第656話「いじめ」(通算第350回目)
放映日:1985/7/19
ストーリー
通行人の女性(水木薫さん)は、オートバイの男に拳銃を突きつけられた後、鞄をひったくられた。
現場に七曲署捜査一係が駆けつけた。
被害者の女性は犯人の顔を目撃できなかったが、ヘルメットが赤色であること、痩せ型でまだ子供のようだったと証言した。
被害金額は約3万2000円だった。
新宿区矢追町のあかね荘在住の工藤健児(27歳)は帰宅中、強盗犯に拳銃を突きつけられて逃走したが、強盗犯に銃撃されてしまった。
近所の住人の女性が逃走する強盗犯を目撃していた。
工藤は一命を取り留めたが、所持金の3万9500円を強奪させられていた。
水木は強盗事件に怒りを隠しきれなかった。
目撃者の女性は強盗犯が、通信販売限定の「U・Sポリスジャンパー」を着用していたことを証言した。
オートバイについては手掛かりが得られず、被害者同士の繋がりも皆無だった。
拳銃の弾丸は手製で、線条痕が残っていないため、改造拳銃と断定された。
弾丸は肩甲骨で止まっていたため、殺傷能力が弱いと推定された。
藤堂は捜査員に、前科者、暴力団関係、ガンマニア、被害者の怨恨の調査を、水木にはジャンパーの所有者のリストアップを命じた。
澤村と水木は相良工業所を訪れ、相良夫人の相良時江(青木和代さん)と対面した。
澤村と水木は相良夫妻の息子で、ジャンパー所有者である相良哲男(16歳)(斉藤雅史さん)の、10日と11日の午後9時30分頃の所在を質問した。
相良夫人は哲男が予備校の共栄学園に行っていたと答えた。
哲男は別棟の部屋にいたが、哲男の部屋から、同級生の佐々木(坂俊広さん)と袴田と西崎が出てきた。
哲男は予備校に行っていたが、昼間は体調の悪さから学校を休みがちだった。
哲男はオートバイと赤色のヘルメットを所持していたが、夫人の呼びかけに答えず、部屋から出なかった。
澤村と水木は相良工業所を張り込んでいたが、哲男は部屋から出た後にすぐに戻った。
哲男は最近、共栄学園を休んでおり、10日と11日も休んでいた。
水木は私立西南高等学校に赴き、担任教師の梶尾(小野武彦さん)と会った。
哲男の成績はあまり良好ではなかったが。手先の器用さから美術や工芸が得意であり、梶尾から褒められたことがあった。
夜、哲男は部屋から新聞に包んだ何かを持ち出し、焼却炉に入れた後、部屋に隠れた。
水木は焼却炉を取り出したが、焼却炉から安物のモデルガンと拳銃図鑑、2月25日の新聞が発見された。
改造拳銃のシリンダーや撃鉄は金属だから燃えないため、哲男は別の物を焼却しようとしていたと推測された。
水木は哲男がとても気弱そうだったことから、強盗をするとは思えなかった。
西條は哲男のアリバイの無さ、赤いヘルメット、背格好から、哲男に容疑をかけていた。
山村は哲男の挙動不審を気にしており、澤村と水木に張り込みの続行を指示した。
哲男は佐々木達と合流し、登校したが、佐々木達に怯えていた。
澤村は哲男が突然、登校したことを不審に思い、芝居をしているのではないかと考えていた。
哲男は放課後、佐々木達と一緒に下校したが、足を引っかけられて歩道橋の階段から転落しかけた。
哲男は悔しさから涙を流した。
水木は佐々木達が哲男の友達ではなく、いじめ相手ではないかと直感していた。
澤村は強引に部屋を捜索しようとしたが、水木に阻止された。
佐々木達が哲男の部屋に入り、哲男に暴行を加えた。
澤村と水木は哲男の部屋に強引に突入したが、哲男が指を万力で締められた形跡があった。
佐々木達は陰湿な虐めを否定し、ただ遊んでいただけと主張し、哲男は渋々同意せざるを得なかった。
哲男はU・Sポリスジャンパーを、気に入らなかったことを理由に燃やしたことを伝えた。
佐々木達は素直に謝罪した。
井川は奴隷のように扱われている哲男に同情したが、哲男が佐々木に弱みを握られているのではないかと推理していた。
水木は哲男の挙動から、強盗事件の1週間前からではなく、もっと前から虐められていたと憶測し、哲男が強盗犯人ではないと信じていた。
哲男が拳銃の図鑑とモデルガン、2月25日の新聞を燃やしたかった理由が未だに不明だった。
水木は新聞にも意味があったのではないかと考え、井川と西條と竹本と一緒に捜査を開始した。
2月25日の新聞には、東名高速道路にて発生した乗用車激突及び運転手死亡事故のことが報道されていた。
事故は対向車のタイヤが弾いた小石が、フロントガラスに直撃して事故を招いたと推測されていた。
井川は哲男が高速道路のどこかから、改造拳銃で車を狙撃し、銃弾がフロントガラスに命中し、運転手が死亡したと予測していた。
井川と水木は高速道路付近の木に、改造拳銃の弾がめり込んでいた痕跡を発見した。
哲男は最初、木を標的にして試射し、次に車を標的にしたという推理が出来たが、確証が何もなかった。
水木は哲男を追及して自白させようとしたが、井川から、周辺の聞き込みで証拠を固めるように助言された。
哲男は中学校時代にも痣だらけになるまで虐められており、父親の相良(江藤漢さん)に相談していたが、やられたらやり返せと怒鳴りつけられ、以後相談していなかった。
哲男は夫人に登校すると嘘を吐き、そのまま部屋に戻った。
梶尾は虐め問題について、マスコミが騒ぎすぎで、生徒が被害妄想気味で自分にすぐ相談してくることを話した。
梶尾は哲男から虐めの相談を受けたことを記憶しておらず、学校の対面を守るためにも、生徒間のことは生徒同士に任せるという方針にしていた。
哲男はクラスメイトとほとんど交流を持っていなかった。
澤村と水木は哲男の親友から、哲男が中学校時代から佐々木に虐められているという話を聞いた。
哲男の親友は虐めに理由が無く、哲男は体が弱く、気が小さいため、弱そうな者が虐めの標的に選ばれることを告げた。
水木は哲男がもっと虐められるのを恐れて何も言わないこと、拳銃強盗も事故も無関係であると推測していた。
哲男は両親に訴え、梶尾に相談していたが、虐めを増幅させるだけだったため、習慣にして諦めようとしていた。
佐々木達は虐めていることを習慣にし、相手の痛みを何も感じられなくなっており、誰も止める者がいなかった。
山村は水木の推理を認めたが、拳銃強盗と事故と、哲男との関係性を否定しなかった。
山村は虐めの延長戦上に事件を置くと、哲男が犯人である可能性は少ないこと、佐々木が哲男を強要して改造拳銃で車を狙わせたか、佐々木が車を狙撃し、口封じに哲男を痛めつけているのではないかという意見を出した。
佐々木は仲間に食事を奢り、ゲームセンターに入り浸り、高校生にしてはかなり金遣いが荒かった。
澤村は哲男を口封じさせないため、激情していた。
山村は井川と西條と竹本と澤村に、哲男と佐々木達の徹底的なマークを命じた。
水木は哲男の部屋を張り込んでいた。
翌朝、水木は哲男に自己紹介し、友達として虐めのことを相談しようとしたが、哲男に断られた。
哲男は、水木に密告されたと誤解した佐々木から電話を受け、部屋を抜け出した。
哲男は空き地にて佐々木達と会ったが、密告されたと誤解され、激しく暴行された。
竹本と澤村と水木は佐々木達を取り押さえ、哲男を救出したが、哲男はそれでも虐めを否定した。
哲男は西條と令子に取り調べられていたが、黙秘を貫いた。
焼却炉からはジャンバーの痕跡が発見されなかった。
佐々木はあくまで虐めを否定し、ただ鍛えているだけと供述したが、水木に激しく取り調べられた。
強盗犯は拳銃を発砲し、サラリーマン風の男を襲撃した。
山村は通報を受け取り、検問を敷いた。
強盗犯は検問の警察官によって進路を塞がれ、澤村と水木に逮捕された。
強盗犯の正体は西浩二(16歳)といい、昭和44年(1969年)6月27日生まれ、松本中学校を卒業後、宝永石油ガソリンスタンドに勤務していた。
西はジャンパーと拳銃を所持していたが、拳銃については、中学校時代の同級生の哲男から貰ったと述べた。
西は佐々木達と同じく、哲男を虐めた仲間の一人であった。
西は佐々木から、哲男が手先の器用さで改造拳銃を製作していることを知り、哲男の部屋を家探しし、改造拳銃とジャンバーを強奪していた。
西は遊び金欲しさに犯行に及んでいた。
哲男は拳銃をもう1丁、油紙に包んで隠していた。
哲男はニュースで西が逮捕されたことを知り、拳銃の露見によって殺害されることを恐れ、皆殺しを計画し、隠していた拳銃を取り出した。
水木は相良鉄工所の道具箱から、モデルガンを発見した。
哲男は授業中の1-Dの教室に突入し、梶尾を人質に取って籠城した。
西南高校に警官隊と機動隊、澤村と水木が到着し、生徒を避難させた。
哲男は佐々木、袴田、西崎を呼び出し、殺害しようとしていた。
水木は教室内に入ろうとしたが、哲男が発砲してきた。
水木は澤村に拳銃を預け、友達として話したいだけと言って、教室に入った。
哲男は、警告を無視して改造拳銃を発砲し、交通事故を発生させたのが佐々木であること、佐々木に一連の悪事が改造拳銃を作成した自分のせいであると脅迫されていた。
哲男は露見による殺害を恐れており、誰も助けてくれなかったことを嘆いた。
哲男は梶尾と佐々木達を射殺し、自殺しようとしていた。
水木は哲男の感情、虐めの辛さをよく理解しており、哲男の犯行を止めなかった。
水木は哲男に対して、決して非難しないが、やはり殺人犯として逮捕したくないと説得した。
水木は哲男が、拳銃を改造したこと以外何もしていないと呼びかけた。
井川と西條と竹本が銃声を聞き、教室内に入ったが、哲男は頭上に発砲しただけだった。
哲男は観念し、水木に泣きついて謝罪した。
井川と西條と竹本は佐々木達を重過失致死罪で逮捕した。
令子と竹本は、哲男の拳銃を作ることだけが支えだったことに同情していた。
佐々木の金遣いの荒さは、別れた父親が小遣いを与えていたためだった。
メモ
*「わが子へ!」と並び、虐め問題をテーマにした問題作。当時流行っていたらしい。
*マミーの「最近のヤング」という言い回しに時代を感じさせる。
*「チクった」という言い回しがまだ知られていない時代。
*虐め問題の理屈を今一つ理解していなかったブルース。
*虐められている側の気持ちをかなり理解しているマイコン。独特の説得の仕方が見もの。
*この当時でも虐めはかなり悪質だが、現在は自殺者が多数出るほど悪化してしまっている。
*トシさんは今回の事件で、両親の離婚もいじめの理由になることを感じ取ったようだ。
*ボスと山さんは「昔は弱い者いじめが卑怯というルールがあったが、受験地獄や管理教育による上からの大きい圧力の憤懣が、弱者に向かって噴き出す」と発言。
*ラスト、本庁少年課のいじめ相談室の相談員に抜擢されそうになるマイコン。
*脚本の鬼塚氏は今回と「感謝状」を執筆した。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
竹本淳二:渡辺徹
澤村誠:又野誠治
水木悠:石原良純
岩城令子:長谷直美
梶尾教諭:小野武彦
相良哲男:斉藤雅史、佐々木:坂俊広、森勇治
相良時江:青木和代、相良:江藤漢(現:江藤漢斉)、田畑敦、椎野恵生、ひったくりの被害者:水木薫、池田進
西田潤平、渡辺悦子、側見民雄、高崎良彦、深沢桂
西條昭:神田正輝
井川利三:地井武男
山村精一:露口茂
脚本:小川英、鬼塚幸一
監督:鈴木一平