第714話「赤ちゃん」(通算第408回目)

放映日:1986/10/17

 

 

ストーリー

令子は澤村宅を訪れ、泉(渡瀬ゆきさん)に子育てを指導していた。

澤村は令子を駅まで送迎する途中、新宿矢追公園付近で青木利香という女性がひったくりの被害に遭い、助けを求めるのを目撃した。

青木はショルダーバッグをひったくられていた。

令子と澤村は二手に別れ、ひったくり犯を追跡したが、見失ってしまった。

ひったくり犯の江藤真次(23歳)(久保田篤さん)は、青木のショルダーバッグの中身を確認した。

青木の財布には10万3000円が入っていた。

江藤は巡回中の守衛の隙をつき、小学校の焼却炉にショルダーバッグを投げ込んだ。

令子は青木が刑事に江藤の追跡を任せ、自身は消息を絶ったことを疑問に思った。

橘は島津と水木に、青木が乗った黄色いタクシーを調査させた。

青木は「勝和ハイタウン新宿」713号室に住んでいた。

島津と水木は青木宅に入ろうとしたが、扉が施錠されておらず、扉を開けた直後、何者かから発砲された。

青木は既に死亡していた。

発砲犯の下田三郎(寺島進さん)は裏口から逃走し、非常階段から飛び降りて死亡した。

水木は階段の途中にいたもう1人の響組組員を追跡したが、見失ってしまった。

下田は響組組員で、大幹部の大下清彦(前田昌明さん)の配下だった。

大下は切れ者で通っている男だった。

青木は響組に重要なものを運搬する途中、江藤にひったくられ、口封じのために殺害されたものと推理された。

青木は銀座の一流バーのホステスだった。

橘は捜査員に、響組と青木の関係、江藤の線を捜査するように指令した。

西條と澤村は逃走するチンピラを取り押さえ、覆面車に連行した。

チンピラは何も話さず、降車を要求したため、澤村に強制的に覆面車の窓から上半身を外に出された。

チンピラは江藤の名前を自白した。

江藤は昭和37年(1962年)12月4日生まれで、現住所が不定であり、昭和59年(1984年)2月に傷害で逮捕されており、特定の暴力団との繋がりが無かった。

江藤は雀荘からの帰り道、新聞を読んでいた。

江藤は喧嘩っ早い性格で、キャバレー「日の丸」を喧嘩で辞めていた。

令子と澤村は江藤が潜伏していると思われる、清水かすみ(青田浩子さん)の自宅のアパート「第2ハイム中杉」に赴いた。

令子と澤村は部屋のノブを破壊し、清水宅に突入したが、妊娠中の清水が腹部を押さえて苦しんでいた。

清水は救急車で宮坂医院に搬送されたが、医師(大矢兼臣さん)から、過労で早産の危険性があると診断された。

令子と澤村は清水の意識が戻るまで、病室にて待機することにした。

令子は妊娠8か月の清水を心配していた。

江藤は清水宅に立ち寄った際、清水が入院したという内容の貼り紙を見て、宮坂医院に急行した。

清水はまだ薬で眠っていた。

令子と澤村は江藤に警察手帳を見せ、身分を示したが、江藤は青木が訴えなかったことを理由に、ショルダーバッグをひったくったことを否認した。

澤村は江藤がひったくり犯であると推測していた。

江藤は令子に、青木が警察に知られたくないものを響組組員に殺害されたこと、響組が自分を探していることを告げられた。

井川と水木は青木の同僚のホステスから聞き込んでいた。

ホステスは青木の周辺で大下を見たことが無く、青木と暴力団との関係性を否定した。

青木のパトロンは明和銀行副頭取の堀田義幸(52歳)(西田昭市さん)だった。

堀田は昭和9年(1934年)4月10日生まれ、渋谷区大原5-2-4に住んでおり、昭和31年(1956年)3月に邦南大学経済学部を卒業していた。

堀田は明和銀行の実権を握っていたが、地方検察庁に特別背任容疑でマークされていた。

堀田は響組の関係するゴルフ場建設と、大下が社長をしている響不動産に、40億の不正融資をした疑惑を持たれ、家宅捜索も近かった。

堀田と大下は同じ邦南大学の卒業生だった。

江藤がひったくったショルダーバッグの中身は、堀田と大下に関わる決定的な証拠である可能性が強かった。

江藤は令子と澤村に病室から立ち去るように要求した。

清水が意識を取り戻し、江藤と会話した。

江藤は清水の枕元に、購入したと誤魔化した熊の縫いぐるみを置き、清水を喜ばせた。

令子は身分を隠し、清水の両親から依頼された探偵と誤魔化した。

清水は令子と澤村に、江藤が職探し中で、出産したらまた働き、立派に生活することを必死に伝えた。

江藤は職探しをしてくれる人とお付き合いという口実で、一昨日から帰っていなかった。

清水は令子に、江藤が普段優しい性格であることを教え、両親に自分が幸福であることを伝えるように頼んだ。

江藤は中学校時代、陸上競技の80mハードル走で記録を出し、保健体育の教科書に名前が載っていた。

令子は江藤に、真相を話すように求めたが、金が全てであると一蹴された。

江藤は激走して逃走したが、令子に先回りされた。

令子は江藤に、ひったくった物が響組に重要なものだが、江藤には何の価値もないものと忠告した。

令子と江藤は第2ハイム中杉に赴いたが、清水宅が響組に荒らされていた。

清水宅からは何も強奪されていなかった。

令子は江藤に、響組が本気であると警告した。

江藤は全く警告を意に介さず、捜査員が自分を追跡したから、響組にまで犯人と思われていると叫び、全く知らないと主張した。

西條と水木は堀田と対面した。

堀田は青木と愛人であること、響組との関係性を否定し、車で明和銀行を立ち去った。

西條はわざと堀田を挑発し、裁判で悪事が露見することを見越していた。

江藤は清水宅に居座っていたが、響組の標的が何かを考えていた。

江藤は令子と水木が清水宅を張り込んでいることに気付き、部屋の照明を消して、窓から逃走した。

江藤はショルダーバッグを放り投げた焼却炉の灰を取り出している最中、令子に発見された。

焼却炉の灰からはショルダーバッグの止め金や化粧品が発見されたものの、書類は燃えている可能性が高く、発見は不可能な可能性が濃厚だった。

江藤はショルダーバッグを燃やしたことを知らないと誤魔化した。

令子は江藤に、ショルダーバッグの中に重要書類が入っている可能性があることを話した。

江藤は令子と水木のもとから逃走したが、突如現れた響組組員3名(森岡隆見さん他)により、車に拉致されそうになった。

組員は令子に威嚇射撃され、車で逃走した。

令子は、赤ん坊を欲しくないと軽はずみに言う江藤を殴り、清水が江藤のことを誇らしげに言っていたこと、子供を産む女性は子供の父親への信頼で支えられていると説得した。

江藤は令子の発言に耳を貸さなかった。

令子は水木に焼け残りを調査させ、江藤を追いかけた。

江藤は令子に、定職を探し、赤ん坊の名前を考えたらどうなのかと叱咤した。

組員2名が清水の病室に侵入したが、澤村が清水の悲鳴を聞いて駆けつけたため、逃走した。

澤村は組員の1人を取り押さえて殴り倒し、清水が江藤から何も預かっていないことを伝えた。

江藤は清水に贈った縫いぐるみが、青木のショルダーバッグに入っていたことを思い出した。

江藤は響不動産に電話し、大下に熊の縫いぐるみとの取引を持ち掛けた。

江藤は取引を、今日の午後に武蔵野競輪場にて、500万円と指定した。

江藤は令子から清水が危篤状態であることを告げられた。

清水は父親から名付けられた自分の名前が好きで、離れて暮らしている父親といつも一緒にいる気がしていた。

江藤は熊の縫いぐるみを入手したが、澤村に見つかり、書類の場所を詰問された。

江藤は病室の窓から逃走したが、澤村に追跡された。

島津と水木は響不動産から出発する大下を尾行した。

江藤は区立総合運動場付近の歩道橋からトラックの荷台に飛び降り、澤村をまいた。

島津と水木は大下を尾行していたが、響運送のトラックに妨害され、まかれてしまった。

江藤は武蔵野競輪場に向かう途中、令子と清水の名前に関する発言を思い出したが、それでも金が最重要であると思っていた。

午後0時前、江藤は武蔵野競輪場に到着し、大下に、スタンドに500万円入りのアタッシェケースを放り投げるように強要させた。

江藤は鉄塔の下に縫いぐるみを置いていた。

江藤はアタッシェケースを回収し、中身を確認しようとしたが、中身はただの新聞紙であった。

組員が江藤を狙って発砲してきた。

大下は組員に、江藤を殺害せず、縫いぐるみの中身を自白させるように命令した。

江藤は一係室の橘に自分の居場所を教え、書類を渡すため、スクラップ工場に向かって要通りを走り、令子に連絡するように伝えた。

江藤は必死に組員から逃走していた。

令子は逃走中の江藤を発見し、覆面車に乗せた。

江藤は赤ん坊の名前を、男子の場合は「真」、女子の場合は「正美」に決めていた。

組員の車は、令子が覆面車を急発進し、ターンした影響で横転した。

令子はスクラップ置き場に大下の車を追い詰めた。

令子は江藤を連れ、スクラップ置き場内を逃げ回り、組員を次々と叩きのめした。

令子は建物内に江藤を隠し、鉄パイプで組員を殴り倒し、大下の拳銃を撃ち落とした。

西條と島津と水木がスクラップ置き場内に駆けつけ、組員を逮捕した。

西條達は残りの組員も逮捕していた。

江藤は素直に西條達に、堀田と響不動産の闇取引の証拠書類を手渡した。

江藤は大下達に捕縛されていたら、死亡していたところだった。

令子は江藤を連れ、宮坂医院に急行したが、澤村から江藤と清水の子供が出産後、二声だけ泣いて死亡したことを告げられた。

江藤と清水の男児は医師から、あまりに小さすぎて、生きる力が足りなかったと診断された。

令子は取調室で呆然自失としている江藤に、出生届と死亡届を渡し、一瞬でも父親であったことを言い聞かせた。

江藤は令子に促され、出生届と死亡届を書いた。

橘と澤村は取調室の隣室から、令子と江藤を見守っていた。

江藤は令子に感謝した。

井川と西條は青木の殺人教唆容疑で堀田を逮捕した。

地方検察庁は容疑が固まり次第、堀田を再逮捕する方針だった。

堀田が順調に頭取の職に就いていた場合、堀田も響組も手が出せなくなるところだった。

 

 

メモ

*サブタイトルが246話のものと同一だが、両話に接点はない。

*冒頭に泉が登場。泉がブルース以外の主演作(今回は準主演作)に登場するのは今回が唯一。

*望はブルースが抱いたりあやしたりすると泣くらしい。

*ブルースの強面な「ベロベロバー」。望どころか時々泉も泣くらしい。

*引っ手繰りの件は「疾走24時間」を彷彿とさせる。そちらでは引っ手繰られた女性は生存し、逮捕されている。

*「太陽」では警察幹部を多く演じる西田氏だが、最終出演の今回は悪役。

*ボギー関連のテーマが多く使用されている。

*ビタミン剤を服用するドック。

*久々に流れる「青春のテーマ」が燃える。

*「ウルトラマン80」の効果音が使用されている。

*ラスト、江藤と清水の子供が生後まもなく死亡してしまうという苦い結末となった。しかし、江藤が金を優先して引ったくりを犯し、すぐに刑事への協力を拒否し、取引という無茶な手段に出たのも原因であり、江藤にとっては自業自得感が否めない。清水はかなり不憫。

*「ボス愛のテーマ」が流れるのは確か今回が最後。

*今回は「小鳥のさえずり」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

橘兵庫:渡哲也

島津公一:金田賢一

太宰準:西山浩司

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

江藤真次:久保田篤

清水かすみ:青田浩子、澤村泉:渡瀬ゆき

大下清彦:前田昌明、堀田義幸:西田昭市、江崎和代、仲村知也、大倉順憲、織部一作

宮坂医院医師:大矢兼臣、樋口のり子、伊東あつ子、中原真澄、響組組員:森岡隆見、北斗辰典

中島元、荒瀬寛樹、菊川予市、横内直人、下田三郎:寺島進

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

 

 

脚本:小川英、尾西兼一

監督:鈴木一平