第648話「検視官ドック」(通算第342回目)

放映日:1985/5/10

 

 

ストーリー

宮島征一郎(大木史朗さん)は自宅で就寝中に持病の心臓発作で苦しみ、妻の宮島真紀子(牧れいさん)に助けを求めた。

真紀子は寝ているふりをして、宮島を助けなかった。

午前0時45分頃、宮島は死亡した。

西條は自宅で就寝中、藤堂から宮島死亡の連絡を受けた。

宮島の死因は主治医によると心臓発作だが、念のため小西検視官が検視を担当することになった。

西條は水木の運転する覆面車で宮島宅に直行した。

宮島は元警視総監で、4年前(1981年頃)に退官し、西北商事の顧問となった。

宮島は3年前(1982年頃)、30歳年下で、レストランのレジ係を担当していた真紀子と再婚し、マスコミの話題を集めていた。

小西は500件以上の検視を担当し、1度のミスもなく、「検視の神様」と称えられていた。

西條と水木、警視庁鑑識課の小西(高松英郎さん)と関(岡崎二朗さん)が宮島宅に到着し、真紀子と対面した。

真紀子は東都医大病院の医師で、宮島の主治医を担当していた花井(牧田正嗣さん)を紹介した。

宮島は約2年前(1983年頃)、IHSS(特発性肥大性大動脈弁下狭窄症)を発症していた。

IHSSは心臓の筋肉が肥大するために、血液の流出路が狭窄してしまう病気だった。

花井は宮島の死因を、IHSSによる心不全と推定した。

真紀子は小西に、熟睡しており、目を覚ましたら宮島が亡くなっていたと偽証した。

西條と水木、小西と関は真紀子の案内で、宮島の寝室に入った。

真紀子は家政婦の友子と一緒に宮島の布団を直し、床に落ちていた水差しと置時計を元に戻していた。

花井と真紀子は小西の指示で寝室を離れた。

小西は西條と水木に協力を要請し、宮島の鬱血点(体の組織間の出血)を見るため、水木に宮島の枕を外すように指示した。

小西は宮島の死因について、1ヶ所だけでなく全身で判断するため、西條と水木に宮島を裸にするように指示した。

小西は宮島を検視し、病死と診断した。

西條はベッドの下から宮島の毛髪が付着した櫛を発見し、真紀子に見せた。

西條は真紀子の態度を不審に思った。

小西は花井と相談し、真紀子に、宮島の死因を明確化するため、宮島の遺体の解剖を願い出た。

真紀子は自分が眠ってさえいなければ宮島を死亡させずに済んだと後悔し、宮島の遺体をそっと寝かせてあげたいと思っていた。

西條は真紀子のために失礼を承知で、宮島の解剖をするべきと意見した。

花井は主治医としての責任で、真紀子に宮島の心臓だけでも見せるように懇願した。

西條は宮島の全身の解剖を希望したが、真紀子は心臓のみという条件で承諾した。

井川と竹本は西條が宮島の死に疑問を抱いたのではないかと思っていた。

西條は東都医科大学附属病院の解剖室の前で待機していたが、竹本が合流した。

小西は宮島の解剖に熱心に立ち合っていた。

小西は検視の正確さが認められ、宮島の検視を最後に、城西署の副署長の栄転が決定していた。

花井は宮島の死因を、IHSSによる心不全と断定した。

西條は小西に、宮島の調査のため、報告書を待つように頼んだ。

小西は西條の真紀子への発言が、解剖への口実であると見抜いており、死因を確認したい気持ちがあったため、それほど西條を追及していなかった。

小西が宮島を病死と判断した根拠を説明した。

紫斑の暗紫色は自然死の特徴で、青酸中毒や一酸化炭素中毒の場合はもっと青くなった。

紫斑の濃さで死亡時刻が分かり、遺体は死後2~3時間、解剖の結果と一致した。

小西は宮島の注射の痕跡や外傷痕について調査したが、宮島に外傷痕が無かった。

宮島は大の注射嫌いで、治療を全て投薬で済ませていた。

病死の場合、顔や口の中に鬱血点が出ず、目に鬱血点が現れるのは急死を示していた。

宮島の首には絞められた痕跡が無かった。

西條は検視については疑問点が無いものの、宮島の死が病死ではなく犯罪死という可能性が残っていると思っていた。

西條は最初、心不全が偽装ではないかと思っていたが、解剖の結果で死因が動かせないため、何者かが何らかの手段で心臓病を誘発したのではないかと推測していた。

西條は真紀子に宮島の櫛を渡そうとした際、真紀子が櫛を受け取ろうとせず、机に置いたことから、真紀子が宮島に愛情を持っていなかったという見解を持っていた。

小西は西條に宮島の去年と今年の日記を渡し、宮島が病死で、発作を誘発した証拠が無いと断言した。

宮島は自分の病気に対して非常に神経質で、心臓病を誘発するような因子の、過激な運動、ストレス、熱い風呂や長湯、高カロリーの食事等を細かくチェックしていた。

小西は真紀子が宮島を愛していなかったことについては、夫婦間の問題で、警察には関係ないことと考え、西條と竹本のもとを立ち去った。

西條はそれでも真紀子に疑惑を抱いていた。

花井は西條に、宮島の死亡時刻が小西の検視と同じく、午前1時前後であることを教えた。

真紀子が花井に電話をかけたのは、午前2時の少し前だった。

西條は宮島が死亡してから、真紀子が花井に電話する1時間の間の真紀子の行動を疑問に思った。

西條は真紀子の熟睡という証言が嘘であることを看破し、真紀子の号泣について、愛してもいない夫が死亡しても泣けるものなのかどうかを疑問に思っていた。

竹本は西條の勘を信じていた。

小西は既に報告書を提出していたため、最悪の場合、本庁を敵に回すことになった。

藤堂は1つでも疑問点があれば、とことん追求するのが捜査であるとして、西條の捜査の続行を許可したが、真紀子の動機と手口が問題点となった。

西條は大学時代の友人に聞いてみることにした。

水木はホームズ三世で今までの犯罪の調査、井川達は真紀子の動機の調査を担当することになった。

井川は澤村と一緒に宮島の葬儀を張り込んでいたが、真紀子が宮島の寝室にて、中尾雅人(北条清嗣さん)という男と会談しているのを目撃した。

宮島の葬儀は元警視総監の葬儀にしては静粛すぎるものだった。

宮島は保険金額合計1億3000万円の生命保険に加入しており、受取人が真紀子となっていた。

宮島は前妻との間に慎一郎という一人息子がいた。

慎一郎は新宿に設計事務所を開業しており、宮島の再婚には猛反対だった。

慎一郎は母親が死亡して1年経過せずに、父親が自分より年下の真紀子と結婚したことを許せなかった。

中尾は港北物産の社員で、以前に宮島の秘書をしていた関係から、葬儀の受付を申し出ていた。

井川は中尾が真紀子と寝室に入ったことを不審に感じ、澤村に中尾を調査させた。

小西と本庁の榊警視正(久遠利三さん)が七曲署に赴き、捜査一係捜査員が宮島の事件を未だに捜査していることを抗議した。

藤堂と山村は部下が1人でも疑問を抱いていれば、見当違いでも捜査を続行させるのがやり方であると反論した。

榊は今後、捜査がどのような結果になろうと、本庁が一切関知せず、全て藤堂の責任であると言い放った。

西條は一係室を去り際に小西とすれ違い、宮島の日記を借りさせてもらうように求めた。

西條は結果が何も得られないため、宮島の日記を読み返そうと思っており、日記が本庁に置かれていたため、小西と榊の車に同伴した。

宮島の日記には、毎日読んだ本とカロリー計算のことばかり記載されていた。

宮島は読書量の多さから肩が凝ることを嘆いており、就寝前にビタミン剤を服用していたことを日記に書いていた。

西條はビタミン剤が、心臓病を誘発するジギタリスという薬にすり替えられた可能性があると推理した。

ジギタリスは強心薬で、心臓の筋肉の収縮を強める作用があり、IHSSには使用禁止だった。

宮島の火葬は午前11時30分に執り行われることになっていた。

西條は水木に火葬場に急行し、火葬を引き伸ばすように命じた。

西條は再度、宮島の遺体を解剖しようとしていた。

水木は火葬場に急行したが、午前11時20分になっても西條が来なかった。

水木は宮島の火葬を何とか引き伸ばそうとしたが、失敗に終わった。

西條が慎一郎を引き連れ、火葬場に到着した。

西條は慎一郎の許可を得て、再調査のため、宮島を再び解剖した。

小西が西條と令子の前に現れた。

小西は西條が宮島を解剖し、胃の内容物を検査していることについて、自分を愚弄していると激怒した。

西條の目的は真実を知ることだったが、小西は検視に対して、非常に自信を持っていた。

小西は西條の執念に敬意を表した。

西條は結果が何も出なかった場合、刑事を辞めることを決意した。

花井が宮島の胃の内容物を検査した結果、ビタミン剤の一部はジギタリス系の物質は検出されなかった。

花井は宮島が病死であると判断した。

西條は藤堂に自分の勘違いであることを謝罪し、警察手帳と手錠と拳銃を返還した。

山村は、中尾の友人が勤務し、中尾も複数回人間ドックに入院している南多摩病院に1月まで入院していた患者(53歳)が、先月自宅近くの河原で急死しているという情報を入手していた。

患者の死因は宮島と同じIHSSによる心不全で、年齢も近く、自宅療養で介抱に向かっている矢先の死だった。

西條は南多摩病院を訪れ、患者を解剖した医師と話した。

死亡した患者は偶然釣りに来た人により発見され、病院に搬送されたときには死後2時間経過していた。

医師は患者の耳の後ろが赤く被れていることに気付いており、肩凝りの膏薬が原因ではないかと考えていた。

真紀子は宮島の体内に、肩凝りの薬と称して、ジギタリス系の薬品を膏薬という形で入れていた。

ニトログリセリンの膏薬はアメリカで市販され、狭心症の治療に絶大な効果があった。

中尾は複数回アメリカに旅行した際に、どこかで入手したか作らせ、宮島と症状が似た患者を見つけ、効力を実験したという推理が出来上がった。

真紀子は宮島が亡くなった後、膏薬を剥がしたが、剥がした跡が赤く残っていたため、赤みが引くのを待って花井に電話していた。

患者は偶然、皮膚が弱かったため、2時間経過しても消えていなかった。

推理に対する証拠が皆無だった。

中尾は南多摩病院で患者に接触し、膏薬を剥がしているため、一緒に釣りに行っていた。

西條は目撃者を捜索したが、2人の姿を目撃した者はおらず、病院での接触の証拠も発見されなかった。

中尾は3日後に転勤し、アメリカ駐在で5年間日本に帰国しないことが判明した。

真紀子も熱気が収まったら、中尾を追跡して渡米すると推察された。

真紀子は友子から、宮島宅の郵便ポストに入っていた朝刊を受け取ったが、植物大百科のチラシも入っていた。

植物大百科の中にはジキタリスのことも記載されていた。

ジキタリスはヨーロッパ原産のゴマノハグサ科の1~2年草で、葉が強心剤として使用されていた。

特徴として、未使用のまま放置し、燃やしたりすると強烈な悪臭を発することがあった。

真紀子は戸棚にジキタリスの膏薬を隠していた。

真紀子は夜、膏薬を橋から川に処分しようとしたが、西條と水木、令子と竹本に包囲され、取り押さえられた。

井川と澤村は中尾を、真紀子との共同正犯による宮島の殺害容疑で逮捕した。

西條は出勤寸前、小西と会った。

小西は西條に、検視ミスと勉強不足を謝罪し、西條のアイディアを尊敬した。

ジギタリスには悪臭を発する性質が無かった。

小西は城西署副署長の栄転を断り、これからも検視一筋で行くことを決意した。

 

 

メモ

*サブタイトルのBGMは「護送車強奪」、「ドック潜入! 泥棒株式会社」、「男と女の関係」で使用されたもの。

*ドックは初登場の頃から、簡易的な手術を執刀できる医学知識を持っていたが、捜査の合間に勉強したのか、「検視の神様」のミスを見抜くほど高度な知識を持っていた。

*今回も冒頭で死亡してしまう役を演じる大木氏。

*小西に検視についての不勉強を注意されるマイコン。七曲署に着任して半年経過し、場数をそこそこ踏んでいるはずだが?

*宮島の火葬を引き伸ばすのに、焼香をわざと長く行い、棺のなかに遺品を入れようとして引き伸ばそうとするマイコン。不器用なマイコンらしい。

*ジギタリスをビタミン剤とすり替えて飲ませたと思いきや、膏薬で殺害するという意外な展開となった。

*「ジキタリス」と「ジギタリス」は全くの別物らしい。

*今回の北条氏は真紀子の共犯役だが、出番が少なく台詞もほとんどない。

*ラスト、ボスに遅刻と怒鳴られるドック。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

竹本淳二:渡辺徹

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

小西検視官:高松英郎

関:岡崎二朗、宮島真紀子:牧れい

中尾雅人:北条清嗣、花井医師:牧田正嗣、榊警視正:久遠利三

佐々木敏、藤井章人、宮島征一郎:大木史朗、岡重淳子、佐藤功

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:古内一成

監督:鈴木一平