してきた。

原田は毎月10万円ずつ小泉に支払い、その額だったら、小泉に引っかかった自分が馬鹿だったと諦めるつもりだったが、1週間前に小泉から、5日以内に400万円を払うように強要された。

原田は小泉に、支払わなければ松本と直接取引すると脅迫されていた。

原田は400万円を用意できず、小泉を殺害し、自殺する決心をつけ、登山ナイフを購入し、小泉宅に乗り込んでいた。

小泉は原田にナイフを突きつけられ、床に頭を叩きつけ、号泣して殺さないように懇願していた。

原田は小泉を殺害することが馬鹿馬鹿しくなり、登山ナイフを捨てて、小泉宅を去った。

原田は一生懸命愛した思い出をボロボロにされたくないだけと供述した。

原田は令子から、城南マリッジセンターに入会した理由を質問され、疲労し、生活を変えてみたいと思ったと回答した。

令子と太宰は原田が虚偽の供述をしているとは思えなかった。

原田の供述が真実の場合、原田が帰った後、小泉宅を訪れた何者かがいることとなった。

橘は捜査員に、小池と広田の再捜査を命じた。

小泉は客の株を売買し、200万円の損失を出していたが、告訴されそうになり、4ヶ月前に全額返却していた。

小池の預金口座から、4ヶ月前に200万円が引き出されていた。

小池が小泉に騙し取られたものと推測されたが、小池は事件当夜の午後9時頃、コーヒーショップ「ノアノア」に出前を取っていた。

しかし、事件当夜、剛は小池と不在だった。

太宰の捜査で、広田が事件当夜にテストの採点をしていたことが嘘であり、午後8時30分に自宅から出るのを他人に目撃されていることが判明した。

広田は自分の全財産である、200万円の定期預金を解約していた。

広田が小泉に200万円を騙し取られた可能性が出た。

西條と澤村は小池宅を調査し、冷蔵庫から登山ナイフを発見した。

小池は小泉を殺害したと主張したが、剛が不在だった。

小池は小泉から、株で儲ければ「メール」を拡大できると勧められたが、小泉は横領の穴埋めに200万円を費やしていた。

剛はそのことを知り、小泉に、400万円を用意するように脅迫していた。

小泉は期限になっても400万円を用意できず、剛と揉め事となり、剛に原田の用意した登山ナイフで刺殺されていた。

小池は翌日に小泉宅を訪れ、部屋中の指紋を消し去り、凶器の登山ナイフを持ち去り、110番通報していた。

剛は未だに行方不明だった。

令子は、女手一つで弟を抱えて生きている小池が疲れ切り、結婚に逃げ込みたくなって城南マリッジセンターに入会したのではないかと考察していた。

太宰は令子に、広田の張り込みを中止し、剛の捜査に加入するように意見したが、令子は広田も小泉宅を訪れたのではないかと推理した。

オートバイに乗った剛が帰宅中の広田に接近してきた。

広田は小泉宅を訪れた際、剛の顔を目撃していた。

剛は広田を殺害しようとしたが、令子と太宰に発見され、逃走した。

令子は剛のオートバイのタイヤを撃ち抜いて逃走を阻止した。

剛は太宰との格闘の末、駆けつけた井川達に逮捕された。

広田は事件当日、小泉から金を持ってくるようにという電話を受けていた。

小泉は事件当日の前の月曜日、小泉との交際を断っていたが、婚約不履行で告訴すると脅迫されていた。

広田は手切れ金のつもりで金を渡そうとして、小泉宅を訪れたが、部屋から出てきた剛とすれ違い、小泉の遺体を発見した。

広田は恐怖にかられ、夢中で逃走していた。

広田は自分の見ていない事故でさえ、両親に監督責任を問われ、校長から責任問題になると責められたため、二度と警察沙汰になりたくないと思っていた。

広田は事件で担任を外され、嫌なことが積み重なり、逃げ出したくなっていた。

しかし、先週の月曜日、負傷した子供の俊也が、広田が学校を辞めるという噂を聞いて駆けつけ、広田に辞めないでと励ましていた。

広田は自分の選んだ道だから、二度と子供たちから逃げ出さないと決意していた。

小池が剛の着替えを差し入れるため、七曲署を訪れていた。

原田は殺人未遂罪、証拠不十分のため不起訴となった。

小池は犯人隠匿罪で起訴猶予となった。

午前9時、令子は橘に、関係書類を集め、検察庁に届けたことを報告し、早期退社した。

令子は幼稚園に急行したが、西條と澤村と水木と太宰も幼稚園に駆けつけ、裕太と陽子の父親代わりとなっていた。

波江が西條達に、裕太の劇のことを話していた。

 

メモ

*OPは前回の「マイコン、疾走また疾走」と今回のみの、2回しか使われていないレアなバージョン。

*裕太と陽子、マミーのアパートは今回が最後の登場となった。裕太と陽子は5歳となっており、「太陽」の長期間の放送を感じる。

*マミーのアパートは、最初ボンが叔母と住んでいたアパートとして登場。その後、住人はボンとロッキー→ロッキーひとり→ロッキーと令子→岩城一家→マミーと波江と裕太と陽子となっており、こちらも長期間放送を感じさせている。

*裕太と勇の喧嘩の原因は、勇が裕太に母子家庭をからかったから。暴力を肯定するつもりはないが、家族関係を罵倒されては、激怒しても無理はない。

*「メール」の店内に、「あのネズミ」の人形が置かれている。

*高沢氏と東氏は「犯人の顔」でも共演されている組み合わせ。

*DJの喫煙シーンがある。

*大東出版社員に、刑事かと疑われるDJ。

*マミーが裕太の件で「自分もこのままどこかに逃げ出したい」と弱音を吐く。DJが物真似するも、あまり似ていない。

*ドックに「落第パパ」と呼ばれるブルース。泉と望を毎日入浴させていることを自慢。

*ドックがビタミン剤を服用。

*伴氏の出番が非常に少なく、台詞もない。

*前回の「マイコン、疾走また疾走」には小沢仁志氏が出演したが、今回はその弟の和義氏が出演。

*ラスト、有給休暇と裕太の父親代わりを名目に、裕太と陽子の劇を見るため、幼稚園に行くドックとブルースとマイコンとDJ。「カルガモの引っ越しか」byブルース。

*厚生課は捜査一係捜査員が定期健診に誰も行かないので困っているらしい。

*「早く藤堂さんに帰ってきてほしいね」とぼやく警部だが、次回の「そして又、ボスと共に」で、ボスが1話限りの復帰を果たす。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

橘兵庫:渡哲也

太宰準:西山浩司

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

原田紀子:奈美悦子

小池節子:高沢順子

広田由美:東啓子、早瀬波江:成田光子

谷口所長:東丘出陽(現:東丘いずひ)、小池剛:小沢和義、小泉忠夫:伴直弥(現:伴大介)

岩城裕太:服部賢悟、岩城陽子:中原有弥子、石川裕見子、谷村慶子、阿部渡、本庄和子、犯人:星野晃

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

 

 

脚本:金子裕

監督:鈴木一平