第670話「ドック潜入! 泥棒株式会社」(通算第364回目)

放映日:1985/11/8

 

 

ストーリー

柴崎武(35歳)(富川澈夫さん)と深谷史郎(32歳)(片岡五郎さん)は、牧野京一(28歳)(根岸一正さん)を見張り役としてシルバーメタリックの乗用車に残し、村上夫妻の自宅に侵入していた。

柴崎は深谷と一緒に、ガスバーナーで金庫を焼いていたが、牧野から村上夫妻が帰宅してきたという連絡を受け、裏口に牧野を移動させた。

柴崎と深谷は金庫を開け、500万円を強奪したが、村上夫人が帰宅してしまった。

村上(西尾徳さん)は夫人より遅れて帰宅したが、帰宅寸前に車の走行音を聞き、帰宅後に村上夫人の遺体を発見した。

西條と水木は藤堂から強盗殺人事件の連絡を受け、現場に直行した。

柴崎と深谷は牧野の運転する乗用車で逃走していた。

牧野は猫の飛び出しで急ブレーキをかけたが、乗用車が故障してしまい、サイレンの音を聞いた。

西條と水木は車を乗り捨て、3方向に逃走する柴崎達を発見し、追跡した。

水木は追跡中、物陰に隠れていた深谷に後頭部を殴られてしまった。

西條は柴崎達を取り逃がしてしまった。

シルバーメタリックの乗用車は盗難車で、指紋その他遺留品が期待できなかった。

水木は病院で精密検査を受けていたが、心配ない状態だった。

村上家の犬は人懐っこい性格で番犬にならなかった。

村上は株の投資をしており、明日の払い込みのために被害金額の500万円を用意していた。

柴崎達の侵入口は窓ガラスからであり、割られた窓が綺麗な三角形をしていた。

柴崎の手口は「三角形二点割り」といい、ガラスキーを使用せず、ドライバーを使用した特殊な方法だった。

容疑者として、窃盗の前科3犯で、昭和25年(1950年)4月2日生まれの柴崎が割り出された。

柴崎は昭和54年(1979年)8月3日に武蔵野刑務所を出所後、新亜火災代理店研修生を経て、昭和56年10月に台東区南浅草3丁目南浅草ビルに北陽火災浅草代理店を開業していた。

水木は深谷の顔を見ていなかったが、深谷に飛びついた際、果物が熟れたような匂いがしたことを思い出した。

藤堂は西條と水木に、強盗殺人の重要な証拠と思われる匂いについての調査を、井川と島津に浅草南署に行くように命じた。

警視庁浅草南署捜査一係長(小寺大介さん)と大友刑事(山谷初男さん)は井川と島津に、強盗事件について説明した。

北陽火災浅草代理店は表向きこそ損害保険の会社だが、実態は「泥棒会社」だった。

柴崎が会社を開業してから4年間、管内だけでも11件の窃盗事件が発生しており、被害金額も1億円以上となっていた。

大友は1年前(1984年頃)から柴崎達をマークしており、未だに証拠を掴めていなかったが、七曲署管内にまで犯行に及んでいたため、追い詰められていると推測された。

井川は捜査一係長に合同捜査を申請したが、捜査一係長は現場の指揮を大友に担当させていた。

西條と水木は果物の匂いを嗅ぎまくっていた。

北陽火災浅草代理店は3人の社員と名ばかりの5人の役員で構成されていた。

大友は11件の窃盗事件のみが浅草南署に関係し、柴崎達が他の所轄で犯行に及ぼうが無関係であるという態度をとった。

浅草南署の若手刑事(荒井大介さん)が南浅草ビルを張り込んでいた。

島津は大友の制止を振り切り、北陽火災浅草代理店を調査した。

北陽火災浅草支店の支店長は浅草代理店が、年間の契約数が他の代理店の5分の1しかないのに営業が成立していることを疑問に思っていた。

北陽火災浅草代理店の社員は、窃盗と強盗傷害の前科2犯の深谷と、窃盗の前科3犯の牧野だった。

深谷はガスバーナーを使った金庫破り専門であった。

村上は保険の募集で会社に来ており、昨日も目撃されていた。

村上は電話で、夫人に現金を下ろすように指示していたが、深谷がそれを聞いていたものと考えられた。

状況証拠は揃ったが、浅草南署は合同捜査をする気が無かった。

西條は早退し、1週間の休暇をとっていた。

水木が3人の過去を調査した結果、柴崎が元金庫破りの名人の平山源次の弟子だったことが判明した。

西條は柴崎達が泥棒であることを証明するためと、次の強盗計画に参加するために、北陽火災浅草代理店の潜入捜査を敢行することを決意していた。

西條は平山(殿山泰司さん)と会い、みたらし団子を差し入れた。

平山によると、柴崎は手先が器用だが、知能が今一つで金庫を破れなかった。

西條は平山に紹介状を書くように要望したが、平山に生命の危険があることを理由に許可されなかった。

西條は平山を、今でも金庫破りの練習をしていること、新種の金庫破り道具を開発していることを教えて説得し、平山に渋々招待状を書いてもらった。

西條は北條昭と名乗り、北陽火災浅草代理店の事務所に乗り込んだ。

西條は柴崎と対面し、平山の紹介状を手渡し、自分を雇用するように懇願した。

西條は入社テストとして、折り畳み傘を改造した秘密兵器を使用し、施錠されている金庫を簡単に開錠した。

柴崎は西條に、明朝に再度来るように伝えたが、牧野に西條を尾行させた。

大友は南浅草ビルの前に若手刑事を残し、西條と牧野を尾行した。

島津は西條が一次審査を合格したことを直感した。

西條は浅草6丁目の簡易宿泊業組合加盟店に入った。

牧野は簡易宿泊所の女主人に西條の身元を質問したが、女主人は西條が昨日から宿泊していることしか知らなかった。

水木が嗅いだ匂いはパパイヤの匂いに酷似していることが判明した。

大友は銭湯に行く直前の西條に職務質問をし、任意同行させようとした。

西條は無実を訴え、大声でベッドハウスの宿泊客を招集し、大友を追い払った。

西條は水木からパパイヤの匂いの報告を受けた。

翌朝、牧野は警察も西條の身元を知らないことを報告した。

深谷は西條の加入に反対し、バーナーを新しく調達しようとしたが、柴崎に断られた。

柴崎は次に大仕事を行った後、会社を倒産させ、別の場所で泥棒稼業を開始する計画を立てており、そのためにも西條の技能を必要としていた。

西條は大友をわざと挑発し、北陽火災浅草代理店に出社した。

柴崎は西條を仮採用に決定し、保険募集の初級資格試験に合格した時点で本採用に切り替えることにしていた。

西條は深谷の外回りの営業に同行したが、大友に尾行された。

澤村は西條が二次審査に合格したことを見抜いていた。

深谷は西條を連れて興和貿易を訪問していたが、社員の目を盗み、興和貿易のバッジを入手した。

深谷は西條と焼肉屋で食事後、北陽火災浅草代理店に戻ろうとしていたが、道ですれ違った飼い犬に怯えていた。

西條は柴崎達に隠れ、粘土で鍵の型をとった。

西條は大友に尾行されたが、浅草駅近辺で尾行をまいた。

西條は平山のもとを訪ね、北陽火災浅草代理店の合鍵を製作してもらった。

平山はアパートの住み込み管理人をしていたが、犬が植え込みに小便するのを防止するため、犬除けのスプレーを使用していた。

西條は深谷が犬に怯えていたこと、村上宅に犬がいたことを回想し、犯行に犬除けスプレーが使用されたと断定した。

深谷からしたパパイヤの匂いの正体は犬除けスプレーだった。

令子は柴崎達の現行犯逮捕を最後の切札にしていたが、山村から、柴崎を現行犯するのが浅草南署であること、潜入捜査が禁止されていることを強調された。

浅草南署が西條を泥棒の仲間と認識しているため、最悪の場合、西條が窃盗の共犯にされる可能性が生じた。

深夜、西條は合鍵を使って北陽火災浅草代理店に侵入し、柴崎の机の中を開けた。

机の中には社員バッジのケースが入っており、その中には興和貿易のバッジがあった。

西條は柴崎達の次の標的が興和貿易であると推定した。

翌朝、西條は北陽火災浅草代理店に出社した際、牧野が背広の上着に興和貿易のバッジをかけているのを発見した。

柴崎は牧野と一緒に外出するため、西條に深谷と一緒に留守番するように指示した。

西條は柴崎達に茶を差し入れたが、湯飲み茶碗に密かにハンスラセン溶液という特殊な溶液を塗っていた。

若手刑事が柴崎を尾行していた。

西條は北陽火災浅草代理店の窓を開け、張り込み中の島津と澤村に、対策を講じたことを合図した。

牧野は興和貿易のバッジで警備員(加藤茂雄さん)の警戒を潜り抜け、経理課の金庫の位置、非常口の位置と施錠具合、化粧室の窓の位置を確認した。

柴崎は亜東印刷に赴き、旧知の印刷工(井上三千男さん)と交渉していた。

柴崎は印刷工に、西條という新しい金庫破りが入ったことを教えた。

柴崎は偽造では一流の印刷工を仲間に加入させ、より万全の体制を取ろうとしていた。

夜、井川と水木は興和貿易に入り、調査を開始した。

ハンスラセン溶液は手に付着しても不可視だが、特殊な光を当てれば、手で触れた場所が可視化するようになっていた。

井川と水木は経理課の扉、非常口のノブ、化粧室の扉、窓の鍵に指紋が付着しているのを確認し、侵入口が窓であると特定した。

水木は西條に警戒を促したが、西條は柴崎が浅草南署をまいたら、それが強盗開始の合図であることを連絡した。

印刷工は南浅草ビルの玄関で、西條の姿を見た。

柴崎は今夜、興和貿易の強盗の実行を計画し、西條に金庫破りを、牧野に車の手配を指示した。

印刷工は柴崎に電話を入れ、西條が七曲署の刑事であることを密告してしまった。

印刷工はかつて西條に公文書偽造で逮捕されたことがあった。

柴崎は深谷に、犬除けスプレーを準備させた。

西條は自分の上着に犬除けスプレーを噴射したが、深谷に咎められたため、柴崎達の態度の変化を感じ取った。

西條は柴崎と深谷と北陽火災浅草代理店を出発後、ガムを購入すると称して煙草屋に向かい、煙草屋で待機していた水木と接触した。

西條は水木に一瞬だけ匂いを嗅がせ、煙草屋をすぐに立ち去った。

大友と若手刑事が西條と柴崎と深谷を尾行した。

令子は井川の連絡で、南浅草ビルから出てきた牧野を尾行した。

柴崎は西條と深谷を、自分の運転するモーターボートに搭乗させ、逃走した。

井川は大友と若手刑事を覆面車に乗せた。

西條は柴崎と深谷と一緒に、牧野の運転する乗用車に同乗していた。

牧野の乗用車は興和貿易の道と全く違う方向を走行していた。

令子は尾行を牧野に勘付かれたため、西條と澤村と交代した。

島津は柴崎達が強盗実行の場所を変更したため、西條の正体に気付いたのではないかと直感したが、藤堂から尾行の続行を命じられた。

柴崎達は興和貿易とは全く違う建物に到着した。

柴崎は牧野を車に待機させ、西條と深谷を連れ、裏口の窓から建物に侵入した。

島津と澤村、井川と水木と大友と若手刑事が建物を張り込んでいた。

柴崎は西條に金庫を開錠させていたが、深谷にナイフを構えさせた。

牧野は捜査員の車に包囲され、柴崎に警察のことを連絡した。

西條は柴崎と深谷を叩き伏せ、撤収して窓から脱走した。

大友と若手刑事は建物に突入し、照明を点けたが、金庫が開けられていた。

大友と若手刑事は柴崎と深谷を、住居侵入と窃盗の現行犯で逮捕した。

西條は不肖の弟子として、平山に血圧計を送り届けていた。

西條は七曲署の玄関で大友と鉢合わせした。

柴崎達は観念し11件の窃盗事件を自白するのも時間の問題となっていた。

深谷のアパートの裏から埋められたバーナーが発見され、血痕が検出されていた。

大友は柴崎達の取調べが終了次第、身柄と共にバーナーを引き渡すことを決定しており、西條に感謝した。

 

 

メモ

*「からくり」、「名人」に登場した平山源次が久しぶりに再登場。今回と同2作の「ドック金庫破り編3部作」の集大成、最終作とも言える回。

*ドックの潜入捜査編は数多く、正体が露見するのがかなり遅いかしない傾向にある。

*ゲストが豪華。富川氏、根岸氏、片岡氏のキャスティングが絶妙すぎてツボ。

*「プロフェッショナル」を彷彿とさせる内容だが、細部はかなり異なる。

*サブタイトルのBGMは「護送車強奪」、「検視官ドック」、「男と女の関係」で使用されたもの。

*ブルースが黒いスーツを着用。ドックとマミー以外がスーツであるため、捜査員のスーツ率がかなり高い。

*平山は「名人」のラストで七曲署に逮捕されたが、出所して、アパートの住み込み管理人をしていた。

*ドックは金庫破りの技術を日々練習していたようだが、「名人」の件から、潜入に備えてのことだろうか?

*ドックの「秘密兵器」とは折り畳み傘にイヤホンを取り付け、先端部を聴診器のように改造し、金庫の開錠音を聞くことが可能なようにしたもの。

*「蛇の道は蛇、ジャーの水は冷たい」byドック

*熟練の金庫破り技術、合鍵の型取り、ハンスラセン溶液の付着による指紋の可視化と、ドックの手際の良さと捜査手腕がフルに発揮された。

*ドックが牧野の指紋の痕跡残しに使用されたのは「ハンスラセン溶液」と聞こえるが、検索しても出ないので、架空の溶液?

*柴崎、深谷、牧野とも明るい表情と暗い表情のギャップが印象的。

*ラスト、「ドック除け」のために犬除けスプレーを購入し、噴射するドック。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

島津公一:金田賢一

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

平山源次:殿山泰司

大友刑事:山谷初男

柴崎武:富川澈夫、牧野京一:根岸一正、深谷史郎:片岡五郎

亜東印刷の印刷工:井上三千男、浅草南署捜査一係長:小寺大介、村上:西尾徳、沢柳迪子、浅草南署刑事:荒井大介、記平佳枝

山河連滉、岸本功、大石啓子、興和貿易警備員:加藤茂雄

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:古内一成、小川英

監督:高瀬昌弘