第236話「砂の城」

放映日:1977/1/28

 

 

ストーリー

非番の日、滝は自宅でサボテンを見ていたが、田口から事件発生の連絡を受け、事件現場の矢追3丁目のみどりハイツに出動した。

被害者は土木新報社の記者の広田亮一(27歳)で、後頭部を殴られ、頭蓋骨骨折で死亡していた。

凶器は部屋に落ちていた壺だった。広田の爪に血液が付着していた。

机の中を掻き回した痕跡があったが、財布に手を付けられていなかった。

管理人が昨夜の午後10時頃、部屋から大学ノートを抱えた若い女性が出てくるのを目撃していた。

広田の爪に付着していた血液型はO型で、広田はB型だったため、犯人の血液と思われた。

石塚が広田の預金を調査した結果、入金が多すぎることが判明した。

広田はアルバイトをしておらず、株や相場にも手を出していなかったため、強請屋と思われた。

野崎と滝は土木新報社を訪れたが、編集長の大内正巳(小沢重雄さん)は広田の強請に関して否定した。

滝は広田のメモの1ページが破り取られているのを発見した。

手帳の次のページには「小倉製縫工場 西条景子」と書かれていた。

滝は管理人に作業中の西条(倉野章子さん)を面通しさせ、管理人は広田の部屋から飛び出してきたのが西条と証言した。

野崎と滝は西条を任意同行し、取り調べたが、広田については知らないと述べた。

西条は一人暮らしということで時間を気にしておらず、昨夜の午後10時頃の行動を記憶していなかった。

西条は午後5時に工場を出て、2丁目の蕎麦屋で食事を行い、2丁目を散策し、帰宅していた。

滝は西条に、午後10時頃にみどりハイツにいて、強請っていた広田を殺害したのかと突きつけたが、西条は否定した。

滝は西条が自分の目を見ていないことが気になった。

西条の毛髪から検出された血液型はA型だったため、西条は犯人ではなかった。

石塚は西条が広田に強請られていた秘密を喋らないのは当然と考えていたが、滝は西条の嘘に強いものが隠されていると考えていた。

滝は藤堂に、西条の嘘の捜査を上申し、藤堂からプライバシーの尊重を条件に承諾された。

石塚と滝はみどりハイツを捜査中、広田の部屋に入ろうとするコートの男(阿部六郎さん)を発見した。

コートの男は逃走したが、石塚と島に空き地であえなく取り押さえられ、写真を回収するためだけに来たと主張した。

広田は強請のネタを大学ノートに書き込み、間に写真を挟んでいた。

滝は小倉縫製工場を張り込んでいた。

コートの男の証言で、広田が強請の材料を大学ノートに挟み、写真を間に挟んでいたことが判明した。

西条は18歳のときに山形県から上京し、ずっと小倉縫製工場に勤務していたが、同僚や社内の評判が良く、浮いた噂も無かった。

西条は赤いコートを着て、電車を小田急梅ヶ丘駅で降り、川村真治(横光克彦さん)と会い、喫茶店で食事をしていた。

川村と西条の交際のきっかけは、2ヶ月前に川村が落とした定期券を、西条が拾って届けたことからだった。

川村は宮園土建の経理課長で、出世コースを歩いているエリートだった。

川村のタバコの吸殻から検出された血液型は犯人のものと一致せず、犯行時間にはスナックにいたためアリバイがあった。

滝は広田に強請られたのが川村の方で、西条が代わりに広田のもとに交渉に行ったと推測し、川村が事件に関与していると考えていた。

西条はほぼ確実に大学ノートを持っていたが、真実を自供してノートを差し出すことは、最愛の川村を傷つけることにつながるため、秘密を必死に守ろうとすると思われた。

土曜日の午後、西条は信用金庫に行き、大金を下ろしていた。

西条は2丁目の葵マンションの1階にある喫茶店「グラン」で川村と会い、大金を渡した。

滝と田口は西条と川村を尾行した。

川村は女性問題では非常に評判が悪かった。

川村は西条をアパートまで送迎し、帰って行った。

謎の白い車が西条に向かって突進してきたため、滝は注意を呼び掛け、西条に車を回避させた。

滝は曲がり角を曲がる車に向かって発砲することができず、田口に追跡させたが、田口は赤信号で追跡を断念した。

西条は自室の7号室に駆け込んだ。車のナンバーは「品川56 ら 8664」だった。

西条は車の運転手の顔を見ていなかったが、滝は西条が広田殺害の真犯人を目撃しているために命を狙われたと推理していた。

西条は大学ノートの存在を知らないと否定し、滝に命を狙われていることを強調されると、命が惜しくないと言った。

滝は西条の飼っている小鳥を見た後、西条の部屋を離れた。

藤堂は田口に、西条宅の待機を命じた。

車の持ち主は貫井建設の貫井社長だった。大内は貫井のことをよく知っていた。

半年前、土木新報が貫井建設の特集記事を組んだことがあり、広田は頻繁に取材に行っていた。

貫井社長(山田禅二さん)は広田が時々取材に行っていたこと、手抜き工事を新聞に掲載すると言われ、強請られていたことを認めたが、殺人について否定した。

貫井は車が盗難にあったと強く主張し、広田の殺害時刻に、貫井建設のプレハブで突貫工事を行っていたと伝えた。

山村は、真犯人が証人の西条を殺害し、全ての罪を貫井に押し付けようとしたため、広田が貫井を強請っていたことを知っていた人間に犯人がいると推理した。

滝は宮園土建に赴き、経理部長の中田に経理の帳簿を全て調査するように依頼した。

滝は張り込み中の田口と合流したが、西条宅に川村が入っていた。

滝は西条宅に強硬に入った。

川村は宮園土建の金を200万円横領し、今日に全額返済して帳尻を合わせていたが、横領のことを広田に気付かれ、強請られていた。

川村は西条を疑ったが、滝は西条が川村を庇うために広田の自宅から大学ノートを持ち去ったこと、西条が200万円の埋め合わせのために10年間貯めた預金を全額下したことを告げた。

西条はそれでも大学ノートの存在を否定した。

川村は出世を諦め、全てが終わりと思い込み、自分のことで精一杯と告げて車で立ち去った。

西条は滝を糾弾したが、間に田口が入り込み、川村について説明した。

川村は暴力団絡みの性質の悪い女に引っかかり、横領した金の返済をさせるために西条に接近していた。

西条は東京で孤独に暮らしているため、上辺だけでも優しかった川村のためなら金を惜しまなかった。

西条は部屋に入った。

石塚は滝の行動を批判したが、滝には西条と川村の愛が砂の城のようなものであり、崩れるなら早く崩れた方が良いという持論があり、砂の城のために死亡してほしくないと考えていた。

田口は、滝が西条の東京での孤独な生活を一番理解しており、西条を誰よりも傷つけたくないのが滝であると思っていた。

藤堂は田口に、滝の様子を探るように指示した。

滝は西条宅を張り込んでいたが、西条は滝に対する怒りを募らせていた。

広田の強請を調査していた山村が一係室に戻ってきたが、これといった収穫は無かった。

朝になり、西条は起きて窓を開けたが、なおもアパートの前に滝が夜通しで立っていた。

田口は西条と交渉してノートを取り上げようとしたが、滝に止められた。

滝は革ジャンの若者が小包を西条に渡すのを目撃し、西条から小包を取り上げ、放り投げた。

小包の中身は時限爆弾であり、滝は顔を負傷した。

西条はノートを渡さずにずっと憎んできたにもかかわらず、滝が自分を助けた理由が理解できなかったが、田口は滝が非常に優しく、自分を憎ませるようにしかできない男と説明した。

滝は革ジャンの若者を追跡し、公園で取り押さえた。

若者は1時間前、駅前の喫茶店にいた際、革ジャンの若者を指名する電話がかかっていた。

電話の内容は、駅前のロッカーの荷物を西条に届けたら5万円やるというものだった。

西条は滝に大学ノートを渡す決心をした。

西条は犯行当日の午後10時の前、川村の代わりに帳簿の写しを買い取りに広田の部屋に行っていたが、ドアが開いていたのでそのまま入っていた。

西条はテラスから中年の黒いコートを着た男が逃走するのを目撃した後、広田の遺体を目撃し、絶叫したが、棚から落ちた大学ノートを拾っていた。

西条は犯人の男を後姿しか目撃していなかった。滝は大学ノートに大内の名前が書かれているのを発見した。

大内なら貫井が強請られていることも知っていた。

大学ノートには10月1日の午前3時、大内が保険金を目的に夫人の大内せい子を殺害したことが書かれていた。

石塚と滝、野崎と島は大内を逮捕した。

滝は小倉縫製工場に出勤する直前の西条に、大内が自供したことを伝え、感謝した。

西条は再出発を誓った。

 

 

メモ

*スコッチの非番は、自宅でのサボテンの鑑賞と、「サボテンとの会話」のようだ。

*「疑惑」で倉田刑事の件が解決し、少し氷解してきたスコッチ久しぶりの主演作。

*アッコが珍しく、「西条と川村のような大恋愛がしてみたい」というロマンチックな発言をする。

*タイトルの「砂の城」とは、西条と川村の関係を指す。川村は宮園土建の横領金200万円を騙し取るために西条と交流していたが、都会で孤独の日々を過ごす西条にとっては、かけがえのないものだった。

*西条を傷つけたくないからこそ、西条と川村の関係を断ち切らせたスコッチ。後に「似顔絵」でも似たようなことを行っている。

*仕事を休めなくなる理由で、ボスの車に乗るのを断るボス。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

西条景子:倉野章子

川村真治:横光克彦、大内正巳:小沢重雄

根本好章、革ジャンの若者:上恭ノ介、貫井社長:山田禅二

コートの男:阿部六郎、大河内稔、中山一也

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:柏倉敏之、小川英

監督:竹林進