第664話「マイコンがトシさんを撃った!」(通算第354回目)

放映日:1985/9/20

 

 

ストーリー

竹内実(秋間登さん)はビルの屋上から、ライフルの照準を走行中のポルシェに定め、タイヤに命中させた。

ポルシェは水木の覆面車と衝突寸前に停車した。

竹内はポルシェの運転手の中田雅之(33歳)(南城竜也さん)を狙撃しようとしていたが、水木が現れたため、狙撃を中止し、薬莢を回収して去った。

水木はタイヤを繰り抜き、ライフルの弾丸を取り出した。

現場に七曲署捜査一係が駆けつけた。

澤村は中田が、人に生命を狙われる理由が全く分からないと言い張っていたため、殺人未遂なのかガンマニアの遊びなのか判断しかねていた。

中田は3年半アメリカに旅行しており、帰国したのが10日前だった。

井川は中田の顔に見覚えがあった。

中田は土地成金の御曹司で、無職だが、派手な外車を乗り回していた。

井川は竹内宅に赴き、竹内と会おうとしたが、隣人の豊田によると、竹内は3日前から帰宅していなかった。

中田は七曲署で手続きをしていた。

井川は殺人未遂事件が4年前(1981年頃)の事件と関連しているため、未然に防げたかもしれないと責任を感じていた。

井川は藤堂に、竹内の狙撃を阻止するため、中田を警護させるように志願した。

中田は釈放されることとなった。

藤堂は井川と水木を中田の警護にあたらせた。

井川は水木に、どのようなことが起きても拳銃を使用しないように念押しした。

中田はガソリンスタンドで、外車のタイヤを修理していた。

水木は井川から、4年前の事件の詳細を聞いた。

4年前、井川が港南署に所属していた頃、身重の竹内陽子(28歳)という女性の変死体が発見された。

陽子は車に轢かれ、脊髄骨折、内臓破裂していた。

陽子を轢いた車の持ち主が中田だったが、中田は事件の前日に盗難届を提出していた。

井川は中田を重要容疑者として捜査していた。

中田の盗難届は偽装で、意図的な殺人ではないかと推測されたが、中田と陽子の間に関連性が無かった。

状況証拠は全て中田を指していたが、井川はその謎を埋められなかった。

中田は証拠不十分で釈放されていた。

中田はガソリンスタンドから出発し、道路を走行中に狙撃されたが、間一髪回避した。

井川と水木と一緒に竹内に駆け寄り、ヘッドライトを消し、頭を下げるように命じた。

井川は水木と中田を、新宿区松木町2-5-4の倉庫に逃げ込ませることを提案したが、再度水木に拳銃を使用しないように警告した。

水木はライフル銃の乱射を恐れていたが、井川は竹内が標的以外を絶対に撃たない男であることを教え、中田の盾になるように命じた。

水木は中田を連れて倉庫に逃げ込み、安全と思われた地帯に隠れた。

中田は井川が、かつて港南署で容疑をかけられた刑事であることに気付いた。

水木は井川から、竹内が倉庫にいることを伝えられ、別の場所に隠れた。

水木は何者かが鉄パイプを誤って踏んでしまい、金具を投げたことから、竹内の接近を予感した。

中田は何者かが金具を投げたことから、恐怖で混乱し、救助を求めて疾走した。

中田は竹内の発砲を回避し、階段を登った。

井川も竹内を追跡するために階段を登っていた。

水木は混乱する中田をなんとか抑え留め、付近を走っていた男に拳銃を発砲したが、その男は井川だった。

井川は倒れてしまい、矢追警察病院に搬送された。

山村と令子と水木は矢追警察病院に駆けつけ、井川の手術を見守った。

令子は現場検証で、鑑識にライフルの銃弾を2発提出していた。

西條は中田を警護していた。

井川の手術は成功したが、出血多量の影響で、危険がまだあり、確定的なことが様子を見ないとまだ言えなかった。

井川は非常に心臓が丈夫なおかげで、手術に耐えられていた。

水木は激しく動揺し、捜査に赴こうとしなかった。

山村は水木をシャワー室に連れて行き、シャワーを浴びせ、ミスを後悔しているだけでは問題が解決しないと叱咤した。

水木は自分に付着した井川の血液が滴るのを見て、激しく混乱した。

山村は号泣する水木を温かく抱きしめた。

山村は現場の倉庫を訪れ、捜査中の澤村に、井川が面会謝絶であることを告げた。

物証は何も出なかった。

水木の誤射が新聞の記事の一面にて報道されていた。

藤堂は大和田署長(草薙幸二郎さん)に招集させられていた。

大和田は水木ひとりに、生命を守るという重大な仕事を任せた井川の現場指揮に大きなミスがあると判断しており、井川が事件に先入観を持っていると認識していた。

藤堂は井川について、4年間続けてきた捜査による信念であると反論した。

大和田は水木を謹慎処分とし、以後事務職に転属させようとした。

藤堂は大和田の庇い立てが水木を駄目にするだけであるとして、水木に捜査を続行させようとしており、事件を解決するのが水木であると思っていた。

中田は自宅のサンライズマンション714号室にて水木の誤射の記事を読み、知人に電話していた。

中田は騒動が大きくなったことに困り、一旦鹿児島に飛び、外国に高飛びするため、知人に切符を買うように命じた。

令子は714号室の前で張り込み、中田の警護を担当していた。

水木は藤堂に辞表を提出していた。

藤堂は辞表の受理を保留し、大和田から許可を取り、水木を捜査に参加させた。

藤堂は事件の発端となった4年前の轢き逃げ事件の詳細をコピーし、山村と西條と澤村と水木に目を通させた。

山村は追跡調査をすることにした。

藤堂は西條と澤村に、水木と組んで24時間中田の警護をするように命じたが、澤村は水木と組むのを拒否した。

澤村は井川から刑事の基本を教わり、刑事の仕事を叩きこまれており、水木が本当に井川を信じていたらミスが起きなかったと思っていた。

水木は井川の信頼より、恐怖の方が強かったことを認めた。

澤村は水木が好きであり、水木から教わったこともたくさんあることを話したが、水木とは刑事として過ごしていけないと非難した。

水木は刑事失格と思い込み、居たたまれなくなって一係室を飛び出した。

西條は水木を非難した澤村を殴ったが、山村に刑事の仕事に人間の生死が付き物で、いちいち取り乱していて刑事が務まるかと叱咤され、澤村に謝罪した。

西條は水木を頭ごなしに扱き下ろして叩き出せるほど立派な刑事かと思っており、澤村に、水木と一緒に捜査しないかと呼びかけた。

澤村は西條に謝罪した。

山村は藤堂から井川の手帳を受け取り、屋上にて佇む水木のもとに行った。

山村は水木に、井川が4年間轢き逃げ事件を捜査していたことを言い聞かせ、井川がどんなに悔しい思いをしたか分かるかと尋ねた。

山村は水木の逃げ出そうという胸中を見抜いており、餞別として井川の手帳を渡した。

山村は手帳に、1つの事件を追いかけた刑事の4年間があるが、未完結であるため、終わらせることができるのは井川と同じ苦痛を背負う水木だけであると諭した。

水木は再捜査をする決意を固め、周辺捜査を開始した。

1981年6月15日、緑台3丁目の空き地で、陽子の変死体が発見され、検視解剖の結果、死因が脊髄骨折、内臓破裂の外傷性ショックと出血、轢死と判明した。

陽子は妊娠8ヶ月だった。

井川は富士見町で盗難車のベンツを発見しており、持ち主は2丁目在住の中田だった。

水木は当時、事件を目撃した男に、轢き逃げ事件が殺人と変わりないことを訴えた。

目撃者の証言する男は中田に酷似していたが、写真を見せるも、確認が取れなかった。

井川は中田のアリバイや供述が二転三転していることに不審さを感じ、中田をマークすることにしていた。

竹内が経営していた竹内書店は既に貸店舗となっていた。

竹内には猟銃歴が12年あり、ライフルを所持していた。

水木は竹内の猟仲間と対面していた。

竹内は無口な男だったが、銃については恐ろしく厳しい性格で、弾の入っていない銃でも銃口を向けると、心の弛みが事故のもとになると激怒していた。

7月15日、井川は中田を尾行する竹内を発見しており、中田を凝視する竹内の目がまるでハンターの目であると考察していた。

陽子の母親が、事件直後に行方不明となっていた。

山村は水木に、陽子の母親が遠縁の八百屋を手伝っていることと、八百屋の場所を教え、去って行った。

水木は陽子の母親(正司歌江さん)とあったが、陽子の母親は何も話そうとしなかった。

陽子の初七日の晩、陽子の母親のもとに電話が入っていた。

水木はその電話が原因で、竹内が中田を狙撃するようになったと推測し、井川に話したことを再度話すように頼み込んだ。

陽子の母親は電話に応対したが、電話の主は轢き逃げ犯人が中田であるとだけ言って切っていた。

電話の主は若い男で、風邪でもひいたような変な声だった。

陽子の母親は井川に、中田のことを入念に調査するように何度も頼んでいたが、井川は証拠が無いと一点張りだった。

陽子の母親は中田が事件の半年後、外国に逃亡したため、犯人であると断定していた。

陽子の母親は警察が何もしないから悪いと思っており、竹内が何をしようと制止する気が無かった。

中田の恋人の香(美津井祐子さん)は読売旅行で、全日空鹿児島行きの今夜の搭乗券2枚を購入したが、竹内に尾行された。

水木は、中田の車が盗難の被害に遭った駐車場のマンションの管理人(河合絃司さん)から、娘の短期大学卒業時に撮影された写真を渡された。

写真には、当時に成城学園教室という個別指導進学塾に通っていた、西沢浩(当時12歳)という少年が写っていた。

西沢は車マニアで、駐車場に駐車されている珍しい車を覗き込んでいた。

管理人は写真を見て、西沢が事件以来道を通らなくなったことを思い出したが、少年の名を知らなかった。

管理人は西沢が声変わりで、風邪でもひいたような声だったことを記憶していた。

水木は成城学園教室に赴き、西沢の身元を突き止めた。

西沢は中学1年生のときに半年通い、突然辞めてしまった生徒だが、成績優秀だった。

西沢は昭和44年(1969年)生まれ、父親の西沢栄治は自動車修理工場を経営していた。

水木は西沢と会い、4年前の事件のことを聞き出そうとしたが、西沢は車を盗んでいないと叫んだ。

西沢は水木の説得で、証人になることを約束し、中田を逮捕することが可能になった。

藤堂は西條を水木の応援に行かせることを連絡しようとしたが、突然、水木に連絡を切られてしまった。

中田は香に、サンライズマンションの裏側の駐車場にて待機し、車をすぐに出発できるように指示した。

竹内が香の車に入り、ライフルの銃口を香に向けた。

中田はガードを担当している澤村に、七曲署から電話が入っていると偽って部屋に入らせ、扉を塞いだが、水木から追跡された。

中田は乗車しようとしたが、車内に潜んでいた竹内に射殺されそうになった。

水木は澤村に銃を使用しないように頼み、竹内に証人が見つかったため、中田が逮捕できることを伝えた。

中田が犯人であると密告してきたのは、中田の車を盗んだ西沢だった。

中田は盗難届を提出した翌日、車を返しに来た少年を見つけ、警察に突き出そうとしたが、運転中に陽子を轢いていた。

中田はそのまま逃走し、西沢を警察に突き出す代わりに口止めをさせていた。

竹内は陽子と子供の命より中田の命の方が重要だと言っている法律を信じられなかったが、水木に説得された。

水木は井川を誤射したのが自分であり、井川のやり残したことをやっただけで、手伝ったのが少数に過ぎないことを打ち明けた。

水木は井川の辛抱強い捜査により、法律を守る、人に殺人をさせないという回答を得ており、井川が捜査をし続けてきたのは竹内に殺人をさせないためであることに気付いた。

竹内は観念し、水木に逮捕され、中田と香も警察官に連行された。

西條は水木の功績を称賛した。

水木は矢追警察病院に直行し、井川の病室に入った。

水木は井川の警察手帳をベッドに置き、全て終わったと呟いた後、感謝して去って行った。

水木はミスが、本来なら懲戒免職ものであることを自覚していた。

藤堂は水木の辞表を破り捨てた。

 

 

メモ

*「夏の光」の同時撮影作品で、ナイター調整のための雨傘作品。

*放送順序はデューク登場編だが、時系列的にはマイコン登場編に属するという複雑な立ち位置の作品。デュークはOPにクレジットされているが、登場しない。

*ドックの「1億の中のたった7人の仲間じゃないか」という発言から、今回の時系列がラガー殉職とデューク登場の間にあることが分かる。

*刑事が同僚を誤射してしまうという、「太陽」史上最大のミスと、そこから立ち直るマイコンをテーマにした作品。

*トシさんはマイコンから拳銃を取り上げるべきため、大和田の指摘にも一理ある部分はある。

*マイコン、刑事生活最大の危機。

*山さんは落胆するマイコンにシャワーを浴びせる。このシーンは「走れ! 猟犬」でボスがジーパンに冷水を浴びせたのを彷彿とさせる。

*久々に先輩刑事が後輩刑事を殴るシーンもあり、初期を思わせるシーンが多い。

*マイコンを拒絶するブルースを殴りつつも、すぐに謝罪し、ブルースにマイコンと一緒に捜査しないかと呼びかけるドックの人柄が良い。

*事件から逃げ出そうとするマイコンを叱咤するも、トシさんの手帳を手渡し、陰で応援する山さんも印象に残る。

*ラスト、刑事を辞めてコンピューター専門店に勤務しないかと勧めるドックとマミー。

*マイコン登場編では、4週分が放送されていない。

*今回は脚本の富岡氏の「太陽」唯一の執筆作。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

竹内陽子の母親:正司歌江

大和田署長:草薙幸二郎、中田雅之:南城竜也、マンション管理人:河合絃司、竹内実:秋間登

滝川昌良、小野泰次郎、瀬下和久、西川敬三郎、香:美津井祐子、円城寺衛

麻ミナ、野村信次、三宅悦子、山本あやせ、若山雅弘、大島あみ

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、富岡恵美子

監督:鈴木一平