第619話「犯人の顔」(通算第313回目)

放映日:1984/10/12

 

 

ストーリー

竹本は事件の連絡を受け、自宅の緑荘から事件現場のすみれ荘に急行した。

事件の詳細は、すみれ荘の階段下にて、村田えり(東啓子さん)が後頭部を鈍器状のもので殴られ、気絶しているというものだった。

村田は救急車にて病院に搬送され、令子が救急車に同乗した。

すみれ荘の階段下に村田の鞄が落ちていたが、財布の中身の現金は無事だった。

事件の110番通報者は新聞配達員で、村田のことを知っていた。

村田は202号室の住人だった。

井川は西條に、202号室を確認するよう指示したが、村田の所持品の中に202号室の鍵が入っていなかった。

202号室の扉は施錠されていた。

竹本は201号室の住人の磯野守(大木隆介さん)を聞き込んだが、磯野は村田の顔も名前も知らなかった。

村田は殴られたショックで一時的に意識を喪失していたが、怪我も外傷だけで済んでいた。

井川と西條と竹本は202号室の調査を開始したが、202号室には侵入された形跡が無かった。

竹本は机の上に預金通帳と印鑑が置かれているのを発見し、村田が昨日に300万円を引き出した形跡があるのを確認した。

藤堂は村田が意識を回復したため、竹本に病院に向かわせ、村田から鍵と300万円について事情聴取するように命じた。

村田は表通りでタクシーを降り、部屋の鍵を握り、付属の鈴を鳴らしながら歩いていたと話した。

村田は犯人とどこかで会ったことがあるため、犯人が特に親しいわけではない自分の知人であると思っていた。

村田は犯人が300万円のことを知っている人物であるとも推測していた。

村田はマンションの頭金として今日に払うつもりとして、昨日300万円を銀行から下ろしており、ゴミ箱の中のチョコレート箱の中に隠していた。

西條と澤村は202号室のゴミ箱からチョコレート箱を取り出したが、300万円は盗まれていた。

犯人は、昨日に村田が300万円を下ろしたことと隠し場所を知っている人物と断定された。

村田は友達の大沼香織と川原ヤス代の2人だけにチョコレート箱のことを話していたが、犯人が2人ではないと推量していた。

村田は街で知り合った友達の大沼と川原の勤務先と電話番号しか知らなかった。

村田が大沼と川原のみに喋った場合、2人が何人に話したかが問題点となった。

村田は2人に厳重に口止めしていたため、すっかり友達不信となっていた。

大沼(高沢順子さん)は「スポーツコネクション」でヨガのインストラクターとして勤務していた。

西條と竹本は大沼と対話した。

大沼は多忙でまだ村田の見舞いに行っていなかった。

大沼は先週の金曜日に村田から、300万円のことと隠し場所のことを電話で聞いていた。

大沼は独身であり、口が堅く、300万円のことを話す友達がいないと述べた。

大沼は事件の発生時刻の午前3時に部屋で寝ていたと主張し、体調に最良であるとして、起床を午前6時、就寝を午後11時に遵守していた。

竹本は大沼を信用できず、別人を雇って友達の金を奪わせたのではないかと考えたが、西條は大沼を信じていた。

川原(川原英子さん)はブティック「粉紅之龍」の店員だった。

令子と澤村は川原に接触したが、川原は300万円のことを電話で聞き、堅く口止めされたことを話した。

川原は独身であることを強調し、令子と澤村に住所を教えず、午前3時に部屋で寝ていたと述べた。

西條は大沼が誰にも話していないと考察していたが、竹本と議論になった。

竹本は大沼を再調査することを決定し、澤村は川原を張り込んでいた。

川原は3時間ほど、食事しながら友達と会話していた。

澤村は合流してきた西條に、川原の交友関係のリストを渡したが、川原の交友関係は広く浅かった。

西條は川原の友達に接触し、澤村は川原を尾行し、竹本は大沼を張り込んでいた。

大沼は午後11時になり、就寝した。

川原は澤村の尾行に気付き、コンビニエンスストアで澤村をまいた。

西條はブティックが開店する午前10時になれば、川原の動向と住所が分かるとして、焦る澤村を励ました。

竹本は大沼に引っかかりを感じ、大沼の張り込みに戻った。

澤村は川原のブティックに急行した。

大沼は早朝からジョギングを行い、神社で座禅をしていた。

西條は大沼について、ヘルシーを絵に描いた女という感想を抱いていた。

一係室に、三ツ木通り5丁目の大熊家の玄関先で、大熊元吉という老人が殺害されたという通報が入り、捜査員が大熊家に急行した。

三ツ木通りは村田のすみれ荘と近距離にあった。

大熊は後頭部を一発で殴られて死亡しており、腕に鍵を握りしめていた。

井川は大熊の首にかかっている紐に付属する鍵が気になっていた。

大熊の腕に握りしめている鍵が自宅の鍵と思われた。

令子は大熊の娘(姫ゆり子さん)と娘婿(平野稔さん)から話を聞いていた。

大熊の娘と娘婿は昨日、どうしても欠席できない結婚式に出席するため、午後3時出発の新幹線で福島に向かっていた。

大熊はその間、自宅に一人っきりだった。

大熊の娘は大熊の首の紐にかかっている鍵について、大熊の部屋にある手提げ金庫の鍵であることを教えた。

井川は紐の革が、いつも濡れていたかのようにゴワゴワになっていることが引っかかっていた。

大熊の娘は井川と竹本を大熊の部屋に案内し、手提げ金庫を取り出したが、中身の700~800万円が無くなっていた。

自宅の中に大金があることを知っている点、背後から襲撃して強奪した鍵を使って金を盗み出している点、自宅に誰もいないことを知っている点から、大熊の殺害犯は村田と同一犯であると断定された。

大熊の死亡推定時刻は午前0時、死因は後頭部を鈍器で殴られたことによる頭蓋骨骨折だった。

午前0時は、川原がコンビニエンスストアにて澤村をまいた時刻であり、大沼もアリバイが無かった。

井川は2件とも鍵を使用しなければ犯行が不能だが、第2の犯行の際、わざわざ使用していた鍵を戻していた犯人が、第1の犯行の際には鍵を戻さずにそのまま持って行ったことも引っかかっていた。

竹本から、最初の犯行の際には鍵を戻す余裕が無かったという意見が出たが、井川は両方とも被害者が犯人の逃走経路に倒れているため、鍵を戻すことが簡単だったとして、竹本の意見に反論した。

藤堂は捜査員に、大沼と川原のマークと並行し、村田と大熊2人に共通する人物を探し出すように命じた。

川原はブティックを休んでいたが、住所が界隈通り3丁目スカイコート501であることが判明した。

西條と澤村は界隈通り3丁目に急行したが、スカイコートが発見できなかった。

西條は近辺にあり、独身者が利用しそうな定食屋「カワハラ」に入ったが、川原が従業員として勤務していた。

「カワハラ」店主は川原の夫であった。

川原はブティックの採用条件が独身者のみという規則であり、ハウスマヌカンが雑誌で掲載されていたため、一度働いてみたいと思っていた。

川原は西條と澤村に謝罪し、昨夜の午前0時頃、「カワハラ」で片付けをしており、午前1時に閉店したこと、客が少数いたことを伝えた。

午後11時、澤村は大沼を張り込んでいる竹本に合流していた。

村田は大沼に電話したが、留守番電話になっていた。

大沼は裏の階段からマンションを抜け出し、竹本をまいた。

竹本と澤村は線路沿いの小料理屋「一力」にて、泥酔して他の客に絡む大沼を発見した。

「一力」主人(宮沢元さん)によると、大沼は1年前(1983年頃)に惚れた男に裏切られて以降、夜に眠れないという理由で毎晩「一力」に入っていた。

竹本は礼儀正しく、そつがなく、健康美人の大沼を、若い女性のモデルルームと思い、嘘が無いかと思って気になり、ずっと張り込んでいた。

竹本は今夜の大沼を見て、犯人でないと認識していた。

竹本は就寝前、村田と大沼の共通点を見つけ出そうとしていたが、どうにも閃かなかった。

竹本は部屋で隣人の電話の声が聞こえたことから、犯人が村田の隣人ではないかと直感した。

部屋が静かであればあるほど、隣人の声が聞こえ、生活事情をありありと感じ取ることができた。

犯人が村田の隣人であると仮定すると、犯人は村田を襲撃して鍵を強奪、村田宅に侵入し、チョコレート箱の中から300万円を強奪し、自宅に逃走したということになった。

村田の隣人は磯野だったが、磯野と1km以上離れていた大熊との接点が不明だった。

竹本は老人と若者が両方行く場所として、銭湯ではないかと直感したが、大熊家には風呂があり、大熊は殺害された際、風呂の道具を何も持っていなかった。

井川は革紐の件から、竹本の直感が的中していると発言した。

銭湯の主人はほぼ毎日、大熊が首に鍵を下げて入店していたことを証言した。

大熊は5分ほど入浴した後、椅子に座り、仲の良い老人と自宅や臍繰りのことを長々と話していた。

大熊は家族に内緒で銭湯に来ていたため、風呂の道具を毎月300円のコインロッカーに収蔵していた。

磯野は現在無職で、大熊と同じ「大蔵湯」だった。

竹本と澤村は村田を連れ出し、磯野を面通しさせたが、村田は磯野に見覚えが無かった。

村田は磯野が階段を登る音を聞き、犯人に気絶させられた際に聞いていた犯人が階段を登った音のことを思い出し、犯人を磯野と特定した。

村田は磯野の足音を毎日聞いていたため、気絶しながらも自分の知人と認識していた。

竹本は風呂道具を持って外出する磯野に接近したが、磯野は逃走した。

磯野は歩道橋にて、井川と西條、竹本と澤村に包囲され、強盗殺人並びに殺人未遂容疑で逮捕された。

磯野は楽しそうに笑いながら金の話をする村田と大熊を憎み、大熊に顔を見られ、いつも風呂で会いますねと笑われたため、殺害していた。

磯野は自宅から、村田の自宅の鍵が発見されたため、観念して全面自供した。

磯野は半年前に勤務していた時計部品工場が倒産して以来定職が無く、毎日苛々しており、そこに村田の金の話が耳に入り、顔を知られていないことで味を占めていた。

 

 

メモ

*「殺人犯ラガー」以来、久しぶりのラガー主演作。

*開始数分で亜槍氏の作風と分かる作品。犯人の意外性や被害者との繋がりの謎解きのアイディアが面白い。

*ラガーの住居は緑荘。「太陽」の世界には「緑荘」が何軒あるのだ?

*「勤務先と電話番号を知っているが、住所を知らない友達」。現在はSNSの普及でもっと増加していると思われる。

*東氏と高沢氏は「女たちは今……」でも共演している組み合わせ。

*ハウスマヌカン(死語)とは、洋服店の女店員のこと。「淋しさの向こう側」にも出てきたような気がする。

*「ヘルシーを絵に描いた女」と思われたが、毎晩「不健康な生活」を送っていた大沼。

*隣の声が丸聞こえであるアパート。さすがに現在は減少しているのか?

*歩道橋の「蛇女」という落書きが目に残る。

*トシさんは「捜査が難航したのは足音や声しか知らない隣人との付き合いが原因」と言っていたが、このテーマは「ロッキーの白いハンカチ」でも使われている。

*「まだ見ぬ人とのコミュニケーション」by山さん。

*今回は「ゴリさん、見ていてください」と同時撮影。そのせいか、そちらにもエアロビクスのシーンがある。

*今回は堀内監督の「太陽」最終作。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

竹本淳二:渡辺徹

澤村誠:又野誠治

岩城令子:長谷直美

 

 

村田えり:東啓子

大沼香織:高沢順子、川原ヤス代:川原英子

大熊の娘:姫ゆり子宮内順子、磯野守:大木隆介、「一力」主人:宮沢元、大熊の娘婿:平野稔、篠倉伸子

木場剛、医師:小寺大介、森篤夫、後藤義明、曽野真紀、姫川艶、河野京子

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:亜槍文代、小川英

監督:堀内泰治