第643話「走れブルース」(通算第338回目)

放映日:1985/3/29

 

 

ストーリー

午後11時50分頃、主婦の吉川雅子(幸田直子さん)は富士見町のパチンコ屋「日の丸」にて、パチンコに熱中していた。

雅子の息子の吉川健太(5歳)が行方不明となっていた。

澤村と水木は覆面車を洗車していたが、澤村の連絡を受けて出動した。

梶本良平(平泉成さん)と安田紀男(出光元さん)は富士見町の友信ローンに強盗に入り、大金を強奪したが、サイレンの音を聞き、駐車場の車の陰に隠れた。

梶本は鞄にサングラスを隠し、安田に車の捜索を担当させ、大金を隠すことにした。

澤村と水木は「日の丸」に到着し、吉川から事情聴取を行った。

健太は幼稚園の帰りに「日の丸」に立ち寄り、夕方まで店内で、いつも大人しく一人で遊んでいた。

少年課の吉野刑事(横谷雄二さん)が澤村と水木に合流し、子供の入り込みそうな場所を捜索したが、健太を見つけられなかったことを告げた。

健太は幼稚園の制服であるブルーの上っ張りと黄色い帽子を着用しており、友達の家にもいなかった。

梶本は空き地に不法投棄されているゴミの麻袋の中に、大金の入った黒い鞄を隠したが、そのことを健太に目撃されてしまった。

梶本は吉野と吉川の声を聞き、健太を誘拐した。

澤村は付近を捜索したが、健太の目撃者が現れなかったため、商店街の捜索を決定した。

澤村は水木に、1年前(1984年頃)、母親がボウリング場で遊んでいるうちに、子供が行方不明になり、死体で発見されたという、健太の行方不明事件と酷似している事件のことを話した。

その子供は寂しさのあまり、犯人の変質者に喜んで同行してしまっていた。

澤村は偶然、健太を抱えた梶本が安田の運転するトラック「品川11 5-9342」に乗るのを発見し、水木に覆面車を持って行くように指示し、激走して追跡した。

澤村は水木の覆面車に乗ってトラックの追跡を続行し、梶本と安田に停車するように警告した。

梶本と安田は澤村の警告を無視し、Uターンした。

澤村は水木に覆面車をトラックに接近させ、荷台に飛び移ることに成功した。

澤村はトラックの荷台の幌に張り付いた。

水木は山村に、梶本と安田のトラックが緑町方面に逃走していることを連絡した。

安田は澤村がトラックに張り付いていることに気付き、梶本に健太を降ろすことを提案したが、梶本から澤村を振り落とすように命じられた。

安田は澤村を振り落とそうとして、蛇行運転をしていたが、対向車線から現れたトラックを回避しようとして石壁に衝突した。

澤村はトラックの激突で屋根から転落し、肩を負傷した。

梶本と安田はトラックを降車し、健太を連れて逃走していたが、澤村に追跡され、高架橋下の金網の扉で追い詰められた。

澤村は梶本と安田にマグナムの銃口を向けたが、梶本が健太にナイフを突きつけ、マグナムを放り投げるように脅迫してきた。

澤村は梶本の脅迫に屈せず、マグナムのハンマーを押したが、梶本が健太を殺害しようとしていたため、マグナムを放り投げた。

梶本は安田にマグナムを拾わせ、澤村に銃口を向けさせたうえで、手錠で拘束するように命じた後、健太を連れて逃走した。

安田は澤村が接近したために、マグナムを発砲したが、その反動で負傷し、気絶した。

山村は令子を吉川と合流させ、井川と西條にトラックを捜査させた。

午後1時50分、澤村は派出所にて安田を詰問した。

安田は友信ローンの強盗について黙秘したが、健太の誘拐については知らず、梶本に命令されてトラックを運転しただけであると主張した。

安田は梶本とはドヤ街で知り合っただけで、名前や居場所については知らなかった。

トラックは盗難車ではなく、安田の所有物だった。

安田はトラック1台で運送会社を経営していたが、最近倒産していた。

井川は子供の誘拐犯にしては無計画すぎることが引っかかっていた。

友信ローンに客が入ったが、社内にて内海社長(真田健一郎さん)と社員の田尻と事務員が拘束されていた。

友信ローンの強盗事件が一係室に通報された。

友信ローンは響組直結のサラリーマン金融で、「日の丸」の近所にあった。

響組幹部の片桐(浜田晃さん)と弟分の陣内(片桐竜次さん)が友信ローンに現れ、内海と田尻に強盗事件を通報されたことについて叱責、尋問した。

友信ローンの内海と田尻は梶本と安田を知らなかった。

片桐と陣内は西條と水木が友信ローンに駆けつけたのを見て、内海に響組に来るように脅迫し、引き上げた。

西條と水木は片桐と陣内とすれ違った。

内海は西條に被害金額が50万円であることを報告し、梶本と安田についてはサングラスとマスクをしていて顔が見えず、知らないことを証言した。

内海は片桐と陣内が友信ローンの重役であると弁明した。

安田は井川と令子に取り調べられていたが、金の隠し場所については知らず、梶本に脅迫されて強盗を協力し、トラックを運転しただけと怯えた態度で伝えた。

安田は澤村に教えたドヤ街で梶本と会ったことを強調した。

澤村は安田から梶本の居場所であると教えられたベッドハウス「オアシス」にて、梶本の友人と称して、宿泊者に梶本について質問した。

澤村は宿泊客の1人に後頭部を瓶で殴られるなど暴行を受けたため、複数名の宿泊客と取っ組み合いになり、宿泊客を叩きのめした。

澤村は自分の身分を示し、宿泊客から梶本が愛和マネーチェーンの取立屋だったことを教えてもらった。

宿泊客は梶本に酷い目に逢わされていた。

梶本は取立が病院の布団を剥ぐほど過剰であり、手段が酷かったために解雇されていた。

安田は宿泊客と同じく梶本から取り立てられ、追い回されて首吊り寸前までいっていた。

山村はハワイに滞在中の藤堂に、事件の経過を報告し、子供の生命を最優先にという指令を受けた。

藤堂はパトロールの同伴後、殉職警官の墓参りに行くことになっていた。

藤堂は殉職警官の墓に花を添えた。

安田は愛和マネーチェーンに300万円の借金があり、トラックも差し押さえ寸前だった。

取立屋の梶本が借金を返済できない安田を抱き込み、友信ローンの強盗を手伝わせていた。

西條と水木は業界に詳しい梶本が50万円程度の強盗で我慢するはずが無く、莫大な額の大金を強奪し、金の隠し場所を目撃した健太を誘拐したと推察していた。

梶本の動向が全く不明で、高飛びする際の健太の生命が心配された。

澤村は山村から安田が肝心なことを何も自白していないことを聞き、現場付近に戻って、金の隠し場所を捜索することを連絡した。

西條は響組関東支部を張り込んでいた。

今日、友信ローンの金庫には現金1億円が保管されており、午後2時には大口の借主が来訪することになっていた。

片桐は情報を漏洩した相手を問題点にし、その相手が友信ローンの社員ではないと弁解する内海を尋問した。

陣内は情報を漏洩した相手が、先月に響組を破門になった松山弘というチンピラであると見当がついていた。

松山は響組の管轄外で競馬のノミ屋をしていた。

片桐は陣内に、松山を自白して1億円を取り戻すこと、1億円について知りすぎた梶本と健太の抹殺を命令し、自分が警察の囮になることにした。

片桐と組員、陣内は二手に別れ、車で響ビルを出発した。

井川は安田を取り調べた。

安田は澤村が「オアシス」を訪ねていけば、宿泊客に叩きのめされると分かっておらず、井川から澤村が宿泊客を打ちのめしたことを告げられた。

井川は梶本の報復を恐れる安田に、梶本が安田に銃を持たせて逃げたことから、安田が初めから使い捨ての駒に過ぎなかったこと、裏切っているのが梶本の方であることを忠告した。

安田は松山から、響組の隠し金が友信ローンにあることを自白した。

澤村は金の隠し場所を捜索していたが、梶本が空き地に戻り、強奪した金を回収しようとしていた。

梶本は澤村と鉢合わせし、逃走したが、タクシーで駆け付けた竹本に前方を塞がれた。

梶本はセメント工場の工業用機械の上に登り、でナイフを振って抵抗したが、澤村にナイフを叩き落とされた。

澤村は梶本と砂山付近で激闘となり、梶本を殴り倒した。

梶本は健太の居場所が、愛人の浜田美枝の住む、船越町のマンション五月818号室にいることを自白し、澤村に逮捕された。

令子が竹本と澤村のもとに駆けつけた。

竹本は山村の命令を令子から告げられ、タクシーで病院に帰った。

陣内は松山にナイフを突きつけ、健太が浜田のもとにいることを聞き出した。

井川は松山宅を突き止め、部屋に踏み込んだが、松山が陣内に刺殺されていた。

澤村はマンション五月に急行した。

浜田(藤木聖子さん)は健太の世話をしていた。

陣内は一足先にマンション五月に到着し、818号室の呼び鈴を鳴らした。

浜田は扉の覗き窓で幹部の姿を確認し、健太を連れ、テラスから屋上に出て、非常階段からマンション五月を脱出しようとしていたが、途中で幹部に感付かれてしまった。

澤村は818号室に急行したが、陣内から逃走する浜田と健太を目撃した。

浜田と健太は工事現場で陣内に追い詰められ、射殺されそうになった。

澤村が工事現場に到着し、陣内を殴り倒した。

健太は澤村に抱かれ、浜田は逃走しようとしたが、井川と令子に取り押さえられた。

陣内は塀を登って逃走しようとしたが、澤村の威嚇射撃で失敗し、逮捕された。

梶本は、響組が詐欺常習の不動産屋から強請り取った現金1億円を強奪したことを全面自供した。

1億円は壊れたソファーの中から発見された。

井川と澤村と令子は派出所に待機していた吉川を健太と対面させた。

しかし、梶本に誘拐され、澤村が救出した園児は健太ではなく、花井厚という別の園児であるということが判明した。

吉野が徹底的捜査をした結果、健太はパチンコの掃除道具を収蔵するロッカーの中から発見された。

健太は待ちくたびれて眠ってしまっていた。

厚は母親の花井順子と2人暮らしだったが、花井の帰宅が遅かった。

澤村は厚を送迎中、花井と再会した。

澤村は花井に、厚を思って抱きしめるように叱咤激励した。

後日、花井は澤村が厚の命の恩人であることを知り、厚を大事にすることを決心していた。

山村は澤村に、花井が今日感謝してももういつもの母親に戻っているかもしれないが、それが刑事であるということを教えた。

藤堂は会議が終ったことで、ホテルを出て、日本に帰国した。

 

 

メモ

*シンプルなサブタイトルの割に、内容やゲストが濃密な回。

*行方不明事件が強盗事件、誘拐事件と発展していく。

*「春なのに……」から続いていたボスのハワイ滞在は最後で、次回の「七曲署全員出動・狙われたコンピューター」より捜査一係に復帰。

*「ラガー倒れる」のラストから続いていたラガーの入院生活も今回が最後で、ボスと同じく次回より復帰。

*洗車のシーンがサブタイトルというユニークな始まり方。居眠りし、洗車を大雨と間違えるマイコン。

*平泉氏は「太陽」では珍しく、純粋な悪党役を演じている。

*マイコンとは初対面となる吉野。

*梶本と安田のトラックの追跡のため、一方通行を無視し、車と激突しかけるブルースとマイコン。

*出光氏の小悪党な演技が心地良い。

*ラガーによると、ブルースが健太の捜索に懸命になっているのは、特に子供好きだからというわけではなく、幼少期が寂しい子供だったからという。

*ラガーが医師の外出許可を取らずに病院を抜け出し、ブルースの梶本の逮捕に協力。しかし、ブルースからタクシー代を借りる。

*ラガーの声が掠れている。

*ブルースが梶本を逮捕するセメント工場は、「デュークという名の刑事」や「ジョーズ刑事の華麗な復活」でロケーションに使用された場所。

*ブルースと梶本の、セメント塗れになりながらの格闘。「ボギー刑事登場!」と並ぶ壮絶な格闘であった。

*片桐氏の冷酷で無機質な演技が、低音の声とともに恐怖感を醸し出している。

*久々にブルースのマグナムが従来の用途で使用されたような気がする。

*事件が解決し、健太が救出されたと思いきや、どんでん返しが待っていた。

*ブルース、花井にはちゃんと自分の身分を示しましょう。

*最後、ブルースにはあられかき餅が差し入れられた。

*準備稿によると、梶本の役は当初、古谷徹氏が演じることになっていたらしい。なお、準備稿の役名の欄には浜田役に水沢有美氏、女事務員役に岡田良枝氏と記載されている。

*「ハワイアン・コネクション」の予告に誤って今回の1シーンが挿入されている。

*参考:https://twitter.com/makaroni1986/status/798130286034681856/photo/1

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

竹本淳二:渡辺徹

澤村誠:又野誠治

水木悠:石原良純

岩城令子:長谷直美

 

 

吉野刑事:横谷雄二

梶本良平:平泉成

陣内:片桐竜次

安田紀男:出光元、片桐:浜田晃、浜田美枝:藤木聖子(現:藤生聖子)

吉川雅子:幸田直子、内海社長:真田健一郎、森篤夫、松山周平、麻ミナ、佐久間まち子、小林大介

ノンクレジット 「オアシス」の宿泊客:森岡隆見

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、大川俊道

監督:山本迪夫