第673話「狼の挽歌」(通算第367回目)
放映日:1985/11/29
ストーリー
非番の澤村は事件を解決し、水木の運転する覆面車に乗り、城西署管内の道を走っていた。
奥寺真二(小沢弘治さん)、矢部(中田譲治さん)、内海辰也(太田直人さん)の3人は乗用車を造成地の物陰に停車させ、別の乗用車を待ち伏せしていた。
奥寺達は乗用車を目的の乗用車の後部に衝突させ、追跡しながら何度も体当たりし、目的の乗用車を停車させた。
奥寺は拳銃を発砲して、乗用車の運転手の堀篤と乗員の古賀道明を射殺し、大金の入ったジュラルミンケースを強奪した。
澤村と水木は殺害現場付近を走行中、銃声に感付き、七曲署管内の現場に急行した。
奥寺達は車がエンジンストップを起こしたため、乗用車を捨てて逃走した。
城西署刑事の尾崎勝利(伊藤孝雄さん)が一足先に現場に到着し、遅れて澤村と水木も到着した。
澤村は尾崎から奥寺の逃走の知らせを聞き、連絡を水木に任せ、奥寺達を尾崎と一緒に追跡した。
七曲署捜査一係が現場に駆けつけた。
堀は青南商事会長の大山昌作のお抱え運転手で、古賀は青南商事社員だった。
堀と古賀の遺体から財布が奪われていなかった。
西條は殺人が目的であれば窓を破る必要がないことを疑問に思った。
遺留品は発見されなかった。
尾崎と澤村は奥寺達を見失ってしまった。
尾崎は澤村に腕の負傷を疑問視され、有刺鉄線が原因であると説明した。
尾崎は井川達に、奥寺がジュラルミンケースを抱えているのを目撃したことを教えた。
尾崎は最初の発砲があったのは城西署管内であるため、城西署の管轄であると発言したが、井川に強盗殺人事件が七曲署管内で発生したと反論され、納得した。
尾崎は知る人ぞ知る猛烈刑事で、現在でも検挙率が警視庁管内トップクラスの凄腕刑事だった。
山村と島津は青南商事に赴き、大山(永井秀明さん)と会った。
大山は古賀が緊急の書類を青南商事に届けたため、堀に送迎させたことを話したが、山村に青南商事と方角が違うことを指摘された。
大山は山村から古賀がトランクを所持していたかを質問され、慌てて見当がつかないと答えた。
井川は第一殺害現場付近の造成地を図で説明した。
古賀の車は大山宅から出発しており、城西署管内の第一襲撃現場から奥寺達の乗用車に襲撃されてコースを変更し、結果、七曲署管内に逃げ込んだことになった。
井川は古賀の車の目的地が、青南商事と縁の深い、代議士の早田善三の自宅だったのではないかという意見を出した。
青南商事はプラント輸出計画を有利に進めるため、早田に猛烈に働きかけているという噂があり、現金のブラックマネーを早田宅に運搬する途中だったと推理された。
犯人は極秘情報を知り得た人物であると確定された。
藤堂は捜査員に奥寺達の痕跡調査を命じた。
被害金額はジュラルミンの大型トランクの場合、1億円以上の大金になると予想された。
澤村と水木は自動車のスクラップ置き場にて待機していたが、藤堂の命令で七曲署に戻った。
尾崎が一係室を訪れ、奥寺の情報を教えていた。
奥寺は強盗傷害など前科5犯の悪党で、尾崎に3回逮捕されていた。
車体から奥寺の指紋が検出された。
奥寺は現金以外に興味を持たない男で、目的が現金であると思われており、行動範囲は城西署管内だった。
藤堂は尾崎に協力を要請し、澤村を尾崎のパートナーに指名した。
尾崎は奥寺が、寺田真弓という不良少女の情婦にいると推測していたが、居場所を知らなかった。
尾崎は真由美の弟の寺田剛志から、奥寺の居場所を聞き出そうとしたが、寺田の居場所も知らず、散策して調査することにした。
尾崎は「下衆野郎」と呼ばれていた。
尾崎は寺田の兄貴分の松井を発見し、松井から煙草と高級ライターを譲渡され、寺田の居場所も聞き出した。
尾崎は松井が晴海の倉庫に、密輸の宝石の取引に出掛けると思い、路上の新聞屋に松井のキャデラック「8199」を見張るように連絡するように依頼した。
尾崎が宝石の取引と断定した理由は、松井の隣に座っていたのが宝石鑑定士(星野晃さん)だったからであった。
尾崎と澤村は準備中の「パブレストラン&珈琲 ティファニー」に堂々と侵入し、寺田(杉欣也さん)と会った。
寺田は最近真弓と会っていないため、奥寺の居場所を知らないことを伝えた。
真由美はポーカー賭博に手を出していた。
寺田は尾崎から渡された新聞で、奥寺達の起こした事件を知り、尾崎に奥寺が真弓と一緒に逃亡する恐れがあると告げられた。
寺田はマリファナ常用者だったが、口の堅い人物だった。
尾崎は寺田が「ティファニー」からタクシーで外出したのを利用し、追跡した。
寺田は真弓の住むマンションに入っていった。
尾崎と澤村は寺田が真弓(有安多佳子さん)の部屋に入ろうとする瞬間に強硬突入し、寺田を殴り倒した。
真弓は奥寺の居場所を自白しようとしなかった。
尾崎は真弓に、奥寺の居場所を自白すれば寺田のマリファナを見逃すこと、逮捕すれば余罪が大量に出るため、2,3年の懲役が避けられなくなることを警告した。
真弓は奥寺が強盗殺人事件を犯したことと奥寺の居場所のことを知らなかったが、今朝に奥寺の相棒の矢部から、焦っている感じの電話が入っていたことを話した。
矢部はクラブ「ユニバーサル」でバーテンダーをしていたが、1ヶ月前に辞めていた。
尾崎は約束を破り、寺田を大麻所持の現行犯で逮捕し、真弓に罵られた。
矢部は高校の後輩で、自動車の整備をしている暴走族上がりのチンピラの内海と、頻繁に遊んでいた。
尾崎は矢部の隠れ家に急行することにした。
矢部と内海は、空き家となっている内海の実家に潜伏していた。
内海は2名殺害しているため、早急に高飛びしようと焦っていた。
矢部は強盗事件の前に奥寺から手渡された、新宿駅のコインロッカーの鍵の使用を提案した。
尾崎と澤村は内海の実家に到着したが、矢部と内海に察知された。
尾崎は内海の実家の裏手に周り、澤村に15秒経過したら接近するように指示した。
澤村はオートバイで逃走する矢部と内海を追跡したが、逃げられてしまった。
尾崎は内海の実家から注射器を発見した。
奥寺は昔、覚醒剤中毒者だったため、再発していた。
尾崎は注射器を七曲署の鑑識課に提出することを決定し、奥寺が注射器を回収することを見越し、張り込むことにした。
尾崎は人権と犯人保護を優先する警察に憤慨し、殺害しないで逮捕するスキルを持っているにも拘らず、発砲を厳禁とする警察の方針に嘆いていた。
尾崎は澤村に張り込みを任せ、内海の実家を後にした。
矢部と内海は新宿駅のコインロッカーからカセットテープを入手した。
注射器から奥寺の指紋が検出された。
奥寺の覚醒剤の代金目当ての犯行とも考えられたが、奥寺が消息を絶っていた。
山村の調査により、約3週間前、早田の秘書が路上で持病の心臓病により病死していたこと、殺人の疑いもあったため、城西署が捜査していたことが判明した。
城西署の報告によると、秘書の所持品の中に、ブラックマネーについてのメモが書かれていると思われる手帳が紛失していた。
その事件の担当者は尾崎だった。
尾崎は殺害現場に赴いていた。
井川と水木は殺害現場を再調査していたが、金の隠し場所を調査していた尾崎と遭遇した。
尾崎は七曲署の車が合わないという理由で、レンタカーに乗っており、井川と多少会話した後、内海の実家に戻った。
井川は殺害現場を調査中、路上のマンホールまで続く血痕を発見し、辿っていた。
マンホールの中から、拭った痕跡のある奥寺の血液が検出された。
澤村は張り込み中に何者かから発砲され、発砲地点まで激走し、尾崎と合流した。
澤村は自分に発砲してきたのは、覚醒剤を回収してきたと思われる奥寺であると断定した。
拳銃は45口径の銃弾で、奥寺の拳銃だった。
尾崎は内海の実家に澤村と張り込んだが、奥寺が現れる気配は無かった。
尾崎は半年前、夫人に何もしてやれなかったことが理由で、離婚したことを話題にした。
尾崎は小学校2年生の息子に、ヤクザのように見えるという理由で嫌われ、夫人について行ったことに困惑していた。
尾崎は長年、暴力団関係の事件を担当していたため、ヤクザのように見えても仕方がないこと、長年ヤクザのような性格だったからこそ、検挙率トップで暮らしていけたのかもしれないと自覚していた。
澤村は尾崎に、刑事として最大の実績を残してきたと賞揚したが、尾崎は自分の検挙率がここ数年に下降していることに苦悩していた。
澤村は尾崎を慕っており、朝まで内海の実家を張り込むことを伝えた。
尾崎は澤村に、「もう少し前に会いたかった」と言い残し、タクシーでアパートに帰宅した。
尾崎宅に矢部から電話が入った。
矢部は尾崎に、尾崎と奥寺の約束が録音されているカセットテープを所持していると脅迫し、指示通りに動くように強要した。
奥寺の残した血液は拭った痕跡も計算に入れると、致死量に匹敵する血痕であるため、奥寺が何者かに殺害されているという疑惑が生じた。
澤村は藤堂と山村から、奥寺から発砲された際、奥寺の姿を見ていないことを指摘された。
澤村は尾崎がマンホールから現れたと意見する水木に反発したが、尾崎に多数の疑惑がかかっていることを念押しされた。
澤村は尾崎の手の負傷を思い出した。
井川は澤村から尾崎がいつもレンタカーに乗らないことを聞き出し、奥寺の遺体と現金入りのジュラルミンケースの運搬用に覆面車を隠したのではないかと推測した。
藤堂は外出する澤村に水木を同行させた。
尾崎は矢追霊園にて、内海を追い詰めた。
尾崎は矢部と内海を逮捕し、奥寺を高飛びさせるための報酬として5000万円を要求していた。
尾崎は奥寺の拳銃で内海の心臓を撃ち抜き、殺害したが、ズボンと靴にセメントが付着していることに感付いた。
澤村は事実を確認しようとしたが、藤堂から内海の遺体発見の連絡を受け、矢追霊園に直行した。
澤村は内海のズボンと靴に付着しているセメントから何かを察知し、水木を残し、単独で出発した。
矢部はセメント倉庫に潜伏していたが、尾崎に射殺されそうになった。
尾崎は約束を破って殺人をした尾崎を殺害していた。
尾崎は矢部に、カセットテープを差し出せば命を助け、大金を与えると約束したが、そこに澤村が駆けつけた。
尾崎は発砲しながら逃走した。
澤村は矢部を逮捕し、尾崎に説得を試みた。
尾崎は立っていた木箱を銃撃され、転落していた際に拳銃を落とし、もう1丁の拳銃も澤村に蹴り落とされた。
澤村は尾崎に「無くしたものを見せる」ため、素手での格闘戦を開始した。
澤村は尾崎に叩きのめされ、一時的に劣勢になったものの、猛烈な格闘の末、何とか撃破し、殺人容疑で逮捕することに成功した。
海中から奥寺の遺体とジュラルミンケースが発見された。
尾崎は手帳でブラックマネーのことを知ったとき、最初は腹が立っただけだったが、刑事が懸命に生きているのに、政治家が不正な金に漬かっていることに憤慨し、自分も実行しようと決心していた。
ジュラルミンケースの中は石が詰まっているだけで、現金2億円は尾崎の自供通り、駅のコインロッカーから発見された。
澤村は尾崎が好きだったことを心残りにしていた。
メモ
*シートベルト着用が義務化されたことが分かる台詞がある。
*「大きい短銃」を持っているため、尾崎に「デカタン」と名付けられるブルース。
*伊藤氏以外の主要ゲストはなぜか東映特撮レギュラー経験者が多い。
*非常に存在感のある尾崎。伊藤氏は「密偵」でも悪に墜ちたベテラン刑事を演じている。
*大山のお抱え運転手はマイコンの台詞だと「堀篤」、新聞だと「海藤幸広」となっている。
*尾崎とブルースが、内海の足に付着していたセメントを見て、矢部の潜伏場所を特定するシーンがよく分からない。シーンがカットされたのだろうか。
*尾崎はブルースとの相手の中では、凄腕刑事ということもあり最強クラス。空手使いとの犯人とも互角に立ち回れそうではある。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
島津公一:金田賢一
澤村誠:又野誠治
水木悠:石原良純
岩城令子:長谷直美
尾崎勝利:伊藤孝雄
奥寺真二:小沢弘治、寺田真弓:有安多佳子、肉倉正男
大山昌作:永井秀明、矢部:中田譲治、内海辰也:太田直人(後の太田貴彦)、寺田剛志:杉欣也
市川勉、山中康司、森篤夫、甲斐武
ノンクレジット 宝石鑑定士:星野晃
西條昭:神田正輝
井川利三:地井武男
山村精一:露口茂
脚本:小川英、大川俊道
監督:山本迪夫