第662話「制服よさらば」(通算第357回目)

放映日:1985/9/6

 

 

ストーリー

山村は山口孝夫の警視正就任祝賀会会場を訪れ、署名した。

山村は現在、弁護士事務所を経営している古川夫人(田村奈巳さん)や、出席者の知人(相原巨典さん)と再会した。

古川夫人の夫の古川は刑事だったが、高子が死亡した1年後(1977年)に殉職していた。

古川夫人は古川から、刑事との約束があてにならないことを教え込まれていた。

山村の知人は山村に、犯人を逮捕するより、階級を上げるように勧めた。

ホクヨースーパーにて、銀行員の松田が現金の入ったアタッシェケースを抱え、帝都警備保障の警備員の運転する現金輸送車に乗った。

現金輸送車は荷物搬入専用駐車場から出発していたが、前方から警察官が現れた。

警察官は警備員と松田に、スーパーマーケットと輸送車に爆弾が仕掛られているという偽情報を伝えた。

降車した警備員は鉄パイプで警察官に、松田は警察官の共犯に後頭部を殴られ、現金を強奪されてしまった。

古川の息子の古川浩之は小学校6年生で、隆より1学年上だった。

古川夫人は今週の土曜日、山村に隆と同伴で自宅に遊びに来ないかと誘った。

山村は事件の連絡を受け、現場に急行した。

被害金額は銀行へ運搬する途中の売上金で、約3000万円だった。

警備員と松田は近所の中央病院に搬送されたが、警備員は脳内出血で重傷であり、令子と島津が病院に向かっていた。

ホクヨースーパーの警備員は何も目撃していなかった。

山村は澤村と水木に目撃者の捜索を、井川と西條にホクヨースーパー関係者への事情聴取を担当させ、帝都警備保障を調査することにした。

松田は、犯人が警察官の制服を着用していたことを証言した。

犯人の足取りは依然として不明であった。

銀行から売上金を回収に来るのは日常のことであり?の秘密だったが、警備は厳重だった。

現金輸送車のドアは乗り込んでから、中からしか開けられない構造となっており、開けさせるには警官の制服が必要だった。

令子は犯人のモンタージュ写真を提出した。

犯行に使用した制服が貸衣装か、本物の制服かどうかが問題点となった。

藤堂は水木に中途退職者のリストの調査を命じた。

水木は3年前(1982年頃)までの、警視庁関係者の中途退職者のリストを出力した。

山村は城北署元巡査長の坂本正孝(50歳)の名前が目に入り、思い出していた。

山村は水木に、本庁へ行ってモンタージュ写真と似た人間がいないかチェックするように命じた。

一係室に坂本(神山繁さん)から電話が入った。

山村は坂本と城北署の元署長の葬式以来、10年(1975年頃)ぶりに再会した。

坂本は山村の、城北署勤務時代の同僚だった。

坂本は夫人の実家に帰って商売を継ぎ、レストランチェーン「ペッカーズチェーン」甲府本店の社長に返り咲いていた。

山村と坂本は名刺交換を行った。

坂本の息子は坂本剛といい、父親の跡継ぎのため、東京の城南大学で法律の勉強をしていた。

坂本は近所に行って顔を見に来ただけであることを話し、山村のもとを立ち去った。

坂本は中央病院を訪れ、受付嬢(潘恵子さん)に山村の名刺を見せて信用させ、松田の病室が3階の308号室であることを聞き出した。

山村は本庁の名簿の中に該当者がいなかったため、リストの対象者の範囲を拡大させ、リストを再作成することにした。

最近、横浜にて、ホクヨースーパー売上金強奪事件と酷似した、競馬の売上金強盗事件が発生していた。

事件は退職した警察官が返還せずに保存していた制服を悪用したというものだった。

島津はモンタージュ写真の犯人と制服悪用者が同一人物とは限らないため、横浜の事件と同じケースではないかと考察していた。

山村は顔を見られていない警察官の共犯が主犯と目される行動をとっており、制服を用意したのが主犯ではないかと推理していた。

主犯は人相、年齢共に手掛かりが不明だった。

山村は再度目撃者に接触し、他の捜査員に犯人の線を調査させた。

山村は中央病院の受付嬢に、松田の面会を頼んだが、警察手帳を見せた際に不審がられた。

山村は松田の病室に入り、松田と、病室を警護していた警察官と対面した。

松田は山村と偽った坂本から事情聴取を受けていた。

警察官は2時間前に、外勤の吉田巡査と警備を交代していた。

山村は一係室にて、坂本のことを思い出していた。

坂本が山村に10年ぶりに会いに来たのは、山村の名刺を入手するためだったという疑惑が生じたが、なぜ犯人のことを知りたがっていたのかを突き止めなくてはならなくなった。

山村と令子は甲府に出向き、ペッカーズチェーン甲府本店を訪れたが、坂本は不在だった。

本店では借金取り(松永忍さん)が店員を脅迫し、坂本の居場所を聞き出そうとしていた。

山村は坂本の元妻である藤川(本山可久子さん)のもとを訪ねた。

藤川は坂本と2年前(1983年頃)に正式に離婚し、実家に戻って暮らしていた。

坂本は甲府市内のロイヤル甲府というマンションにて住んでいた。

藤川は坂本が、警察官でいた方が幸せだったのではないかと考えていた。

坂本は警察官時代の制服を、自分の青春という理由で大事に収蔵していた。

山村と令子は捜索令状を取り、坂本の部屋を捜索した。

坂本は警察官として優秀な人物だったが、ある事件で一緒に組んでいた仲間が犯人逮捕の際に拳銃に撃たれて死亡していた。

坂本はそのときに負傷し、藤川に説得されて警察官を辞めていた。

坂本宅から、警察官の制服が発見されなかった。

坂本は藤川と離婚し、会社の経営も危ないため、容疑者として挙がったが、山村は坂本が犯人ではないと断定していた。

島津は坂本が犯人に心当たりがあるのではないかと推理していた。

坂本に近く、制服を所持していることを知っている人物として、剛が容疑者に挙がった。

山村は甲府銀座に勤務する、剛の友人から話を聞いていた。

剛は初めから法律の勉強などどうでもよく、城南大学を中退していた。

剛はデザイナー志望だったが、坂本に反対されていた。

剛は夢が頻繁に変わり、デザイナーの専門学校で勉強しているかどうか不明だった。

2,3日前、坂本が剛の友人のもとを訪れ、剛の居場所を聞いていた。

水木の調査で、坂本が新宿ニューシティホテルの6階の部屋に宿泊していることが判明した。

山村は水木と一緒にホテルの前で張り込むことにした。

坂本がホテルの玄関から、手帳を携えて出てきた。

水木は坂本を、公職詐称の理由を追及して逮捕しようとしていたが、山村は坂本が人に強要されて自白するような人物でないことを知っていた。

山村は水木を覆面車内に待機させ、自分のふりをして捜査活動をする坂本を尾行した。

水木は、一人息子が犯人かもしれないという坂本の立場に同情していた。

山村はアパートから出てくる坂本に話しかけ、自分達に剛の捜索を任せるように頼んだ。

坂本は山村が甲府に行き、藤川と会ったことを知った。

坂本は刑事を辞める際、殉職した相棒の墓に、「お前の鬱憤は俺が晴らす」と誓っていた。

坂本は毎日、靴をすり減らしながら歩き回り、家族と一緒に夕食を食べることもできず、昇進試験で合格し、出世していく同僚を横目に見ながら、安月給でこき使われ、挙句の果てに殉職していった相棒が入手できなかったものをこの手で掴み取ると誓っていた。

しかし、坂本は一時そう思ったものの、無我夢中で働き続けて入手できたものは、明日にも倒産寸前の会社だけだったことを打ち明けた。

坂本は藤川と剛のために、刑事として生きる夢まで捨てたのに、離婚を経験するなど、うまくいかなかったことを嘆いていた。

山村は坂本を官命詐称容疑で逮捕した。

坂本は剛に制服を盗まれたことを自白した。

剛は1週間前、突然帰郷し、300万円を貸すように頼んでいた。

坂本は剛と親子喧嘩になったが、翌日起床したときには剛が不在で、制服も消失しており、その翌日に事件が発生していた。

水木は犯人を剛と断定したが、状況証拠のみで、証拠が無かった。

藤堂は山村に坂本の偽刑事事件の捜査を続行させ、水木を山村の応援にまわし、他の捜査員に強盗事件を捜査するように命令した。

山村は金曜日の午前0時に帰宅した。

山村宅に古川夫人から、土曜日の件で連絡してほしいという電話が入っていた。

家政婦(町田博子さん)は、たまには隆(小椋基広さん)と遊ぶように勧めた。

山村は剛のアパートに直行し、坂本と水木と合流した。

剛の部屋は2階の2号室だった。

水木は溜まり場で、剛が「パフォーマンス」というグループと行動し、リーダー格の男の部屋に寝泊まりしていた。

坂本は捜査の補佐を懇願し、山村から許可を貰った。

剛は約1時間前、4,5人連れで河原に向かっていた。

山村と坂本と水木は河原に直行し、警官の制服を着た剛を発見した。

剛はスリップ姿の女性に「おいでよ。硬い制服なんて脱いじゃってさ」と誘惑されたが、脱ぐ寸前、坂本に叩きのめされた。

「パフォーマンス」メンバーが姿を現し、水木に映画の撮影をしていたことを伝えた。

山村は坂本を制止したが、坂本は自分の青春である制服が愚弄されたことに号泣した。

剛が警察官の制服を持ち出したのは、「パフォーマンス」メンバーで作る自主製作映画のためだった。

映画の内容は「管理体制に雁字搦めとなった若い警察官がある日、幻想の少女と出会い、愛を求める」という内容だった。

剛は坂本に、映画の資金まで出させようとしただけであり、強盗事件とは無関係だった。

西條は、半年前にホクヨースーパーを辞めた従業員で、その後に東亜撮影所の食堂に勤務している男がいることを報告し、調査した。

藤堂は令子と水木を応援に行かせた。

藤堂は山村と、坂本を送検するかどうかを話し合った。

山村は藤堂に、坂本をどうするか自分に任せるように進言した。

山村は取調室の坂本に、剛を釈放したことを告げ、書類に捺印するように求めた。

山村は坂本を書類送検とした。

坂本は取調室を出ても、帰る場所が無く、数ヶ月間で一番よく眠れたのが昨夜で、留置場のベッドでさえ嬉しかったと話した。

山村は坂本に、どのような職場にも夢や職場に似合った制服があること、それを探して新しい制服を着るように説得した。

坂本は自分で捨てた制服に固執していたことに気付いた。

西條と澤村、井川と令子と島津は強盗犯2名を逮捕した。

坂本は警察官の制服を返還した。

山村は古川宅を訪れた。

隆は山村より先に食事を済ませ、浩之と一緒にテレビゲームをしており、とても仲良くなっていた。

山村は古川夫人と一緒に豪勢な食事をしようとしていたが、藤堂から事件の連絡を受け、現場に急行した。

 

 

メモ

*祝賀会会場を訪れたのはいいが、他の出席者が警視庁検視官、城南署署長、警視庁総務部長、警視庁参事官、国家公安委員、桜署署長、神奈川県警本部長だったため、身分を書けない山さん。

*久々に高子のことについて触れられており、「もうすぐ10年」という台詞には感慨深いものがある。

*ブルースの衣装がヤクザっぽく見える。

*坂本は山さんを「山」と呼ぶ人物。

*坂本が山さんの名を騙って捜査活動を行うシーンは「すりへった靴」を彷彿とさせる。(脚本が同じ金子氏。)

*神山氏と本山氏は「山さんからの伝言」でも共演している組み合わせ。

*「冒険のテーマ」など、懐かしの選曲が多い。

*スリップ姿の女性のシーンは、「太陽」では珍しいお色気シーン。自主製作映画の内容もどこかカオス。

*「夏の別れ」で言及され、「山村刑事左遷命令」に登場した家政婦が再登場。「さらば! 山村刑事」にも出演している形跡があるが、登場シーンは無い。

*ラストシーンは「太陽のテーマ’79」が流れる中、事件を捜査する山村の姿が描かれながら終了となった。

*OPのハイライトには、ドックとマミーとデュークとブルースとマイコンが喫茶店で会話していると思わしきシーン、山さんとマミーの電車内のシーンが挿入されているが、本編ではカットされている。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

島津公一:金田賢一

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

坂本正孝:神山繁

古川夫人:田村奈巳

藤川:本山可久子、山村家の家政婦:町田博子、山村の知人:相原巨典、石田登星、小川隆市

松井範雄、井上倫宏、病院の受付嬢:潘恵子、佐々木敏、牧野芳久、速水香穂、羽吹正吾

借金取り:松永忍、山本由美子、金海明美、長塚美登、石原聡、桂俊明、主犯:戸塚孝、大島光幸、山村隆:小椋基広

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:金子裕、小川英

監督:高瀬昌弘