第691話「さらば! 山村刑事」(SP) 前編 (通算第385回目)

放映日:1986/4/11

 

 

ストーリー

非番の山村は新宿駅周辺の喫茶店に入り、10年ぶりに秋元正久(清水章吾さん)と対談した。

秋元は隆の実父であり、2年前(1984年頃)にヨーロッパ出張から帰ってきたが、多忙のため山村にはそのことを教えていなかった。

山村は、今西治(大谷朗さん)(33歳)という関西訛りのヤクザが、中里敬一(24歳)という学生を張り込んでいる光景を目撃した。

令子は喫茶店にて西條と澤村と水木と食事中、山村が男手一人で隆を育てたことに感動していた。

秋元は7年前(1979年頃)に再婚しており、夫人の秋元佐和子は子供が大好きで欲しがっていたが、子供の出来ない体だった。

秋元は10年前と違い、生活に困窮することなく、ずっと日本で暮らせることになった。

山村は秋元に隆を引き取りたいという意思があると読解していた。

秋元は山村と高子の恩を決して忘れていないこと、山村と高子が養子として隆を引き取らなければ、ヨーロッパ転勤を断らなければならなかったことを強調した。

秋元は前妻が、隆の誕生後すぐに死亡しており、途方に暮れていた。

山村は中里を尾行する今西の退出を目撃し、退団を打ち切って喫茶店を去り、今西を追跡した。

中里は曙橋3-2-10に停めていた車で出発しようとしたが、今西の所有しているグレーのマークII「品川58 た-139」に、バンパーを衝突させられた。

中里はバンパーが少し凹んだだけで済んだため、今西の示談の要求を断ったが、今西に脅迫された。

山村は今西と中里の間に立ち入り、今西に免許証の提示を求めた。

今西は車内から拳銃を取り出し、山村と中里を脅迫し、車で四谷方面に逃走した。

山村は藤堂に事件を報告し、曙橋派出所で中里の事情聴取を行った。

西條達は藤堂から事件の連絡を受けた。

曙橋4-2-5にある稲葉コーポ203号室の中里宅に引っ越し荷物が届いていた。

浪速会のヤクザ(戸塚孝さん)が中里のポリバケツを持ち、中里に成り済まし、サインを書いた。

中里は城南大学英文科4年生で、東南アジアに2年間留学しており、一昨日帰国したばかりだった。

中里は山村に、午後3時頃に引っ越し荷物が届くことを伝えた。

山村は藤堂に、引っ越し荷物に密輸品が混入しているかもしれないことを報告した。

澤村と水木は稲葉コーポに急行する途中、ヤクザ2名(荻原紀さん)が車内に中里の引っ越し荷物を積み込んでいるのを目撃した。

澤村と水木は逃走するヤクザを追跡したが、助手席に座っていたヤクザが拳銃を発砲してきたため、澤村が応戦した。

ヤクザは走行不能だった車を乗り捨てて逃走し、電車の横切る踏切で澤村と水木をまいた。

澤村と水木は井川と合流したが、井川はヤクザを目撃していなかった。

緊急配備が敷かれた。

山村と井川は中里の引っ越し荷物を検査していたが、引っ越し荷物の中から拳銃と弾丸数十発が発見された。

拳銃密輸の手口は、外国の出荷元の会社が荷物の中に拳銃と銃弾を紛れ込ませ、日本にいる仲間が持ち主のふりをして受け取るというものだった。

そのためには先に帰国した持ち主が邪魔になるため、時間までに帰宅可能だった中里を張り込み、自動車を衝突させ、時間を稼いでいた。

後の中里の荷物はマンションの表口に放り出されていた。

山村は以前にも類似した手口の事件に遭遇していたが、そのときは問題にならなかった。

バルジ共和国のトーマス・ベルナルド書記官(42歳)(ジェリー伊藤さん)は外交官ナンバーのベンツを運転していたが、何者かからの電話を受けていた。

島津は午後3時30分頃、検問中にベルナルドの公用車を目撃していた。

ベルナルドは空き地に停車し、トランクの中にヤクザ2人を隠れさせた。

午後3時35分、ベルナルドの車が澤村と水木の担当する検問に現れた。

澤村はベルナルドに免許証の提示を求めたが、水木はナンバーでベルナルドの車が大使館の公用車であることを知り、検問を通過させた。

ウィーン条約により、警察官は外交官ナンバーの車を調査不可能だった。

澤村と水木はベルナルドが検問を通過したことを報告した。

島津は午後3時30分にベルナルドが検問を逆に入って行ったことを知らせた。

山村はベルナルドの公用車が5分間に、入った方向と逆の方向に出たことを不審に思った。

出荷元の会社の社長のチャールズ・ベルナルドが行方不明であることが判明した。

その実兄は在日大使館で書記官をしている、トーマス・ベルナルドだった。

ベルナルドは公用車に茶色のベンツを選んでおり、チャールズと共謀し、拳銃密輸組織を作っている可能性が濃厚だった。

ベルナルドは電話で呼び出され、仲間のヤクザを助けに行き、外交官特権で逃がしていた。

3ヶ月前、城北署管内の独身の会社員が車を追突され、アパートに戻ってみると、何者かが自分の海外からの荷物を受け取ったという事件があった。

会社員の荷物は全て玄関の前に置かれ、何も盗まれていなかったため、城北署は捜査する気が無かった。

会社員は追突相手を全く記憶していなかった。

藤堂は外務省を通じて大使館に交渉することを決定した。

山村は拳銃密輸を軽視する澤村と水木を厳しく叱咤し、法治国家の日本では拳銃の携帯が禁止されていることを強調した。

ベルナルドは暴力団と関与していると思われた。

福岡県博多区中洲6丁目にて、警察官に追跡している犯人が警察官に向けて拳銃を発砲する事件が発生し、神戸、札幌のビリヤード場でも発砲事件が発生していた。

山村は東洋新聞社を訪れ、政治部の記者(北村総一朗さん)からベルナルドに関係する情報を入手した。

ベルナルドは18歳のときに東都大学に留学し、以来3分の1を日本で過ごしており、かなりの日本通であった。

そのため、大使はベルナルドが悪事を働いても厳重に注意できなかった。

大使館に勤務すれば外交官特権が発生するため、警察の捜査が緩くなった。

ベルナルドは外務省の問い合わせに対し、チャールズが何をしているか知らないし、その時刻には検問を通過していないと回答した。

藤堂はベルナルドとの面会を申請したが、あっさり断られたため、強行捜査を決定し、捜査員にベルナルドの徹底的なマークと周辺の聞き込みで証拠固めをするように指示していた。

山村と西條はバルジ共和国大使館から出発するベルナルドを尾行した。

澤村と水木はベルナルドが常連の喫茶店のウェイトレスから話を聞いていた。

ベルナルドはいつも単独で店を訪れており、最後に喫茶店を訪れたのは先週の水曜日で、デートにウェイトレスを誘っていた。

ウェイトレスはベルナルドが喫茶店の公衆電話から電話をかけていたこと、何者かからの電話で「何かが4つと多い」と聞こえたが、半分英語だったために理解できなかったことを証言した。

山村と西條はベルナルドを張り込んでいたが、ベルナルドに気付かれたため、警察手帳を示し、事情聴取しようとした。

ベルナルドは外務省の質問に答えたため、何も答える義務がないと主張し、すぐに尾行を中止するように警告した。

ベルナルドは山村の「後を付けられるのがそんなに気になりますか」という発言を侮辱と解釈した。

藤堂は警視庁の浜野警視監(滝田裕介さん)に呼び出された。

警視庁はグラハム大使から外務省を通じ、ベルナルドの捜査について正式な抗議を受けた。

藤堂はベルナルドが拳銃密輸事件の重要な容疑者であり、容疑事実があるため、全く捜査を辞める気が無かった。

浜野は藤堂に、千代田署捜査第一係長の倉田が家庭の事情で退職することになったこと、後任の最有力候補が山村であることを告げた。

浜野は山村を推薦しており、捜査打ち切りの交換条件として、山村の栄転を申し出ていた。

浜野は人事部に対し、特に強力な発言力を持っていた。

藤堂は一係室にて、浜野のことを話した。

井川は、横須賀のバー「マイプレイス」の5人組のバンドが客に拳銃を販売しているという情報を入手した。

バンドのギター奏者のカルロス・ゲイルはベルナルドと同じ街の出身で、ベルナルド自身も去年(1985年)までよく通っていた。

ベルナルドは帰国していた職員を出迎えるため、成田空港に行っていた。

山村は書記官が一職員を送迎するため、空港まで出向いていることを不審に思った。

澤村と水木はベルナルドを尾行していた。

外交官特権の中には、荷物検査を受けなくて済むというものがあった。

澤村と水木は、拳銃が職員の荷物に隠している可能性を危惧し、ベルナルドの公用車を追跡した。

山村はベルナルドの罠かもしれないと推測した。

澤村と水木は強制的にベルナルドと職員を降車させ、車内やベルナルドと職員の所持品を調査したが、拳銃が発見されなかった。

大使館が外務省を通じて、七曲署に抗議したため、ベルナルドへの直接的な捜査が不可能になったが、間接的な捜査は可能だった。

山村はベルナルドの急所を突くため、澤村を連れて「マイプレイス」を訪れた。

澤村はバーテンダー(篠田薫さん)を通じて、ゲイル(葉山研さん)と会話することに成功した。

澤村はゲイルにバーボンを奢り、S&W 38口径を50万円で売るように要求したが、ゲイルはあくまで自分達がミュージシャンであり、拳銃とは無関係であると主張した。

秋元が一係室を訪れたが、相手の山村がいなかったため、住所と電話番号を書いたメモを残し、立ち去った。

秋元は新宿区幸町3-7-8 サンハイム210号室に住んでいた。

ゲイルは自分に食らいつく澤村を無視し、仲間の乗るワゴンを発進させた。

山村は澤村の囮捜査を承認し、一係室に帰還し、秋元のメモを発見した。

山村は西條と令子と水木に、秋元が高子の遠縁であること、10年ぶりに会ったばかりであること、隆を引き取りたいと申し出たことを話した。

令子はもう隆が山村の息子であるとして、秋元の申し出を身勝手すぎると切り捨てた。

水木も令子に同感だったが、山村は3人に、あくまで捜査のことだけを考えるように念押しした。

澤村は連日、「マイプレイス」にてゲイルの張り込みを続行していたが、ゲイルに無視された。

ゲイルはようやく、拳銃取引の日時を明日の午後2時、横須賀の日の出桟橋と指定し、拳銃の代金として80万円を要求した。

澤村はゲイルのワゴンに目印を付けていた。

翌日、澤村は日の出桟橋にて待機していたが、午後2時、ゲイルの乗ったワゴンが到着した。

ゲイルは澤村の身体検査をした後、ワゴンに澤村を乗せ、廃倉庫の中で停車した。

廃倉庫内にはゲイルの仲間3人が待ち構えていた。

澤村はゲイルから新品のS&W 38口径を手渡されたが、封筒の中の金は1万円を除いて偽物だった。

澤村はゲイル達と格闘になったが、ゲイルの仲間の1人に銃口を向けられた。

山村が覆面車で廃倉庫に突入し、ゲイルの仲間の拳銃を撃ち落とし、ゲイルの仲間を逮捕した。

澤村は逃走しようとするゲイルの仲間を取り押さえた。

ゲイルはベルナルドから拳銃を購入したことを自白した。

ゲイルは去年の6月にベルナルドから、拳銃1丁を最低50万円で販売するように、それ以上の取り分はゲイルの儲けと持ち掛けられ、6丁の拳銃を70万円から80万円で売却していた。

ゲイルが拳銃を販売した人間は全員、横須賀の人間だった。

藤堂は警察庁を訪れることにし、井川に神奈川県警に連絡させた。

山村は秋元宅を訪れ、佐和子(今出川西紀さん)と会った。

秋元は今朝から出張のために不在だった。

佐和子は隆のことで相談のため、自宅に山村を招き入れた。

山村は佐和子に果物を差し入れた。

佐和子は秋元と話し合っており、自分達夫妻のことばかり考え、山村や高子、隆のことを考えていなかったこと、隆の将来を心配しなければならないことを視野に入れていなかったことを謝罪した。

佐和子は山村に、隆が幸福であればそれが一番であるとして、秋元の申し出を忘れるように願い出た。