第665話「殉職刑事たちよ やすらかに」(SP) 後編 (通算第359回目)

 

 

ストーリー

山村は柴田たきと対面した。

たきは一係室への狙撃事件をニュースで知ったが、犯人に心当たりが無く、柴田の後の殉職した刑事についてもあまり記憶していなかった。

たきは去り際、山村から変化したと投げかけられた。

井川は広島に到着し、スナック「カープ」に入店し、春日部の姉の春日部正子(有吉ひとみさん)と面会した。

正子は引っ越していたが、「カープ」のアルバイトを続行していた。

井川は正子に、藤堂の部屋の扉に貼られていた春日部の写真を見せたが、正子は春日部のサインが黒く塗りつぶされていることを伝えた。

春日部は面白がり、週刊誌の写真を引き伸ばし、サインを入れていた。

正子は店内に春日部の写真を貼ったままにしていたため、井川は写真をカメラで再撮影したのではないかと推理した。

「カープ」ママ(森田遙さん)も、春日部の写真の再撮影者を知らなかった。

「カープ」従業員の晴美は、ママと正子がオーナーの自宅の火事で駆けつけた際に単独で留守番していたが、男が1人来店し、「カープ」のことを詳細に聞いていたことを証言した。

井川は晴美にモンタージュ作成を協力するように依頼した。

藤堂は西條と澤村が自分の警護をしていることを看破していた。

藤堂は犯人が、自分の警護が固いと見れば次に狙うのは山村ではないかと考察し、西條と澤村を山村の警護に回した。

山村は犯人を誘うように、単独で外を歩いていた。

山村は高架下の道にて、犯人が電車の通行音に合わせて狙撃した際、被弾してしまったが、犯人の右肩に発砲した。

山村は当直中の島津に通報し、犯人が富士見町から3丁目方面に逃げたことを連絡し、緊急配備を敷いた。

山村は防弾チョッキを着用していたため、軽傷で済んでいた。

犯人の血痕は途中で切れており、ライフルの薬莢が発見された。

山村は、令子に薬莢を鑑識に提出するように、澤村と水木に付近の捜索を命じた。

一係室を狙撃した銃弾と、山村を狙撃した銃弾が同じライフルの銃弾であることが確定し、同一犯であることが断定された。

現場に残されていたのは薬莢と弾丸1発のみで、犯人は逃走中の姿さえ目撃されていなかった。

西條は犯人を、遺族の関係者が雇ったプロフェッショナルの殺し屋ではないかと推測した。

井川は一係室に帰還し、「カープ」にて春日部の写真を再撮影した男のモンタージュを提出した。

たきは今朝から警察学校に来ていなかった。

警察学校寮長(相馬剛三さん)は最近、たきが1日中口を聞かず、仕事に身が入らないことがあることを語った。

犯人の西森敦史(峰竜太さん)は新聞で、山村の狙撃事件の犯人が不明であることを知った。

島津は三好恵子を尾行していたが、柏木(山口嘉三さん)という男の接近に感付いた。

柏木は島津に襲い掛かったが、すぐに取り押さえられた。

恵子は1ヶ月前から、何者かに複数回尾行されていることに気付き、柏木に心配されていた。

柏木は恵子と同じ、区立希望ヶ丘中学校の教師だった。

柏木は恵子を尾行したのが西森であると証言しており、島津が西森の仲間ではないかと誤解していた。

恵子は山村と久々に再会し、誰も恨んでいないことを伝えた。

恵子は西森にとって、殉職者を忘れないことと人を恨むことが同一であると思っており、島や殉職者を忘れない強さを羨ましがっていた。

恵子は1年前(1984年頃)から、柏木からプロポーズされており、記憶から島のことが薄れていっている自分を憎んでいた。

山村は恵子に、島のことを忘れるように励ました。

村田晴子は西森が村田宅にかけた無言電話に出たが、西森は自分が石塚であると名乗った。

西森は晴子の裏切りを許さないと言って、電話を切った。

令子と澤村は村田宅を訪れ、晴子と対面したが、晴子の動揺を感じ取っていた。

西森はライフルを組み立てていた。

晴子は令子と澤村に、西森からの一連の電話のことを話した。

晴子は裏切りについて、他人と結婚し、幸福に暮らしていることではないかと自覚していた。

村田は晴子にとって、石塚がどんなに大切な人かをよく理解していた。

晴子は石塚の死後、石塚に恥ずかしくない生き方をしよう、石塚が喜んでくれるような幸せを掴もうと考えていた。

澤村は晴子に誤解したことを謝罪し、石塚と晴子を称賛した。

晴子はあまり周囲のことを気にしないこともあり、電話の相手が西森かどうかを判別できなかった。

西森が隣の建物から村田宅を狙撃してきた。

澤村は西森を発見し、追跡した。

令子は狙撃を山村に報告し、晴子と子供を別の場所に移転して保護することにした。

澤村は西森の乗用車の屋根に飛び移り、マグナムでフロントガラスを破壊することに成功したが、車から叩き下ろされた。

西條と島津は澤村と合流し、西森の乗用車を追跡したが、西森の運転でオートバイが横転したことなどが重なり、見失ってしまった。

乗用車は盗難車だった。

西森の右肩の傷は意外に軽傷だったという見方ができたが、山村は軽傷ではないと考えており、たきが気になっていた。

三上の母親は2年前(1983年頃)に死去していることが判明し、天涯孤独の殉職者が早見と三上と滝の3名となった。

藤堂のもとに、浜野から出頭命令がきた。

寮長はたきと何としてでも連絡を取ろうとしている井川と澤村を、たきの部屋に案内した。

たきの部屋は施錠されておらず、誰でも出入り自由で、警察学校生から母さんと呼ばれていた。

たきの部屋の仏壇には柴田の遺影が飾られていた。

澤村はたきの部屋の机から、刑事の殉職した事件の記事の切り抜きが挟まれているスクラップブックを発見した。

浜野警視監は藤堂に、本庁に届いた、「慰霊祭をぶっ潰す」という内容の脅迫状を手渡した。

慰霊祭は明日、例年のように武道館の裏の慰霊廟で開催されることになり、中止の声もあったが、強行と決定した。

浜野は脅迫状の送り主が犯人と同一人物であると断定しており、脅迫状が警察に対する挑戦で、中止が警察の敗北を意味するからと説明した。

浜野は藤堂に、不退転の覚悟を持ち、明日の式典時刻までに犯人を逮捕するように命令し、全責任を委ねた。

井川はたきの部屋のスクラップブックを報告し、たきが帰らないため、もうしばらく待機することにした。

新聞は全て本物だった。

水木は犯人が殉職者の近親者であると断定し、焦燥していた。

野崎はたきが行方不明になったという知らせを聞き、一係室に入った。

野崎は犯人のモンタージュを見て、眼鏡を外した姿が西森と似ていると発言した。

西森は前科者リストの中に該当していなかった。

西森は元警察官で、3年前(1982年頃)の野崎の教え子だったが、あまりに正義感が強すぎて、度々チンピラを殴って負傷させたことで懲戒免職となっていた。

たきは西森を可愛がっていた。

西森の住所は若葉荘だった。

井川と澤村は若葉荘住人から、西森が右肩を負傷していたこと、治療後に出掛けて戻ってこないこと、母親のような人が2度訪問したという情報を入手した。

西條と水木は井川と合流した。

澤村は駅の方面を捜索していた。

水木はたきと西森の共犯説を挙げたが、西條と一緒に西森の捜索に出掛けた。

井川と西條は西森を発見できずにいた。

慰霊廟にて、殉職者の慰霊祭が開催された。

西森は殉職者を神様のように心から尊敬していた青年であり、正義を実行したのに懲戒免職にされたことを怒っていた。

西森は当時、所轄署では同情論が強かったが、浜野が本庁の会議で強硬に懲戒免職を主張し、それが通っていた。

西森は浜野を罵っていた。

藤堂は浜野を呼び出そうとしたが、浜野は既に外出していた。

藤堂は慰霊廟付近にたきがいると推測した。

山村、西條と令子と島津が一係室から出動した。

西森は七曲署の警察官に成り済まし、慰霊廟に爆弾を仕掛けた犯人を逮捕したので、すぐに来てほしいという偽の伝言を話し、慰霊廟の裏手に浜野を誘い出した。

西森は浜野が自分を免職にしながら顔すら覚えていないことに憤慨し、浜野を射殺しようとしていた。

山村は慰霊廟付近でたきを発見した。

西森は浜野を警察官失格の屑と罵り、殉職者の怒りがライフルの引き金を引くと高らかに言ったが、そこに藤堂が駆けつけ、立ち塞がった。

西森が本当に射殺したかったのは藤堂だった。

たきは山村に、西森を射殺せず、殺人をさせないように懇願した。

たきは柴田が殉職してから、警察学校生を子供同然に思って生きており、誰も死なせたくないと思っていた。

山村はたきを激励した。

西森は藤堂を腰抜けと罵り、一発で射殺しようとしていた。

藤堂は自分も殉職刑事もその遺族も全員、怖いと思っていることを伝えた。

藤堂は殉職者がもっと神聖で、遺族がその名誉を生涯大事にしなければならないと思い込む西森を叱咤し、拳銃を取り出した。

藤堂は西森が撃てば自分も撃つと告げ、人間の死を教えようとしていた。

藤堂の発砲は西森の頬をかすめ、西森の発砲は藤堂に命中しなかった。

藤堂は西森に、誰も殉職したくて死亡したのではなく、「死にたくない、生きたい」と心に叫びながら死亡していったからこそ、尊く偉大であることを言い聞かせた。

藤堂は観念した西森からライフルを取り上げ、殴った。

捜査員が藤堂のもとに駆けつけ、澤村と水木が西森を殺人未遂容疑で逮捕した。

一係室に熊本、広島、大阪の名物が届いていた。

たきが一係室に来訪し、西森を無傷で逮捕したことに感謝した。

たきは殉職者の事件の記事の切り抜きのスクラップブックを差し渡した。